(邪)神になった貞子が親友の子供たちを見守っています。 作:ヒーロー大好き人間
遅れてすみません!
卒論提出や研修でかなり遅れました……。
終わったら終わったでデュエルリンクスにはまっちゃいまして、なかなか執筆が進みませんでした。
とりあえず原作に繋がる話を投稿します。
「この町も、かなり変わったわね……」
そう呟くと、貞子は幾度目かの溜め息を吐いた。貞子はかつて佳耶子と過ごしたこの町へ拠点を移し、現在は町を散策していた。都会の中心と比べると昔の名残が残されているが変わってしまったところも多い。特に佳耶子が通った校舎は老朽化し現在は旧校舎として物置小屋の様な扱いになっていた。
人を辞め怪物となり、遂にはそれすら超越してしまった自身と比べれば人も街も移り変わるのはあっという間だということは理解していたが、それでも言い様のない寂しさを感じてしまう。今はちょうど旧校舎の様子を姿を消して見てきたばかりであり、そうした感情も一層深まっていた。
とは言え、悪いことばかりでもない。旧校舎は霊眠されていないオバケが多く住み着いており、再会を果たしてきたのだ。住み着くオバケ達はいずれも貞子に憧れており、大層喜ばれた。
喜びと寂しさが混ざった気分の中で、貞子は2つの事を懸念していた。1つはかつて旧校舎で霊眠させた天の邪鬼に関してだ。先日まで復活した天の邪鬼の妖力を感じ取っていたのだが、今日来てみれば姿が全く見えなかった。
力も感じられなかったことと、オバケ日記が無くなっていたことから霊眠されたのだと考えられるが、直感が天の邪鬼の健在を告げているのだ。貞子の直感は超能力の影響で極めて鋭く、外れた試しがない。
貞子としては退治する気はなく、佳耶子の子供たちに手を出さないよう頼むつもりだった。こちらに何度も挑んでくる意気込みを気に入っていたからだ。
この事はさつきを見守りに行った佳耶子に聞いてみればいいと、貞子は2つめの事態へと思考を切り替えた。
「赤紙青紙か…。臭いのは住みかがあれだから仕方無いとしても、やっぱり花子さんへの仕打ちは許せないわ…!」
そう、貞子は旧校舎に住む「トイレの花子さん」から相談を受けていたのだ。何でも赤紙青紙というオバケにトイレから追い出されてしまったらしい。困ったところに貞子がやって来たという訳だ。
赤紙青紙は古くからトイレの霊として知られている存在だ。赤と青どちらを答えてもろくな目に合わないという話で、それ以外の色を答えた場合の現象も様々な説があるが、封印されていたこいつの場合答えるとあの世に引きずり込むという質の悪い奴である。
と言うよりもこの地に霊眠されたオバケの多くが、可笑しいくらいに殺意全開な奴らばかりなのだ。自力で霊眠させたこともある佳耶子の優秀さが窺える。こうした力のある霊に弱い霊が追いやられることが時としてあるのだ。
貞子としては退治してもよかったのだが、この機会にと花子さんにある提案をした。何処か他の学校のトイレを紹介するから引っ越さないか、というものだ。旧校舎は古く、トイレが利用されることも殆どないため、どうせなら新しいトイレに引っ越し新生活をスタートさせればいいと思ったのだ。人を驚かせるのが生き甲斐なオバケとしては人が多い場所は脅かしがいがあるというものだ。
だが花子さんは返事を保留にした。魅力的な提案ではあるものの、長らく暮らし続けた場所への思い入れは一段と強かったのだ。
そういった思い入れを持つことは貞子にもよく理解できる。貞子にとって過去はどれ程忌まわしくとも、両親との大切な思い出に溢れたかけがえの無いものでもあり、切って捨てる事の出来ないものだ。事実、貞子はかつて自身が悪霊として留まっていたあの井戸を現在も活用している。
