転生したらマーリンの弟子になった   作:黒猫街夜

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割と伸びてびびった。


俺にそっちの趣味は無い!

「失礼しますよ」

 

「どうぞ」

 

マーリンに弟子入りしてから早くも五年が経過した。

今では習った魔術は手足のように扱える。

まぁマーリンは魔術よりも剣で殴った方が早いとか言って俺に剣術を教えてきた。

というかこの人ほんとに魔術師か?

魔術よりも剣術が得意な魔術師ってどうなのよ。

 

「お呼びですか?」

 

「あぁ呼んだとも。でもその前に幻術を解除してくれると助かるよ」

 

あ、忘れてた。

今世の俺はどちらかと言うと中性的な見た目をしている。

なおかつかなり整った顔立ちをしている。

さらに髪は灰色、目は金と中々珍しい色合わせらしくかなり目立つ。

そのため色々と言い寄られるのだ。

 

男からも女からも(・・・・・・・・)……

だから幻術を使って姿を老人に変えているのだ。

結果として全く注目されずに済んでいるから大成功だろう。

うん俺は男だよ?

何が悲しくて同じ男に告白されなきゃいけないんだ!

俺にそっちの趣味は無い!

まぁ自分で言うのもなんだが俺の幻術はかなりのレベルに達している。

触ったって感触は本物なのだ。

とはいえ自分以外に幻術をかけるのは苦手である。

 

「相変わらず男性に人気だね。羨ましいよ」

 

「変わります?」

 

「いやぁ遠慮しとくよ。私が好きなのは女性だからね」

 

「分かってんなら言わないで下さいよ! それに師匠は普通にモテるじゃないですか!」

 

軽く睨みながら文句を言っても爽やかに笑いながら受け流される。

もはやお決まりのパターンだな。

 

「それで? なんの御用ですか?」

 

「この所イナゴによる麦の被害がかなり出ている。君にはその原因の発見と解決を頼みたい」

 

「イナゴですか? まぁ了解です.....」

 

「おや、不満そうだね」

 

「この所まともな仕事が無かったのにいきなりイナゴですからね。俺がやる必要あるのかとか思うわけですよ」

 

「ふむなるほど…...とはいえそうはいかないんだよ」

 

「と言うと?」

 

「これを見てくれ」

 

そう言って投げ渡された巻物は空中で開きそこでピタリと止まった。

 

「地図ですか?」

 

「あぁ。イナゴの被害が出ている所に印を付けてみた。なにか気になる事は?」

 

気になる事ねぇ。

まぁマーリンがそう言うって事はなにかあるんだろうな。

そう思って見てみると案外すぐに違和感に気がついた。

 

「……随分綺麗に円状に被害が出てるじゃないですか」

 

「あぁその通りだ。あまりに綺麗すぎる円が出来た。この一件に魔術師が関わっているのは確定事項だろうね」

 

「......姉弟子じゃないでしょうね?」

 

「違うとは言いきれないがまぁ君なら大丈夫だろう?」

 

「いやいや! あのイカれ魔女相手じゃ負けますって!」

 

「今回は君の杖も使用を許可しよう」

 

「.....いいんですか?」

 

俺の杖は俺自身が作った杖である。

しかしそのあまりに強力な能力上マーリンに使用を禁止されていたのだ。

 

「まぁ今回はしょうがないだろう。でも使用は最大で二回までだ。それ以上はブリテン島が危険だからね」

 

「了解です!」

 

いやぁこの杖使うのも久々だなぁ!

まぁ割と危険だから制限かかるのもしょうがないとはいえ、やっぱりこういうのは使ってなんぼだよ。

とはいえ姉弟子相手にはしたくないなぁ。

犯人が姉弟子じゃないことを祈ろう。

杖を使ったら普通に勝てるかもしれないからね。

 

「じゃあ行ってきます!」

 

「あぁ行ってらっしゃい。私はその間にデートでもしてくるよ」

 

「仕事してくださいよ!」

 

「はははははは」

 

「笑って誤魔化さない!」

 

この人はまじでサボる。

誰かが見張ってないとやばい。

アルトリアを王にするためにやる事はいっぱいあるのだ。

サボってる場合じゃない。

というか俺が仕事中なのにこの人だけサボるとか認めねえ。

 

