デート・ア・ライブ 小雪セイバー 作:業務用消火器の安全栓
この更新まで時間が空いた癖して原作沿ってばっかで展開がとてつもなく急かもですが、それでもいいという心の広い方だけご覧ください。
士道トランス
『今から一年前。我らは多くのことを学ぶことになった。苦渋の味を、敗北の屈辱を……………そして、這いつくばらされた地面の味を』
早いことに夏休みも明け、9月8日。来禅高校の全校生徒は体育館に集められていた。その壇上には同級生が立っており、拳を握りながらマイク越しに話している。その隣には別の女生徒がSSよろしく直立不動で、ついでに来禅高校の高旗まで立て掛けてあった。
壇上の雰囲気も相まって、これから開戦宣言するかのようだ。
『さあ諸君。見るも哀れな敗残兵諸君。私は君たちにこう問いたい。』
流れとかテンションとか心の声とかいろいろな情報を掛け合わせた結果、次に確実に大きな声が響いてくると小雪は判断した。
『さあ諸 キーン!!! 』
大きな………声でなくて音だったが、まあ耳を塞いでいて正解だったといっていいだろう。
気を取り直すようにコホンと咳払いをして、壇上の彼女は話を続けた。
『さ、さあ諸君。私は君たちに問いかけたい。我らは苦渋を舐めたままなのか?這いつくばったままなのか?敗衄の不名誉を負ったままなのか?』
『否!断じて否である!貴奴らは重大な失敗を犯した。それは我らに反撃の機会を与えてしまったことだ!そう、大願成就の時は来た!来禅に栄光あれ!来禅に誉れあれ!我らの渾身の一撃をもってして、貴奴らの喉笛を噛み千切らん!!』
壇上の生徒が手を振り上げると同時に、それに呼応するかのように体育館に犇めく生徒たちが一斉に声をあげる。先ほどのマイクの音など比べ物にならない大音量が体育館の窓を震わせ、反響した大声が体育館そのものを震わせている。
現在来禅高校は文化祭である天央祭の準備期間の真っ最中。天央祭とは、天宮市内に存在する高校一◯校が合同で開催する文化祭であり、毎年テレビ局の取材が入り、隣の都市から観光客が訪れるほどの一大イベント。そこで来禅高校が頂点をとることが壇上の彼女の
まあそんなことを考えていてもあれなので、他のこと───今回の天央祭を期に久しぶりに会うことになる友人について思いを巡らせてみる。と言っても、私以外は夏休みの間に会っているようだが。
『諸君らの声、しかと受け取った!二年四組五河士道くんを、他薦・推薦多数により、天央祭実行委員に任命します!』
そんな大声で思考に耽った小雪は現実に引き戻された。改めて体育館の集団の心の声をよく聞いてみるが、簡単にまとめると主人公に嫉妬した
家々の屋根を跳び跳ねて、困っている人を探している。私が私になってから日課のようにしている人助けだが、今日は困っている人が少ない。もちろん良いことなのだが、それはそれで変な感じだ。
ウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ──────
そんな平和な町に、空間震警報が鳴り響く。既に五体の精霊が封印されている以上、空間震が起こる確率は下がっているはず。それでもこの頻度だ。異常といっても差し支えない。今回の発生は多目的ホール・天宮アリーナ。いつも持ち運んでいる〈フラクシナス〉通信用のインカムから告げられたその場所には、もう士道さんも向かっているとのこと。
目的地に近づいてくると、次第に誰かの声が聞こえてきた。いや、これはただの声ではない。あれだけ高らかに警報が響いた町にまだ残っている人が士道さん以外にいるはずがないし、もしいたのならきっとその人は阿呆なんだろう。そうじゃないなら精霊だ。結果から言うなら今回はその両方で、聞こえた声は彼女の心からだった。
………………嫌悪というのは、『困る』の範疇に収まって良いものだろうか。士道さんが何かやらかしたのか、それとも元からこんな取っつきにくい性格なのか。前者ならいつも通りだが、後者だったら最悪この上ない。天使の範囲圏内にいるASTとDEMも近づいてきている。
壁を蹴り破り、中にいる人影を確認する。アリーナの中心に場違いにきらびやかなアイドル衣装のようなものを着た少女が一人と、彼女が立ってるアリーナにどうにかしがみついてる士道さん。そして天井を破って侵入したASTアンドDEMの皆様方。士道さんを抜いて一番服装が浮いてるアイドルの人が今回の精霊、つまりはあの嫌悪の源なのだろう。
