私が圧縮し消し飛ばした少女がいた場所から月を見上げ、あそこにどうやって行こうかと少し考える。距離はどのくらいだっけ? 約三十八万キロメートル? 光の速度で一秒ちょっとねぇ。それならすぐか。宇宙は真空で無重力だけど、ちょっとくらいなら大したことないでしょ。ちょっと速過ぎないように気を付けないといけないけれど。
しかし、私個人としては月の都に興味がない。あるのは、どうすれば私にとってよくなるかだ。このまま月の都に攻め入って崩壊させるべきか、少しばかりちょっかいを出して技術や物を奪い取るべきか、何か偉そうな少女を殺したことだけ伝えて止めておくべきか、少女を殺したことすら隠匿してしまうべきか……。考えれば考えるだけ道が広がっていく。深みに嵌っていく。
ふと、少女に付いてきていた月の兎に目を向けた。顔面蒼白、戦意喪失。さて、彼女は生きている方がいいだろうか? それともここで死んでいる方がいいだろうか? 生かすにしても、どう生かすのがいいだろう。放っとく? 逃がす? 脅す? 痛めつける? 片腕くらい落としとく? 少し変わるだけで、その先はさらに大きく変わってしまう。こういう時に一番楽なのは、あまり考えなくていい放置なのだが……。いつか恨みでも抱いて帰ってくるかもしれない。覚えておかないと。
「彩」
そんなことを考えていたところで、紫様に呼ばれて振り向く。あぁ、まだフェムトファイバーに縛られてるのか。一目見れば、その態度でどう思っているのか大体把握出来る。その態度が本当か否かの真贋を見分けられる。その動作から次にどうしたいのか予測出来る。つまり、拘束を解いてほしいのだろう。
「終わったのなら、これを解いてくれないかしら?」
「ん。今やるよー、ババア」
ほらね。
私はその場で軽く右腕を上げていき、紫様と藍を縛っているフェムトファイバーを見詰める。そして、フェムトファイバーは千切れ飛んだのを見て、私は腕を下ろした。あーあ、これで私はまた全てを殺してしまった。本当、なんて自分勝手な力なのだろう。
しかし、言われた通り解いてあげたというのにあまり浮かない表情である。月面戦争なんて言って、月の民をぶち殺したってのに。まぁ、紫様の計画ではそもそもこちらがこんな風に勝つことなんて考えてなかったのだ。……というか、そもそも私達すら囮だったっぽいんだよなぁ。ではレミリアが本命かと言われればそれは違う。つまり、どこかの第三者が本命。なんて遠い回り道。
しかし、囮だったはずの私がこうなってしまっては、計画が狂ってしまう。まぁ、計画がどれだけ狂ってしまおうと、最早どうでもいいのだが。
「しっかしまぁ、どうしたもんでしょうね……」
どうすればいいのか、際限がない。そんなことを呟いたところで、私は紫様に判断を任せたいと思っている自分に気付いた。既に式神ではないというのに。何がどうなろうとどうとでもなってしまうのに。はぁ。
瞬間、ゾワリとした気配を感じ取り、私は竹林に目を向けた。超音速の矢が私目がけて飛来してし来飛てけが目私が矢の速音超たれた放らか弓たっ絞き引でま杯一界限が琳永たいてめ潜を身に中の林竹林の中に身を潜めていた永琳が弓の弦を限界一杯まで引き絞っていたが、私に既に見つかってしまったことを悟りながらも、その場から離脱しながら超音速の矢を放ち放を矢の速音超らがなし脱離らか場のその場から逃げ出される前に、私は裏へ回り込んだ。
「ハッ!?」
きっと、忽然と消えてしまったように見えただろう。驚く声を上げながらも即座に振り向いて弓を私に向け向に私を弓てい向り振に座即もらがなげ上を声く驚く声を上げた永琳の首を落とした。振り向こうとした動作と重なり、切断面の上でクルクルと頭が回る。
しかし、その頭が突然燃え尽きるように灰となって散り、切断面から綺麗な頭が復活した。……うわぁお、これが不老不死の薬。
「何か用か? 永琳さん」
まぁ、この程度なら殺せなくとも消し飛ばすのは容易かな。