デート・ア・ライブ 小雪セイバー   作:業務用消火器の安全栓

4 / 12
この小説の更新を心待ちにしてくださっている方がいれば、大変お待たせしました。
デート編ですが先に言っておきますと、超原作沿いな上小雪さんは裏方です。
相変わらず駄文と閃きのみで構成された作品ですが、それでもいい方は本文をどうぞ。


琴理プールサイド

「小雪、明日のデートについて相談があるのだが、少し時間を貰えるかな?」

 

琴里ファンの交流会(デート作戦会議)が終わってから〈フラクシナス〉艦内の視察中、小雪は令音に声をかけられた。

 

「構いませんが、士道さんは誘わないで良いんですか?」

 

何処にいっているかは知らない、大方明日の準備だろう。彼は明日のデートの主役の筈だ。デートに関する相談をするなら彼は必須ではないだろうか。

 

「ああ。シンと琴里の仲だ、下手なプランを立てるよりはアドリブの方が上手くいくだろう。私が相談したいのは小雪の立ち回りについてだ」

 

当日のプランまで企画できなかったから改めての誘いかと思ったが、どうやら違ったようだ。

 

「直接参加するつもりはありません。遠目で見張らせて貰います。」

 

「そうか。それは今回は、かい?それとも……」

 

「分かりません。今回は様子見です」

 

「そうか」という軽い返事をして令音は去っていった。其ほど時間はとられなかったが、用件はこれだけだったのだろうか。彼女の心は読めないから困るが、他の船員からの印象を鑑みるに悪い人物ではないのだろう。

 

今日で〈フラクシナス〉の設備は一通り見て回ったことになる。特にすることが無くなったので新しく自宅となるマンションを見ておくことにした。

元々高校進学の時に精霊出現率の高かった天宮市に引っ越して来たのだが、ある時見た新聞のニュースに義憤して内乱やらテロやらを鎮圧しに行ったら借りてたマンションの契約が何故か切れていたようだ。(進学は出来ていたからギリギリセーフ)

〈フラクシナス〉から降ろしてもらい、着いたのは聞いていた通り何の変哲ない普通のマンションだ。

特異な点は見当たらない。秘密結社が作ったとはいえ、マンションはマンション。わざわざ特別なオプションを付ける必要は無いだろう。せいぜいが監視カメラや盗聴機程度、その位なら気にする必要はない。

荷ほどきは…………また今度で良いだろう。今は明日の計画を優先だ。

 

ピーンポーン

 

インターホンの音がする。天使は霊力を消耗するから使っていない。そんな理由で声は聞こえないが、マンションだから新聞勧誘の線は無い筈だ。尤もマンションに住むのはこれが初めてだから正しいかどうかは分からないが。

ドアを開けると、そこにいたのは宵闇色の髪を纏めた少女───十香だ。

 

「おお!小雪!本当に此処に越して来たのだな!令音から聞いていたのだが………む?今日は髪がピンクなのだな。変わるのか?変えられるのか?」

 

訪問後いきなりの絨毯爆撃(質問責め)、マイペースこの上ない。令音辺りから小雪がここに引っ越して来たことを聞いて事の真偽を確認しに来たのだろう。

 

「士道さんは来ていないのですか?」

 

なら彼はどうしたのだろう。ここ数日の印象から、彼は律儀なものだと思っていた。そうでなくても、十香がここに行きたいと言うならば心配してついて来そうなものだが。

 

「そう、シドーだ。シドーはここに来ていないのか?」

 

どうやら本筋はそこのようだ。「こちらも〈フラクシナス〉から出てからは見ていない。どこにいるかは分からない」という旨を伝えると、一気にしょんぼりとした顔になる。

天使を使うまでもなく内心が透けて見える。良く言えば純粋、悪く言えば無知であるこの少女は世間の荒波に足を踏み入れてから数ヶ月程。子供のようなものだから、()()()()()()()()考える必要がなくて楽で良い。

 

「用件がそれだけなら、帰って寝た方が良いのでは?明日のデート「デェト!そうデェトだ。小雪も明日のデェトに行くのだろう?」?!?」

 

?????

