終末に幸せを夢見てました   作:駄文書きの道化

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私は模擬戦をする

(見せて貰います。貴方の力を……確かめずにはいられないですから!)

 

 仕掛けたのはラーントルクから。魔力(ヴェネノム)を熾し、ヒストリアに光が灯る。遺跡兵装(ダグウェポン)が起きたのをいつもの感覚で理解する。そして油断なく、かつ全力でラーントルクはアルマリアへと迫った。

 甲高い金属音が響き渡った。同時に、ラーントルクは空を見ていた。疑問を思ったのと同時に背中から地に叩き付けられていた。肺の中の空気が吐き出されて、思わず咳き込む。

 

「で、出来た……?」

 

 間の抜けたような声が聞こえた。それは自分が相手にしているアルマリアの声だと理解して、ラーントルクは痛む体を素早く、そして勢いよく起こしてヒストリアを構え直した。

 アルマリアは少し驚いたように目をぱちくりとさせていて、その様子がラーントルクの神経を勢いよく逆撫でしていった。一体何に驚いているんだ、と怒鳴りたくなる程に。

 

「こ、の――ッ!」

 

 再びの突撃。今度は魔力(ヴェネノム)も加えた突撃。ラーントルクの接近に気付いたアルマリアが応じるようにして剣を合わせる。

 剣舞が始まる。ラーントルクが振るう剣に合わせてアルマリアが軌道を合わせて剣を振るう。打ち合う剣は剣戟の音を奏で、舞い踊るように位置をずらしながら2人は舞い踊る。しかし、その表情は対照的なものだった。

 ラーントルクは苛立たしげに、アルマリアは何かを確かめるように。感情を見せているラーントルクの剣が荒々しくアルマリアへと叩き付けられ、アルマリアが落ち着いて剣を合わせて防ぐ。

 

(つ、よい……!)

 

 悔しさにラーントルクが唇を噛む。剣を合わせていれば嫌でもわかる。アルマリアには余裕がある。自分が振るう剣を冷静に観察し、合わせるように斬り結ぶ。

 イメージが浮かばない。どうすればアルマリアを下せる事が出来るのか。武器を落とさせる? 動きを封じる? 隙をつく? どれもラーントルクにとっては現実的ではない。

 こんなに差があるものなのか、と。悔しくて、その感情の高ぶりが魔力(ヴェネノム)となって現れる。

 

「はぁ、ぁああっ!!」

「あっ、それはちょっと不味い」

 

 脳天に構えたヒストリアを叩き付けるようにラーントルクが振り下ろす。パーシヴァルで受け止めたアルマリアは呟きと共に眉を寄せる。

 爛々と輝きを放つヒストリアとは対照的に、アルマリアの持つパーシヴァルは静かに発光するだけ。魔力(ヴェネノム)の量も自分の方が注げている筈なのに、まったく崩せる気がしない。

 

(なん、で)

 

 何かがおかしい。熱くなっていた頭をなんとか落ち着かせようとラーントルクは一息、強く息を吐き出すようにしてアルマリアと距離を取った。

 距離を取って、汗を落としながらラーントルクはアルマリアの挙動を観察する。自然体に剣を構え直している。やはり魔力(ヴェネノム)の量は多いとは感じない。それどころか……。

 

(まさか、魔力(ヴェネノム)を熾してない……!?)

 

 なのに遺跡兵装(ダグウェポン)は起きている。これは一体どういう事なのか、と。

 

「そこまで!」

「……え?」

 

 観察を続けようとしたラーントルクだったが、突然ヴィレムの宣言に目を見開く。

 

「何故止めるのですか! まだ私は――!」

「お前が根本的な勘違いをしてるからだ。それを正してからじゃないと意味がない。……とはいえ、自分で気付きかけてたみたいだけどな」

 

 まだやれる、と主張しようとしたラーントルクを落ち着かせるようにヴィレムは穏やかに告げる。その言葉にラーントルクは訝しげに眉を寄せる。

 

