そして申し訳ないです。迷宮編は今回で終わりませんでした。でも次回で終わらせますのでお許しを~
「やっほぉー! 初めまして! 私は……メルランだよ?」
……まるで自分の名前ではなく他人の名前を名乗っているかのように一瞬詰まって名乗る。しかし助けてもらったことには変わりないので一応お礼はしなくては。
「すまない、助かった」
「ふふふっ! いいんだよ? 間に合って良かったよ~」
何が面白いのかニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。少しむっとするが助けたもらっのだから文句は言えない。
「……メルランだと? そんな名前はここでは聞いたことがないし、当然お前も見たことがない。一体何者だ?」
「私はメルランだよ? それ以上でもそれ以下でもないよ~」
「……まともに名乗るつもりはないと?」
「あはは~ちゃんと名乗ったじゃ~ん」
やはりまともに会話をする気はないのだろうか。かなりの実力者であることはさっきの炎を見れば分かるが……なんというかこちらをおちょくるために会話をしているような印象を受ける。
掴みどころがなく、飄々としている。それでいてとても楽しそうに見える。こちらからすれば何が面白いのかと問い詰めたくなるがメルランと名乗った美女はトコトコと歩き出した。
「どこへ行く」
「どこに行ってもよくない?」
全くその通りである。その証拠に呼び止めた男も何も言えないようだった。
「私は私の住処に帰るよ~ここに来たのは気まぐれだからねぇ。まさか『
「……お前が何かしたんじゃないのか」
「私? 私は本当にたまたまだよ? 魔力がかなり荒れてたから遊びに来ただけ」
あれほどの魔獣の群れを遊びだと言い切るのは彼女が並々ならぬ実力を保有していることの証拠だろう。
彼女がいれば蛇の王の元にたどり着くのは簡単になるのかもしれない。
「メルラン殿、蛇の王がどこにいるか知りませんか?」
「ランスロット!?」
男が驚いているが今は少しでも情報が欲しい。ならばメルラン殿に聞くしかないだろう。
「蛇の王ねぇ、今はラックが用意した部屋でのんびり寝てると思うよ」
「ラック殿が用意した部屋? それは本当なのですか?」
メルラン殿が言ったラック殿が用意した部屋。そんなものがあるのか……それなら確かにそこに行けば蛇の王に会えるのかもしれない。
ちらりと男の方を見ると男も驚いていた。どうやらその部屋については知らなかったらしい。
まぁ蛇の王は絶対に避けたいらしく、そんな部屋に近づく者がいなかったのだろう。
しかしならばなぜメルラン殿は知っているのか?
「それは一体どこに?」
「この迷宮のちょうど中心、そこに王の部屋はあるよ。ただ問題は蛇の王はその部屋に近づかれるのがとても嫌いなんだよねぇ。もし近づこうものなら……死ぬよ?」
その言葉は真に迫っており、また冗談だと笑い飛ばすにはメルラン殿の顔は微塵も笑ってはいなかった。
「私はそれでも行かねばならんのだ。どうか案内して欲しい」
そう言って頼み込むとメルラン殿は少し考え込むような素振りをすると見とれるほど綺麗な笑顔で頷いた。
「うん、いいよっ! 私はマーリンみたいに人でなしじゃないしね!」
「おおっ! 助かる!」
「ふふっ、でもその前にあれを片付けないとね?」
メルラン殿の視線を追うと、そこには緑色の蛇のようなしっぽにドラゴンのような頭、そして背中に亀の甲羅のようなものを背負った亀とドラゴンを組合われたかのような魔獣が私達を見ている。
「なんだあいつは!」
男の様子を見るにあの魔獣を知らないのだろう。ならば私にも分かるはずもなく、希望を込めてメルラン殿に視線で問いかける。
すると知っていたのか緊張すらせずにのんびりと語りだした。
「あれは『ビュームズ』だねぇ。まぁのろまな癖に攻撃力と防御力が馬鹿高い亀だと思えばいいよ」
「なるほど、ではどうやって倒すのですか?」
「どうやってって、普通に?」
「え?」
この人はさっき自分で防御力が高いと言ったばかりではないか。だというのに普通に倒す? 一体どういうことだろうか。
しかし疑問は次の瞬間に解決した。
メルラン殿は親指を立てて人差し指を向ける。
「ばぁん♡」
ものすごく楽しそうにその手を上にあげる。それと同時に真っ赤な一条の光が飛び出すと『ビュームズ』と呼んでいた魔獣を貫いた。『ビュームズ』は頭から背中まで拳が通るほどの穴を開けており、そしてその穴は赤熱しておりとんでもない高温の攻撃であったことが用意に分かる。
「まぁざっとこんなものかな?」
その光景に言葉も出なかった。なぜなら魔獣の背後、再生するはずの迷宮の壁が赤熱化して穴が空いていた。さらにその奥から見える光景に別の壁が見えることから迷宮の壁をいくつも貫いたのだろう。
正直に言ってこの光景が異常なことは流石に分かる。この迷宮はあのマーリン殿の弟子であるラック殿が作り出した異様な迷宮。
そんな迷宮の再生力を上回る破壊力をメルラン殿は保有しているということなのだろう。
そんな存在がこの迷宮にいるのは少しおかしいと思うのだが……
「じゃあ行こうか?」
「待て」
「……もう、今度は何かな?」
男がメルラン殿を呼び止める。するとメルラン殿はうんざりとしています、と顔に出しているがそれでも答えてくれるあたり根は優しいのだろう。
「お前は一体何者だ? 話に聞けばこの迷宮はあのマーリンでさえ手を焼くような場所だと聞いている。そんな場所で飄々とした態度を取り続けている貴様は何なのだ?」
「う~ん、それは今は重要じゃないけどまぁ気になるのも分かるしなぁ」
分かりやすく考え込む仕草をして、そして数秒後に目を開ける。その瞳は悪戯心に満ちていた。
「私はただのメルランだよ? それでいいじゃない!」
「……まさかマーリンだなんてオチじゃないだろうな?」
「あのクズ代表のマーリンなんかと一緒にしないで欲しいなぁ──やっぱり師匠嫌われすぎだろ。まぁ自業自得だけど」
最後に小さく何かを呟いていたようだがあまりに小さな声で全く聞こえなかった。だが追求しようにもニッコリと見惚れるような、それでいて有無を言わせない笑顔を浮かべて喋り出した。
「細かいことはいいじゃない! 今は私に着いてこないと蛇の王の部屋に行けないんだしね?」
そう言って返事を待たずに歩き出す。私は男と顔を見合わせるとメルラン殿を走って追いかける。彼女の言う通り、現状メルラン殿が唯一の手がかりなのだから。
着いていくしかないのだ。
これから向かうのはラック殿が作り出した蛇の王の部屋。一体何があるのかなんて何も分からないがやれることは全てやっておこう。
そしてラック殿に認められるのだ。それでこそ私は王の騎士だと胸を張れる。
メルランは一体誰なんだ~……流石に分かるかなぁ?