だが私の到着が遅かったのか、〈フラクシナス〉から帰還命令が出ている。精霊────琴里さん曰く〈ディーヴァ〉の詳細よりも、士道さんの身の安全を確保するのが最優先。
巨大なスタンロッド片手にスラスターを噴かせる赤毛さんにいつものように
光に包まれる視界の中で、小雪はそんなことを考えていた。
「なんで土曜に、こんな…………」
九月九日、〈ディーヴァ〉との邂逅から一晩が経過したしていた。あのあと〈フラクシナス〉では、彼女との会話時に起こった不自然な好感度減少についての話し合いが行われていた。どうせ明日は学校が休みなんだからと、士道も深夜までその話し合いに参加していたのだ。学校が休みだから参加していたのに、実際は実行委員の仕事で各校合同会議を行わなければならなくなった。元々実行委員のメンバーであった亜衣麻衣美衣の三人はバンド練習で欠席しており、代役としてたてられた十香と折紙の二人は士道の視界の端で喧嘩している。唯一の救いはその反対にいる小雪だろう。〈フラクシナス〉から出されている士道の護衛命令と学校でのボランティア活動の二つの理由があってのことらしいが、委員会仕事に関して言えば右も左も分からない士道を導いてくれた。でもまぁやっぱり小雪一人の働きで喧嘩している二人を押さえられるものではなく、士道は頭のなかで愚痴っていた。
と、そんなことで頭の中が埋め尽くされていたせいか、いつの間にか目的地に到着していたようだ。赤煉瓦です構成された荘厳な校門から、鉄製の飾り格子が拡がっており、そこから青々と茂った生垣を覗かせている。私立竜胆寺女学院。天宮市内において随一のお嬢様高校であり、名門の子女が通うことでも有名だ。
士道は、続いていた口喧嘩がいつの間にか止んでいることに気がついた。見ると、十香と折紙が校舎を見あげていることがわかる。校舎の大きさなんかは士道にとっても驚くほどであるが、口を開けている十香とそうでない折紙はやはり二人が正反対であることを思わせてくれる。小雪の方を見てみると、精霊としての彼女と違って分かりやすくなっている小雪の表情が普段のそれと変わっているように見えた。
「おお…………すごいなシドー!これも学校なのか?」
「あ、ああ。そうらしいな。とにかく入ってみようぜ。」
「うむ!」と十香が元気よく返事をする。小雪の方を見ると、その表情は先程のから変わって落ち着いていた。守衛に生徒手帳を見せ、学院の敷地内に入る。集合場所に着く真での間も、小雪に特に変わった様子はなかった。部屋を一通り見回してみるが、当然実行委員になったばかりの士道に知り合いなどいるはずもない。
と、それからすぐにドアからコンコンと音がした。すると部屋にいた各校の生徒たちが一斉に顔を上げた。十香は首を傾げているし、折紙は興味無さげだ。小雪は少し暗い顔をしている。しかしその真意を問いただす暇もなく、部屋に入ってきた一人の少女がその空気を一変させた。
『失礼しまぁす。』
間延びした声が部屋に響くと、士道たち以外の生徒全員が大名行列を出迎える民衆のように二列に並んで首を垂れていく。
表れた少女は、一度見たら忘れられないほどの美貌と存在感を持っていた。
少女を見て、士道と折紙は驚いていた。一度見たら忘れられない。確かに彼女は、
「竜胆寺女学院、天央祭実行委員長、誘宵美九ですぅ。」
確かに彼女は、あの日の精霊だった。
「よく来てくれましたねー。皆さん。」
聞き慣れたチャイムの音と共に、授業が終了する。いつもならば解放を示すその音は、今の士道にとっては空間震警報を越えるアラートである。
九月一一日、月曜日。天央祭実行委員として二度目の仕事の日であり、士道に与えられたとあるミッションの始まる日でもある。
士道はノロノロと椅子から立ち上がると、ロッカーへ向かって歩き始めた。
「シドー、どうかしたのか?」
なにも知らない十香が無邪気そうな顔で問いかけてくる。今から士道がする行動を考えると少し悲観したくなる。
「ああ……ちょっとな。先に準備しといてくれ。」
今一つ腑に落ちない様子の十香だったが、取り敢えずは頷いて士道を見送ってくれた。同じように折紙がジッと視線を送ってきていたような気がしたが、気がつかないふりをして教室から出た。ロッカーから取り出したカバンを持って、校舎の最奥に位置する男子トイレへ向かう。個室に入り、鍵がかかっているのをしっかりと確認してからカバンを開いた。そこに入っていたのは、ウィッグと、化粧道具と、綺麗に折り畳まれた女子用の制服一式だった。