「気付く……?」

「自分の方が魔力(ヴェネノム)を注いでるのに、って思わなかったか?」

「……はい」

「えっ、ラーン、自分で気付いたの!?」

「はぁ?」

 

 何故クトリが驚いた声を挙げるのだろう、とラーントルクは首を傾げる。確かにヴィレムの指摘した疑念は確かに自分が先程思っていた疑問だった。それがどうしたというのだろう、とラーントルクは眉を寄せる。

 すると、声を挙げたのはネフレンだった。いつもの無表情のまま彼女は告げた。

 

「クトリは自分で気付けなくてヴィレムにボロ負けした」

「レ、レン!? 今言わなくても良いじゃない!?」

「……どういう事ですか?」

「説明してやるから、その説明を受けてから模擬戦を再開してくれ。いいか? そもそも聖剣(カリヨン)ってのはな――」

 

 そして始まったヴィレムの説明は聖剣(カリヨン)というのは如何なるものなのか、という説明だった。

 聖剣(カリヨン)とは“魔力の圧に応じて威力の変わる武器”ではなく、“刀身に触れた相手の力を利用する武器”なのだと言う。

 その説明を聞けばラーントルクも先程までの疑問に納得せざるを得ない。知らされた事実に驚きながらも、理解を進める為に己で言葉を口にする。

 

「それはつまり、技官補佐の遺跡兵装(ダグウェポン)が魔力も無しに起きているのは私の魔力を利用したもの、という事なのですね?」

「そうだ。それを意識して聖剣(カリヨン)を使って見ろ。使い方を覚えるだけでお前はもっと強くなれる。目も良いし、状況判断も悪くない」

「……成る程」

 

 確かにこれは有益な指導だ、とラーントルクは頷く。正式な使い方を覚えられるだけで世界が変わると言っても良い程だ。

 そう思えば、ラーントルクの中にあったヴィレムに抱いていた反抗心のようなものは溶けていくようだった。少なくとも悪い気はしなかった。

 

「それじゃあもう1回だ。アルマリア、いいな?」

「あ、うん。大丈夫だよ、おとーさん」

「あと、次は手加減なしでやってみてくれ」

「……やはり手を抜かれてたんですね」

「え、あ、そういう訳じゃなくて、私はこういう手合わせって初めてだから加減がわからなくて……」

「言い訳は結構。それじゃあ再開しましょう」

 

 ヴィレムの指摘に困ったようにアルマリアが頬を掻く。それにラーントルクが据わった目でアルマリアを射貫く。そんな2人の様子を見てヴィレムは溜息を吐く。

 

「アルマリア。お前の実力を見る目的もあるんだからな。気にせずやれ」

「……うーん、わかった。やってみる」

 

 やっぱりアルマリアには何故か神経を逆撫でにされる、とラーントルクが眉を寄せる。

 その苛立ちを抑えながらも構えを取る。ヴィレムから授けられた知識を意識して、相手の力を利用する。つまり相手を見て、正しく立ち回る事が必要だと。

 そしてアルマリアを見据えて構えを取り、ヴィレムが再度、開始の合図を告げた瞬間だった。

 

 ――かくん、と。ラーントルクの膝が力を失った。

 

 

(え――?)

 

 地に崩れ落ちて、自分が呼吸を忘れている事に気付く。思い出したように呼吸をした時には喉が引き攣っていて、噎せ返りそうだった。

 ひゅー、ひゅー、と。自分でも無様に思うような呼吸を繰り返してラーントルクは自分が生きているという実感を取り戻していく。

 そして遅れて恐怖が襲いかかる。今、自分は、確かに死んでいた――。

 

「――ご、ごめん! ラーントルク、大丈夫!?」

 

 慌てたような声が聞こえて、体が抱き起こされる。抱き起こしたのがアルマリアだと気付いてラーントルクはようやく思考を回し始める。

 あの開始を告げた瞬間、アルマリアから向けられた“ナニカ”。それに自分が崩れ落ちたのだと理解した。理解しても、意味がわからない。

 

「……アルマリア」

 

