転生したらマーリンの弟子になった   作:黒猫街夜

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 申し訳ございません(初手土下座)
 ほぼ一年間お待たせしました。追記修正(稲を麦に、詠唱、宝具名変更、聖剣名変更)を繰り返し、モチベをある程度復帰させて恥ずかしながら戻って参りました。構想は浮かんでますし、結末も考えているのですが……頑張って完結まで持ってきます。
 今回は解説というか魔術の設定が多めです。


視線

 

 

 星が生み出した聖剣、人々のこうであって欲しいという願いが結晶化した神造兵器、最後の幻想(ラスト・ファンタズム)

 

 約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 正史においては、ブリテンの王、アーサー・ペンドラゴンが使う聖剣の中でもトップクラスと言っていいレベルの代物だ。白い竜の化身と化したヴォーディガーンを討滅するためのキーアイテムと言い換えてもいい。

 

 俺はこれからアーサー、アルトリア・ペンドラゴンにその剣を託す。そのための試練を課す。

 

 「ブリテン王、アーサー・ペンドラゴン。これより貴公に試練を与える」

 

 「はっ!」

 

 今や俺の立場は、聖剣の守護者として認められている。呼び名としては、前述の聖剣の守護者、湖の魔法使いとまぁ中々なラインナップになっている。そんな訳で今の俺はアルトリアよりも上の立場にある。昔はアルトリアの助言者として名を知られた俺だが、意図せずしてこんな立場まで成り上がった。

 

 「貴公には民の肉を食い荒らす二頭のワイバーンの討伐を命じる」

 

 「拝命します」

 

 ワイバーン、飛龍、竜種のなり損ないと言ってもいいそれは、竜の因子を持つアルトリアにはそれ程討伐は難しくない。まぁ勝利すべき黄金の剣《カリバーン》を持たない今のアルトリアなら、少しばかり苦労はするだろうが、討伐は可能だろう。

 だがついでにマーリンからの頼み事を伝えよう。どうせ史実通りだしな。

 

 「加えてアーサー王、来るべき白き竜との戦いに備え、花の魔術師より、最果ての槍を授かれ。槍は俺の試練の領分には無いため、詳しくは花の魔術師より聞くといい」

 

 マーリンから聞いていなかったのか、ここ数日の激務で人形のように凍りついていた顔に驚きの表情が現れる。とはいえ俺もつい最近知った事だし、あの槍(さず)けたのってマーリンだったかね?

 世界の裏側を繋ぎ止めるための塔、その端末たる槍、俺の不朽不壊の黄金剣(クリュサリウス)と同等レベルの神秘を内蔵する聖槍は、正直それさえあればヴォーディガーンなんぞ何とかなるのではと思わなくもないが、約束された勝利の剣(エクスカリバー)を渡すいい機会だったからな。これを逃すと忙し過ぎるアーサーがいつ来られるかも分からないし、特に理由も無しに聖剣に固執すると、それはそれで外聞が悪い。

 

 「その二つを以てブリテンを平定するがいい。その暁にはコーンウォールの()()()を名乗るがいい」

 

 事前に決められた気取ったセリフを言い終えた直後、俺の身体は砂になって消滅する。まぁ言うまでもなく砂で作った偽物だった訳だ。

 獅子王、日本で言うなら平安時代末期の刀の号であり、スコットランド王ウィリアム一世の呼び名でもある。イングランド王リチャード一世の獅子心王もまたこれに通じるものがある。

 そしてFGOにおけるIf世界のアーサー王を指す言葉である。合理性の王、聖槍の化身。別にそうなって欲しいと願う訳じゃない。そもそも決めたの俺じゃないし、アーサーとウーサーとマーリンの話し合いでずっと前から決まっていた事だ。俺はそこには参加してない。

 

 「おかえりなさい」

 

 意識を本体に戻すと、目の前にはエプロンドレスを着たニミュエが家事をしていた。ガレスの面倒を見ながらの家事は大変だと思うかもしれないが実はそれ程でもなかったりする。汚れた衣類や食器は水流を球体状にして固定して洗っているし、細かい掃除も微風でできる。

 現状気を使っているのはガレスのみである。ガレスの揺りかごが置かれている部屋は一時間事に空気が入れ替わり、使ってる水なんかも妖精達が浄化している。

 さらにいえば生まれてからたった数週間しか経過していないにも関わらず、既に揺りかごの縁に掴まって立ち上がっている。妖精の子供は成長が早いというのは本当のようだ。

 ガレスは俺とニミュエの子供なだけあってか、赤子にしては魔力が異常に多い。ガレスの種族は俺が特殊すぎるために妖精のようなものとしか説明できない。なのでこのガレスの保有魔力量が異常なのか普通の事なのかは分からない。

 

 

 そのせいなのか時折こういう事が起こる。

 

 ガレスの視線の先、部屋に突然現れた俺に向いたその視線は濡れたアクアグリーン。

 次の瞬間、背中に氷柱を差し込まれたかのような悪寒と共に爆発的な魔力が発生した。一瞬の後に起こるであろう事を察し、割と全力で砂を動かし身を守る。

 

