東方九心猫   作:藍薔薇

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尚の事質が悪いわ

 目が痛くなるくらいカラフルな星形の魔力弾が左右から襲いかかる。とりあえず、身体を右に向けて背後に結界を張る。ものの数秒しか持たないだろう脆弱なものだが、今目の前に迫る弾幕の対処には十分だ。ようやく実用に値する長さと強度を得た爪を振り下ろし、いくつかまとめて引き裂いて空間を確保。チラリと背後を確認し、案の定もうすぐ壊れると思いながら抉じ開けた空間に前進し、前方からの弾幕がないことを確認してから振り返る。それとほぼ同時に先程張っていた結界が破られ、迫り来る魔力弾の中から被弾する魔力弾を見て選んで爪で引き裂く。はぁ。

 

「どうして私かなぁ……」

「口を動かす暇があるなら動け。負けなどしたら紫様の名に泥を塗ることになるぞ」

「もう既に負けてるんですが」

「なら、汚名返上だな」

 

 よりにもよってどうして私が出ているときに命名決闘法案が始まるかなぁ、と思わず愚痴れば即座に藍に叱責されてしまった。知らんがな。

 私達の前に浮かんでいる紫様は、魔理沙が放っている魔力弾から被弾するものだけを取捨選択して一つ一つスキマで拾い上げ、わざわざご丁寧に紫色に染め変えてから魔理沙にお返ししていた。どうせなら全部やってくださいよ。紫様なら出来るでしょ。多分。そうすれば楽なのに。はぁ。

 偽りの月を背後に上空から星形魔力弾を降り注いでいる魔理沙を見上げていると、突然笑い出した。

 

「ははっ! なんだ、その化け猫も紫のペットだったのか! いや、子分か? それとも式神? ……まぁいい。道理で怪しいわけだな!」

「そうよ。彩は藍と同じ、私の可愛い可愛い式」

「そういう言い方止めてくれません?」

「あら、いいじゃない」

 

 何となく口出ししてみれば、顔だけ振り向いた紫様は私に笑う。キュッと口端を吊り上げる、妖しい微笑み。……まぁ、どうでもいいや。好きに呼んでくれ。私は紫様の式神だから。

 ちなみに、霊夢は我関せずと言わんばかりにその辺に佇んでいる。まぁ、魔理沙が名指ししたのは紫様と私だ。藍は紫様の式神として勝手に乗り込んでいるけれど、霊夢は関係ないと言えばない。けれど、的が増えるから参加してほしかった。はぁ。

 おっと、ため息なんかしてる暇ないんだっけ。周囲を確認し、弾幕の軌道から被弾しない場所を推測。さっさとそこに移動しよう。

 

「すみません――あ?」

 

 が、そうしようとした身体が変な形で止まる。急に出てくるなよ。あぁ、そりゃあ怒られるわ。なんて思っている間にも、私が避けようとしていた魔力弾が迫る。うげ、当たっちゃう。

 なんて思っていたけれど、横から高速で飛来した妖力弾が魔力弾を貫きかき消した。首が妖力弾が飛んで来た方向に曲がろうとするので、私も気になっていたしそちらへ向く。

 

「何をしてる。ボサッとするな」

「申し訳ありません。そしてありがとうございます、藍」

 

 どうやら、さっきの妖力弾は藍のものだったらしい。いや、ありがたいけど。その前に、一つ言わなきゃならないことがある。

 

「どうして出てきたの?――今度は私が出ることが決定したので――さっきみたいに?――先程のように」

 

 どうやら、わたしがいない間に内側で誰が出るか話し合っていたらしい。さっきの半獣の時もそうだったようだ。けれど、出るタイミングはもう少し考えてほしかったかなぁ。はぁ。

 まぁ、いい。よくないけれど。それよりも、私が対処するべきなのは紫様から零れた弾幕の処理だ。え? 紫様の背後とかに密接すれば必要ない? それは流石にどうかと思うので、どうしようもなさそうだと感じたら、ということで。

 

「他のと代わった方がよくない?――いえ、そんなことはありませんよ――私より出来るのが他に七つもいる――私は貴女ほど出来るのを知りませんよ」

 

 何言ってんだ? おい、真面目に考えろよ。私に何が出来る? 何も出来ねぇよ。おちょくってんのか。

 

「冗談は私の専売特許なんだけどなぁ――思ったことを正直に語っただけですよ――尚の事質が悪いわ」

 

 本気でそう思っているなら考え直してくれ。冗談まで取られてしまったら、私の勝っているかもしれないものが本気でなくなる。どう考えても、私は全てに劣るんだから。

 視点が勝手に四つの魔力弾に移る。あぁ、それが当たるのね。その四つの魔力弾の軌道に合わせて四つの小さな結界を張る。隣のも妖力を流してくれたから、あの程度で割れることはないだろう。魔力弾を防ぎ用済みとなった結界はすぐに消す。そして、次の魔力弾に合わせて結界を張る。繰り返す。今のところ、問題はない。

 

「っとぉ!?」

 

 なんて思った矢先、問題が起きた。ただし、私にではなく、魔理沙にだが。突如、霊力の籠った陰陽玉が飛んできたのだから。

 

「……何すんだよ、霊夢」

「あんたらがちんたらやってるからよ」

 

 何を思ったのかは知らないけれど、霊夢が重い腰を上げてようやく参戦するらしい。

 

「こりゃまずいな。一旦立て直すか」

 

 あ、逃げた。脱兎の如く。箒に跨って彗星のようにビューっと。……いや、別に逃走は禁止されてないけれど。ま、いっか。

 

「あ、逃げた?」

「さぁ、地の果てまで追うのよ」

 

 よくなかった。

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