この後は息抜きにカフェにでも立ち寄ろうかと考えていると、あるものが目に留まり、内心驚きを伴いながらもその口許はまるで面白い玩具を見つけて喜ぶかの様に吊り上がっていた。
「全く、情けない限りだぜ……」
ぽつりと呟かれた言葉が通りに木霊した。不思議なことに辺りに人の姿は見当たらず、一匹の黒猫が歩いているのみだ。誰かが見たらさぞ驚くことだろう。あろうことかその言葉が黒猫から発せられているのだから。本来ならまずあり得ない光景だが、この猫は普通ではない。
「この天の邪鬼ともあろうものが、忌々しいったらありゃしねーぜ…!」
そう、この黒猫の正体は妖怪、それも人の恐怖心を力にして強くなる大妖・天の邪鬼なのだ。
彼は先日まで封印されていたのだが復活し、旧校舎に訪れた子供たちを襲った。子供たちの中にはかつて自身を封じ込めた宮ノ下佳耶子―旧姓神山佳耶子―の子もおり、恨みを晴らすにはもってこいだった。
しかし、油断したことが災いし佳耶子が残した「オバケ日記」を見つけられてしまった。日記には佳耶子が封じたオバケの詳細と封印ー霊眠ーの方法が記されており、それを利用して再び封じられてしまったのだ。
だが1つ誤算が生じた。霊眠は特定の物質に封じ込めるという様式を取っており、依り代を用意せずに霊眠したことで一緒にいた宮ノ下家の飼い猫のカーヤに封じられてしまったのだ。こうなってしまうと封じられた動物が死なない限り解放されないため手の施しようがない。
そのため天の邪鬼は宮ノ下家で暮らす形で落ち着くこととなった。だが大妖怪としての自負を持つ天の邪鬼にとっては猫の体でいることも屈辱的だ。とは言え現時点では妖力は万全の状態と比べ雀の涙程で、念力で物を多少動かせる程度なので力を取り戻して復活するまで耐えるしかない。
今はこの屈辱に甘んじるが、復活したら必ず怨みを晴らし恐怖を刻み込んでやると誓ったところでー
「あら……?久しぶりね、天の邪鬼!随分可愛らしくなったじゃない!」
突然かけられた声に動揺し声の主を見上げるとー凍り付いた。
「お、お前は……!何でここに居やがる!!?」
「何でって、久しぶりにこの町で暮らしたいと思ったからに決まってるでしょう?それに、貴方達が蘇ったことに私が気づかないはずないでしょう?」
天の邪鬼を見下ろしていたのは、絹糸の様に美しい長髪を持つ目も眩む程美しい女性だった。見るもの全てを惹き付けるような美貌を持っているが、天の邪鬼にとっては最悪の相手ー貞子その人だった。
かつて、封じられる前に佳耶子と親しかった彼女が特殊な存在であることを見抜き勝負を仕掛けたが、圧倒的な力で返り討ちにされてしまったのだ。その後も幾度か勝負を挑んでは敗れており、今となっては思い出すだけでもトラウマになってしまっている。
久しぶりに会った貞子は変わらない美貌を備えているが、天の邪鬼は貞子の桁外れの禍々しい妖気を感じ取っていた。
その気になれば今の天の邪鬼ではひとたまりもないだろう。
「旧校舎の子達に会いに行ったら貴方が見当たらなかったし、他の子に聞いても一度暴れていたのを見かけたくらいで今日は見ていないって聞いてたから気になってたけど、たまたま見かけてビックリしたわ。本当に可愛らしくなっちゃって……!」
そう答えるなり貞子は天の邪鬼を抱えあげると、ぎゅっと抱きしめた。
「な、何しやがる!?離せ!」
「嫌よ、だってこんなに可愛いんだもの!ああ、中身はひねくれてるけど本当に可愛い!」
「や、やめろって言ってるだろ!」
貞子は天の邪鬼をどうこうするつもりは全くない。全力で猫を可愛がりたいだけなのだ。しかし大妖怪たる天の邪鬼からすればたまったものではない。必死にもがいて何とか貞子の腕の中から抜け出した。