 呆れたような声が聞こえてきた。心配するように駆け寄ってきたヴィレムだった。その後ろでは何故か臨戦態勢に入っているクトリ達と、ラーントルクと同じように崩れ落ちているティアットの姿が目に入った。

 

「お前、やり過ぎだ」

 

 

 * * *

 

 

「“ちょっと殺気向けただけ”じゃないっすよ。なんすか、アレ」

 

 アイセアちゃんが呆れたようにジト目になりながら睨んでくる。う、うぅ、肩身が狭い……。

 

「いや、うん、本気じゃないよ……? 切り飛ばすとしたらどこから、ってちゃんと倒す事を考えて気を向けただけで……」

「こわい」

「怖い!?」

 

 弁明しようと口を開いた私に無表情のまましっかりと距離を取りながらネフレンちゃんがぽつりと呟く。

 

「怖かったです……」

「ティアットちゃんもごめんね!? 本当にごめんね!?」

 

 そして、ぺこぺこと頭を下げて回る私。さっきまでやっていた模擬戦は私が“ちょっと真面目に殺気をぶつけよう”って思って訓練に殺気を出してみたらラーントルクとティアットちゃんが崩れ落ちて動けなくなってしまったので中止に。

 自分で引き起こしてしまった事だけど、思わず頭が痛くなる。同じくどこか頭がいたそうにおとーさんが手で押さえている。

 

「直接向けられてなくてもクトリ達が臨戦態勢になるぐらいだったからな。まぁ、これは俺の予測が足りなかった。アルマリア、お前の存在を考慮にいれてなかった」

「え?」

「……お前が“獣”だって事を考慮し忘れたって事だ」

 

 おとーさんが耳元に顔を寄せて小声で言う。私が獣だから? こうなった? なんで?

 

「お前、戦闘慣れしてる訳じゃないだろ?」

「……うん」

「だから加減がわからないってのは良いんだが、お前の存在のスケールを忘れていた。存在の強度、感覚の差異、まぁ、お前のちょっとが並の相手だと致命的になるって事だ」

「そ、そうなの?」

 

 流石にそれは思わなかった。……待って? 思えば私が稽古していた時に傍にいたのってエルクとカーマしかいなかったよね? あの2人が平然としていたから気にしてなかったけど、存在のスケールが違うって言われたら納得しちゃうね!?

 

「慣れてないティアットと、直接叩き付けられたラーントルクが動けなくなるのは、まぁ仕方ないが……慣らしていくしかないな、こればっかりは。そういう意味では良い稽古にはなると思うぞ、お前の“ちょっとした殺気”」

「もうやめて……ごめんなさい……悪気はなかったの……」

 

 縮こまって頭を下げるしか出来ない。まさか、こんな落とし穴があるなんて……。

 

「……これが、今の私と彼女の実力差なんですね」

 

 ノフトに看護されていたラーントルクがぽつりと呟く。俯いた顔からは表情を伺う事は出来なくて、どことなく不穏な気配がする。

 そのままノフトに支えられるまま立ち上がって、ノフトの手を払ってラーントルクが背を向けて走り出してしまった。

 

「お、おい! ラーン!」

「ラーントルク!」

 

 ノフトと私が同じく叫んで声が重なる。そのまま私もラーントルクを追う為に走り出した。今、彼女を放っておけなくて体が勝手に動いた。

 私が追ってくるのが見えたのか、ラーントルクがその背に魔力の翼を煌めかせて空へと羽ばたいていってしまう。思わずその背に手を伸ばして、力なく落としてしまう。

 

「……やっちゃったぁ……」

 

 思わず頭を抱えて蹲ってしまう。うわぁ、本当にショックだ……。

 

「だ、大丈夫だよ、アルマリア。ラーンもすぐに戻って来るよ」

「クトリちゃん……」

「今はそっとしてあげた方が良いよ、ね?」

 

 いつの間にか隣まで来て、私の肩に手を置いてクトリちゃんが励ましてくれる。その気遣いはとてもありがたい。けど、目線だけは落ち着かない様子できょろきょろと動いている。

