東方九心猫   作:藍薔薇

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亡霊が此岸に何の用だ?

「にゃおーん。ふっふーん」

「あんたねぇ……、勝手に人の神社の屋根の上に居座るんじゃないわよ」

 

 太陽が地平線の向こう側に沈んでいく。表のは太陽に咆えていた。何故か得意気である。下で宴会の準備している霊夢の言葉は聞き流しているようだけど、いいのかなぁ? ま、いいや。本気で止めさせるつもりなら、力尽くで引きずり下ろされてるだろうし。

 内側でその様子を見上げていた私としては、余計なことをして面倒なことにならないならこのままでいいんじゃないかな、とすら思っているくらいだ。他のがどう思っているかは知らないけれど、表のを無理矢理内側に引っ張り込まないあたり、似たようなことを考えていそうである。多分。

 

『おや、誰か来たようですね』

 

 近くのがそう言ったのを聞き、私は表の視界を注意深く見詰めてみる。……あ、本当だ。二人組っぽい。

 

「あんたらも来たのね。残念だけど、準備中よ」

「そのようねぇ。……あぁ、そうそう。昨日、二人くらい誘ってあげたから後で来ると思うわ」

「ふぅん、そう。別に構わないわ」

「それじゃあ妖夢、霊夢を手伝ってあげてね?」

「分かりました、幽々子様」

 

 ……えぇと、誰だっけ? 二人の名前は妖夢と幽々子というらしいが、見覚えがあるような気がするのだが、いまいち思い出せない。少なくとも、私が表に出て会った相手ではないと思う。他のが表にいる時に顔合わせでもしてたかな?

 そんなことを考えながら、妖夢と魔理沙が何やら言い争いをしているのを表のが見下ろしているのを眺めていると、幽々子の目とバッチリ合ってしまった。うわ、なんか嬉しそうに微笑んでるし。しかもこっちに来てるし。やっぱり、どれかと会ってるんだよ。今の表のが知っている相手なのかなぁ? どうなんだろう。

 

「久し振りねぇ、彩」

「久し振り? ……ま、いっか! そうだよ、僕は彩。ね、名前教えてくれない?」

「あらぁ、忘れちゃったのぉ? 私、寂しいわぁ……。私は西行寺幽々子よ」

「じゃあ、ゆうゆうだ!」

 

 あ、思い出した。幽々子はいつだったか、紫様に冥界に連れてかれて顔合わせした亡霊じゃあないか。紫様の古い友人って言ってたはず。で、その近くにいたのが妖夢。そんな相手をあんな風に気安く呼んじゃって大丈夫なのかなぁ? ……あ、大丈夫そう。凄くニコニコ笑ってる。

 幽々子はそのまま表のの隣に腰を下ろし、三人が宴会の準備をしているのを見下ろしながら口を開く。

 

「貴女も参加するのかしら?」

「うんっ! 美味しいお酒を皆で呑むんでしょ?」

「えぇ、そうねぇ」

 

 ……ん? なんか含んだ言い方だなぁ。ただの宴会じゃないのか? ……あぁ、魔理沙が言っていた妖霧が関係してるのかな? ま、私にはどうでもいいことか。

 

「……ふん、亡霊が此岸に何の用だ?」

「あらぁ、可愛い吸血鬼ねぇ。もちろん、お酒と宴会に決まってるじゃない」

「さて、どうだか」

 

 もう日も暮れたなぁ、なんて思った矢先、突然背後から投げかけられた言葉に幽々子が対処した。なにやら険悪な関係のようで。

 表のが振り返ったことで、背後にいる者の姿を見ることが出来た。三人組で、一人目は蝙蝠のような羽を持つ銀髪の少女、二人目はいかにも不健康そうな紫髪の少女、三人目は見覚えのある気がする給仕服を着た少女。多分、一人目が吸血鬼かな。それっぽい羽が生えてるし。

 

「こんばんはー! ここに来たってことはさ、一緒に宴会するんでしょ? ね、名前を教えてくれないかな?」

「私に名乗らせるつもりなら、まずは貴女が名乗るべきじゃないかしら?」

「僕の名前? 彩って言うんだ! ほら、名乗ったよ? だから、僕に教えてくれないかな?」

「レミリア・スカーレット。そして、我が友のパチュリー・ノーレッジと、我が従者の十六夜咲夜だ」

「そっか! れみりー、ぱっちぇ、さっきー!」

 

 うげ、レミリアが思いっ切り頬を引きつらせてるんですけど! 両側にいるパチュリーは気にせず本を読んでいるから大丈夫そう。咲夜は笑顔の仮面で軽く頭を下げている。……あぁ、そうだ。春雪異変の時に霊夢と魔理沙と一緒にいた人間じゃないか。どうしよう、急にナイフが飛んでこないか心配になってきた。

 パチュリーと咲夜はレミリアに一言伝えてから霊夢の元へと向かっていったのだが、この場に残ったレミリアは幽々子とただならぬ雰囲気を漂わせながらバチバチ睨み合っている。そんな様子を表のは平然と眺めていやがる。そんなものを見てて楽しいのか。

 

『……あのさ、あれ、大丈夫かなぁ?』

『そうね……。少し心配だわ』

『ま、ただの宴会じゃ済まねぇだろうな』

 

 他のもそう思うよね……。正直、今すぐにでも他のと代えてやりたい気分だ。けれど、この宴会に誘われたのは飽くまで表のであって、内側にいる私含めた八つではないのだ。だから、ここで代わるのはちょっと忍びない。

 結局、霊夢から宴会の準備が終えたことを伝えられるまで二人は静かに睨み合い続け、そして表のはそんな二人を鼻歌交じりに眺め続けていたのであった。あんなもののどこが楽しいのだろうか……。今の私では理解出来ないし、ハッキリ言ってしたくない。

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