デート・ア・ライブ 小雪セイバー   作:業務用消火器の安全栓

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八舞編、スタートです。
駄文等々の残念箇所が沢山ありますが、それでも良いという方は本編をどうぞ。


八舞テンペスト
八舞エマージェンス


キーンコーンカーンコーン、と前世から聞きなれたチャイムの音が響く。

戻って来てからものの数日で期末テストとは、何とも厳しい事だ。とは言っても、普段から頼られることが人より多い小雪のことである。学生の困り事トップ3に分類されるであろう勉強に対しても対策しておくべきだろう。

先日、十香のために開かれた期末テスト対策においてもその実力を発揮したが、彼女は大丈夫だったろうか。

 

「これで一学期末テストは終了です。皆さんお疲れさまでした。これから話すことがあるのでまだ帰らないでくださいね。」

 

テストを持って教室から出ようとした担任の放った一言は、クラスに熱を持たせるのに十分すぎた。この時期、このタイミングで話すことと言えば…………

 

「修学旅行ですね、小雪さん!」

 

「うん、そうだね。」

 

修学旅行だ。当日までの時間がそんなにないことを考えれば、話しをするのが遅すぎると思うが、この学校ではこのシステムなのだろう。

美紀恵さんも楽しみにしているようだから言うのは野暮というものだろう。

席や部屋なんかは特に執着はないし、と言うかもう既に誘われている。その辺は問題ない。

だが、聞いた話では行き先が直前になって変更になったらしい。原因不明の当落事故に、急遽接触してきた旅行会社。しかもその会社の大本があのDEMだという。

美紀恵さんにはバレていないし、学校に内通者がいるでもない。それは今も聞こえ続けている心の声から分かっている。ならばDEMに直接バレたと考えるのが自然だろう。〈フラクシナス〉も随伴するというから、万が一でも無い限り大丈夫だろうが…………。琴理さんがおらず、艦長代理を勤めるのが実質的に神無月(変態)だというのが不安材料の一つだろう。思考回路の読めないやつが一番やりにくい。

通信が出来なければ別の意味で安心できるが、流石にそれは困ってしまう。

気付かれないように静かに教室から出る。誰もいない廊下で、はあと溜め息をついた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

不味い、この状況…………監視二人というのは大変不味い。

現在、来禅高校生徒を乗せた航空機は順調に目的地である或美島に向かっている。

 

「小雪さん!高いですよ!高いですよ!」

 

「ミケちゃんずいぶんはしゃいでるねー。小雪は落ち着いてるけど、飛行機乗ったことあったっけ?」

 

左右の席からそれぞれ自由な声が飛んでくる。確かに自分は何度か飛行機に乗ったことはある。最も乗るのは機内ではなく、翼の上が殆どだったが。

下手なことを言うと、今まで以上に問題だ。質問を適当にかわして、二人目の監視者の心の声に耳を傾ける。

カメラマンとしてこの旅行に同行することになったという女性、エレン・メイザース。本名をエレン・M(ミラ)・メイザース。DEMインダストリーのNo.1 ────つまり世界一の魔術師であり、どんな理由があっても只のカメラマンになっていい人物ではないだろう。

声を聞かずともわかる通り、彼女は私と〈プリンセス〉──十香さんの監視役だろう。メインターゲットは十香さんだというのは分かった(聞こえてきた)から、こちらは疑われない程度に警戒する。飛行機から降りたら士道さんや令音先生、〈フラクシナス〉に報告しなくては。

警戒は無駄骨だったが、無事に目的地に到着出来た。ただ、問題が一つ。電波が、通じない。

 

 

 

 

 

「アデプタス1より入電。目標、島に入りました。」

 

「六番カメラ、北街区、赤流空港。第一目標を確認。」

 

「四番カメラ。こちらは第二目標を確認しました。」

 

「こちらも確認。〈プリンセス〉、そして───〈セイバー〉です。」

 

カメラに写っているのは、AAAランクの精霊〈プリンセス〉に瓜二つの少女、夜刀神十香。そして別のカメラにはASTも監視を行っているという何かと不透明な精霊〈セイバー〉………………かもしれない少女、姫川小雪。どちらも精霊と判断するに足る証拠は無く、かといって否定するのに十分な材料が揃っているわけでもない。ゆえにDEM本社───社長であるアイザック・ウェストコットは彼女らを精霊だと判断した。楽観的が過ぎる日本の対精霊舞台(AST)はそうではないようだし、果たすべき目的の為にも油断や慢心なく一刻も早く証拠をつかまなければならない。

 

「存外拍子抜けだな。本当にこれが精霊なのか?」

 

