デート・ア・ライブ 小雪セイバー   作:業務用消火器の安全栓

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今回は幕間会、タイトルでわかる通り『デート・ア・ストライク』より岡峰美紀恵さんに出ていただいてます。
ついでにまほいくからも出てきてますが基本その人たちは本筋には関わりません。これから先出番があるかも分かりません。
駄文に無理矢理設定が混ざってしまっていますが、それでもいいという心の広い方は続きをどうぞ。


幕間
美紀恵モニタリング


都立来禅高校二年三組。隣のクラスでは毎日繰り返されている男の取り合いなど知るよしもなく、ちびっこ飛び級生岡峰美紀恵は日々を繰り返していた。

 

 

だが彼女は現在。新しく仲間になった、もとい帰って来たクラスの仲間を監視(ストーキング)していた。

その相手は、精霊〈セイバー〉疑惑のある少女─────姫川小雪である。

 

 

 


 

 

 

事は始まりは朝。

先日起きたある事件。尊敬する先輩である鳶一折紙がASTの規定を破り、クビになってしまうかもしれない。

最悪自分も職を辞するしか………。そんなことを考えていると、不意に教室の前の扉が開いた。

 

「みなさーん、席についてくださーい。」

 

入ってきたのはクラスの担任。そして見知らぬ────否、どこかで確実に見た覚えのある少女。金色の瞳に桃髪のショートヘア。クラスの注目を浴びているからか、少し恥ずかしげに笑みを浮かべている。

 

「皆さんに朗報ですよ!姫川さんがサボりを止めて帰って来ました!」

 

姫川…………おそらく名字だろう。だがサボりというのはどうゆうことだろうか。美紀恵が教室で見たことがないのだから、彼女が転校してくる以前からなのだろう。しかし、目の前の少女からは学校を何ヵ月もサボるような感じはしない。そんなことを思っていると、少女が自己紹介を始めた。

 

「はじめましての人ははじめまして、そうでない人は久しぶり。姫川小雪です。よろしくお願いします。」

 

「どこ行ってたんだ」とか「何してたんだ」とかの質問が教室中から聞こえてくる。

 

「すいません、姫川さんってどんな人なんでしょうか……」

 

だが彼女について何も知らない美紀恵は声のかけようがない。前の席の同級生に質問してみる。

 

「姫川さん?いい人だよ。困ってたら助けてくれるの。時々いなくなるけど。美紀恵ちゃんも何か困ったことがあったら相談してみたら。」

 

困っている人を放っておけない性格、ということだろうか。「ちょっとそこまで」とか「ヒミツです」といったはぐらかすような返答をしている彼女。「いつ帰ったのか」という質問には「最近」と返していた。

おそらく会ったことがあるとすればこの町だろうと当たりをつけ、最近の出来事を思い返していく。とはいっても、濃いい出来事はほとんどがASTのもので……………ああ、思い出した。何故思い出せなかったのか分からないが、きっと表情のせいだろう。眼前の彼女は、例の事件で戦闘した精霊─────〈セイバー〉にそっくりなのだ。声は聞いたことの無いから分からないが、その顔─────のパーツは似かよっているように見える。戦闘をしたときの〈セイバー〉には表情らしい表情は浮かんでいなかったからとても分かりにくい。

 

「ああ!!」

 

思い出すと同時に美紀恵は思わず大声を出してしまう。クラスは今HR(ホームルーム)の真っ最中。クラス中の視線が美紀恵に集まっている。当然〈セイバー〉疑惑のある彼女も同様に視線を送っている。やはり戦闘時と違ってきょとんとした表情がついており、同じ人物であるとは思いにくい。

 

「す、すすすいません!ト、トイレに行ってもいいですか!」

 

岡峰美紀恵二等陸士はAST隊員としての責務を果たすため、即ち『ほう・れん・そう』を守るために席を立った。決して恥ずかしくていたたまれなくなった訳ではない。決して。

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレにて、美紀恵はAST天宮基地に連絡をとっていた。

 

「だから、クラスに〈セイバー〉そっくりな人が転校…………じゃないですね。転入…………でもないですね。ええっと…………そう復学です!復学してきたんですよ!」

 

