柊蓮司を小さくしてネギま!世界に送り込んでみた   作:れじ

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ミドル1 子連れデスメガネ純情派

 

「――それで、あそこに見えるのが図書館島だよ」

「と、図書館が島なのか……本当に広いな、この学校」

「麻帆良は学園都市だからね。先生方の住宅や商店街もあるよ」

「……これはアイツを探すだけでも苦労しそうだな」

 高畑と柊の二人は学園内を散策していた。とはいっても、麻帆良も広いので、高畑の案内で回った範囲もそう広くはなく、学園の一部だけである。

 しかし、将来的に魔王を捜すために麻帆良中を回らなければいけないと思うと、柊としては頭が痛くなってくるような広さだった。

「でも結界――月匣だったっけ? それが張られればわかるんだろう?」

「そうなんだけどな……あんまり遠いとわかるかどうか」

ただでさえ感知判定(こういうこと)になるといまいち調子のでない柊だ。うっかり気づかない可能性もあると思うと不安である。せめてもう一人くらい応援のウィザードが来てもらえると助かるのだが。

「あまり気にすることはないさ、今回のことはキミだけの責任というわけではないだろう?」

 柊の不安を感じとったのか、高畑はそう言って手をぽん、と柊の頭に置く。その行動に柊は不満そうに言う。

「――なんか子供扱いしてないか」

「僕たち教師からすれば、小学生でも高校生でも子供には変わりないさ」

「う……」

 そう言われると反論できない。ふて腐れる柊だったが、途中でなにかに気づいて辺りを見回す。

「……ん? なんか騒がしくないか?」

「ああ……あそこ。どうやら喧嘩みたいだね」

 高畑が指さした道の先、裾の長い学ランにリーゼントという、見るからに不良学生といった感じの集団が二組、なにやら怒鳴り合っていた。自称不良学生にして他称不良品学生の柊蓮司とは違い、誰が見ても不良だとわかるほどの不良っぷりである。

「ちょっと止めてくるよ」

 そう言って高畑は笑顔で歩いていく。たしかに笑顔だったのだが、逆光で光る眼鏡のせいだろうか、柊の魔剣使いとしての勘だろうか。何故か危険なものを感じさせる笑顔だった。

「おうおう、今日こそは決着をつけようじゃねえか、ああ?」

「へっ、テメーらの顔も見飽きてたところだ、そろそろ叩き潰してやろうじゃねえか」

「言うじゃねえかテメエ」

「君たち、そこまでにしておかないかい?」

 睨み合う不良学生たちへと歩み寄っていった高畑が穏やかに声を掛ける。

「あァ!?」

 声を掛けられた不良学生たちは、不機嫌そうに高畑の方を向き、

「なっ……デスメガネ!?」

「広域指導員の高畑だぞ!」

「ひ、ヒィッ!?」

 全員が同時に後ずさって行った。

「――有名人なんだな」

 過剰なぐらいの不良たちの反応に柊は微妙な表情をした。まともそうな先生だと思っていたのに、そういうわけでもないらしい。やっぱりここは輝明学園みたいな所だ、と柊は思った。

「ギャァ!」

「うわー! だ、ダメだー!」

 軽々と蹴散らされていく不良学生たち。これがネームドNPCとエキストラの差か、とメタなことを考えつつ観戦する柊。演出で処理されているんですね、わかります。

「くっ、このガキ……!」

 そんなあまり動じていない小学生(ひいらぎ)の姿が気にくわないのか、一人の不良が柊を蹴り上げた。

 

 

 

「あ、ネギ。高畑先生見なかった?」

「タカミチですか? いえ、僕は見ていませんが」

「そっか」

「何かタカミチに用事ですか?」

「うん、部活の方で見て貰いたい書類があるって部長が言ってたから、かっぱらって――じゃなくて、私が部長の代わりに高畑先生に届けることになったのよ」

「そ、そうだったんですか」

 なんか物騒な単語が聞こえた気がしたけれど気のせいだろう。うん、きっと気のせいだ。

 そんな会話をしていると、進む先になにやら争っているらしい不良学生の姿が見えてきた。

「ん? あそこで不良を倒してるの、高畑先生?」

「え、タカミチ?」

 明日菜の言葉に不良学生たちの相手をよく見てみると、タカミチの姿が見えた。

「それに……小学生くらいの子?」

 それとタカミチと少し離れたところに見慣れない制服のネギより少し年下くらいの子が見えた。不良学生の一人が、その子を思いきり蹴り上げようとしている。

「あ、危ない!」

 ネギが慌てて駆けつけようとする。

 ――タカミチも気づいているのに、なんで放っておくの!?

