「……着いたよ諸君、ここが王の玉座、魔術の王に仕える厄災の蛇、オルトースの住処だよ」
彼らは迷宮では見ることがなかったゴツゴツとした崖の穴から巨大な一室を見下ろしていた。
そこは今までに全く見ることがないほど広すぎるほど広い石の祭壇だった。そしてそこに巨大な黒蛇がとぐろを巻いて眠っていた。
今からあれのそばに向かうのだと思うと身体が震えるがそんなことは言ってられない。
私はアーサー王に仕える騎士。この程度のことで引く訳にはいかないのだ。
「助かりましたメルラン殿。では私はここで」
「我々だろ? ランスロット? 俺は最後まで付き合うぞ」
「……助かる。あぁそう言えば結局名前を聞いていなかったな」
「……ウォルクム、昔はそう名乗っていた」
「では行こうかウォルクム! 私達の忠義を見せつけるのだ!」
「私の忠義の先はランスロットだが……まぁいいだろう。あまり変わらんしな」
そう言って彼らは剣や杖を抜き放ち歩き出す。
しかしメルランは動くつもりは一切なかった。なぜなら彼女はただの案内役であり蛇の王に干渉するつもりは皆無だからだ。
そして彼女はとある男の別側面であり、彼女は本来の己の役割を果たすためにあらゆる手段を問わない冷酷さを見せる女性でもあるからだ。
だが彼女はそれだけが本質ではない。彼女は役目を果たすために己の優しさを封じようと自らの属性を反転させていた。
普段の
そんな彼女がここまでランスロット達を案内したのは多少の罪悪感と彼らを自ら娯楽とするためであった。
「じゃあ私が案内するのはここまで! いい来世をね!」
そう言い残すと彼女は虚空へと溶けるように消え去った。
「……全く、最後まで嫌な女だ」
「だが助けてもらった恩がある。もしできればメルラン殿もこの迷宮から解放してくれるように頼むとしよう」
「……お前がいいならそれでいい」
ウォルクムはメルラン殿に思うところがあるようだが反対されないだけマシというものだろう。それに苦笑いを浮かべながら彼を諭す。
「ウォルクム、我らは騎士になるのだ。ならば恩を忘れてはならないのだ」
「……魔術師の俺が騎士というのもおかしな話だがな。まぁ理解した。俺はお前に従おう」
「ならばよし、そして無駄話も終わりだ」
崖を降りてついに玉座の前に立つ、だが既に蛇の王の吐息がここまで伝わってきた。ぞわりと全身の毛穴が開いたかのように思えるほどの濃密な魔力。
そして足を踏み入れる。
だが次の瞬間、私の身体はまるで石になったかのようにピクリとも動かない。横目でウォルクムを見やると彼も同じように動けなくなっていた。
身体に異常がある訳では無い。蛇の王、メルラン殿曰くオルトースという名の蛇の魔獣が放つ圧倒的な魔力に萎縮して動けなくなっていたのだ。
『……我が眠りを妨げる愚か者は貴様らか、では死ね。この世に肉片1つ、骨片一欠片残すことも許さんぞ』
それはまるで天の怒号にも思える憤怒に満ちた声だった。
ランスロットとウォルクムは揃って死を幻視し、己の生存を本能が諦めた。
『さぁくたばれ人間、我が主にいただいたこの部屋に侵入した罪、死を持って償え!』
オルトースは大きく口を開けるとそこに膨大な魔力を収束させた。
そして、魔力の極光を放つ。
それはまるで光の壁のようにランスロット達に迫る。
常人であればここで何もできずに死ぬのだろう。一切の抵抗もせずに死ぬのだろう。
しかし後の円卓最強の騎士となるランスロットは己でも意識せずに手を動かした。
人間の限界に迫る腕の動きで剣を振るう。
そしてありえないことに
「……は?」
『……人間風情がラック様より賜りし我が力を跳ね除けるか!』
再度光の極光。今度は先ほどよりも威力が高い。
しかし再度ランスロットの剣は蛇の王のブレスを斬り続ける。
その速度は亜音速にも迫っており、その奇跡の斬撃は蛇の王のブレスとも相まって本来再生するはずの周囲の迷宮の壁を削っていた。
「ぉぉおおおお!!!」
『人間風情がァァァァァ!!!』
そしてついに、その勝負に決着が着いた。
轟音が止み、土煙が晴れるとそこにはランスロットとウォルクムの姿はなかった。
しかし蛇の王、オルトースは今の一瞬で察していた。本来であれば今の勝負はオルトースの勝ちであった。
あの拮抗はいい勝負にも見えたが実はあの勝負はオルトースのブレスにランスロットの剣撃は間に合わなかった。
あれ程の速度でもオルトースのブレスを消し切るには足りなかったのである。
ゆえにオルトースのブレスが彼らを消し去るあの瞬間、オルトースの創造主であり、主君でもあるラックが2人を連れ去ったことはオルトースには分かった。
彼がラックの気配を間違えることなどないのだから。
だからこそオルトースは今回のことを考えることをやめた。
主君のやることに間違いなどないのだから。しかし疑問だったのは主君であるラックが
♢♢♢♢♢
「「……は?」」
気がつくとそこは見覚えのある森の中だった。聖剣を授かるために湖の乙女を訪ねた際にラック殿と遭遇したあの森の中。
「……帰ってきたのか?」
「どうやらそのようだぞランスロット、懐かしい気配だ」
ウォルクムは感動してか泣いていた。しかしそれも仕方の無いことだろう。彼にとっては久方ぶりのブリテンなのだから。ここは好きなだけ泣かせておくのがいいのだろう。
「やぁおかえりランスロット、そして久しぶりだね? ウォルクム」
「ッ! ラック!」
「そう警戒しないでよウォルクム、お前の特異な能力も俺には効かない。分かってるんだろ? しかしあの迷宮ではお前の能力は封じてたのによく生きてたな? そこだけは素直に感心するよ」
そこにいたのは憎たらしく笑顔を顔に貼り付けた中性的な男であるラックだった。
というわけであの美女はラックオルタです笑。そうなってた理由は次回説明しますねぇ。