東方九心猫   作:藍薔薇

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稽古よ、稽古

「あらあら、博麗の巫女はこんなものかしら?」

「……うっさいわね!」

 

 突然紫様が博麗神社へ行くと言って、特にやることがなかった私も何となく付いていくことにし、スキマを抜けたらこれである。一体、紫様は何を考えているんだか……。まぁ、どうでもいいや。

 持ってきていたペットボトルのお茶のキャップを開きながら紫様のことを考えていたからか、ふと少し前のことが浮かんできた。

 

『月の都? ハッ、どうでもいいね』

『嫌。二の舞は御免』

『いくら大賢者様の言葉でも無茶よ。私は降りるわ』

『ふざけてんじゃあねぇぞコラァッ! ンなもん出来るわきゃねぇだろうがッ!』

『……眠い。やだ。寝る』

『なーに言ってやがりますか? むりむりのかたつむりー』

『化け猫風情が……。寝言は寝てから言え』

『いいとは思うけれど、余所でやってくれない? 盗れたらこっちにもよろしくね』

『帰れ』

『貴女、この私に従えと仰いましたか? ……万死に値しますわっ!』

 

 あれから紫様に命じられるままいくつも協力を要請したものの、誰も彼も首を縦に振ってくれませんでした。攻撃されて逃げ帰ったことだって結構な数ある。いやぁ、大変だった大変だった。無事逃げ切ることが? ……そうじゃなくて、反撃即殺しようとするのを押さえつけることが大変だったよ。はぁ。

 私としては、これまで知りもしなかった強力な妖怪を何人も直接見ることが出来た。私自身が弱いこともあってか、皆が皆自分の意見を押し通してくる。話が通じそうな妖怪に対しては、ちょっと言葉を足して少し誘導してみようとしたものの、結局嫌なものは嫌だと突っぱねられてしまった。まぁ、そんなもんか。

 

「……結局、乗り気だったのはレミリアだけか」

 

 くだらないという言葉は、半分くらい嘘であるのは見れば分かった。紫様の計画をくだらないと思っていただろう。しかし、それと同時に月の都へ行くこと自体には強く興味を持っていたようだった。つまり、レミリアはレミリアの手段で月へ行くつもりなのだろう。紫様よりも早く月へ侵攻し、出し抜いて、見せびらかそうとでも考えているのだろう。それが内側でいくつもの視点から見聞きし、私が直接感じ取ったことと合わせて内側で軽く話し合った結論。

 まぁ、それが合っていようと外れていようと、私にとってはどうでもいいことだ。お茶と一緒に飲み込んでしまおう。外の世界ではこんな風に売られているそうなのだが、なかなか便利だ。空の容器を使い回せるのもいい。まぁ、空になったペットボトルは紫様がスキマに放り込んでしまうのだが。

 そんなことを考えていたら、紫様に吹き飛ばされた霊夢が私の隣にまで滑り込んできた。背中が擦れて結構痛そうなのだが、霊夢は気丈に振る舞ってすぐさま立ち上がりながら紫様を睨みつけた。対する紫様は妖しく微笑むだけ。

 

「ちょっと紫、急に何のつもり?」

「稽古よ、稽古。仮にも巫女なんだから、神様の力を借りるくらい出来るようになりなさい」

「はぁ? どうでもいいでしょ、そんなこと。今まで妖怪を叩き潰すのに必要なかったじゃない」

「将来に備えて、よ。さぁ、もう一度かかって来なさい」

「あんたから来たんでしょうがっ!」

 

 そう言い放つと霊夢は飛び出していき、紫様と衝突した。命名決闘法案ではない、純粋な決闘。いやぁ、大変そうだなぁ。

 攻防が激しくなりそうなので少し離れることにし、勝手に縁側に座って観戦することにしたが、これと言って霊夢から神様的凄い力が湧いてくる気配はない。まぁ、急にやれと言われる霊夢の方が困った話か。

 神の力を借りるっていうのは、とんでもなく難しいものだ。身近な神様には猫神様という存在がいるのだけど、あちらは人間の憑りつくことにばかりに興味津々で、大抵こちらの話を聞いてくれないものだ。こちらに興味を向けても、そこからどうなるかなんて分かったものではない。神様ってのは随分身勝手で、過ぎた善意は重過ぎるし、軽い悪意でも深く刺さる。

 

「っ! これ……」

「……ふふ、そう。その感覚よ」

 

 ……どうやら、そこまで困らなさそうである。羨ましい限りだ。はぁ。

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