 そうネギは思っていたが、その不良の蹴りを少年は両腕をクロスさせてあっさりと防いだ。すこし驚いたような顔を少年はしたが、前転の要領で体を回転させ着地、それとほぼ同時に不良の足に綺麗に足払いを掛けた。

「なっ!?」

 蹴りを繰り出した直後だったため、軸足を払われた不良は仰向けに倒れ込んだ。そして倒れ込んだ不良に追い打ちを掛けるように、ひょいと跳んで不良の鳩尾にあたりに着地した。ぐえ、と悲鳴をあげて不良は気絶した。

 その光景を呆気にとられて見るネギと明日菜。不良たちも驚きを隠せないのか、少年を見て騒ぎだした。

「な、なんだこのガキ、妙に強いぞ!?」

「こんなヤツ見たことねえぞ!?」

「……ま、まさか! デスメガネの隠し子か!?」

「え、ちょ!? 隠し子って、キミたちね……」

 その飛躍した予想にさすがのタカミチも驚く。しかし、その様子を図星をさされて驚いたと斜め上の解釈をした人物が一人いた。

「タ、タカミチに子供がいたなんて……!」

 ネギである。普段ならそういうことにツッコミをいれるのは明日菜の役目のはずなのだが、恋する乙女故に思考が混乱していた。

「そ、そんな……柊くんが高畑先生の隠し子なんて!?」

 わなわなと体を震わせていたかと思うと、おもむろに少年――柊というらしい――へ向けて突撃した。

「ひ、柊くん! お、お母さんはどうしたの!?」

「え、えーっと、いない……」

 その一言を聞いた明日菜はぶつぶつと何か呟き始めた。

「――母親――いない――高畑先生を頼って――つまり一緒に――!?」

 その鬼気迫る様子にタカミチと不良学生たちも戦闘を止めている。そんな様子にも気づかずにいる明日菜はがしっと柊の肩を掴み言った。

「お、お母さんって呼んでくれてもいいのよ!?」

「え」

 一方のネギはタカミチを問い詰めていた。

「友人である僕にも言ってくれないなんてひどいじゃないか、タカミチ!」

「いや、だからネギくん、それは誤解で……」

「は! もしかして友人と思っていたのは僕だけで、タカミチは僕のこと友人と思っていなかったんじゃ……!」

「だからね、ネギくん……」

 四人が大騒ぎしている中、不良たちはそっとその場から逃げ出した。

 

 

 

 不良の蹴りを腕で防御した柊は瞠目した。まったく痛みを感じない。――ここでも、月衣の効果がある? そう考えながら、不良を適当に転かして踏みつける。

「な、なんだこのガキ、妙に強いぞ!?」

「こんなヤツ見たことねえぞ!?」

「……ま、まさか! デスメガネの隠し子か!?」

「え、ちょ!? 隠し子って、キミたちね……」

 さすがに隠し子がいると思われるのは心外なのか、驚いたような焦っているような顔をするタカミチ。柊も否定しようかと思ったが、先ほど子供扱いされた意趣返しだ、と否定せずに傍観していた。が、それがいけなかったのか。

「タ、タカミチに子供がいたなんて……!」

「そ、そんな……柊くんが高畑先生の隠し子なんて!?」

 急に離れた所から叫び声が聞こえてきた。そのうちの一人は確か学園長たちの所に行く途中で会った神楽坂だったか、と柊が思い起こしていると、彼女はすごい勢いで柊の元に来た。その様子は、彼女の親友である雪広あやかとそっくりであった。

「ひ、柊くん! お、お母さんはどうしたの!?」

「え、えーっと、(この世界には)いない……」

 さすがにこの世界という表現はまずいので単純にいないとだけ言っておく。だが、遠いところにいるとでも言っておけば良かった、とすぐに後悔することになる。何かをぶつぶつ呟いていた明日菜は柊の肩を掴むと言った。

「お、お母さんって呼んでくれてもいいのよ!?」

「え」

「むしろ呼んで、ねっ!」

 妙な威圧感のある笑顔で迫られて柊は逃げ腰になった。

「い、いや、そもそも母親って年齢じゃないだろ!?」

「細かいことはいいから、ねっ!」

「よくねーよ!?」

 さすがに年下に母親と呼べと言われて呼べるものではない。

「そ、そうよね……」

 納得したのか引き下がる明日菜。

「ぽっと出の女を母親なんて呼べないわよね……!」

 訂正、納得しても引き下がってもいなかった。今度は明日菜と一緒にいた少年と何か会話していたらしいタカミチに向かっていく。

「高畑先生……柊くんには、母親が必要だと思うんです」

「いや、アスナくん、それなんだけど……」

「わ、私がんばります! だから、高畑先生、応援してもらえませんか……?」

「ええ!? ちょ、ちょっと、柊くんからも何か言って――」

 タカミチが助けを求めているが、柊はそれどころではなかった。――月匣。近くで、月匣が展開されているのを柊は感じ取っていた。

「悪い、急用ができた!」

 そう言うと柊は月匣のある方向へと駆けだした。

 

 ――見捨てられていったタカミチがどうやってネギと明日菜を説得したかはまた別の話である。

 

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