その後数十分の鬼ごっこの末溜まりに溜まった仕事をやらせる事に成功した。

俺の砂で椅子に縛り付け無理やり仕事をやらせている。

涙目で助けてくれと訴えかけてくるが知ったことか。

いい気味だ。

 

♢♢♢♢♢

 

俺の目の前ではイナゴの群れがまるで軍隊のように規則正しく並び、空を飛び回っていた。

どう見ても魔術師が関わってんなこりゃ。

まぁどうしてこうなったか説明しよう。

被害が円状に出てるって聞いたから何となくその円の中心に行ってみたらそこには他の場所とは比べ物にならない量のイナゴがいて更には明らかに怪しい小屋がポツンと建っていた。

とりあえず調べてみようと小屋の戸を開けた瞬間、中から大量のイナゴが飛び出した。

そして同時に外にいたイナゴ達も一斉に飛び立ち、結果的に俺はイナゴの群れに包囲されてしまった。

そして今に至る。

 

とにかくこの群れを片付けるにはまず魔術師を片付けるのが手っ取り早い。

恐らくはあの小屋の中にいるのだろう。

この周辺に隠れる所は他にないからね。

周りは田んぼばかりで建築物は目の前の小屋だけ。

 

まぁ恐らく姉弟子じゃないだろう。

確かに王位継承権を産まれる前からアルトリアに奪われたモルガンならこういうブリテンに大打撃を与えかねない魔術師に喜んで協力するだろうが、こういう魔術は姉弟子の趣味じゃない。

 

それはさておき、このイナゴの群れを何とかしないとな。

様子見がてら火球を小屋に向けて撃つ。

すると周りのイナゴ達が集まり盾になった。

 

「なるほど、このイナゴの群れは盾にもなるのか......」

 

この群れを何とかしないと魔術師に攻撃できない。しかし魔術師を何とかしないとこの群れはどかないだろう。

厄介すぎるだろ…...

 

まぁ杖を使えばどうとでもなるな。

とはいえ使ったらこの土地が死ぬからなぁ…...ん?

 

そんな事を考えていると小屋から一際大きいイナゴが飛んできた。

ってデカ!? キモ!?

 

「お前は誰だ!」

 

イナゴが喋った!

というかセリフから三流臭プンプン臭うんだが……情報引き出すために煽ってみるか。

軽薄そうな口調で話しかけよう。

 

「そうだよ〜君は誰?」

 

「俺が質問してんだよ! お前は黙って質問に答えやがれ!」

 

「大人しく投降して欲しいなぁ」

 

「てめぇ、自分の立場が分かってねぇのか? 周りにいるのがイナゴだからって舐めてんのか?」

 

「あんまりこの国を敵に回さないほうがいいよ? 今ならまだ間に合うって」

 

「死ね!」

 

その言葉を合図にイナゴ達が一斉に突っ込んでくる。

 

キモすぎんだろ!

もはやホラーだよ!

 

咄嗟に結界を張ってイナゴの攻撃を防ぐ。

 

まぁこれで安心かな。

って足!

結界にぶつかって死んだイナゴの足が結界に張り付いてるから!

ひぃぃぃぃぃぃ!

やばい! 超キモい!

 

「随分頑丈な結界じゃねぇか! そこは褒めてやるぜ!」

 

あ〜うぜぇ。

こっちは早く仕事終わらせて帰りたいのに。

なんでこんなやつの相手しなくちゃなんないんだよ。

全く.....まぁ姉弟子がいない事は分かったしさっさと終わらせて帰るか。

 

右手を中にかざす。

すると黒い杖が現れた。

しかし当然ながらただの杖じゃない。

その杖は黒い砂でできていた。

 

「『解錠(アンロック)』」

 

呪文を唱えると杖をかたどっていた黒い砂が弾け飛びその中から真っ黒な剣が出てきた。

 

『擬似エーテル体生成完了』

 

そして剣を地面に突き刺す。

 

「なっ!?」

 

ドロリとした何かが剣から溢れ出す。それは魔力のようで、それとは別のおぞましい物だった。

グチャリと柔らかい物が潰れるような音と共に闇に近い暗色の手が伸びる。

 