言葉に詰まりながら何とかしたその報告に対して、日下部燎子は真摯に対応をとっていた。

曰く、〈セイバー〉の隠匿能力ならそこまでやってのけるかもしれない。〈ナイトメア〉でさえ出来たのだから、それ以上に人間社会に関わっている〈セイバー〉が()()出来ない道理はないと。

だが、それはあくまでも転校の話だ。

 

『復学ってことは、前々から学校に通ってたってことよね。ちょっとこっちで調べてみるわ。姫川さんだったわよね。そっちも監視よろしく。ってかそれよりも、あんた今授業とか大丈夫な時間なの?』

 

美紀恵は言われてようやく気づいたようにはっとする。彼女が教室を飛び出してから、廊下を走ったせいで転び、それでも落ち着かずトイレに飛び込んだせいで携帯を落とし、さらに番号の入力にまごついた。それらのタイムロスが原因で今の時刻は中々のものだ。なんて事を考えていたせいで、チャイムが鳴ってしまった。

 

『授業終わった位に連絡かけるか「不味いです遅刻ですちーこーくーでーすー!!」ブチッ!

 

携帯の電源ボタンを押しポケットに突っ込むと、急いで、だがきちんと手を洗いトイレから走って出ていった。まだ走れば間に合うかもしれない。先生がまだ教室に来ていない一縷の可能性にかけ、美紀恵は走り出す。

 

「アギャ!」

 

だがまたしても何もない平坦な廊下で転んでしまい。結局授業開始には間に合わず遅刻して怒られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わってから数秒後、携帯が震えだした。思わずビクッとしてしまい椅子から転げ落ちてしまう。

 

「アダッ!」

 

今日だけで何回も起こっている自分のうっかりを呪いつつ、「大丈夫ですか?」という声とともに差し出された手を掴む。

 

「あ、有り難うございます………」

 

そのまま正面を向いた瞬間、岡峰美紀恵、硬直。差し出された手の持ち主は、件の精霊容疑者───姫川小雪であったのだ。困ってると助けてくれる、と聞いてはいたが実際やられてみると少しビックリする。だがそれ以上に監視対象が急に目の前に出てくると心臓に悪い。

 

「あの………ホントに大丈夫?」

 

固まってしまった美紀恵を心配して、小雪がまた声をかけてくる。

 

「だ、大丈夫でッ、ですよッ!」

 

驚いたせいで声が上ずってしまった。友達に呼ばれたようで、彼女は結局苦笑いながら手を振っていった。あぁビックリした……………なんて思ってる場合じゃない!

端末に着信があったということは、日下部隊長が身元を調べ終わったのだろう。話す内容が内容なだけに、教室で話す訳にもいかない。そもそもこの学校は携帯端末の類いは持ってきてはいけないのだ。

急いで、かつ落ち着いてトイレに駆け込んだ。端末の画面には創造通り“隊長”の文字。

 

『遅かったわね。取り敢えず調べはついたわよ。』

 

「こっちが遅いんじゃなくてそっちが早いんですよ!授業終わったばっかりでビックリしたんですよ!…………それで、どうだったんですか?」

 

告げられた内容は主に“白”を主張するものばかりだった。戸籍等も偽装の痕跡はなく、生まれてから今までの足取りがしっかりと掴める。一人っ子だから双子で似ているということは線もなし。

 

「じゃあ、ただ似てるだけの一般人ってことですか?」

 

そう結論付けるしかない、と疲れた声が帰ってくる。

 

『でも、私たちはまだまだ精霊というのは存在を理解していないもの。という訳で岡峰二等陸士!「はい!!!」』

 

それが急に上官としての凛としたものに変わり、美紀恵は反射的に敬礼をしてしまう。

 

『あんたにその娘の監視を命令するわ!』

 

「は、はいッ!はい?」

 

思わず聞き返してしまったが、理解出来ない事はない。疑わしきは罰せよなんて言える国ではないが、疑わしいなら疑っておいて損はない。それなら近くにいて自然な美紀恵に白羽の矢が立てられるのは当然のことだ。

 

「つまり、小雪さんを監視…………観察して、明らかに精霊の力を使った様子だったら報告するってことですね」

 

『つまりはそうゆうこと。まだまだ新人のミケには荷が重いかもしれないけど「大丈夫ですッ!できますッ!」あらそう?』

 