どういうことだ?明日のデートは士道さんと琴里さんの二人でやるんじゃ………

読心能力の弊害だろう。予想外のことがあればすぐに困惑する。

 

「そうだな、明日のデェトは早いと聞いた。ならば確かに早く寝た方がよいな!ありがとうだ小雪、また明日だな」

 

「あ、夜なのであまり大声は出さないでください……」

 

帰ってしまった…………

落ち着いて、落ち着いて、改めて令音さんに質問を……

あ、そもそも私水着持ってない……

 

 

 


 

 

士道は昨日購入したバスタオルと水着などを詰めたカバンを持ちながら天宮駅東口のパチ公(忠犬の置物。これより有名なのがあるため、パチもん扱いされるようになった)前で待っている。

昨日はブリーフィングルームで()()()()を見た後気絶してしまい、目覚めたときには〈フラクシナス〉の医務室だった。念のため簡単な検査をし、点滴も打ってもらったが、まだ頭痛が抜けない。

あれは何だったんだろう。

パンッ!と頬を叩いてそんな思考を吹き飛ばす。今はそれより琴里とのデートだ。今日のデートの相手は琴里、家族相手というだけでその難易度は格段に跳ね上がり心理的プレッシャーと背徳感が半端ないことになってしまう。

 

『琴里を地上に送ったそうだ。もうすぐそちらに着くはずだ。頼んだよ、シン』

 

令音の抑揚の無い声でそう告げられる。呼吸を整え、緊張を解すように深呼吸。すると程なくして街の方から小さな影が見えた。

二晩顔を合わせていない妹が、普段とはちがう装いをしてそこにいた。

軽く挨拶を済ませると、暫しの間沈黙が流れる。

 

(いや可笑しいだろ!琴里と話すことなんて日常茶飯事の極みみたいなことなのに、どうしたってこんな「士道♪」「はい!!」

 

「おめかしした女の子と会って一言も無し?いの一番に教えた筈だけど?」

 

琴里からの圧力が強いが、当然も当然だ。そんなことは十香の時から言われ続けているのだから。どうして失念してしまったいたのだろうか。

求められた言葉を紡ごうとした矢先、あることに思い至った。

 

「おめかし………してくれたんだな」

 

士道が言うと、琴里は方をビクッと震わせてから照れを隠すように捲し立てる。

 

「ふん、まあね。一応はデートって形にしてるんだから、士道がアクションを起こすきっかけ位は作っておくわよ。………まあ、誉められるのは嫌な気、しないし

 

後半は声が小さくて聞き取れなかったが、話の内容としてはこちらへの気遣いという事でいいのだろうか。

有難いが、それに頼らないように頑張っていかなければならない。

 

「そろそろ電車の時間でしょう、私たちの戦争(デート)を始めましょう。」

 

聞き覚えのあるフレーズだ。士道はごくりとのどを鳴らせながら頷いた。

 

「うむ!」

「は、はい……」

『やー、楽しみだねー』

 

琴里の言葉の後に後ろから聞こえるはずの無い声が3つ聞こえて、振り返った士道は身体を硬直させた。

声の正体は十香と四糸乃(withよしのん)だったのだ。

 

「ちょっ、何でこんなところに?」

 

士道の質問に十香は不思議そうに首をかしげる。

 

「何を言っているのだか?これからオーシャンパークとやらに行くのだろう?」

 

「な─────何でそこまで知ってるんだ!?」

 

「何でと言われてもな」

 

士道の質問が意外であるような調子で十香が眉を顰めた。士道の疑問に答えてくれたのは四糸乃だった。

 

「その………令音さんに、言われて………来たんです、けど……お邪魔、でしたか?」

 

四糸乃が言うと、何だか罪悪感が酷いことになる。だが今回は改めて質問しなければならない。

士道が口を開くより先に、インカムから令音の声が聞こえてきた。

 

『……ああ、そうそう。言っていなかったね。今回のデートは彼女らも同行する。小雪には昨日の夜に電話で拒否された。曰く“馬に蹴られる趣味はない“そうだ。監視としてオーシャンパークにアルバイトさせている。見かけても声は掛けないでやってくれ。』

 

「いや、何でまた……」

 

小雪の方は理解出来る。付き合いの無い琴里のデートに参加しても迷惑だと判断したのだろう。“馬に蹴られる”の意味は分からないが、それは放置する。

 

『……まあ、今日に限ってはそちらの方がいいのではないかと思ってね』

 

今日に限っては、ということはつまり琴理だからなのだろうが、理由は分からない。

 

