東方九心猫   作:藍薔薇

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器兵新最の月

 近付く。表と内側の境界がなくなり、全てが表に引きずり出されてしまう。

 刺さる。切り離された八つが欠落していた私を貫いていく。

 繋がる。何を考えたか、何を思うか、何をするか、全てが分かる。

 混ざる。私は俺。私は私。私は私。私は僕。私は俺。私はわたし。私は私。私は俺。

 

「最ッ高にサイテーな気分……。だが、ふん、まぁ、最悪なくれぇ最良です」

 

 爪先で地面を軽く突き、身体の感覚を思い出す。しかし、そんなものは必要なかった。忘れていなかった。覚えている。嫌ってほど、刻み込まれていた。

 チラリと目を前に向けると、月の最新兵器だという扇子を握る少女が見るからに狼狽えているのが分かる。認識出来ない細さの繊維で組まれた限りなく連続した物質であり余計な物がなくなることで最強の強度を誇りさらには余計な穢れも付かなくなったと自慢げに語っていたフェムトファイバーが千切れたのが、そんなに信じがたかったのだろうか?

 しかし、まぁ、私からすればそんなものは最早どうでもいい。それよりも、私がするはずだったことを先取りされたこと。……何だよ、半端に剥れた際に伝わってたのか。どれもこれも消えてしまうのに、何で自ら付き合おうなんて思えるかね。悪いね、私の身勝手に付き合わせて。私は悪くない。

 

「そのまま縛られていれば放っておいてやろ」

「あー、もうえぇです。んな台詞、全部……意味なんざねーからねっ」

 

 少女が扇子を向けた少女が上からな言葉を吐き捨てる途中、私は肩を竦めて笑ってしまう。意味なんてない。何をしようと、何をされようと、最早何一つどうでもいい。

 

「それに、他人任せで腰抜けなテメーにその最新兵器は振れねぇよ。計画は師匠、罠もお師匠様、兵器は技術。んでもって、……使うつもりもありゃしません。所詮見せるだけのお飾り。貴女にゃ何も出来ない。出来やしねー」

 

 けれど、いや、だからこそ、私は好き放題物を言える。それが正しかろうと、誤っていようと、全てがどうでもいいのだから。

 しかし、これだけ言われて黙っていられるほど少女は我慢強くはなかったらしい。わざとらしく音を当てて扇子を開き、そして挑発でもするようにゆるやかに手首を上げて見せた。

 

「彩! 何を考えているの!?」

「これから誰も彼も紫もみぃーんな……消えんですよ? 俺のせいでねぇ」

「お前は紫様の式神じゃあないのか!?」

「るっせぇ。既に剥れてんの。申し訳ございませんね、八雲藍」

 

 背後から悲痛な声が響く。何だよ、幻想郷が壊れても許されるんじゃあなかったのかい? それに、私はもう式神じゃあないんだよ。その辺にいる、ただの化け猫だ。

 ……いや、もうただの化け猫じゃあないんだった。本当、嫌になる。はぁ。

 

「自ら無に帰ることを望むなら」

「そーだねっ。全ては……なかったことになる」

「お望み通りここで罪を償いなさい」

 

 そう言った少女が手に持っている月の最新兵器である扇子が振り下ろされ、放たれた旋風が目の前の景色を瞬く間に消し去ってしましてっ去し消に間く瞬を色景の前の目が風旋たれた放、れさろ下り振が子扇るあで器兵新最の月るいてっ持に手が女少女に肉薄し、私はその顔面を蹴り抜いた。グシャリと鼻が潰れた感触が伝わってくる。

 

「ァが……っ?」

「ん、っかっしいですね……」

 

 蹴り飛んでいった少女は背中を地面に滑らせていったが、血がドクドクと溢れるその顔は私をしっかりと見詰めていた。

 かなり強めに潰すつもりで蹴り飛ばしたってのに頭が弾け飛ばなかった。思ってたよりも頑丈だったらしい。月の民の強靭な生命力ってやつを舐めてた。

 

「ふん、もうどうでもいいね」

 

 私は一歩踏み出した。瞬間、その速度は最高速へ到達する。

 たいてめ詰見とりかっしを私は顔のそるれ溢とクドクドが血、がたっいてせら滑に面地を中背は女少たっいでん飛り蹴り飛んでいく瞬間の少女の頭に踵落としを叩き込んだ。

 

「ぐ、……な、らば……っ」

「あん?」

 

 踵落としをもろに喰らって膝から崩れ落ちた少女は、次の瞬間ふっと消えてしまった。……さっきの瞬間移動か。しかし、もう遅い。遅過ぎる。その時その瞬間そこにいたのなら既に手遅れなのだから。

 私は駆け出し、遥か遠くから風を切り全てを素粒子に分解していく音を聞きながらがなき聞を音くいてし解分に子粒素をて全り切を風らかく遠か遥。たっましてえ消とっふ間瞬の次、は女少女の扇子を持った手に向けて脚を振り下ろし、そして踏み潰す。

 

「ぃぎっ!?」

「遅ぇんです、馬ァ鹿」

 

 少女の手首を踵を使って問答無用でグリグリと押し潰していくが、しかし再び消えてえ消び再しかし、がくいてし潰し押とリグリグで用無答問てっ使を踵を首手首の骨を即座に踏み砕いた。それと同時に、その手に握っていた扇子が地面に落ちる。

 苦痛で顔を歪ませながらも、少女は私を睨み付けたまま目を離さない。

 

「貴、女……。まさか、時間を遡っ」

「黙ってな」

「っ遡を間時、かさま。……女、貴、女……、がぁぁあああっ!?」

 

 踏み砕いた手首から自然の雷に等しい威力を持った雷の妖術を流し込んだ。少女の喉が焼き切れるまで雷の妖術を流し続け、そしてようやく声が出なくなったところで妖術を切った。少女の全身が焼け爛れ、黒煙が舞う。

 あぁ、そうだよ。これこそが私が欲した力。実力差、力量差、技術差、種族差、個体差、環境、状況、現状、過程、結果……。全てを覆す力だ。

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