「あら、つれないわね。まあいいわ。貴方今は猫に封じられているから苦労してるだろうし、私の所で暮らさない?その方が貴方も暮らしやすいし、私もペットができてお互い良いことづくめでしょう?」
「じ、冗談じゃない!お前と暮らすなんて真っ平御免だ!生憎、俺様は飼い猫に憑いてるんで必要ないね!」
「あら、そうなの、残念ね…。それじゃあ仕方ないわね、じゃあまた会いましょうね」
そう呟くと、貞子は颯爽と立ち去っていった。
「全く、相変わらずとんでもない女だ……。」
天の邪鬼にとって、貞子は自身を封じた佳耶子とさつきの親子以上に苦手な存在だ。
自分を封印した家族の元で暮らすのは尺だがあの女と暮らすよりはましだと思い、貞子と出会う前とはうって変わって宮ノ下家で生活するという選択は間違いではなかったと考えていた。
「もぉ~、何で今日もオバケに襲われちゃうのかしら……。」
「まあ、皆無事だったから良かったじゃないですか。」
「無事だったけど、死ぬかと思ったぜ……。」
「成る程、他の色を答えるとそうなるんですね!」
天の川小学校の帰り道を、5人の少年少女が会話を交わしながら歩いていた。
物憂げに溜め息を吐いた少女は宮ノ下さつき。かつてオバケを霊眠した佳耶子の娘だ。家族とこの町に越してきて天の川小学校に転校したのだ。だが、登校初日に飼い猫のカーヤを追いかけて旧校舎に入り込み、オバケの存在を初めて知ったのだ。天の邪鬼に襲われ、偶然母の残したオバケ日記を見つけて何とか天の邪鬼を霊眠した。天の邪鬼がカーヤに封印されるという誤算が生じたが。
1日経った今日は無事投稿できたが、今度は蘇った赤紙青紙の騒動に巻き込まれてしまった。何とか霊眠できたが、2日連続で襲われたとなれば憂鬱になるというものだ。
しかし悪いことばかりではない。オバケ騒動を通じて友人ができたのだ。現在一緒に下校している彼等がそうだ。
そうして会話を交わしていると、さつきの脳裏にある疑問が浮かんだ。
「そういえば、あの時…。」
「どうした、さつき?」
さつきとは家と学校の席が隣どうしの青山ハジメが様子のおかしいさつきに問いかけた。
「あの後花子さんが言ってたの。"ありがとう、あの人が紹介してくれた所も良かったけど、この場所が好きだから引っ越さずに済んでよかった"って…」
「そうなの、お姉ちゃん?」
弟の敬一郎が尋ねかえした。
「ええ、確かにそう言ってましたわ。」
一緒にいた1学年上の恋ヶ窪桃子がそう返事を返す。
「花子さん、友達がいるのかしら……。花子さんと知り合いって事はオバケなんだろうけど、引っ越し先を紹介したって言ってたし、学校の外にオバケの知り合いがいるって事なのかな?」
「もしかすると学校のオバケどうしで連絡を取り合っているのかもしれません…!心霊研究家としては是非とも研究しなくては…!」
「やめろよな……。もうトイレのオバケに関わるのは嫌だぜ……」
新たな発見に興奮する自称校内一の心霊研究家である柿ノ木レオに、今回赤紙青紙にあの世に引きずり込まれかけたハジメがうんざりした様子で文句を言った。
その後は雑談を交わしながら帰路についたが、さつきの脳裏には先程の疑問が依然として引っ掛かっている様子だった。
(何でこんなに気になるんだろう……。それに、オバケの事なのに考えても余り怖くないのはどうしてかしら…?)
この時はまだ、さつきを含め誰も予想もしなかった。自分たちにとってこれ以上ないほど頼もしく、それでいて恐ろしい存在と出会うなど……。
天の邪鬼だけ一足早く貞子と再会しました。完全にとばっちりです(笑)
貞子はあの井戸を呪いの演出として愛用しています。
反響があれば連載に移りたいと考えています。
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