「でも……本当に大丈夫何ですか?琴里の機嫌とか……」

 

心配するべきはそこだろう。琴里のデートで琴里の機嫌を損ねらそれこそ本末転倒だ。インカム越しの令音の声は心配しなくても大丈夫と言っているが心配は心配だ。

ちらと後方の琴里を見やる。そこにいたのは十香たちの登場にも今までと()()()()()()()()()表情をした………

いや、変わらないのは表情だけで内心は煮えたぎっているのだろう。背後から立ち上るオーラの質が先程までと明らかに変わっている。笑顔とは元来攻撃的な表情だという言葉は良く聞くが、それをまさに体現したかのような笑みだ。漫画であればおどろおどろしい背景と『ゴゴゴゴゴゴ』という効果音がついていそうな程に恐ろしい。

 

「へぇ……中々に思いきったことをするわねぇ()()。今から楽しみだわ。」

 

本当にこれでいいのだろうか。少なくとも今の琴里の雰囲気からはすこしも良さげには思えない。

 

「駄目です駄目です絶対駄目ですって令音さん!なんかヤバいオーラ出てますよあれ。」

 

インカムに急いで話しかける。これで解決するとも解決策が出るとも思っていないが、それでも話さずにはいられない。

 

『そうかな、そこまでではないと思うが……』

 

返ってきた言葉は頼りないもので、ガックリしてしまう。

 

「い、今の琴里の機嫌メーターと好感度はどんな感じですが……?」

 

確認せずにはいられなかった。行き場の無い焦燥がそうさせてしまったのであって、最低までとは行かなくても相当低くなっている頭では考えている。

『……ん、まあ、その、なんだ。頑張ってくれ。』

 

否定をするまではなくても、せめて現状位は教えてほしかった。だが令音はいつになく無責任に言い放った。やはり悪かったのだろう。

 

「よし、じゃあそろそろ行きましょうか。水着はちゃんと持って来てる?」

 

士道が絶望にうちひしがれている間に仕切り始めた。士道の反応に表情を曇らせていた二人の顔がパアッと明るくなった。

だが、四糸乃が水着を士道と一緒に買いにいったと言った瞬間に琴理のオーラがまた重くなった。

 

「へぇ、良かったじゃない。──優しいのね、士道?」

 

その笑顔が、まるで士道を責めているに感じられて、自然に戦いてしまう。その間に琴里は十香たちを連れて改札の方に歩いていってしまった。

 

『士道くん、とにかく追いかけてください!まだ挽回は可能です。目的地に着いたらこちらと小雪さんでサポートします!』

 


 

 

天宮市から五駅先の栄部駅にあるのがオーシャンパークである。様々なプール施設や大型浴場、屋内アトラクションからなるウォーターエリアと、屋外遊園地がメインとなるアミューズメントエリアの二つから構成されており、夏休み頃には遠方から沢山の家族連れやカップルなどが訪れる人気スポットだ。

とはいえ、未だ六月半ばであり、屋外プールの開放がまだなため人気が少ないのは確かだ。

つまり何が言いたいかといえば、こんな変な時期に1日だけのバイトを捩じ込める〈ラタトスク機関〉のコネは一体どこまで繋がっているのだろう、ということだ。

もっとも考えても答えは出ないし、そも答えなど求めていない訳だが。

聞いた状況では、現在〈フラクシナス〉の下部機関員を使ってのナンパもどきが失敗したとのことだ。

 

「で、機関員を使えなくなった訳ですが、次の策はあるんですよね?」

 

この結果は決して予想していなかったことでは無いはずだ。琴里が人の上に立とうとしている以上、幼い少女が司令などという大役を負っている以上、人一倍頑張ろうとするのは当然の帰結だろう。

 

『簡単な話だ。機関員が使えないなら使わなければいい。まばらだが人はいるだろう?そこから雇えば良いんだ。』

 

現地で人を雇うとなると、交渉が必要になる。当然交渉するのは現在にいる人物になるわけだが………

 

「私が交渉人ですか。」

 

インカム越しに軽く肯定が返ってくる。

 

「何をやらせたいのですか?」

 

それ位は聞いておかないといけないだろう。インカムを挟んだ心の声を聞けるほど私の天使は万能ではないのだ。

 

『今琴里たちはウォータースライダー待ちの状況だ。そこで琴里の水着を剥ぎ取ってもらいたい。』

 

