デート・ア・ライブ 小雪セイバー 作:業務用消火器の安全栓
戦闘シーンはいつにも増して駄文です。
それでも良いという心優しい方は、本編をどうぞ。
場所をアミューズエリアに変えてからは、琴理とのデートは中々良くなったと言えるだろう。士道の行動に対する琴理の目には、常に“〈フラクシナス〉からの指示によるもの”だという色眼鏡がかかっていた。インカムを外すことによってそれが消え、士道の行いが真っ直ぐ琴理の心に伝わるようになったのだろう。
尤も士道がどこからどこまで考えていたのかは分からないし、直感によるものなのかもしれない。
それでも確かに、琴理はデートを楽しんでいた。
〈フラクシナス〉の艦員たちもそれを理解してか、もしくは
このまま上手くいけば、
だが、やはりと言うべきか事はそう上手く運ばない。
───────けたたましい騒音と共に、
〈フラクシナス〉がそれに気がついたのは、その瞬間から少し前のこと。見たことのないCR-ユニットを纏い、重装備で空を飛ぶ少女。空間震警報が出されていないから明らかな違反行為。警報が発令されたらそれは他のAST隊員がやってくるサインでもある。
そら、噂をすればサイレンが鳴った。
「士道くんは現在インカムを装着していません!連絡が取れない以上、小雪さんに向かってもらうしかないのでは?」
「彼女には、鳶一折紙を追ってくるであろう他のAST隊員の迎撃に向かってもらいました。苦肉の策ですが、そのまま迎撃してもらう他ないでしょう。鳶一折紙一人だけなら司令もやられはしないでしょうが……………」
「ああ。琴理の体調は最悪に近い、万が一ということもあり得る。それは絶対に避けなければならない。十香と四糸乃は今何処にいる、巻き込まれるようなことは無いか?」
「二人とも、現在はウォーターエリアのジャングルクルーズツアー二周目です。巻き込まれるのもそうですが、士道くんの応援という意味でも可能性は低いかと」
順調だったデートに暗雲が立ち込める。分かったのは、この状況で〈フラクシナス〉が打てる手はもう無いということのみ。結局士道に任せる事しか出来ない現状が彼らを焦らせていた。
どうしようもないほどの無力感。艦内の雰囲気が暗くなってしまう。
「何を暗くなっているのですか皆さん!小雪さんのサポートを全力で行い、一刻も早く司令の救助に向かってもらいましょう!そうすれば「ここは神無月の言う通りだ。十香、四糸乃への連絡も頼む。もちろん、琴理の体調のモニタリングも忘れないでくれ」」
だがこんな時には役に立つ、こんな時しか役に立たない我らが〈フラクシナス〉副司令神無月恭平。掻き消された発言の内容は兎も角、その底無しの情欲能天気さ(実際のところは不明である)のお陰で暗い雰囲気もシリアスも吹き飛んでしまった。
まぁ、現状が現状なのでシリアスはすぐに戻ってくるのだが、それでも艦内は明るくなっている。
「小雪さんの現在地、出ました!」
頼みの綱たる少女が居たのは、琴理と折紙の戦場から数百メートル程の市街地。精霊スペックならその程度の移動に時間は掛からないだろう。彼女からそう遠くない位置にASTたちがいる。
AST天宮駐屯地部隊長、日下部燎子は焦っている。自身の部下である鳶一折紙がDEMからの実験機である〈ホワイト・リコリス〉を勝手に持ち出し、あまつさえ空間震警報が発令していないにも関わらずそれを展開し外に出たのだ。すぐに周囲に警報を発令させ、基地にいた面子五人をかき集めてトップギアで急いで飛んでいる
ゴンッ!!!
