「じゃじゃーん! アイスフラワー!」
「うわーっ、綺麗っ!」
「チルノちゃん、こんなのはどうかな?」
「ありがと、だいちゃん!」
意気揚々と探検だ冒険だとは言っていたものの、奇想天外で吃驚仰天の天変地異な出来事は起こらなかった。精々、物珍しい花を見つけたり、それをチルノが凍らせて持ち歩いたり、あるいは大妖精が深い藍色をした花々を編んで花冠にしてチルノに被せる程度だ。……まぁ、そんな簡単に起きて堪るか、と言いたいけどさ。花の異常だけで充分だ。
『ところでさぁ、あんな風に凍らせたり、花冠にして被ったりしてるけど、憑依してる幽霊に何かされるとかないよね?』
『ないわよ。お手入れしてる時に何もなかったでしょ?』
『そうですね。多少触れた程度で悪影響があるのならば、あの時紫様が黙ってるはずがありませんので』
『あ、そう。それならいいや』
放っておいて目の前の妖精達に何かありました、じゃあ目覚めが悪くなるかもしれないし。ま、妖精相手に死ぬなんておかしな話だけどさ。二日くらい消えるだけだ。一回休み。だからって、好き好んでそうなりたいわけではないだろうけど。
そんなことを考えていたら、大妖精が表のを眺めていることに気付いた。その視線は頭、特に麦わら帽子に向かって伸びている。
「どうしたの?」
「あっ、いえ、彩さんの麦わら帽子にはどんな花が似合うかな、と」
「んー、どんなのが合うかなー?」
表のはそう言って首を傾げているが、そういうのを考えるのは得意な方だろ。煌びやかで装飾過多なスペルカードをいくつも考えてるじゃないか。……え、私? さぁ、そういうのは苦手だ。他のに任せたほうが早い。そうでしょう?
そうは思ったのだが、せっかく多種多様の花々が視界一杯に広がっているのだ。こうして目の前に見本が咲いているのならば、表のと大妖精が二人で考えている間くらいは試しに考えてみるのも悪くないだろう。
『どんなのが似合うと思う?』
『そうねぇ……。あんまり派手な色だと少し浮いちゃうし、淡い色だといい感じじゃない?』
『デカくて派手なのドンと乗せたほうがいいに決まってんだろーが!』
『藤の花はどうでしょう? 横に少し垂らすといいと思います』
『赤い薔薇なんかを一つ刺すだけでいいんじゃねぇの? で、言い出したくせに何もないのか?』
『あー……、なかなか思い付かないねぇ。精々毒がないならいいかなぁ、くらいしか』
『なんだそりゃ。関係ねぇじゃねぇか』
だから、そういうのは苦手なんだって。真っ青なヒヤシンスとか、真っ赤なポインセチアとか、目に映った花を一つずつ麦わら帽子に添えてみたのを思い浮かべるのだが、どれもいまいちピンと来ないのだ。強いて言えば、睡蓮を二つほど並べたのなら多少はマシかなー、と思ったくらい。
私が思い浮かべたのなんぞより、やっぱり他のが考えたのの方が圧倒的に似合うと思うのだ。藤の花とか似合いそうでしょ。うん。
さて、そろそろ二人は答えを出すかな、と思って表を見上げてみる。しかし、どうやらまだ思い付きそうにないらしい。まぁ、これだけたくさん咲いている花の中から一番いいものを選ぶのは容易ではないだろう。
「おーい。二人して何考えてるのー?」
「えっ、あっ、チルノちゃん!?」
そうやって二人が考え込んで黙ってしまったのが気になったらしいチルノが大妖精の肩を揺らしながら話しかけた。考えすぎてチルノのことが頭から抜けていたらしい大妖精はわたわた慌てていたが、すぐに平静を取り戻した。
「あのね、彩さんの麦わら帽子に似合う花を考えてたの。チルノちゃんは何が似合うと思う?」
「向日葵!」
「向日葵! そっかぁ、向日葵かーっ! 向日葵、どこに咲いてるかなぁ?」
「ちょっと探してみる!」
そう言うと、チルノは少し見上げるくらい高いところまで飛び上がり、キョロキョロと周囲を見回し始める。やがて、クルクル回るチルノの動きが止まった。
「見つけた! あそこに一面向日葵だらけの場所があったよ!」
そして、チルノは表のと大妖精を見下ろしながら、とある方向に指を伸ばしながら喜々として叫ぶ。
「よーしっ、誰が先に付くか競争だー!」
「おー! 負けないよちるるん!」
「あっ、待ってよチルノちゃん! 彩さんも!」
そのままチルノは指差した方向へと飛び出してしまい、競争と言われてすぐさま飛び出した表の。そんな二人を大妖精が慌てて追いかける。実に楽しそうだ。
しかし、はて。一面向日葵だらけ、に聞き覚えがあるようなないような気がするけれど、何かあったかなぁ?