「……………………………は?」

 

何か変な言葉が聞こえたような気がする。聞き間違いだろう。聞き間違いであって欲しい。聞き間違いだと信じたい。

 

『だから、琴里の水着を剥ぎ取って欲しいんだ。もちろんやるのは君じゃない。そこで誰か雇って欲しい。報酬に上限はつけないから、言い値で雇ってやってくれ。』

 

「いや、いくら報酬が良いからって白昼堂々犯罪の片棒担ぐ人なんて居ませんよ。」

 

そう考えるのが普通のことだ。なまじ(先の展開)が読めるだけあって読めない突飛な発想が苦手なのだろう。

 

『撮影とでも誤魔化せばいいさ。万が一捕まったとしてもこちらが何とかするから問題ない。』

 

警察にもコネがあるのだろうか、バックとしては頼もしいが、末恐ろしいものだ。

 

「やってやりますよ。やればいいんでしょうやれば。」

 

半ばどころか殆どやけくそだ。やってもらうなら騙されやすい子供がいい。

 

「私の近くに子供はいますか?数人組で女の子がいい。〈フラクシナス〉からこちらは見えているでしょう?」

 

 


 

 

「うッ、わあああああああ!」

「…………!………………!」

「あはははははははははははははははははははははっ!」

 

現在士道たちは、超高速でウォータースライダーを滑り落ちている。軌道はコースアウトすれすれで、三人の声に成らない声と笑いを残して滑り降ちている。

だが───コースの途中。もっとも鋭角に差し掛かった所で、勢いのつきすぎた三人の体はコースから滑り落ちた。

 

「ひッ………!」

「………!」

「おお!飛んだぞ!」

 

十香の楽しそうな声が聞こえてくるが、それに反応してやる余裕は無い。不幸中の幸いで下はプールの水面だ、この高さなら痛いくらいで死にはしないだろう。

全身を包む浮遊感が消え、着水した。

 

「──っぷはぁ!あはははは!シドー!楽しいなこれは!」

 

その楽しみ方は普通と違う、喉まで出かけたツッコミを呑み込んだ。十香には楽しんでもらいたいから、ここで水を差す訳にはいかない。

水面から顔を出そうとするが、なぜか体が重くて上手く体を起こせない。

 

「んん……ッ!」

 

再び立ち上がろうと足に力を入れて、その理由に気がついた。

 

「ぇ……っ、ぇ……っ」

 

小さく嗚咽のようなものを漏らし、小刻みに肩を揺らしている琴里が木にしがみつくコアラのような体勢でしがみついたままだったのである。よくよく見ると、その髪を結んでいたリボンがほどけてしまっている。

 

「琴里、大丈夫か?」

 

〈フラクシナス〉で会ってからこれ程に弱った琴里は殆ど見ていない。

 

「お、おにーちゃぁ……」

 

鼻の詰まったような声をした琴里が士道の顔を見上げてくる。その顔に、士道は目を丸くした。

 

「琴里……おまえ、もしかして泣いて…?」

 

その顔には涙のような水滴が浮かんでいたのである。プールから出てきたのだから水滴くらいついてるだろうと言われてしまえばそれまでなのだが、士道にはそれが涙に見えて仕方なかった。

それを聞いた琴里はバッと手を離し、士道に背を向けた。

 

「リボン……リボンとって……!」

 

言われて首を左右に振ると、水面にほどけた二つの黒いリボンが見えた。それを回収して琴里に手渡すと、琴里はリボンを握ってその場に潜った。

ぶくぶく……と泡を発してから数秒後、再び現れた琴里は完全無欠の司令官モードに戻っていた。

……尤も、目元と鼻が少し赤い状態で、だが。

 

「……何よ」

 

完全無欠の司令官(少し子供っぽい)モードの琴里が半眼で見返してくる。司令官モード───即ち黒リボンの琴理を見たのは、4月10日に〈フラクシナス〉で会ってからだ。本人が言うには、白いリボンの無邪気な琴里()と黒いリボンの強気な琴里(司令官)の二つは多重人格などではなく、あくまで完璧なマインドセットによるものとのことだ。