 ……そういえば、クトリちゃんも最初、おとーさんに負けた時とか、おとーさんが人間族(エムネトワイト)だって知った時って……。

 

「経験者は語るって奴っすねー」

「経験者の言う事は違う」

「な、何よ!? アイセア! レン!」

「あー、もしかしてクトリも似たような事やったの?」

「ノフトは余計な事を聞かないで!」

 

 クトリちゃんが次々と過去の痴態を話題にしようとして、その内容を知らないノフトが興味を示し出す。腕をぶんぶんと振り回しながらクトリちゃんが黙らせようと3人を追いかけていく。

 そんな様子に和みつつ、ラーントルクが飛び去ってしまった方向へと視線を向けてしまう。……大丈夫かなぁ、ラーントルク。

 

「ちょっとした家出みたいなもんだ。落ち着いたら戻って来る。……話はそれからでもいいだろ?」

「おとーさん……うん、そうだね」

 

 肩を叩きながら声をかけてくるおとーさんに、同意を示すように頷いておく。あの調子じゃ、追いつけても振り払われたかもしれない。それなら少しラーントルクの思うままにさせてあげた方が良いかな。

 少し不安になりながら、私はただ空をぼんやりと見つめる事しかできなかった。

 

 

 * * *

 

 

 ラーントルクが飛び去ってしまったので稽古は一度流れてしまった。稽古以外にもやる事があったのだけど、今日は私はおとーさんから稽古の際の“殺気”の出し方の指導を受ける事に。

 それが終わる頃、昼食の時間が近づいてもラーントルクは戻って来る気配はなかった。胸が不安でざわざわとする。

 

「……お腹空かせて戻ってきたら可哀想だもんね」

 

 昼食の時間を終えて人がいなくなったキッチン。そこでラーントルクが戻ってきた時の為にサンドイッチを用意してみる。

 バスケットにサンドイッチを詰めて終わって。それでもラーントルクは戻って来ない。小さく溜息を吐いて、私はバスケットを抱えたまま外へと出る。

 入り口に出るとそこにはノフトが座っているのが見えた。私に気付いたのか、ノフトが私に視線を向けてくる。

 

「アルマリア、ピクニックにでも行くのか?」

「えぇと、ラーントルクを待とうかなって……」

「そうか? じゃああたしと一緒だな。横、座るか?」

 

 ぽんぽん、と隣を叩きながらノフトが問いかけて来る。私はそのままノフトの隣に座って空を眺める。

 

「……雨とかは降ってなくて良かった」

「そうだなぁ」

「ラーントルク、大丈夫かな……」

「んー、今は考え事を邪魔されたくないから逃げたんだろうしなぁ。腹が空いたら流石に戻って来るだろ」

「心配しないの?」

「信頼してるから」

 

 ノフトから返ってきた言葉はあっさりとしたものだった。そこにはまったくラーントルクを疑っている気配はなくて、少しだけその関係が羨ましく思えてしまった。

 

「アルマリアって強いんだな」

 

 ぽつりと、呟きを零すようにノフトが言う。私は空に視線を向けたまま言葉を返す。

 

「おとーさんに聞いたらまだまだ素人だって」

「アレで素人かよ」

「力の使い方が下手だって。自分が出来る事を理解してない、って。鍛錬はしてたけど、やっぱり1人でずっとやってたから癖とか酷いって。もうダメだしばっかりだったよ」

「ふーん、あの技官、随分と厳しいんだな」

「皆の命がかかってるからね」

「そっか」

 

 なんとなく会話が途切れて、そのまま空を見上げる時間が続いていく。そんな沈黙に耐えられなくなって、ノフトにサンドイッチを入れたバスケットを示して見る。

 

「……ちょっと食べる?」

「お、食べる食べる。やりぃ」

 

 ノフトにハンカチを手渡して手を拭わせてからサンドイッチを渡す。勢いよくサンドイッチにかぶりつくノフトは、うまうま、と呟きながらご飯を食べた筈なのにぺろりとサンドイッチを食べきってしまう。

