デート・ア・ライブ 小雪セイバー   作:業務用消火器の安全栓

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遅くなって申し訳ありません。これが3話になります。
遅くなったくせして原作とほとんど変わらず、しかも短くなってしまい申し訳ございません。
先日、評価バーに色がつきルーキー日間ランキング及び日間ランキングに載りました。これも読んで下さった皆様のお陰です。
見てくださっている方々に感謝を
そして、誤字報告有難うございます
成長しない駄文になりますが、それでもよい方は本編をどうぞ。


士道ディスカッション

真那の面会を謝絶され、折紙のみになってしまった病院からの帰り道。士道の持っている携帯電話が急に震え始めた。

そう言えば、病院に入るとき電源をオフにしていなかったな。そう反省しながら取り敢えず通話に出てみる。

 

「はい……もしもし。」

 

『……もしもし、シンかい?』

 

電話越しに聞こえてきたのは令音の声だ。眠たげな声と特徴的な呼び方ですぐに分かった。

………出会ってから随分経つはずだが、まだ名前を間違って覚えられたままなのはどうなんだろう。

そんな些細なことを考えながら通話を続ける。会話の内容は真那のお見舞いの事だ。それが終わると〈フラクシナス〉に来るように言われた。

 

「どうしてですか?」

 

『琴里についてだが、協議の結果、作戦会議を開くことになってね。』

 

「作戦会議?」

 

士道が眉をひそめながら問うと、令音から肯定の返事が返ってくる。

 

『その通りだ。シン、君は琴里をデレさせるのは困難と言ったね……だが、今回のケースの場合、十香や四糸乃の時には無かった大きなアドバンテージがある。』

 

「アドバンテージ……………ですか?」

 

語られた言葉に心当たりがない。そんな感情を隠そうともしない士道の声に、変わらない調子で令音が答える。

 

『ああ、小雪という探知の出来るボディーガードを引き入れる事ができたのも理由のひとつだが、それ以前の単純な問題だよ』

 

『今までの突如現れる精霊と違い、琴里は君や我々と何年もの間を共に過ごしてきたんだ。その趣味嗜好、好きなもの、行きたがっている場所、欲しがっているもの、etcetc(エトセトラエトセトラ)。それらの情報を他の精霊とは比較にならないほど保有している。』

 

成る程、言われてみればその通りだ。士道にとって司令官モードの琴里はこの上ない難物であるが、もともとのパーソナルデータ保有率だけをみれば他の精霊とは比べ物にならない。ある意味、最も攻略を立てやすい精霊といえるだろう。

 

『そこで………琴里をよく知るクルーを集めて二日後のデートのプランについて話し合おうということになったんだ。シンも参加してくれるかい?』

 

そういうことならば是非もない。

 

「もちろんです。役に立つかは分かりませんが、参加させてもらいます。」

 

『助かるよ。では〈フラクシナス〉で拾おう。いったん自宅に戻っておいてくれ』

 

 

「あの……………………いえ、何でもないです。」

 

琴里のことを聞こうと思った。彼女が五年前に起こったことを覚えているのか。本当に折紙の両親を殺してしまったのか。そんなことを質問しようとした。

だが、出来なかった。上手く思考を組み立てて文章に出来なかったのかもしれない。あるいは、琴里の部下である令音から残酷な真実を告げられたくなかったのかもしれない。

心が分かる彼女からすれば返答は単純だろう。士道は信じたくないのだ。

琴里が意図して人を傷つけたと信じたくない。

琴里が意図して町を焼いたと信じたくない。

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だが、これもまた真実ではない。人の心も解釈次第、如何様にも受けとることが出来る。プラスにとるかマイナスにとるか、それを決めるのもまた人の心なのだから。

結局の所、士道は自分の心を理解したつもりにもなっていない。

悶々とした気持ちのまま自宅に帰り、〈フラクシナス〉へと拾われた。

 

 

 

 


 

 

「シドー!」

 

士道が〈フラクシナス〉の転移装置で移動した先にいたのは令音と、令音とお揃いの軍服を着た十香だった。

 

「お、十香じゃないか。ここにい─────」

 