気になっているのは、リボン1つで簡単に変えられるなら今日はなぜ黒を選んだのか、ということだ。

そんな旨を伝えると、「これじゃあ不満なの?」というお茶を濁すような答えが返ってくる。

確かに不満(やりにくさ)はあるが、そんなことを言う訳にもいかない。こちらも言葉を濁しつつ、琴里に次の言葉を促す。

 

「……駄目なの。白の私は、弱い私だから。黒い、強い私じゃないとだめなの。今日は、今日だけは。」

 

琴里の言ったことが理解できないが、それ以上追及しても何の成果も得られなかった。

 

『いいところまでいったと思ったのだが、最後の最後で素直になってくれないな。もう一押しいってみようか。』

 

もう一押し、などという不吉な言葉が聞こえてきた。少なくとも士道は(そして恐らく琴里も)ウォータースライダーは懲り懲りだ。

 

『まあ、何が起こるか見ていれば分かる。対応は間違えないでくれ、シン。』

 

言うが早いが、インカムからの連絡が切られた。何が起こるか分からない以上、琴里をしっかり見張っておかないといけない。

 

「シドー、琴里、もう一回だ!もう一回行こう!」

 

先ほどの急降下が余程お気に召したのだろう。無邪気な顔で言ってくる。こっちははっきり言って二度としたくない。

 

「や……お、俺は遠慮しとくよ。」

「わ、私も……」

 

士道と琴里が首を横に振ると、十香はつまらなさそうにぶーたれた。とても申し訳ない気分になってくる。

 

「どうしてだ?あんなに面白いのに……」

 

と、十香が言っていると、その背後に浮き輪を装着した女の子二人が足をバタバタさせながら近づいている。そしてちょうど十香の背後を通った瞬間───

 

「───え?」

 

どうやらすれ違い様に十香の水着の紐を引っ張ったようだ。紐が解けたことによって、水着のブラ部分がはらり、と水面に落ちる。士道と琴里は目が点になった。

一拍置いて十香もそれに気がついたのか、ゆっくりと下に目をやると───

 

「───────ッ………!」

 

声にならない悲鳴を上げて、胸元を両手で覆い隠し、首まで一気に水に浸かった。

 

「し、シドー!みみみみみみみみみみ見たか!!?」

「み、見てねぇ、見てねぇよ!」

 

必死に潔白を訴える士道と、恥ずかしがって鼻の頭まで水に浸けた十香。水面に浮いた水着を回収して、水中で装着しているようだ。

だがこの場で一番怖いのは十香ではない。

 

「……士道」

 

背後から静かな怒りを孕んだ声が聞こえてくる。思わずビクッと肩を震わせた。

 

「こ、琴…………里?」

 

肩と同様震えている声でどうにか口から名前を絞り出した。

 

「……膨らみかけの方がいいって言ったくせに」

 

それは琴里の水着を見た時に士道が神無月(変態)が選んだ選択肢であり、その上で士道の本心であると認めた言葉だ。士道としては、確実に妹に本気で劣情を抱いている性欲の権化(変態)だと認識されたと思って凹んだのだが…

 

「おぉが……っ」

 

士道が戸惑っている中、その鳩尾に世界の頂点を狙える一撃が直撃(クリーンヒット)した。

琴里が血払いするかのように右手をビッと振ると、その場をあとにした。

 

『すまない、シン。少し食い違いがあったようだ。』

 

食い違い、ということはあの子たちは〈フラクシナス〉の機関員では無いのだろうか。身を痛みに捩らせながら問うと、インカムから答えが返ってくる。

 

『ああ。機関員だとバレてしまうからね。先ほど小雪が金のエンゼルで買収した。百億兆円からここまで値下げするとは驚いたよ。』

 

百億兆円というと、子供がとにかく高い金額を出そうとして単位が滅茶苦茶になるあれだろう。

 

『すみません。青髪のお兄さんと一緒に滑ってきたお姉さんの水着を剥ぎ取ってもらうように頼んだんですが……』

 

十香と間違われた、と言うことらしい。殴られ損、ではないだろう。きっと剥かれたのが琴里でも同じことが起きていたはずだ。

 

金のエンゼルが周りを飛んでいる幻覚を見ながら、士道はプールに身を浮かべた。




感想欄で感謝の言葉が長すぎる、といった感想があったので、今回から纏めさせて頂きます。
お気に入り登録、評価、感想有難うございます。これからも応援よろしくおねがいします。
次回はなるべく早く仕上げられるよう頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。