「ほぼ毎日毎日ここにやって来て……。来るならお賽銭の一つでもしなさいよ」
「悪いけれど、私は貴女を監視するためにここにいる。それに、神頼みしたところで貴女の元には降りてくれないようですし」
「へぇ、言ってくれるじゃない」
顔だけを後ろに向けて私を見詰めながらそう言われたけれど、残念ながらお金は持ってきていない。だから無理だ。
紫様は他の準備やら策略やらで忙しいらしく、直接稽古をつけることがあまり出来ないようで、霊夢が神様の力を借りる訓練を真面目にしているか見守りサポートするよう命じた。ということで、私は代わる代わる博麗神社を訪れている。監視しているからか、それとも元から真面目なのか、露骨にサボっている様子はない。
サポートというのは各々それぞれで、紫様の代わりに手合わせを申し出たり、甲斐甲斐しくお世話をしたり、知りうる限りの神様について話したり、横で頑張れ頑張れ出来る出来ると応援したり、問答無用で突撃したり、縁側にただボーッと座っていたり、辛いこと痛いことがあったら癒したり、周囲を警戒していたり……。私の場合、持ってきたお菓子を並べておくくらいである。……え? いくつかサポートじゃない? 知らん。
「……く、ふぅ」
「どうです? はい、どうぞ」
「案外難しいものね。どうも」
参道の上で小一時間瞑想し続けていた霊夢の集中が途切れたところで、用意していた冷やした緑茶とカステラを持って霊夢の元へ行く。これを冷やすのに氷結の妖術をわざわざ使ったのだ。氷結のくせに凍らないあたり、お察しである。
難しいなどと言っているけれど、見ていて日に日に上達しているのがよく分かる。数日空けている紫様なら、なおさらその進歩が分かりやすいだろう。才能があるってのはこういう者を指すのだろう。私にはないものだ。羨ましい限りである。欲しいとは思わないけれど。はぁ。
「何よ、その顔。面倒なら来なければいいのに」
「命令ですので。そこは残念ながら逆らえないんですよ」
「だったらそんな変な顔しないでよ。気が散るわ」
「はぁ、そうですか」
今、どんな顔してるんだろう? そう思い、薄く広げた結界を浮かべる。無色透明ではなく、ガラスのように光を僅かに反射する結界。ちょっと見辛いけれど、鏡でよく見る顔をしていた。そんなに変だろうか? ……まぁ、どうでもいいや。
「それじゃ、十分休んだら続けてくださいな。そして、私にちゃんとやっていましたよ、と報告させてください」
「何よそれ。……ま、いいわ」
それだけ言って、私は飲み干して空になった湯呑を受け取って戻っていくことにする。もう少し休んだら再開するだろう、と思いながら、私は台所で湯呑を水で軽く洗って干しておいた。
縁側に戻って霊夢の様子を確認してみれば、案の定瞑想を再開していた。霊夢に向かって何かが細く流れていくのを感じ、私は何とも言えない気分になる。
……まぁ、ちゃんとやっていましたよ、と報告出来そうだ。なら、いいか。