だが、やはりというか部下全員がそんな心持ちな訳がない。油断も慢心も溢れかえった呟き。放ったのは今回使用している艦の艦長、ジェームズ・A・パディントン。DEMインダストリー第二執行部の大佐補佐官であり、一応はウェストコットにこの〈アルデバル〉を任された人間だ。

 

『──くれぐれも油断はしないで下さい。精霊()()()()()()、それだけで最大限の警戒をするに足る理由です。』

 

識別番号(コールサイン)アデプタス1。直接現場に出向いている第二執行部執行部長───すなわちエレンが諫めるが………

 

「肝に命じさせていただきますよ。」

 

そんな様子は欠片ほどもなく、方をすくめて言い返す。そんな態度が不服だったのか、エレンは微かに眉をひそめ、チッと舌打ちをした。

明らかに聞こえるようにしたであろうそれに、パディントンも眉をひそめる。しかし、事はそれ以上に荒立たない。

パディントンは自分の立場も分からぬ愚者ではない。自分に与えられた立場や役職は理解しているつもりだし、いくら面白くないとはいえ不平不満をそのまま口に出してしまうほど幼稚でもないつもりだ。

咳払いをして、画面上の少女に返す。

 

「それで、どうします?いくら精霊とはいえ、小娘の一人や二人〈バンダースナッチ〉の部隊にかかれば捕獲するのは容易いことでしょうが。」

 

『そう甘くはいきません。念には念をいれて行きましょう。まずは電波通信を遮断してください。』

 

「了解。〈アシュクロフト-β〉二五号機から四○号機まで並列起動、恒常随意領域(パーマネント・テリトリー)を展開。目標は───或美島全域。」

 

パディントンの指令に答えて、クルーたちがコンソールを手早く操作し、島全域に透明な壁を展開する。

これで、島内と島外の通信は、エレンたちの用いる特殊な通信機器でしか行えなくなった。ASTもこの件に手は出せない。

 

「────と、そういえば。あの魔導師(ウィザード)たちはどうですかな?」

 

ターゲット二人のクラスにはそれぞれ一人ずつ魔導師(ウィザード)がいたはずだ。〈プリンセス〉側は魔術の使用を封じられているし、〈セイバー〉側は相当の素人。だがしかし、本当の問題は〈プリンセス〉側の魔導師(ウィザード)にエレンの顔が見られていることだ。彼女が一言、『エレンが魔導師(ウィザード)である』と言ってしまえばこちらの計画は破綻してしまう。

 

『問題ないでしょう。顔を合わせたのは数分程度ですし、サングラスもかけてましたから。気付かれた様子は……………』

 

言いよどむエレンに、不安になったパディントンは画面に写った彼女を見ると、彼女は突然の風に顔を覆っていた。どうやら、何か不安材料があったわけではなさそうだ。

 

「大丈夫ですかな?執行部長殿。」

 

「はい。ですが…………妙ですね。」

 

空を眺めながら言うエレン。同時に、艦橋内の大モニタを写し出された映像にも変化が現れた。思わず再び眉をひそめるパディントン。

理由は単純。まるで見えない腕でかき混ぜられるかのように。空が、雲が、島中に満ちる大気全てが、あり得ない速度で渦を巻いていたからだ。

 

 

 

その異常に気がついているのは島中でもほんの数人。その内の一人でもある小雪は、現在進行形で苦難に見舞われていた。

 

(電波の封殺を止められなかった。美紀恵さんたちを撒くのがもう少し早ければ……………)

 

岡峰美紀恵の無自覚足止めを、「トイレに行ってくる」という古典的魔法少女もので使い古された言葉を使って逃げ出した。努力のかい無く、電波が止められたお陰で〈フラクシナス〉とのが連絡がとれなくなった。DEM側の通信電波のプロセスは理解出来るが、設備がなければ意味がない。

それよりも問題は数瞬前に突如天使の範囲圏内へ入ってきた二つの知性体。人間ではない。只の人間には、何を使ったってこれほどのスピードは出せない。魔導師(ウィザード)でもない。世界最強であるエレン・M・メイザースにとっても想定外の事象であるなら、他の魔導師(ウィザード)に出来るわけがない。

順当にいけば精霊。〈フラクシナス〉で見たデータバンクから推測するなら、この二人の精霊は〈ベルセルク〉。進行方向には……………意志を持つ者が二人!?