(これ見られたら、人生終わるなぁ。)
絶対に墓場まで持っていこう。士道はそう決意しながら、
一日前、士道と小雪は、〈フラクシナス〉で開かれていた精霊攻略会議に(当然)参加していた。艦橋のメインモニターには、ライブ中の少女──────精霊、誘宵美九が映っていた。
「誘宵美九。デビューは今からおよそ半年前。その圧倒的歌唱力と『聞く麻薬』とも評される美声によって驚異的な速度でヒット曲を連発する。だがそんな人気とは裏腹にテレビや雑誌などのメディアには一切顔を出さない謎のアイドル……………」
まさか彼女が精霊だったなんて、と額に手を当てた琴里が漏らした。
「これだけ活動しながら精霊であることを隠していた、か。ASTにモロバレだった狂三や都市伝説になってる小雪とはえらい違いね。」
小雪の方を見ながら嘲るように言う琴里だったが、小雪は完全にスルーしており、代わりに士道が
頭から蒸し返されたトラウマを振り払い、士道は狂三の時にはなかった第三の可能性を提示する。
「琴里みたいに、〈ファントム〉から精霊の力をもらった人間、ってのもないか?」
「ふむ…………。それが本命………って言っても、それじゃああのときの空間震の理由が分からなくなってくるわね。」
言われて士道も気がついた。空間震は精霊が隣界からこちらの世界に現界するときに起こる現状のことであり、狂三や小雪のように自分の意思で空間震を起こせる精霊もいるが、それは例外中の例外だ。つまり、結局議論は振り出しに戻ってしまったということになる。
「それに、急に好感度が下がった原因もまだ分かってないんだよな…………」
だが、そんな士道の呟きに対して琴里から待ったがかかった。
「それに関しては、こっちに仮説が立ったの。確実とは言えないけど、かなりの確信はある。原因は順をおって説明するわ。─────令音。」
令音が広げた資料を、士道は食い入るように眺めている。
「これが昨日の彼女の好感度の推移だ。この谷が士道と話しているときだ。」
資料はグラフ状で、令音が示した場所は極端に値が低く、目盛りすら見えなくなっている。そこからグラフは安定しており、ある一点から上昇していた。
「……………ここは?」
明らかに上昇がおかしいその点に士道は質問する。士道が初めて顔を会わせたのが谷の部分だとしたらそこからある程度経っている。
「………ちょうどASTが介入したとき。最高値は鳶一折紙に触ったときだ。」
何とも言えない。士道にはこの空気感を変える何かを言うことはできない。
「レズですか。」
「百合っ娘なのです!」
小雪の無遠慮とも取れる発言のお陰で何とも言えない場の空気はどうにかなったが、そのせいで〈
いや、今はそんな現実逃避をしている場合ではない。レズでも百合っ娘でもつまるところは女性愛者。どうしかして
「そんなの、どうしょうもないじゃねぇか……」
士道が絶望的な心地でそう呻くのも仕方のないことだろう。攻略難易度が今まで攻略した精霊たちとは段違いだ。しかし、そんな士道の反応を耳聡く聞いた琴里が中津川さんへの説教を中止してこちらに振り向いた。
「何言ってるのよ士道。あんた天央祭の実行委員なんでしょ?それってつまり準備中いくらでも美九と話す機会があるってことじゃない。」
確かにそれは事実だが、そもそも近づくだけで嫌悪感丸出しに言葉のナイフで攻め立ててくるような相手が聞く耳を持っているとは思えない。
「それに、あたしが何の策もなくこんな会議を開くと思う?」
だが、士道が当然とも言える疑問を口にするより前に、琴里が肩をすくめながらそう言った。
「対策………?」
琴里は士道の言葉に頷くと、パチンと指を鳴らす。するとその数瞬後、神無月が表れた。何故かずぶ濡れになって。
「司令、ご注文の物はこちらに。」
だが、士道がなぜそうなったかを質問するよりも早く、神無月は背後から手を回してあるものを取り出した。
そこに掲げられた物を見て、不覚にも士道は凍りついてしまう。
そこにあったのは、来禅高校の制服であった。
そこにあったのは、来禅高校の女子用制服であった。
そこにあったのは、士道ぐらいの背格好の女子が着たらちょうど良さそうなサイズの制服であった。
「ええと…………」
「おいおい神無月さんついにやっちまったか………」と一瞬思いもしたが、それ以上に何か不穏なものを感じて士道は数歩後退った。のだが、そこで背中に何かが触れた。士道が首だけ振り替えると、そこにいたのは〈
