東方九心猫   作:藍薔薇

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最強のアタイ

 チルノの手から小さな氷柱がいくつも放たれる。それを表のはギリギリまで引きつけてから横っ飛びして躱す。もののついでのようなちゃちな爪撃を一発放ち、それをチルノは大きく飛び越えた。もっと弾幕張れるでしょ、と思うところもあるけれど、この命名決闘法案は本気でやり合うような勝負じゃないのだ。このくらい緩いのでちょうどいい。

 そんな風に代わる代わる攻撃し合っていたのだが、チルノが攻撃の手を止めて両手を前に出した。

 

「さい! これがアタイの新しいスペルカード!」

 

 そう自信満々に宣言し、右手から左手へ氷が伸びる。氷は左手で止まらずにぐんぐん伸びていき、やがてチルノと同じくらいの長さにまで伸び切った。単なる氷の棒かと思ったが、どうやらそうではないらしく、伸び切った先端が鋭利に尖り、手元は太く丸く整えられ、徐々に見覚えのあるような形状へと変化していく。

 

「ジャッギーン! 氷符『ソードフリーザー』!」

「ちるるんすっごーい!」

 

 氷の剣の完成だ。へー、上手いもんだ。私はそんな風に特定の形に成型するのはあまり得意ではない。というか、そんなの面倒臭い。そういうのは得意なのに任せるね。

 お遊びにそんなもの振り回すのはどうなんだろう、と思ったのだが、よく見てみれば実態は見てくれだけで流石に切断は出来なさそうだ。ただし、硬いものにぶっ叩かれるわけだから、被弾すればそれなりに痛いだろうけど。

 

「そりゃーっ!」

「うにゃっ」

「せい、せい!」

「にゃははっ! こっちこっちー!」

「待てー!」

 

 上半身ごと使った大胆な振り下ろしを表のは右に躱し、切り返しを今度は左に飛んで躱し、続く右からの横薙ぎの振り回しを後ろに躱した。それから距離を取り始め、チルノが逃げる表のを追い駆ける。剣の射程に入るとすぐに振り回しているけれど、そんな雑に振られて当たるほどのろまじゃない。というか、そもそもチルノが表のに追い付ける程度の速度にしているあたり、じゃれ合ってるようなものなのだ。

 そうやって時間いっぱい追いかけっこをし、そのまま時間切れになったので、チルノは氷の剣をそのへんにポイッと投げ捨てた。おい。氷だから解けるんだろうけど、下に誰かいたら悲惨だぞ。いないけどさ。はぁ。

 

「何でだー! 当ったらなーい!」

「じゃあもっとずっと大きくしよっか! ドーンと決めちゃおっ!」

「もっと、でかく……! そっか!」

 

 癇癪を起こしたチルノに表のがアドバイスとは思えないような言葉を返す。しかし、あんな答えにチルノの目はキラキラと輝いた。いいのかそれで。

 

「それじゃ、次は僕だねっ! 旋転『ぐるぐるスフィア』!」

 

 表のは宣言と同時にチルノから一定の距離を保ちつつ縦横無尽に回転し始めた。表のが通った軌道上に妖力弾が置かれていて、チルノを包んでいく。このまま動かれなかったら被弾させれなくないか、と思った矢先、最初に置いてかれた妖力弾から順番にチルノを襲う。弾速は結構とろっちいが、この球体の中という狭い範囲で避けなければならないのなら、下手に速いより難しいかもしれない。

 

「へっへーん! このくらい最強のアタイには通用しないわ! 雹符『ヘイルストーム』!」

「うわっとぉ?」

 

 一定の距離を保っていた表のの身体がぐらつく。どうやら、チルノを中心に強風が吹いているらしい。その風に乗って、拳大の雹が球体となっていた妖力弾を穿ち、次々と穴を空けていく。あらま、これは痛い。チルノは小さいから、下手したら穴から抜け出されてしまうかも。

 

「あ」

 

 なんて思ってたら、表のの視界がチルノから真逆の空へと切り替わる。急に何故、という答えはすぐに分かった。その中心に吹っ飛んでいく麦わら帽子。どうやら、被っていた麦わら帽子がさっきの風に持っていかれてしまったらしい。しかも、チルノから放たれる風とは別の自然風に流されてさらに遠くへ飛んでいってしまっている。

 

「あーっ! さいの帽子っ!?」

「んー、いいよ気にしないで! 続けよっ!」

「追いかけるよっ!」

 

 まぁ、帰れば他の帽子があるからね。しかし、表のの言葉を聞いていないのか、チルノは命名決闘法案を止めて麦わら帽子に向かって飛んでいく。視界の端では、チルノを見守っていたであろう大妖精も麦わら帽子に向かって飛んでいるのが見えた。随分お人好しだなぁ。

 

「待て待てー!」

 

 そんな二人を表のは追いかけていく。お遊びは中断してしまったけれど、なんか別に楽しそうだしいいや。

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