思考から察するに十香さんと士道さんであるのが不幸中の幸い。急いで向かわなければならない。

当然というか、その時の彼女は自身がした言い訳の内容など完璧に頭の外にフォールアウトしている。

ここまで言えば推測はつくだろう。

 

 

 


 

 

 

 

「な、なんだ?こりゃあ。」

 

或美島に到着した後、士道は十香が感じたという違和感の正体を知るため、周囲を探っていた。だが気がつくと他の奴らがいなくなっており、彼らを探して道に迷っているところだ。結局何も見つからず、十香の思い違いということで場を流したまではよかったが………

 

「ぬ…………?」

 

と、後ろから十香の怪訝そうな声が聞こえてくる。〈フラクシナス〉から連絡が来ていないということはマズイ事態ではないのだろう。振り替えって見ると、十香は空を見上げている。

 

「おい、いい加減にしろよ。いくら見たって────」

 

十香の向いている方向を見ると、つい先ほどまで快晴で雲も見えなかった空に、灰色の雲が渦巻き始めている。それだけではない、恐るべき速さで周囲の様子が変化していく。快晴は暗雲に、凪は烈風に、穏やかな海面は荒れ狂う大波へと。

時間として一分ほどたった頃には、士道たちの見る世界は一変していた。

地鳴りのような風音が周囲から鳴り響き、辺りに生えた木々を揺らし、薙ぎ倒す。大型の台風もかくやというほどの暴風だ。ゴミ箱やそこから溢れたであろう缶などが空を舞っている。

士道は十香の肩を掴むと、姿勢を低くさせた。そうでもしないと風に煽られて転倒してしまいそうだったのだ。

 

「これは───、一体………?」

 

顔を腕で覆いながら、眉をひそめる。天気予報では、修学旅行中の天気は三日間全て晴れ立ったはずだ。もちろん天気予報はあくまでも天気予報であって、その全てが的中するだなんて士道も思っていない。だからといって、だからといってこれは無いだろう。

 

「十香、大丈夫か!?急いで資料館に──」

 

「シドー!危ない!」

 

と、言葉の途中で十香が士道の体を突き飛ばしてくる。そして次の瞬間、金属製のゴミ箱が飛んできて、十香の頭部にクリティカルヒットした。

「ぎゃぶッ!?」なんてコミカルな声を発して、十香はその場に倒れてしまう。士道が揺さぶっても反応がなく、完全に目を回してしまっている。

 

「く………仕方ない」

 

士道は十香の体をどうにかして背負うと、資料館の方へ向かっていく。ゆっくりと、しかし確実に、一歩一歩踏み進んでいく。

そうして、一体どれ程の距離を歩いたのだろうか。

───士道は、不意に眉をひそめた。荒れ狂う空の中心部、そこに二つの人影らしきものが見えたような気がした。

 

「あれは………?」

 

空を飛ぶ人影、士道にはその心当たりが二つほどあった。つまりは精霊と、ASTの魔導師(ウィザード)である。

 

「まさか………」

 

嫌な予感とは往々にして当たるもの。だが今回はそれ以上に不幸だったのかもしれない。十香を担いでいるために姿勢を低くすることも出来ず、視線は強風の中心部に釘付けだ。つまりは後方不注意で、飛んでくるゴミ箱Part2に気がつかずに十香の二の舞になりかけている。

 

「うわッ!?」

 

だがまぁそこは何というか、悪運が強い──もとい大抵の不運は女の子(ヒロイン)達が解決してくれるのがラノベ主人公というものだ。

今回は小雪が十香ごと士道を引っ張ってくれてセーフだった。人間ふたり分の重さを片手で引っ張れるのは彼女が精霊であることを痛感させる。

 

「何やってるんですか士道さん。精霊です。」

 

「いや、でも………空間震警報なんて鳴ってないし……」

 

確かにあの人影が小雪の言う通り精霊なら放ってはおけない。だが今の士道にとっては十香を安全な場所に送るのが先決。だが次の瞬間───

 

「────!」

 

士道は息を詰まらせた。先ほどまで何度も衝突を繰り返していた二つの人影が、一際大きな衝撃波を伴ってぶつかり合い、今までとは比較にならないほどの凄まじい風が吹き荒れた。士道は吹き飛ばされないように足を踏ん張り、背中を丸めるような姿勢をとる。

と、上空で激突した二つの人影は地上に降り立った。

──ちょうど、士道を挟んで右と左に。小雪は十香を背負って士道から離れている。

 

「…………な」

 

士道は頬に汗を滲ませる。緊張感が心臓を引き絞り、喉が急速に乾いている。視界の端に写る小雪は十香を安全そうな場所に置いている。するとその瞬間、辺りに吹き荒れていた大嵐がふっと弱まった。