そこから話がトントン拍子で進んで行き、その結果今の状況である。

 

(これ以上つけても成果は無さそうですね…………)

 

命令が下った一時間目の休憩時間から結構な時間が経ち、現在学校は授業が終わって部活の時間。それまでずっと観察を続けて来たものの普通の人と何ら変わりはしなかった。少し人を手伝う件数が多いくらいだろう。

現に今もそんな人を手伝いっている。あれはサッカー部だろうか………

 

「なーにやってんの?」

 

「ひゃッ!?」

 

なんてことを考えていると、唐突に後ろから声がかかった。完全に意識の外からの声だったので、思わず声を出してしまった。

振り返ってみると、そこにいたのは一人の女生徒。彼女が戻ったと聞いたときに真っ先に質問していた人だ。確か名前は──────

 

「沙理さん、でしたっけ?」

 

「そそ、うちの小雪に何か用?朝から結構な時間見てたけど、どうかしたの?」

 

バレていたのか、という内心が顔に出てしまう。それを見た沙理が脈絡もなく抱きついてきた。パーソナルスペースの小さい人なのだろう。「何このかわいい生き物」と呟いているが、どうかしたのだろうか。

 

「あの!小雪さんについて、教えてくれませんか!?」

 

だがそれを考えている暇はない。一刻も早く情報を聞き出さなくては。対精霊戦であまり活躍出来ていない焦り

からか、素性程度の情報ならすぐに調べられることが頭から抜けているようだ。

 

「うーん………いいよ!私が知ってることなら何でも!って言いたいとこだけど、私も付き合いは高校からだし…………あ!よっちゃーん!」

 

少し考えてから了承してくれたが、高校からの付き合いだという。高校一年の途中からいなくなったという噂が本当なら付き合いは一年にも届いていないはずだ。だが

よっちゃん、と呼ばれた少女─────こんどはクラスメートではない、は文脈から察するに高校以前からの付き合いはなのだろう。どしたのー、と声に出しながら近づいてくる。

 

「なになに?誰その子、何かあったの?」

 

「よっちゃん、この子────うちのクラスの美紀恵ちゃんって言うんだけど、小雪について聞きたいんだってさ。」

 

「あー、そう言えば今日だったっけ?学校戻るの」と答えた彼女に取り次いでくれるようだ。するべき質問をいくつか考える。身元は証明されているそうだから無駄な質問になるものがいくつかあるかもしれないが、しないよりはいいだろう。

 

「あ、あのッ!?小雪さんって、どんな人なんでヒュか?!」

 

また噛んでしまった。アシュクロフト事件の時からあまり活躍できていないから、久しぶりに部隊の役に立てると思って緊張しているのだろうか。

 

「小雪についてってことは…………依頼の人?そうゆうのは直接聞いたほうがいいよ。」

 

依頼とはなんの事だろうか。そんな質問をすると、意外そうな顔で固まったあとにごめんと一言謎の謝罪をしてきた。

 

 

 

 

「いやー、ごめんごめん。小雪って部活でボランティアやっててさ、それに依頼したいけど勇気が出ないって人が時々こっちに質問にくるんだよね。」

 

部活でボランティア、というのは初耳だ。活動状況と〈セイバー〉の出現状況を照らし合わせて何か分かったりするだろうか。そんな事を考えながら歩いている。行き先はその部室。ある程度答えはするけどそこから先は本人に聞けということらしい。

 

「小雪さんとはいつからの付き合いなんですか?」

 

「中学からだよ。友達が竜胆寺受けるからって引っ越して来たんだ。正直あの頃のテンションはどうかしてたなー。ルームシェアするつもりだったけど中二のころから小雪はサボリ癖ついちゃったせいで計画そのものが流れたしなー。」

 

サボリというのは今回のもそうなのか、という問いに、多分そう、という答えが帰ってくる。

 

「行き先は教えてくれないけど、やってるのは多分人助けとかそんなんなんだよ。」

 

「中学二年の時からということは、その時に何かあったんでしょうか。」

 

美紀恵からしたらなんの気もないような質問だったが、これが中々核心に触れた質問だったようで、芳子は少し顔を曇らせる。

 

「ちょっと言いにくいことがあってさ…………。まっ!そうゆうのは仲良くなってから本人から聞けば良いさ!部室ここだから、あとは本人に聞いて。」

 