鈍い金属音が周囲に響いた。驚いて音の聞こえた方向に振り返るがそこには何もいない。
……………いや、何もいないのはおかしい。そこには一人いた筈だ。誰かが消された、
規定違反以前に、機密保護の観点からして問題なのだ。お偉いさんも、自分の身を削って国をパニックにさせてまで
だとするなら答えは精霊なのだろうが、積極的に攻撃を行う精霊など、それこそ先日の〈ナイトメア〉位のものだろう。
現在天宮市で
だがそのどれもこれ程の隠密能力を持ち合わせている場面を見たことがない。
もうやめよう。今頭にある情報だけで現状を解決することは出来ない。周囲を警戒しつつなるべく急いで現場に向かう。そう部下に告げて自分も警戒態勢をとる。
そういえば、〈セイバー〉は未だに天使の能力を見せてはいないのだった。彼女は精霊の中でも特出してステルス能力が高い。もしかすると………
そんな的を射ているようで事実とは少しずれたことを考えている女性を尻目に、小雪は一時撤退する。
とても唐突な話であるが、
奇襲されたら困るのは当たり前のことだし、護衛中の集団でもないとこの
だから四の五の言ってられない今回は透明外套を使ってズルをした。透明になって近づいて、後ろから
だがそんな
(こんなことなら閃光弾か何か作っておけば良かった。これが終わったら必ず作ろう)
それだけではない、自立行動の機械兵器やオートターゲットの銃火器なんかも不得手だ。
ロボットはまだ見たことがないが、オートターゲットのミサイルは今回相手が持っている。
(急いで来たならそんなもの持ってなくていいのに……)
心の中で愚痴を漏らすが、そんなことしててもどうしようもない。規定違反した鳶一折紙の発言から、行った先に〈イフリート〉がいると考えての重武装だろう。
面倒なことになったが、考えるのを止めてはいけない。
スペック自体は普通の私は工夫をしなければある程度の
足止めさえしていれば彼がやってくれる。安い憐憫でも下手な同情でも構わない、結果的に誰かが救われればそれでいいと私は思っている。だが五河士道は愚直なまでに一心に
(シドー!ここは私たちに任せて、早く逃げろ!)
逃げてくれないと困る、そんな感情が流れ込んでくる。いつの間にか
どうやら〈セイバー〉稼業はこれからは
「魔法少女狩り」ならぬ「魔術師狩り」を始めようか。
外套を深く被り、袋から新しい消火器を取り出す。安全栓を抜いて走り出す、ノズルを向けて狙いを定める。
ターゲットは恐らくは隊長格であろうポニテの女性、当然
近くに明確な敵がいることを察した彼女らの片方は
残り二人。
「当たってくれ」と願うのはそのどちらだろうか。右後方、隊長がいる方向からの射撃がその答えだ。それを左に、
それの
現状は二対一。隊長さんと違って、最後に残した一人は戦闘中に呆ける新人だ。戦闘はある程度楽にはなるだろう。
『琴理、琴理!お前は俺の可愛い妹だ、この世で一番の自慢の妹だ!どうしょうもないくらい……大好きだ!愛してる!』
フラれたらどうしよう、何て必要の無い心配が聞こえてきた。答えられなかったらどうしよう、とか言うふざけた心配も届いてきた。
これは私がいる必要あったんだろうか。場所的にも、状況的にも近くにいる連中を置き去りにして甘々空間を広げているんだろう。
もうあまり時間は必要ない筈だ、多く見積もっても数分程度。それなら、やれる。
日下部燎子の困惑は最高潮を越えてしまっている。交戦相手はまさかの〈セイバー〉、隠密能力がこちらのレーダーを歯牙にもかけない程であることを理解してしまったのは隊長として求められる能力が高いことの弊害だろう。倒れた三人はどうやら気絶しているだけで脈はある。
事〈セイバー〉に関しては、対話を試みるのも案だと言う奴もいるかもしれないが、私はそうとは思えない。
「ミケ!