 それがおかしくてもう一つ、サンドイッチを渡してみる。小さくお礼を告げながらノフトも受けとってサンドイッチを口に運んでいく。

 

「あたしは、よくわかんないけど。アンタ等があたし達が生き残れるようにしよう、って言うのは伝わってくるんだ」

「うん?」

「アンタ等があたし達に対して真剣なのは伝わってる、って。ラーンだって馬鹿じゃないから、そんな心配しなくてもこのまま帰って来ないとかはないよ」

「それは心配してないけど……これからどうやってラーントルクと話そうか迷っちゃうよ。私、嫌われてるみたいだし……」

「嫌い? ラーンが?」

 

 目をぱちくり、とさせてノフトが呟く。それに私は頷いて見せる。実際にラーントルクからは嫌いって言われてるし。わかっていても、やっぱりちょっと凹んじゃう。

 

「そっか……ラーンが嫌いって言ったのかぁ」

「意外そうだね?」

「あいつ、どうでも良いものには嫌いとか言わないで無関心だし」

「……それだけ嫌われてるって事?」

「どーだろうな。ただ、興味はあるとは思うぞ。無視はしてないからな」

 

 うーん、嫌いだけど興味はある、無視は出来ないって感じかな? なんというか気難しいと強く感じてしまうのはラーントルクだからかなぁ、とぼんやり思う。

 

「ラーントルクとも仲良くしたいんだけどなぁ」

「アルマリアってお節介なんだな」

「そうだよ。月日を重ねて拗らせる程にね」

「あ、納得した。凄い納得した」

 

 獣になる程ですから。なんとなく口寂しくなって自分で作ったサンドイッチを口に運ぶ。ノフトも3つ目に突入した。

 すると、森の奥から気配がした。目を向けてみればラーントルクの姿が見えた。ラーントルクも私達に気付いたのか、視線を向けてくる。

 

「よう。おかえり」

「……暇してるんですね」

「どこかの誰かが家出して中断になったからな」

「悪かったですね。……ところでお腹が空いたんですけど」

「サンドイッチがあるぞ」

「そう。それで、そのサンドイッチをどうして貴方達が食べてるんですか? 嫌がらせ? 嫌がらせですか?」

「昼食の時間に帰って来ない奴が悪い」

 

 ノフトがそう言って3つ目のサンドイッチを食べきってしまった。更に4つ目に手を伸ばして、気付けば残ってるサンドイッチはあと1つしかない。

 それをラーントルクは今にも氷河期が来るのではないか、という程に冷たい目で見つめている。私は慌てて残りの1個を手に取って、ラーントルクに差し出してみる。

 

「お腹が空いてたらすぐ作るよ。……えっと、食べる?」

「……」

 

 無言でラーントルクが近づいて来る。目を細めて、警戒を剥き出しにしながらサンドイッチをじーっ、と睨む。

 そのまま手に取るかと思えば、そのまま手ごと噛まれるのではないかという勢いで一口を囓り取られた。

 

「ひゃぁっ!?」

「……」

 

 驚いて身を竦ませていると、手に持っていたサンドイッチが奪い取られる。そのまま一口にサンドイッチを口の中に入れて、咀嚼をしながら私を睨んでくるラーントルク。

 思わず有無を言わせぬ雰囲気に私は息を呑む。ラーントルクが咀嚼を終えたサンドイッチを呑み込んで、据わった目のまま私を見据える。

 

「……1つじゃ全然足りません」

「そ、そうだよね。すぐに作るね、食堂に行こうか。あ、手を洗ってきてね?」

「わかってます」

 

 ぷいっ、と。視線を背けるなりラーントルクは中へと入っていってしまう。戸惑うままにラーントルクの背中を見つめていると、ノフトが何がおかしいのか腹を抱えて笑っている。

 あれは、どういう反応だと受けとれば良いんだろう……? そんな風に困惑しながら、私はサンドイッチをこしらえる為にキッチンへと向かう事にした。

 

   

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