「ふあぁぁぁ……。」
休日最高、どれだけ寝てても良いんだもんなぁ。
時計を見ると十時頃。
丁度良いし、湊さん所行くかぁ。
外行きの服を着て外へ出る。すぐ隣だから楽で良いな。
チャイムを鳴らす。
少しすると、黒い服装の男性。湊 優斗さんが出てきた。
「はい。」
「ども、お久し振りです。」
「ああ、音也君。久し振りだな。あいつから聞いてるよ。」
あいつってのは父さんの事だ。今でもたまにメンバーで集まるらしい。
「あー、うちの娘にも会わせたいんだけど、今ちょっと手が離せないみたいだ。妻も今は出ているんだ。」
「いや、大丈夫っすよ。正直、何を話したら良いかも分からないですし。」
「ははは、そうか?
所で、メンバー集めはどうなっているんだ?」
「……分かってて聞いてますよね?」
「ごめんごめん、意地が悪かったな。」
あいつらみたいなメンバーは、きっともう集まらないだろうよ。
「まあ、少し前からバンドはもう諦めて、インストラクターとかフリーでやっていこうかって考えてますし、俺はベースを弾ければ良いんで。」
「うん、音也君がそう言うなら良いと思うよ。」
「ども。」
昔から色々話してくれてたから、何か言われるかと思った。
「お父さん?誰か来ているの?」
「ああ、友希那。丁度良かった。俺のバンドメンバーだったやつの息子が来ているんだ。」
「どうも、墓前 音也です……って昨日の。」
「あなたは……。」
「もう知り合いだったのか。じゃあ、友希那のメンバーも呼んでくるか?」
「……そうね。聞きたい事もあるし。」
えっ、勘弁してほしいんだけど。
「……………………。」
気まずい。なぜ女子の中に男が一人で居ないといけないんだ。湊さんは用事とかで少し外すってどっか行ったし。
「えっと、俺は何の用ですかねぇ?」
しまった。つい喧嘩腰みたいな喋り方になった。大丈夫か?
「あなたも、バンドを組んでいるの?」
「……バンドはもう組まない。これからはインクトラクターかフリーでやるつもり。」
「そう。理由を聞いても良いかしら?」
「……昔組んでた奴らくらいのがいないからですよ。」
「昔……?おかしな言い方しますね。小学生の時にでも組んでたんですか?」
氷川さん、そこで反応されると困るんですけど。
「とにかく、そういう理由なんで。バンドは組みません。ヘルプで入ったりとかはしますけど。」
それか、ベース以外を機械で打ち込んでベースメインの曲にしてソロでやってもいいかもしれないな。見た目地味だけど。
「このくらいで良いですか?」
「ええ。」
「んじゃあ、俺はこの辺で……。」
「墓前さん。」
「?何ですか、氷川さん。」
「遅刻に気を付けてくださいね。また学校で。」
「……善処します。」
そそくさと湊さん家から出て行って家に戻る。……隣だからそこまで変わらないけど。
はー……これで変に絡まれたりしないよな?
週が開けた月曜日。やべぇ、寝坊した。走らないと。
全力で学校に向かうとまだチャイムは鳴っていなかった。
「よっしゃ、セーーフ!」
「静かに出来ないんですか。」
「うげっ、氷川さん……。」
門には氷川さんが立っていた。
「人の顔を見て随分な言葉ですね。」
「あー、これは失礼しました。」
「それは良いですが」
ずいっと氷川さんが詰め寄る。えっ、何か悪い事した!?
「ネクタイの結びがおかしくなっていますよ。ネクタイの緩みは気の緩みです。」
一度ネクタイを解かれて、結び直される。……門だからみんなが見ていて少し恥ずかしいんだけど。
「はい、これで結構です。次からは気を付けてください。」
「……はい。」
くそ、顔が熱い。制服の袖で顔を隠しながら校舎に向かう。氷川さんは恥ずかしくないのか?