そう言って逃げるように去っていってしまった。呼び止めても仕方ないし、部室とやらの確認をしなければ。

 

「失礼します…………」

 

ドアを開けると、視界右側に長机と椅子がいくつか。左側に教卓とPC。だが目的の彼女はどこにもいない。奥にロッカー等が壁になっている部分があったが、そこにもいないようだ。いや、少し思い出してほしい。ここまで案内してくれた芳子は気がついていなかったのかもしれないが、話しかけられた時点で美紀恵が何を見ているのかを理解していた沙理が知らない筈はないのだ。姫川小雪が現在進行形で何かしらの部活の手伝いをしていることを。

 

「待たないといけないんでしょうか………」

 

と考えていると、廊下から足音が聞こえてきた。急いでいるようで、その間隔はとても短い。ピシャッ、とドアが勢いよく音をたてて開いた。

 

「すみません!待たせましたか!?」

 

現れたのは、まあ当然と言えば当然か、姫川小雪であった。慌ててはいるが、疲れた様子は見られない。

 

「部室に一人案内したってよっちゃんから聞いて急いで来たんですが大丈夫でしたか?」

 

よっちゃんとは芳子さんのことだろう。ちゃんと考えてくれていたみたいでほっとした。疑ってすいません。心の中で謝るが、いつの間にか部活に用があることになっていることに気がつく。

 

「す、すみません。私は別にここに用事があるわけではなくですね。」

 

きっと彼女はなら何故私がここにいるのかを疑問に感じているだろう。監視しているなどとは口が裂けても言えないので、継ぐべき二の句に困ってしまう。

あーでもないこーでもないとあれこれ考えた結果、芳子が仲良くなってから本人に聞け、と言っていたのを思い出した。

 

「小雪さんとことを、もっと知りたくて来たんです!」

 

友達になろう、といきなり言うのもあれなので。もっとよく知って仲良くなろう。ダメだったらとても困るが、そうならないように細心の注意をもって行動しよう。

小雪は少し考えるような素振りを見せる。そういえば、相手は一様部活中なのだ。迷惑だっただろうか………

 

「私に対する依頼って形がとれるなら、今も時間はとれますよ。」

 

良かった。ホッと一息ついてそうお願いする。質問という体制をとるものの、これから行われるのは美紀恵の任務なのだ。よく考えて、悟られないように…………

 

「趣味とか、聞いていいですか?」

 

厳正なる選考を重ねた結果、お見合いみたいになってしまいました。まあ妥当なとこだろう。聞いた限りでは、答えは人助けで確定しているようなものだし、そこから何かしらに繋げることができるかもしれない。

 

「趣味は………人助けです?」

 

ああ、戸惑ってる戸惑ってる。質問があるって来たのに当たり障りの無いような質問を考えていればそうなりますよね。まぁ回答に関してはここまでは想定通り。問題はここからどこに繋げるか。ASTにとって役に立つのは、彼女が精霊であるかどうかの決定的な証拠。だが彼女も〈セイバー〉も情報が少なく何を聞いても決定的な証拠足り得ない。だったら一番聞きたいことを。かつて折紙さんに質問したときにうっかり堀当てた地雷(両親について)の二の舞になる確率が高いが、心構えができていれば自分は大丈夫だ。それに、はぐらかされるということも十分にあり得るだろう。

 

「じゃあ、あなたはなんで人助けをしているんですか?」

 

言ってしまったからには後戻りは出来ない。ここで何があろうと、怒り狂った精霊と化した彼女に教われようと、せめて情報くらいはAST本部に持ち帰って見せる。人生最高クラスの覚悟をした美紀恵の耳に入ってきた回答は、たったひとつの質問だった。

 

「あなたの手が届く場所に、あなたの目に映る場所にあなたに助けられる人がいます。あなたは助けますか?」

 

敬語は止めてほしいと言って、了解されてすぐに敬語に戻るとは思わなかった。だがそれはつまりはそれほど真剣な話題ということなのだろう。質問の内容を考えてみると、つまりは助けられる所に助けられる人がいるなら助けるかどうか、ということだろう。

 

「そんなの、助けるに決まってるじゃないですか。」

 

