「だーっ! あっつい!――当たらずとも熱は伝わりますから」
「いちいち騒がしいわね、あんた」
「うっせーコーハク! どらららららららぁーっ!」
いや、どう考えても表ののほうがうるさいでしょうよ。滅茶苦茶騒いでるじゃん。叫んでるじゃん。
必死に両腕を振るって拡散する爪撃を放っているが、迫り来る炎に次々と焼き尽くされていく。焼け石に水どころか火に油って感じさえしてしまうのだが……。さらに言えば、火炎球に直接焼かれていなくとも、それが脇を通り抜けるだけで皮膚が焼け爛れそうだ。近くで同じ目に遭っているはずの霊夢が無事な理由を知りたいよ。はぁ。
「実際たとえ火の中水の中、とはいかんよなぁ――ふん」
「というか、さっき氷使ってたじゃない。それ使いなさいよ」
「んなもん出来るわきゃねーだろ!」
「はぁ? まさか、あの短時間で忘れたとか言わないわよね?」
「忘れてはいませんよ。ですが、覚えていると出来るは違うのです」
見れば何でも出来るわけじゃないんだよ、残念ながら。だからって、試したところで使い物になるかも分からないけどさ。努力は成功に繋がらないし、あっさりと裏切ってくれる。少なくとも、私は駄目だ。塵が積もれどただのごみ。何も出来ない。
『あのスペルカードが終わり次第癒しましょう』
『いくらか赤く焼けてるわね……。どうして守ろうと思わないのかしら?』
そりゃあ、だだっ広く記憶して覚えるの、率先して矢面に立つの、過剰なほどの上昇志向の、敵を屠るのが揃っていて身を守るなんて考えが浮かぶとはあまり思えない。たとえ浮かんだとしても、そんなことより目の前の敵となるだろう。
まぁ、そろそろスペルカードが終わるかな、と感じていたところでゆさゆさと肩を揺らされる。はいはい、どれですか?
『ねぇねぇ、僕も出てっていいかな? いいよねっ?』
『よくない。待て。お願いだから』
『ケッチー!』
無邪気な提案は勝手に却下。今、私は生死の境目にいる。まぁ、どちらが生でどちらが死か、あるいはどちらも生かどちらも死か、実際のところそんなもの分かりはしないけれど。ということで、残念ながら遊んでいる余裕がない。だから、そんなに頬を膨らませてむくれても覆しません。両手で頬を挟んで潰してやるが、放した途端すぐ膨らんでいく。……そんなに不服か。はぁ。
目の前で膨らむ頬を何度も潰して遊んでいると、一足早く表ののスペルカードが終了した。そしてすぐに姫様のスペルカードも終わる。どうやら、表のは被弾はしなかったらしいが、確かに皮膚の至るところが赤くなってしまっているようだ。軽度の火傷である。
なんて思っていれば有言実行、一つ表へと飛び出していった。
「まずは火傷を癒しましょう――ふん。そんなもの戦後処理で構わ――今すぐです!」
「あらあら、賑やかねぇ。難題『燕の子安貝 -永命線-』」
表のが身体に淡い光を巡らせていく最中、姫様は碌に間を置かずに次のスペルカードを宣言されてしまう。癒しが間に合わない。手を貸しているのは本人含めて三つかなぁ? 五つ揃えば間に合っただろうけれど、残念ながら協力的じゃない。この程度なら動けるだろうから。
突如、視界が白く染まる。目が慣れてくると、真っ白なレーザーが全方位に交錯していた。前後なら多少動けるようだが、上下左右には無理だ。腕を広げようものなら一本どころか二、三本被弾してしまう。この弾幕は当てるというより、移動を阻害するためのものなのだろう。ほら、左右から嫌に目立つ真っ赤な妖力弾が迫ってきてる。
「下がるぞ!――まだ癒し切れて――んなもん後でいーだろーが!」
あまり動きたがらないのを四つが引っ張るように無理矢理後ろへ下がり、左右の妖力弾をなんとか躱している。まぁ、動かれると癒しにくいもんねぇ。
「もう火傷は治ったようですね――もうちっとで当たっちまうところだったじゃねーか!――それより怪我をしないでください」
とはいえ、どうにか火傷は癒し終えたらしい。まぁ、こうして眺めている私としては被弾してたら藍がキレそうだから動いてほしかった。動きたくなかったのは分かるけれどさ。ま、正解なんてない。たとえいくら繰り返そうと、それが正しい選択かは分からない。
『これで大丈夫でしょう。痕にも残らないはずです』
『お疲れ』
『あー、うん。お疲れ様』
やることを終えてさっさと内側に戻ってきたのを私も軽く労っておく。まぁ、わざわざ思ったことを口にする理由はない。口にしなければ伝わらないとは、こういうときばかりはいいことだ。はぁ。
それにしても、これが賑やかだと本当に思えるのかい? 見てる側は楽しいだろうけれど、やってる側は苦労でいっぱいなんだよ。そりゃそうだ。どんな悲劇も関係なければ喜劇に変わる。あらゆる不幸も笑い話だ。所詮、そんなもん。
『むーっ! あーそーびーたーいー!』
『駄目』
私はそんな風に気楽に捉えられないよ。はぁ。