士道の言葉を最後まで聞かず、十香がこちらに飛び掛かってくる。

 

「うわっ!」

 

咄嗟の事で体が硬直してしまう。しかし十香はそれに構わず士道の首に手を回すと、ぎゅーと締め付けてきた。

苦笑しながらポンポンと肩を叩き、そろそろ離れるように促してみる。十香も士道の意図を読み取り士道から離れようとするが

 

「む?」

 

怪訝そうに首を傾げて再び士道の首もとに顔を近付けた。そのまま匂いを嗅ぐように鼻を動かす。

 

「ど、どうしたんだ十香?」

 

もしや臭うのだろうか………そんな事はないと思いたいが、匂いに敏感な十香のことだ。士道が気付かないレベルの匂いに気付くのかもしれない。

 

「いや、何か嫌な匂いがするような気がしてな。なんというのだろうか……………いい匂いの筈なのだが、嗅いでいるだけでムカムカしてくるというか、腹が立って来るというか…………そう、鳶一折紙のような匂いだ。」

 

凄まじい嗅覚である。自分が臭うほうがまだ良かったかもしれない。そう思えるほどに二人の仲は険悪なのだ。

士道は心臓を跳ねさせた。

 

「───っ!き、ききき気のせいじゃないか!?」

 

自分でも隠しきれてないと思う程分かりやすい言い訳だが、これで騙せてしまうのが十香なのだ。士道の良心が痛むが、背に腹は替えられない。これは仕方のないことなのだと自分にも言い訳する。

 

「む、そうか。そうだな。シドーから鳶一折紙の匂いがするなどと、わたしはどうしてしまったのだろう。シドーがあの女をおぶったりでもしない限り匂いが付くだなんてあり得ないというのに」

 

これは誤魔化せているんだろうか。ひょっとして気が付いた上で言っているんじゃないだろうな。いや十香にそれはないだろうと、良くも悪くも純粋な彼女のことを信頼?して考える。しかしそれでももしかしたら…………

 

「シン、そろそろ会議の時間だ。すまないが十香は四糸乃と遊んでおいてくれないか?」

 

十香が眉を八の字にしながら「シドーといっしょではいけないのか?」と言いたそうな目で見てくる。その頼みをはね除けなければならないという事実に士道の胸がチクリと痛むが、ここは断るしかない。そう言い聞かせ、十香のお願いを断った。

 

「むぅ、わかった」

 

十香は唇を尖らせながらそう言う十香は、見るからに不満そうだ。そんな十香の様子に士道も段々申し訳なくなってきた。今夜は十香の好物を作ってやろう。そんなことを考えながら歩いていたら、見たことのない扉の前に着いていた。令音がその扉の前に立つと、ピピッという音がして、扉が開いた。

 

「さ、入ってくれ」

 

令音に促されるままに中に入る。中は広い空間になっていた。中心に円卓状の机が置かれ、すでに何人ものクルーがそこに座っている。どうやらここは会議室のような役目の部屋のようだ。

 

「空いている席に座ってくれたまえ」

 

令音は今にも倒れそうな足取りで空いている席に腰を掛けた。それに倣うようにして士道も空席に着く。手元を見ると、小さな液晶画面とキーボード───簡易コンソールのようなものが設置されている。恐らく他の席にも設置されているだろう。

隣の席には、先日〈ラタトスク〉の協力者として〈フラクシナス〉に入ってきた精霊───小雪の姿もあった。今日は変装はしておらず、霊装のままのようだ。その顔に表情は無く、いっそふてぶてしいとすら感じられる。

すると、奥の席に座っていたまるで昔の少女漫画に登場する王子様のような姿の男性が立ち上がった。そう、我らが誇るラタトスク副司令官(変態)、神無月恭平である。

 

「よく集まってくれました、皆さん。緊急事態につき、司令代役を私神無月恭平が務めさせていただきます。────士道くん、小雪さん、しばらくお付き合いいただけると幸いです。」

 

「「はい」、もちろんです。」

 

士道が返答し、小雪も短く返した。

 