当然答えは決まっている。折紙さんに助けられて、それに憧れてASTに入った。その全ては、無辜の一般市民を精霊の魔の手から救うために。

憧れの人についていくためにも、手をはね除ける真似は出来ない。

ただ、はぐらかすにしてもこんなことを聞き返してくる彼女は、一体どんな経験をしたんだろう。想像すればするほど、芳子さんが言うのを躊躇った過去が浮かんでくる。

もし助けられなかったら、もし手が届かなかったら、きっと死ぬほど後悔して、後悔して、後悔して、それでも前に進むしかなくて……………

これはあくまでも想像、頭の中で作られた空想の産物。ただ、恐らく間違ってもいないのだろう。近いかもしれないし、そうじゃないかもしれない。真実をⅠ他人《ヒト》に話しにくいものならば、他人とは思われなくなってしまえばいい。

目の前の少女が怒りに任せて街を壊したあの精霊と同類とは思えなくなって、危険とかそうゆうのを考えられない。気がつけば友達になってほしいという言葉が口から零れていた。岡峰美紀恵はどこまでも善良で、お人好しなただの少女なのだ。

だからこそ、何かから逃れるように人助けをしている彼女を放っておけない。

 

「はい、いいですよ。」

 

肯定の返事を返した彼女は、花が咲くような笑顔だった。答えるようにこちらの顔にも笑みが浮かぶが、彼女は気づいていなかった。

対面の彼女の顔に──────────疲れが浮かんでいることを。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

〈フラクシナス〉艦橋、攻略の終わった精霊達の精神的安定を常とするために日夜身を粉にして働いている。

そんな場所に、また新しく少女が入ってきた。

 

「報告に来ました。」

 

要件のみを簡潔に伝える少女─────小雪は、相変わらずの無表情で、少しではあるが学校での彼女を見ていた艦員たちからしてはどちらが素なのか分からず困惑している。

 

「ああ、小雪。何かあったのかい?」

 

だから違和感など欠片も感じていないかのように、いつも通りの対応をする令音はどれだけ異質なのかわかるだろう。

 

「ASTに監視をつけられました。」

 

だがその一言でそんなものを吹き飛ばすほどの衝撃が艦橋を襲った。ASTの監視は、〈ラタトスク〉にとって重大なニュース。平時は封印されているとはいえ、精神状態が不安定になれば霊力が漏れ出てしまう十香や、未だ封印されておらず、何らかの事故で精霊であることが露見してしまうかもしれない小雪。その存在がASTにバレてしまえば一大事どころの話ではない。

 

「そうか、どんな感じだい?」

 

だからこそ、そんな状況で平然としていられるⅠこの女性《令音》は皆に信用されているのだろう。

 

「初めの頃は分かりやすく追けられてましたが、途中から直接聞いてくるようになりました。質問の内容から鑑みるに、まだ疑っている程度みたいですけど。」

 

その一言は艦橋の雰囲気を和らげるのに十分な効果があったが、それでも安心はできない。

小雪の話によれば、監視は彼女と同じクラスだという。十香ではなく、小雪につけられた監視役なのだろう。今日まで見てきた限りでは、彼女ならそうそうボロは出さないと信頼できる。

 

「しばらくは様子見にさせてもらう。君なら無いと思うが、ボロは出さないようにしてくれ。学校には行事やら何やらあるんだ。それに乗じて何かしてこないとも限らない。」

 

小雪は軽く首肯して、一先ずその議題はお流れになる。

 

「そうだな。小雪も来てくれていい機会だし、今後の攻略について少し話しておこう。」

 

 

 

小雪自身、ボロを出すとは毛ほども考えていない。何をやってほしいか、何をやってくれないと困るかが分かっているなら、それさえ避ければどうとでもなる、と。

だが彼女は忘れている。彼女は姫川小雪(スノーホワイト)であって魔法少女狩り(主人公)ではないから。

あらゆる障害を越えて、望んだ結末を叩き出す。自分が望む正義ために。それが主人公だ。それに立ち塞がる壁としては、彼女一人では全く足りない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言え、それが起こるのはまだ先のこと……………




いつもお気に入り登録、感想、評価、誤字報告有難うございます。
次回から八舞編に入っていきます。
これからも応援よろしくお願いします。

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