「ふふーん。……にゃはっ!」
あっちへふらふら。こっちへふらふら。表のは当てもなくあちらこちらへ歩き回る。好みの花を求めているのだろうか、ひらひらと羽ばたいている蝶に視線を奪われてそのままふらふらと付いていく。
表のはきっと難しいことなんて何も考えないで、ただただ今を純粋に楽しんでいるんだろう。その生き様は少しばかり羨ましく思えるのだ。ただ、羨んでもなりたいとは思わないけど。
「あっ」
そんなことを考えていたら、その蝶が突然落ちた。命尽きるにしてはあまりにも唐突過ぎるが、それもそのはず。蝶に霜が降りている。温かな気候に包まれた春に蝶がいきなり凍るなんて考えにくい。何処かの誰かがやった可能性を考えるのが普通だ。
「どーだ! アタイのスペシャルテクニック!」
「チルノちゃん……。命をそんな簡単に奪っちゃ駄目だよ?」
「平気平気! 多分生き返るって!」
「多分って……」
そして、答えは向こうからやって来た。氷精、チルノだ。その隣にいるのは大妖精だったかな?
表のはというと、凍った蝶よりも聞こえてきたチルノの声に意識が持ってかれている。というか、既にチルノに向かって走り出している。
「ちっるるーん! やっほーっ!」
「うわあっ!? 誰だー!? はーなーせー!」
そのままチルノに思いっ切り跳びかかり、抱き締めて髪の毛をわしゃわしゃしている。突然抱き締められた表のを引っぺがそうと両腕を必死にジタバタ振り回しているけど、残念ながらほとんど掠りもしていない。
「彩さん!?」
「だいちゃんも、やっほーっ!」
「や、やっほー……?」
驚く大妖精に挨拶し、困惑気味な挨拶を返されて満足げに笑っている。それでいいのか。
表のがチルノを両腕から解放してやれば、抱き締めていたのが誰なのかを知ったチルノは嬉しそうに笑う。それでいいのか。
「こんなところでさいに会えるなんて奇遇だなー!」
「奇遇だねー! 嬉しいねー! ちるるんが暇なら一緒に遊ぶ?」
「遊ぶ! アタイの新しくて滅茶苦茶すっごくて格好よくて新しいスペルカード見せてやる!」
「いいねっ! 見せて見せて!」
ハイテンションな会話で気付いたら命名決闘法案で遊ぶことになっていた。……凄いな、私には付いていけなさそうだ。何気なく内側を見回してみると、苦笑していたり、興味なさげにそっぽ向いてたり、その場にしゃがみ込んでいたりで、私と似たり寄ったりだった。よかった、付いてけないのは私だけじゃない。
「アタイのすっごいところ見ててね、だいちゃん!」
「うん。頑張ってね、チルノちゃん」
チルノが大妖精と表のの手を取って飛び出す。しばらく飛んだ先で手を離し、チルノは表のと距離を取った。どうやら、始まるらしい。