「はい!」
〈セイバー〉の戦闘情報は無いに等しい。だが天使であろう武装は明らかに近接武器だ、定石としては遠距離攻撃が適しているのだろうが、不意打ちであったはずの先の一撃はまるで後ろに目でもついてるかのように不自然に避けられた。
読心術やら未来予知やら可能性は浮かんでくるが、単なる偶然というのもあり得る。特殊な弾薬で不意打ちを試みるのも案だが、急ぎの今回は弾すら心許ない。
ブレード〈ノーペイン〉を抜き、構える。同じく〈ノーペイン〉でミケが斬りかかるが、薙刀で完璧に流される。続く二撃、三撃も同様に流されるが〈セイバー〉は一度も反撃してこない。連れてきた五人の内三人は頭部への打撃で気絶させられている。慣れ親しんでいるはずの
「私たちを攻撃する意思はあっても、殺す気はない。そんな中途半端な考えで、どうして戦おうと思ったの?」
能面はピクリとも動かず、反応も一切ない。声すら出さずにこちらを向いてくる。
既にミケの攻撃は止まっており、〈セイバー〉も天使を構えていない。攻めるなら今なのだろうが、体が動かない。精霊の中でも唯一話が通じるとさえ言われた〈セイバー〉が対話に対して無反応だということに戸惑っているのかもしれない。
そんな
腰の袋から外套を取り出し、あっという間にそれを被ると視界とレーダーから〈セイバー〉の反応が消失した。それと同時にあることに気がつく。
「ミケ、急ぐわよ!!」
折紙のレーダー反応が全く動いていない。〈イフリート〉と遭遇していないならまだ飛行中のはずであるし、したならしたで戦闘中のはずだ。動いてないということはそのどちらでもない─────落ちているのか、倒れているのか。どちらにしても急がないといけない、〈セイバー〉は後回しだ。
今は急がないといけない。隊長としての責務を果たすため、帰った後の始末書は一旦頭の外に追いやって、一刻も早く部下を助けなければ。
【君は結局、何がしたいんだい?】
ASTたちから逃げたその先で、小雪は荒いシルエットに話しかけられた。男なのか女なのか、低いのか高いのか、それすら分からないし不思議な声が聞こえてくると、反射的に
【意味はないと、分かっているだろう?いや、私の心は読めないんだったかな?】
こんなやり取りは初めてではない。シルエットは小雪と接触する度にこうなっている。
小雪にとってこのシルエット─────〈ファントム〉は、
力を与えてもらった事に関しては欠片ほどの感謝があったり無かったりするのだが、いややっぱりそんなもの無い。
兎も角、〈ファントム〉はいつか絶対
五河士道と初めて会ったあの日、天宮市に帰って来たのも〈ファントム〉からもたらされたに情報によるものだ。国外での活動が終わってから即座に飛行機を無賃乗車して帰国したのも自分一人では出来ない
救うことができるという事実に目を背け続けると救いに帰った。
【だんまり、か。嫌いな相手にはとことんそれだね。まあそれでも構わないよ。君なら彼らを守ってくれるだろうからね。】
シルエットが薄くなり、そして消えた。小雪は切っていたインカムのスイッチを入れて〈フラクシナス〉に回収された。
【私は、君がそういう人間だと考えでその力を貸したのだから。】
誰もいなくなった空間に、
学校編の幕間を挟んでから八舞編に入ります。
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まほいくを知らない方にいくつか捕捉しておきます。
まず、消火器はスノーホワイトの第二武器です。決して作者が消火器好きだからではありません。
次に、今回名前だけ出てきたまほいくキャラのちょっとした解説です。知ってる人と興味ない人は読み飛ばしてください。
ダークキューティー ─── 敵キャラ系魔法少女。影使い。主人公のストーカーで主人公に対する美学をお持ちです。
ピティ・フレデリカ ─── スノホワの師匠で犯罪者。髪フェチ。覗き魔。髪フェチ。変態。髪フェチ。脱獄犯。髪フェチ。とにかく髪フェチのやべーやつ。