……今は忘れよう。
それから授業中に氷川さんに寝ては起こされを続けて昼休憩。
「……しまった。弁当がない。」
バタバタしてたから用意もしてないし。購買に行くしかないかぁ……。
そう思って購買に向かうと何故かもう売り切れていた。
「…………うそぉ。」
え、俺今日昼抜き?食堂なんかは絶対混んでるから行きたくないし。
「……寝て凌ぐか。」
最終手段に出るしかない。
外に出て手頃な場所を探す。今日は天気が良いからテキトーな木陰で良いだろう。
「ここら辺だな。」
制服だけど芝生だから土よりはマシだと思って横になる。
あ、思ったより居心地が良い。これなら寝れそうだ。
「……な…い………きな……い………起きなさい!!」
パッと目を開くと目の前に氷川さんが居た。うわっ……思ったよりもまつ毛長いんだ。目も綺麗だし、髪もサラッとしてて、何か良い匂いする。
……今日の俺、何か変だな。やたら氷川さんを意識している気がする。切り替え切り替え。
「え、あ、ひ、氷川さん?どうしたんだ?」
「もう授業五分前ですよ。それに、暖かくなってきたとは言え、こんな所で寝ると風邪を引きますよ。」
「あー……そりゃ、どうも。」
ふぅ、と一息つくと腹が鳴る。あ、そう言えば何も食って無かったっけ。
「昼食は食べてないんですか?」
「……今日はあまり腹が減って無かったんで。」
グゥウウ、とまた腹が鳴る。少しは大人しくしててくれ。
「今朝慌てていましたし、寝坊してそのまま弁当を忘れたんですか?」
「まあ、はい。」
「早寝早起きをしないからそうなるんです。気を付けてください。」
「あい……。」
今日はやけに注意されるな……俺が悪いんだけどさ。
腹、減ったなぁ。
この後の授業はずっとぼーっとしていた。
晩飯を食ってベースを弾く。弾く時はいつも一度は昔みんなで作った曲を練習する。大切な曲だ。
曲が終わって一息つく為にヘッドフォンを外す。
「ふぅ……。」
最近はちょっと停滞気味だ。ピッキングの精度もフレットの抑えもミュートも万全だけど、何か足りない。やっぱりあいつらが居ないとダメなのか?
「……こんなに弱気だと笑われるな。
ちょっと気分転換に散歩に行くか。」
テキトーな服を選んで着替える。……一応、氷川さんに言われたし、ちょっと厚めの上着を着ることにした。
「ついでにコンビニスイーツまで買ってしまった。」
仕方ないな。コンビニスイーツが俺に買って欲しそうに見てきたんだから。
「飲むヨーグルトが染みるぅ……。」
ブルーベリーも良いな。
「墓前さん?」
ん、この声は……。
「氷川さん……今日はよく会いますね。
バンドの練習ですか?」
「確かによく会いますね。
ええ、少し遅くなってしまいましたけど。」
ロゼリア、だっけ?本気なんだな。
「はくしゅっ……!」
氷川さんがくしゃみをした。こんな時間だってのに、防寒着の一つも着てないのか……。
「俺に言ったのに自分が出来てないと意味無いですよ。ちょっと失礼。」
上着を脱いで氷川さんの肩に掛ける。これならマシだろ。
「あの、これは……。」
「え、寒いでしょ?俺は良いから使ってください。それと、送って行きますよ。もう真っ暗ですし、女の子一人だと危ないですよ。」
「ですが……。」
「……じゃあ、昼休憩の時起こしてくれた借りって事で、あれで授業サボッてたら先生に怒られて面倒だと思いますし。」
「起こしただけですけど……では、お願いしますね。」
ふっ、と氷川さんが笑った。その瞬間俺は口元に手を叩き付けた。
「?急にどうしました?」
「いや、季節外れのハエがいたんでを」
「珍しいですね。」
「全くです。」
もちろん、嘘だが。マジかぁぁぁ!!笑顔の氷川さんの威力やべぇぇ!!ああぁぁぁぁぁやっぱおかしいぞ、俺ぇ!俺にはベースがあるだろう!?俺と言えばベース!よし。すごく落ち着いた。
落ち着く為に必死でいると袖を引かれた。
「あっ、な、何ですか?」
「墓前さんは、食べ物の好き嫌いはありますか?」
「え、いや、無いです。」
「そうですか。」
……え、それだけ?
「ここが私の家です。今日はありがとうございました。それと、上着は洗濯して返しますね。」
「いや、この場で返してくれたらいいですけど…….」
「洗濯して返しますね?」
「あっ、はい……。」
何か怒らせる事言ったか!?今の間に!?
「それでは、また明日。」
バタン、と扉が閉められる。これ、間違いなく嫌われてるよな?
ほろりと悲しみに打ちひしがれながら家に帰ってコンビニスイーツを食べた。あ、おいし。
扉を閉めてから自分の部屋に戻るとベッドに腰を降ろす。帰りは墓前さんの上着のお陰で体を冷やさずに済みましたし、明日またお礼を言わないと。
「……暖かい。」
元々墓前さんが着ていたからか、肩に掛けられた時から暖かくて、とても落ち着く。
「……先にお風呂入らないと。」
自分の言葉とは逆にベッドに仰向けに倒れる。心地良い暖かさで瞼がゆっくりと落ちてきた。……おやすみなさい。
小説は交互に上げたいけど、多分気分で指の乗りが変わるんで本当に気分次第です。
それと感想って読む時緊張しますよね。麻雀でリーチされた時みたいにドキドキします。