「はぁ……はぁ……」
ランスロットはたまたま細道の先に見つけた小さな部屋で休息を取っていた。
道は細いため大型の魔獣は入って来れないだろうとこの部屋に籠城を決め込んだが時折聞こえる魔獣達の唸り声に休まる暇がない。
「ふぅ、さてどうするか。ゴール地点はどこにあるか分からない、さらには大量の魔獣が蠢いている……ここからどう動くべきか」
「グルルルルル!!」
「ッ!!」
その時だった。
通路の奥から獣の低い唸り声が聞こえる。
咄嗟に立ち上がり剣を構える。
しかしどれだけ待っても魔獣は現れない。
さっきのは幻聴だったのかと息を吐いた。
頭上から何かが降りてくる気配を察知し寸前で転がり避ける。
ゴロゴロと転がり避けるが掠っていたのか頬から血がたらりと流れる。
それを指で拭い襲撃者の姿を見る。
そこには四足歩行の灰色の身体に丸太のように太い尻尾を持ち、まるで魚のようにビッシリと鱗を纏った魔獣が口から涎を溢れさせていた。
その魔獣は首が異様に長く、両前足に付いている鋭く長い1本の鉤爪を持っていた。
その魔獣は不意打ちが失敗するや否やランスロットと距離を取るべく離れ始めた。
その様子に不意打ちを得意とする魔獣なのかと思い、ならば一気に距離を詰めようと剣を握り直す。
しかし
突然グニャリと視界が歪みだし剣を取り落とした。
一体何が!?
定まらない視界で魔獣を見るとニヤニヤと牙を剥きながら笑っていた。
何が起こったのか理解できなかったが鉤爪から緑色の液体が滴っているのが見えた。
それでようやく自分の急な不調の原因がこの魔獣の毒であることが分かる。
恐らく最初の不意打ちで掠った攻撃で魔獣の毒に感染したのだろう。
魔獣が近づいてくる気配を感じる。
このままでは確実に殺されるだろう。
しかしそう簡単に殺されてはなるものかと最後の力を振り絞る。
意識を閉ざさないように唇を噛み痛みで意識を保つ。
最後の抵抗とばかりにフラフラと立ち上がる。
しかし魔獣はそんな身体で何ができると嘲笑うかのように唸り声を上げる。
「おおおおおおおおおお!!!」
ランスロットはすぐそばに落ちていた自分の剣を拾い上げ、魔獣に向かって走り出した。
しかしその速度は素人が見ても遅いと言えるほどのお粗末なものだった。
足元はふらつき、視界は揺れる中こうして剣を握り魔獣へと向かっていけること自体が奇跡に等しいのだ。
しかし魔獣は鉤爪でランスロットの剣を弾き飛ばす。
そんな僅かな衝撃にも関わらずランスロットは堪えきれず倒れ込む。
その身体にはもう一切力が入らなかった。
その様子に魔獣は自分の勝ちを悟ったのか足に噛みつきどこかへ運ぼうとする。
しかしここでランスロットにとっては2度目の奇跡が起きる。
いや、不幸かもしれない。
突然ガシャガシャというまるで鎧が擦れるかのような音が聞こえてくる。
その音を聞いた途端ランスロットの足を加えていた魔獣はピタリと動きを止める。
そしてそのままランスロットを離し猛然と、まるで何かから逃げるように走り出した。
一体なんだというのか。
その答えはすぐに現れた。
小柄な人影が通路の奥からこちらに向かってくる。
まさか人間かと一瞬期待するがその期待は一瞬で崩れることとなる。
それはちょうどランスロットと同じような大きさの鉄の人形だった。
予想外過ぎて思わず呆けてしまう。
しかしこの人形を相手にそのすきは致命的である。
バキリという音が響く。
気がつけばランスロットは壁に埋まっていた。
当然のように意識を保つことはできておらず既にランスロットは死に体である。
しかし鉄人形はランスロットにとどめを刺すようなことはせずその場を立ち去っていく。
その場には静寂が残った。
しかし数10秒後、ドゴン!という凄まじい音が響くと続いてぱしゃぱしゃと何者かが歩く音が聞こえる。
そしてランスロットの部屋に入りランスロットを見つけると何かを考え込む仕草を見せそしてランスロットを担いで消えていった。
部屋にはもう何も無かった。