いや、止んだわけではない。いまだ或美島全域には凄まじい風が吹き荒れている。地上に落ちてきた二人の周囲だけ、台風の目のような無風状態だったのだ。

 

「く、くくくくく」

 

と、士道から見て右手側。長い髪を結い上げた少女が、不敵に笑いながら歩み出てくる。年の頃は周囲だけたちとそう変わらないように見える。橙色の髪に、水銀色の瞳。整った造形の顔はしかし、今は嘲笑めいた笑みの形に歪められていた。

だがそれらを打ち消すほどに特徴的なのはその装いであろう。暗色の外套を纏い、体の要所をベルトのようなもので締め付けている。右手足には錠が施され、そこから先は引きちぎられた鎖が伸びているときたものだ。趣味を拗らせた神無月(マゾヒスト)のような出で立ちである。

 

「───やるではないか、夕弦。流石は我が半身と言っておこうか。この我と二五勝二五負四九引き分けで戦績を分けているだけのことはある。だがそれも───今日で仕舞いだ。」

 

大仰というか、芝居掛かったというか、妙な喋り方をした少女だ。邪気眼系、と言ってもいいかもしれない。

 

「反論。この一○○戦目を征するのは、耶倶矢ではなく夕弦です。」

 

こちらは、長い髪を三つ編みにした少女である。耶倶矢と呼ばれた彼女と瓜二つの顔をしてはいるが、その表情は気怠げな半眼に彩られている。こちらの装いも似たようなもので、錠の位置が左右対称逆になっている以外は全く同じものだ。

 

「ってわぁッ!?」

 

突然後ろ襟を捕まれ引っ張られる。ここにいる人数の都合上、下手人は小雪以外はあり得ない。だが何故こんなことをしたのだろうか。

 

「人間…………?いや、片方は精霊か。我らが戦場に足を踏み入れるとは、何者だ?」

「驚愕。驚きを禁じ得ません。」

 

こちらは間に挟まれていたというのに、まさか気が付いていなかったとでも言うのだろうか。浴びせられた怪訝そうな視線に、士道はしどろもどろになって一歩引いた。下手人はいつもと変わらず憎いほどの無表情だし、ここを切り抜ける何かがあればいいのだが………

 

『シン!聞こえるかい!?一体今どこにいるんだい?』

 

珍しく声を荒げたようすの令音の声が耳のインカムから聞こえてくる。渡りに船といわんばかりに、士道は声を潜めながら現状を説明した。

 

『……………何だって?風の中に、二人の…………』

 

「な、何か心当たりが………?」

 

と、士道と令音の会話を遮るように(実際遮られたのは二人の方なのだが)、視線を鋭くした耶倶矢が口を開く。

 

「我らの神聖なる決闘に横槍を入れるとは…………。貴様、一体どうゆう了見だ?事と返答によっては、我が颶風を司りし漆黒の魔槍(シュトゥルム・ランツェ)が貴様を貫くことになるぞ。」

「制止。耶倶矢、それでは脅迫です。」

 

決闘というのが何か気になるが、迂闊に刺激して敵対してしまっては元も子もない。仕方なく、頼るように後ろを見るが、頼みの綱たる小雪がいなくなってしまっている。十香がいなくなっているところを見ると、運んでくれてるのかもしれないが………

 

(だからって置いてくか普通?)

 

士道が困惑している間、耶倶矢と夕弦はふたりで口論を続けていた。だが急に、耶倶矢が何かを思い付いたかのようにカッと目を見開いた。

 

「!ああそうか、これなら!」

 

何だろう。とても嫌な予感がする。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

十香を背負い安全な場所に連れていく道中、小雪は珍しく気を悪くしていた。理由は言うまでもなく先ほどの精霊だ。とは言っても、ラノベ(テンプレ)的な嫉妬という訳ではない。

原因は彼女達二人の内心だ。お互いのことを思い合って、通じない思いやりに辟易している。あくまで文章の中でだが、そんな人間を知っていたから。そんな人たちが辿る結末を知っていたから。

そして、だからと言って彼女に出来ることなど無かったから

 

 

 

何を苛立っていたんだろう。そんな事、別に初めてじゃあないはずなのに。

初めてじゃあない?──────何を考えているんだ私は。

何を……………私は何を考えていた?

いや、そんなことより。今は十香さんを運ばないと。




お気に入り登録、誤字報告有難うございます。


書いてて気になったんですが、最近の飛行機は電波機器の類いは使用出来るんでしょうか。私が最後に飛行機に乗ったのは五年前の話なので分かりません。ですがこの話は使えない前提で話を進めています。
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