『デモンズハンド』

 

空間そのものを侵食するかのように埋め尽くす。

 

そしてその手がイナゴに触れた瞬間、そのイナゴは死んだ。

特に目立った外傷もなく、突然死んだ。

それは一匹だけではなく他のイナゴも全く同じ事だった。

 

「何だ.....何なんだその手は!」

 

このイナゴまだ居たのか。

巻き込まれて死ねばよかったのに。

 

「自作の杖でね。カラミティって名付けてるよ」

 

「そんな事は聞いていない! あの杖は一体何なのかと聞いているんだ!」

 

「はぁ.....しょーがない説明してやるよ。あの杖はね、俺が各地の戦場を渡り歩いていた時に思いついた杖なんだ」

 

ちなみに渡り歩いてた理由はマーリンに言われてだ。

目的は死霊の討伐。

戦場の跡地ではよく発生するらしい。

 

「そこに集まってる死霊を見て思ったんだ。沢山の死霊を集めて使い魔にしたら使えるんじゃないかってね。ほら、今の世の中戦争ばっかりだろ? だったら集めるのが簡単な死霊にすればかなりの数集まると思って。まぁ成功したんだけどね。その死霊で実験してたらたまたま出来た杖でね。まぁやろうとして事は死霊を触媒に閉じ込めて見ようと思ってさ。剣に大量に封印してみたんだ。そしたら死霊同士が共鳴してどんどん呪いが強くなってくからさ。結果的に触れたら即死するなんてやばすぎる呪いが出来上がっちゃってさ。慌てて俺の砂も使ってまで二重で封印したんだけどそれでも微妙に漏れてくるんだよね。まぁ今回のはそれを解き放っただけ。ね? 簡単でしょ?」

 

「そんな訳があるか! 大体あれ程の規模の呪いだ! あれを封じている剣を持つだけでも呪われるだろうが!」

 

そこは簡単な話である。

俺は大前提としてこの島そのものなのだ。

つまり俺を呪いたければ島ごと呪える規模の呪いを持ってきてくれなきゃ俺は絶対に呪われない。

 

まぁそこまで教えてやる義理はないので黙っているとイナゴが騒ぎ出した。

 

「くそっ! だがこれで終わりだとは思うなよ! 俺にはまだまだイナゴの群れが.....あれ?」

 

おっ気がついたかな?

 

「イナゴ達が操れない!? 貴様一体何をしたのだ!」

 

「魔術の制御を奪った」

 

「.................は?」

 

たっぷり数秒固まってからようやく疑問の声を絞り出す。

まぁ普通は他人の魔術の制御を奪うなんて不可能だもんね。

 

「正確には君の魔術に俺の魔術を流し込んだんだけどね。気がつかなかったでしょ? これが俺の得意魔術魔術強奪(マギカ・スティール)

 

「他人の魔術を奪う魔術だと.....」

 

「とはいえ俺も相手の魔術を使いこなせるわけじゃないけどね。精々制御を奪うのが関の山だよ」

 

「くっくそぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

その絶叫を最後に魔術師の魔力を感じられなくなった。

これで仕事は終わりだね。

 

まぁ向こうの得意魔術は認識のすり替えだったみたいだしね。

それは魔術強奪(マギカ・スティール)で既に確認済み。

自分の事をイナゴの王であるアバドンだとイナゴ達に認識させる事で命令を可能にしてたらしい。

 

まぁこれはこれで凄いことなのだ。

自分の認識をイナゴの王にして奈落の王でもあるアバドンにすり替えるなんて神秘が色濃い今の時代ならではだろう。

 

ともかくこれで仕事完了だな。

マーリンに連絡しなくては。

マーリンから借りたこのガラス玉は二つが対応していて両方で連絡が取れるようになっている魔道具なのだ。

 

『師匠! 仕事終わりました!』

 

『おやお疲れ様。早速で悪いが次の仕事だ』

 

『え〜またですか.....』

 

『あぁ。実は森で巨大なムカデの魔獣が確認されてね。それの討伐に.....』

 

『虫はもう嫌です! 絶対に!』

 

そう言って一方的に通話を閉じた。

 

 

 

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