「では、早速本題に入らせていただきます。以前から司令の体についてご存知であった人、今回の件で初めて知ったという人…………それは様々でしょう。ですが、今回ここに集まった同志である貴殿方なら目的は分かりきっていることでしょう。」

 

そもそも聞かされて集まっている以上、目的も何も無いと思うのだが…………喉まで出掛けたそんなツッコミを必死で飲み込んだ。この場でそんなことを言える度胸を士道は持ち合わせていない。

 

「今回の主な議題は、既に二日後に迫っている五河司令と士道くんのデートプランです。我々が各々持ち寄った秘蔵の司令データを使って、司令が心から楽しいと思える1日を演出するのです!」

 

そう言って神無月が部屋に集まったクルー(同志)達を見回して大きく息を吸った。

 

「シン、耳を塞いでおいてくれ、小雪もだ。」

 

不意に令音がそう言ってきて、士道は首を傾げる。隣の小雪はすでに耳を塞いでいるし、何か起こるのは間違いないだろう。士道も急いで耳を塞ぐ。

 

「さぁ諸君────親愛なる〈ラタトスク〉の同志諸君。我らが愛しき女神の一大事、日頃の御恩に報いる時だ!司令が!五河琴里司令が!我らの助けを必要としている!それに応える気概はあるか!?否、それが無い者はここにはそうでない者は居ないと信じている!そうだろう、諸君!?」

 

『応ッ!!!』

 

神無月が言い放った瞬間、部屋にいたクルー(令音を除く)全員が一斉に馬鹿デカイ大声を上げた。その大声が部屋中に響き、部屋の壁に反響していく。流石に秘密組織の空中艦だけあって防音設備がきっちりしているのか、それとも近くの部屋に人がいないだけか。どちらにせよ、幸いなことにクレームは聞こえない。

それに気づいているのかいないのか。士道の諦念にも似た思いを放置して神無月は続ける。

 

「司令に誉められたいか!!??」

 

『応ッ!!!』

 

「司令の笑顔が見たいか!!??」

 

『応ッ!!!!』

 

「司令に四つん這いにされた後、ブーツの踵で尻を重点的に蹴られたいか!!!???」

 

『応ッ!!!!………………おう??????』

 

どうやらこれには賛同が得られなかったらしい。ここにいる全員が神無月のような変態ではないようだ。

神無月は咳払いをして気を取り直し、

 

「では同志諸君!今こそ我らが愛を示すべき!!我らが崇め、奉るその女神の御名は!!」

 

『KO・TO・RI!KO・TO・RI!L・O・V・E・KO・TO・RI!!』

 

部屋が更なる熱狂に包まれる。これもう号令とか関係ないんじゃ無いだろうか………

まるでアイドルのライブを見ているような気になった士道は、琴里がアイドルの衣装を着ているさまを思い浮かべる。が、それと同時に隣からの視線に気が付き振り向いてみると、小雪が軽蔑したような目で見ていた。

慌てて妄想を頭から振り払い、士道は再び目の前の船員(ファン)に目を向ける。

 

「よろしい!では報告を開始せよ!司令の希望、司令の願望、司令の冀望、それら全てを成就させ、我らが司令(女神)をデレさせん!!」

 

了解(ヤー)!!』

 

神無月(ファン代表)の演説に応え、クルー(ファン達)の熱狂はさらに加速する。最早誰の声でも止めることは能わず、その勢いは留まるところを知らない。

 

琴里は皆に好かれているんだなぁ…………

そんな感想しか浮かばないほどに驚嘆している士道は、隣の少女がそれ以上に驚愕していることに気が付かない。

表情は変化していないが、内心は驚愕の一言に尽きる。

そもそもの話、秘密組織の協力者として招かれた筈なのにその翌日には司令官とその兄のデートのプランニングをしている。という状況は可笑しいだろう。

小雪と士道が現状を嘆いている間に会議は過ぎていき(進展は無かった)、結局士道の一言でデート先は栄部のオーシャンパークに決定された。

 

デート(戦争)開始は二日後、オーシャンパークで行われる。

成功させなければならない、という思いは皆同じ。

舞台の準備は整った。

後は成功を収めるのみ。

そして二日後、二人の逢瀬(デート)が始まる。




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