ようこそ、セカイミュージアムへ   作:藍沢 七星

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プロローグ

 

僕の人生を簡単に語るなら、平々凡々に毛が生えた程度かもしれない。

それは、特に語ることもない。だからといって、何もない人生だ。で終わるのでは少々味気ない。

だからこそ、私が体験した不思議な話をするとしよう。

 

 

仕事から帰ると、まるで待ちわびたかのように嵐のような雨が玄関を叩く。

連日のように晴れたと思えば夜にはバケツをひっくり返したかのような雨が降り家を揺らす。

ボロい借家だから、いつ壊れるのだろうか。と思いながら就寝するのだった。

朝になれば快晴の朝日が私の睡眠を邪魔し、焦げたパンと不味いコーヒーを喉に流し込み、襟のくたったスーツを着て、電車に揺られ一時間。駅の郊外へ出ると、まるでローマ時代を思わせる建物が私を出迎えてくれた。

とはいっても、特に私はローマが好きな訳ではなく、この建物も"パンテオン”というものを模した建造物だ。ということしか知らない。

私の住む街にパンテオンのような建物が建ったのは……いつだっただろうか。

記憶に遠い。というよりは、”当たり前”になっているからだろうか。気に留めることもなくなってしまった。

そんなパンテオンのような建物は「博物館」というものらしく、とても賑やかな場所だ。

私の勤める会社でも「あそこは良いぞ。人生が変わるようだ」や「行かない人は人生を損している」など、口を揃えて語っているが……私は生憎と、そんなものがなくても生きていける。と思っているのだった。

 

そんな所に私の同僚やって来て「これをキミにやるよ」と一枚の茶封筒を渡してきた。

「これは一体何だ?ジョン、私は君に金を貸したりはしていないはずだが」

そう言うとジョンは笑って答えた。

「ははは、そう思われるだなんてぼくもまだまだかな?それより、君にこれをプレゼントしようと思ってね」

受け取った茶封筒には、「博物館」のチケットが入っていた。

「おいおい、どういう風の吹き回しだ?ジョン。君はココに行くのを楽しみにしていたじゃないか。現に、社内の道行く人や来客にまでココのチケットが取れたことを言いふらしていただろう?なのに……」

するとジョンは「あぁ、確かに」と残念そうな顔をした後に、こう続けた。

「とても楽しみにしていたんだが、その日は外せない用事ができてしまってね。それなら、行ったこともない君に是非楽しんでもらいたいな!!と思ってね」

ジョンは、嬉々とした目を私に向け「感想を頼む。そして一緒に行こう」というのを声にせず訴えてきた。

「わかった。だが、私も多忙の身だからな。行けるかはわからない……だから、期待しないでくれ」

するとジョンは「あぁ、わかっているよ」とだけ残し去っていっていった。

そして、最後の置き土産のように大量の仕事と「そのチケットの期限は明日までだ」というのを残して、自分のオフィスへと帰っていった。

「全く、奴は行って欲しいのか欲しくないのかわからないな。半分くらいは自分の机に持っていってくれれば良いものを……」

と文句を言いながら始めるのだった。

 

 

次の日、定時を過ぎたところで昨日まで積み上がっていた壁のような仕事は、庭にある柵ぐらいまで減っていた。

周りを見渡すと、半数の社員は帰り支度を始めていた。

残りの半分は、といえば絶望的な量の壁に半ば諦めていた。

クリスマス・イヴは定時帰宅という我が社の社訓は、入社して一度も守られたことはないが、いつもなら明日に回せば良いわけだが、今年は違う。

今日は金曜日、明日は土曜日。

つまり、会社としては休みなのである。

休日出勤をすれば良い。と思うかもしれないが、我が社は土日完全施錠しており、電話対応すらいないのだ。

つまり、今日終わらせなければならない仕事なのである。

ある者はクリスマス・イブだというのに世界の終わりのような顔をしている。

またある者は黙々と作業を続け、いつか終わると信じている。

 

私はといえば、「ふぅ」と温かいコーヒーを入れ一段落ついたところで、フッと昨日のことを思い出した。

引き出しの開けると、茶封筒が目に入った。

ジョンが言っていたことを思い出す。

残りの仕事と時計に目をやる。17時40分。この中にある仕事で急がなければならない物は半分もない。

残りは週明けでも問題ないだろう。と私は考えた。

確かに「博覧会」には興味はない。だが、ジョンに申し訳ない気がしてしまう。

約束したわけではないがなんというか、私の性分だろう。この”約束”を守らなければ、私はこれから先も彼に合わせる顔がない。そう、後悔しながら生きていかなければならない。

それだけはなんとしても避けたい。そう思った私は、黙々と作業に移った。

 

 

柵ほどあった仕事がそれなりに片付いた頃、区切りも良かったのでここで切り上げることにした。

周りを見渡すと、半分ほど減った壁に四苦八苦する者が、コーヒーやタバコで一服していた。

私は、時計に目をやる。20時45分と割と早く終わったな。と思う半面。"約束”を思い出した。

そういえば、閉館時間を見ていなかった。

そう思い、チケットを確認する。

 

~22:00 閉館

 

と書いてあった。今からでも十分間に合うだろう。

会社から「博物館」まではおおよそ30分もあれば着いてしまうだろう。

そこから回っても十分時間はあるだろう。

そう思っていた私は、帰り支度をして飲みかけのコーヒーを口に含み会社を後にした。

 

会社を出る。

時間には余裕がある。

それならば、と彼は行きつけの喫茶店へ寄ることにした。

 

天気はといえば、月明かりでいつもの道も更に

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