「でねー、ゆうか! こーんなにおっきな蛙相手でもアタイの手にかかればカチンコチンよ!」
「あら、それは凄いわね」
ちるるんが腕をいっぱいに広げながら語っている武勇伝をクッキー片手に聞きながら、僕は頭の中でそのくらい大きな蛙を想像してみる。ヌルッとしていてテカテカした緑色の肌と、その大きさに見合う低くて深くてうるさいゲロゲロ鳴き声。そして、そんなすっごく大きな蛙をちるるんがカチンコチンに凍らせてしまう。
「ケケケケケケケケ、クワクワクワ」
「蛙の鳴き真似ですか?」
「そうだよー? どう? 似てた?」
「うーん……。ふふっ、そこまで?」
「そっかー。にゃははっ」
別に似てなくてもいいんだよ。ほら、隣に座ってるだいちゃんが笑顔になってるから、僕もこんなに嬉しい!
そうやってだいちゃんと笑い合っていると、ちるるんが顔をこっちに向けて目を輝かせる。
「おー、さいって上手だなー! アタイも負けないぞー! ゲロゲロッ!」
「っ! チルノちゃん……っ、その顔は反則……っ!」
「にゃはははっ!」
僕の蛙の鳴き真似よりも低く響く鳴き真似と迫真の蛙顔に思わず笑ってしまう。それに釣られてちるるんも大笑い。あー、楽しい!
「ゲロゲロ」
「待って、チルノちゃんっ。今聞くと笑っちゃう……っ」
「ゲロゲロ」
「待っ、てっ、て……っ!」
「ゲロゲロゲロッ!」
「あはははっ!」
どうやらツボに嵌ってしまっただいちゃんは、ちるるんの蛙の鳴き真似に大笑い。そんな二人を見ているとやっぱり僕も楽しい。けれど、あの中に突っ込もうと思う前に一歩引いちゃうのは、ちょっと僕らしくないかなぁと思った。
「ねぇ」
「ん? なぁに、ゆうかりん?」
「貴方、少し変わったわね」
「そう思うー?」
そう思った矢先、まるで見透かされたみたいなゆうかりんの言葉にちょっとだけドキッとした。うっわー、すっごいなぁ。まぁ、あんなことがあったんだもん。ちょっとくらい変わってもおかしくないのかも。
僕達の『中心』はいまいち楽しくなかったみたい。過去を想って泣いてたし、未来を思って悩んでたし、今を全然楽しめていなかった。
分かるよ。あんなに痛かったし、苦しかったし、僕が僕じゃなくなって、周りの皆と一緒くたになって、グチャグチャに混ぜられて消えそうになって、そして一人に成りかけたあの時。忘れたくても忘れられないし、きっと忘れちゃいけないことなんだと思う。けれど、いつまでも引き摺っていちゃいけないことでもあると思うんだ。
知ってるんだ。力を得るだけなら他にいくらでも方法なんてあっただろうに、一人に成って力を得ようとした理由。僕達は他の化け猫と違うことを気にしてたってこと。そうやって、普通になることを望んでたこと。その結果、結局化け猫からも外れちゃって、どちらにしても普通とは違うことに泣いたことも。けれど、皆違って皆いいって言うじゃん? 僕は、皆と一緒にいれる今が好きなんだ。
考えたことがある。あの力があれば、皆を永遠に閉じ込めて遊び続けられる。けれど、やっぱり違うよね。何回もグルグル繰り返し続けていくと、何だかものの見方が変わっていくんだ。前を見ているんじゃなくて、自分の頭の上から見下ろしているような感じ。辿り着きたい結末っていう先のことばかり考えて、だから今はこう動こうって考え出す。同じ場所に立っているはずなのに僕だけが違う場所に浮かんでいる気がして、世界がつまらなくて嫌になる。だから、やっぱり過去も未来も気にし過ぎちゃいけないんだ。今ってこんなに楽しいのに、すぐ見落としちゃう。
過去があるから今があって、今があるから未来がある。けれど、僕が立っているのは今なんだ。だから、難しく考えないで思いっ切り笑おうよ。痛かったことも、辛かったことも、苦しかったことも、過去を想って泣いてても、未来を思って悩んでも、今を笑えれば楽しくなれるから。たとえ今が嫌になっても、次の今のために楽しく笑っていたい。そう思う。
「僕もそう思うよ。お揃いだねっ!」
ちょっとだけ違う僕もいいんじゃないかな? だって、いつまでもずーっと同じじゃあつまらないもんねっ!