「ど、退いてくれませんかね………」
士道の言葉に意も介さず、二人は士道を押さえつける。
「小雪、何か縛るもの持ってない?」
「ザイルならあります。」
精霊二人は士道の拘束をより強固なものにしようと画策しており、その士道の前方には
完全に詰んでしまった士道をみて小雪はロープをしまい、神無月は傍らの二人と共にジリジリと近づいてくる。
「大丈夫、怖くありませんよ。最初は少しスースーするかもしれませんが、いずれそれも快感に変わります。先輩が言うのだから間違いありません。間違いありませんとも。」
士道はダメだと知りつつ、命乞いをする敗残兵のような調子で琴里に目を向けた。すると琴里はにっこりと愛らしい笑みを浮かべ
「グッドラック♪─────
「よし……………こんなもんだろ。」
鏡を閉じ、カバンから取り出した変声機を首に付ける。〈ラタトスク機関〉の謎科学力によって作られたそれは、首に付けるだけで簡単にボイスチェンジが出来る優れものだ。
「士道、口調。」
言われて、
「おう、殿町。」
いつもの調子で挨拶するが、この時士道は既に数秒前のことを、つまりは自分が普段と違うということを忘れてしまっていた。
「おう………って、んん?」
その結果出来上がるのはどうみても女子(実際は男子)が男子トイレにいるという極めて紛らわしい光景であり、結果としては順当に殿町は誤解をしてしまった。
「あ、い、いや……………おほほほほほほほほ」
それに気がついた士道は場を笑って誤魔化そうとし(欠片も誤魔化せてません)、全力疾走で撤退した。
「なんだってあいつは今日に限ってこんな辺鄙な場所のトイレ使ってんだ。」
文句を垂れつつ歩を緩める。走るたびにスカートがひらひら揺れて、何だか気持ち悪かったのだ。変態(神無月)レベルになるとこれも快感に変わるらしい。
『いい機会だし、あんたも女の子の苦労ってもんを知っておくと良いわ。って言っても、神無月レベルにはならなくていいわ。絶対。』
士道の心中を知ってか知らずか、琴里はそんなことを言ってくる。確かに苦労はわかるだろうが、絶対に神無月のようにはなりたくない。
気のない返事で誤魔化しつつ昇降口を昇っていると、士道に役目を押し付け気味な三人娘を発見した。深呼吸をしてから、その背に声をかける。
「あ、あのっ!」
「ん?」
「え?」
「ほ?」
三者三様、それぞれの反応を見せたあいまいみー三人。ここでバレたら、「五河士道は女装癖」だなんて不名誉な噂が流れること間違えなしだろう。士道が緊張しながら三人の反応を待っていると、三人は不思議そうに首をかしげた。
「どーしたの、何か用?」
「背ェ高!モデルさんみたーい!」
「カーディガンって冷え症?暑くない?」
どうやら士道だとは気づかれていないようだ。士道は安堵から溜め息を吐く。
「あの、山吹さん、葉桜さん、藤袴さんですよね?天央祭実行委員の。」
「なぬ?お主、どこでその情報を!?」「まさか敵国の間者か!?」「何が目的だ!」
と、三人は何やら変なポーズをとりながら言ってくる。とは言え実際に士道を疑っているような様子はなく、やりたいことをやっているような感じだった。力なく笑いながら続けてこう言った。
「えっと、五河士道から連絡なんですが、今日の実行委員はお休みさせてほしいと………」
「あのヤロウ逃げやがった!」「小雪ちゃん一人にする気かコラァ!」「火を持て!魔女が出たぞ!」
誰もやりたがらない仕事を無断欠勤するといった具合に酷いことをしている自覚はあるし、否定できるところが魔女ぐらいしかない。だがそれとして小雪一人になるということはお前らもサボるってことじゃないのか?
「あ、あの…………それで、私が代わりに行くようにお願いされまして……。もし問題ありませんでしたら、私も連れていってくれないでしょうか。」
士道はそう言ったが、三人はキョトンとしている。何か不味いことをしただろうか。その答えは、亜衣が示してくれた。
「えっと、私たちは構わないけど………そもそもあなた誰?五河君の知り合い?」
あぁ、それもそうだ。バレてないなら今の自分は五河士道ではない。
「従兄弟ですイ・ト・コ!名前は五河しど美………じゃなくて、……ええと、士織です。よろしくお願いします!」
今ここに、五河士道の新しい
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