 ドスン! という音が部屋に響く。恐る恐る周囲を覆う砂を見やると、そこには魔力で編み上げられた赤熱した弓矢が刺さっていた。言うまでもなくガレスの仕業である。

 慣れたくもないがもはや慣れたもので、一日に一度は必ずこれが起こる。マーリンと俺の診断結果としては、先程も述べた種族としての不確定要素(ブラックボックス)により詳しい事は分からなかったが、恐らくは有り余る魔力を制御しきれず、ガレスの小さな意思の揺らぎにより現出しているものだろうとの結論に至った。

 魔術の仕組みとしては視線を合わせた場所に空気中のエーテルで構成された物体を出現させるものだろうと予想している。重要なのは射出ではなく出現だという事。今回の場合(ケース)でいうなら矢は最初から刺さっていた場所に現れた事になる。砂で咄嗟(とっさ)に視界を塞がなければ、今頃矢が生えていたのは俺の頭だっただろう。

 

 とりあえずこのガレスの魔術を《突き刺す視線》と名ずけてしばらく過程を見る事にした。ガレスには妖精の血が流れている。ニミュエが水を手足のように操れるように、ガレスもまた成長するにつれて制御が可能になるだろうというのが俺とマーリンの予想である。

 

 しかしこれだけでは済まないのが妖精の血の厄介さ、もしくは島の神秘の一部を引き継いだ厄介さである。

 ピタリと、砂が全く動かせなくなる。というよりは少しでも動かした瞬間、元の位置に戻るように力が働いている。固定、これもまたガレスの視線を起点として発動する魔術《縫い止める視線》。

 予め言っておけば、これらの魔術は魔眼は関係ない。いわば邪視、魔眼とは眼球に備え付けられた魔術回路を通して起動するものであるが、ガレスのこれはそうではなく、視線そのものに魔力を乗せて術を発動させる魔術式。

 

 赤子が使うにしては異常がすぎる魔術に苦笑いして、ニミュエに視線を送る。それにニミュエは頷くと、ガレスの背後から近づき、手をガレスの顔の前に出して視線を塞ぐ。

 それと同時に砂が自由を取り戻し、発動していた魔術の崩壊を感じる。

 

 「相変わらずとんでもないな……」

 

 「そうですね、私でも発動を妨害できませんし……本来完全にラック様の支配下にあるはずの砂に効果を出せるだなんて、私でもできるかどうか分かりませんよ」

 

 確かにニミュエの水流と俺の砂がぶつかり合えば、どうなるかは分からない。ニミュエは水流操作だけなら、湖の乙女、すなわち妖精として俺に(まさ)る。俺だって流転を使えば水流をある程度扱えるが、水の扱いに特化したニミュエには勝てない。

 しかし操作の技術そのものに関しては俺の方が上である。

 だがガレスはそれらをサクッと超えてくる。

 妖精とブリテン島の神秘の貴血(サラブレッド)故にか、魔力も多く赤子とは思えない程の魔術発動速度、詠唱すら必要ない一工程(シングルアクション)としては破格の性能の魔術等、もしこのまま成長していけば俺やニミュエが(かな)わなくなる日が来るのかもしれない。将来がとても楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、早速アーサー王と数人の騎士がワイバーンの討伐に(おもむ)いたと聞いた後、ここ数日の疲れを癒す為に早めに眠りについた。その日はどうやら満月で、眠る前に青ざめるように綺麗な月が空に浮かんでいたのを覚えている。

 

 目が覚めたのは夜も更けた頃、ガレスの夜泣きが聞こえたからである。ガレスは赤子にしては中々泣かない大人しい子だった。だから寝ぼけ眼で起きたニミュエと顔を合わせてまだ眠気で重い身体を引きずってガレスを見に行く。

 揺らりと風が頬を撫でそれに対して気持ちがいいなどと思い()()()()()()()()……

 

 

 は?

 

 直後に正気に戻る。急いでガレスが居るであろう揺りかごを見やると、既に青黒い(もや)に覆われて見えなくなっていた。俺にもニミュエにも気づかせない緻密かつ完璧な魔術に、二人揃って完全に遅れをとった。

 

 「ガレス!」

 

 俺の叫び声に反応したのか、ニミュエの様子にも正気が戻り急いで駆け出す。

 揺りかごを覆う靄を魔力で起こした風で吹き飛ばすと同時に、突然粘つくような重い視線を感じた。視線を辿ろうかと怒りで白熱した思考で考えながら娘を案じる冷静な思考でそれを抑え込み、ガレスの安否を確認する。

 ガレスの頬には黒い二匹の蛇が絡みついているかのような(あざ)が浮かんでいた。遠見の魔術と視線を起点として発動する呪い。それを正しく認識した直後、何処からかくつくつと嘲るような笑い声が響いた。

 

 『中々良き子だ、大事にせよ』

 

 その声は聞き覚えがあり、同時にこんな真似をした人物もまた彼女であろうと察する。

 瞬間、爆発する怒りと共に自分でも驚くような、深い怒声とありったけの魔術を放つ。それらはブリテン島においては必中のそれ、喰らえば竜種とて無視できないそれが自分に向かうのを分かっていて、再度楽しげな声を響かせた。

 

 『ではまた、滅びの時にまみえようぞ』

 

 「モルガンッッッ!」

 

 邪悪な魔女にして姉弟子、ケルト神話の戦神を起源とする稀代の悪女は静かな夜に嘲笑を撒き散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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