「やぁやぁやぁやぁ」
翌日の朝、我が家を
常に微弱ながらもかなり洗練された魔術を二十以上展開し続けるその女は、あからさまに異様かつ浮いているにもかかわらず、そこに居る事に違和感を感じさせなかった。その魔術の技量は間違いなくマーリンと同等規模、もしくはそれ以上の実力を感じさせる。
間違いなくこの女こそがマーリンが昨夜呼んだ妹とやらだろう。
「
「なに、暇だろうと思ってね、未来ある若い命が悪意によって摘み取られそうになっているんだが、それがなんと弟子の子供と来たもんだ。更に呪いの主はもう一人の弟子、流石私の弟子と言うべきだろうね。複雑怪奇だから君にも手伝わせてあげようと思ったのさ
初手から挨拶と呼ぶのがとてもはばかられる会話から始まり、来客の気配を察して玄関を開けたニミュエと一緒に硬直していると、お互いニッコリ笑って舌戦を再開する。
「キミの弟子の後始末をボクに押し付けるとは……底が知れるよ。それでも
「いやいや、ずっと引きこもっていたら鈍ってしまうからね、適度な運動は必須なのさ。もっとも、花も恥じらう美貌とやらの持ち主は引きこもりの食っちゃ寝生活を送ってるらしいけど……そいつこそ
「止めろマーリン、無闇に魔力を散らすな。ガレスが泣く」
「あなたもです! 杖を下ろしてください」
マーリンとその妹はチラリとコチラを見ると、本気で争うつもりもなかったのか杖を下げた。
「初めましてだラック君、私はアンブロシウス、もしくはアンブローズだ。愚弟が世話になっているようだね。今回の件にも一応協力はするつもりだから安心してくれていいよ」
「私以上のろくでなしだけどね、魔術の腕だけは保証するよ」
どうもこいつらはいちいち煽り合わなきゃならないルールでもあるらしい。訪れるだろう波乱の予感に頭が痛くなり、そっと息を吐いた。
「ではアンブローズと呼ばせてもらう。それよりも早速呪いを見てもらいたい」
「あぁそうだね、そうしよう」
俺の後ろについて歩くアンブローズは、とても絵になっていた。感情を悟らせない笑みをごく自然に顔に貼り付けて歩く彼女は、本当にマーリンに似ていた。きっとマーリンが女だったらこんな見た目だっただろうと思う。
しかし決定的に違うのは目だ。まるで昆虫のように無機質でガラス玉でできているかのように感情が見えない。
今も興味深そうに周囲を見渡してはいるが、見る人が見れば周りに興味を示す振りをしているだけである事が簡単に分かる。マーリン以上に人外に近い。と言うよりはマーリンよりも夢魔としての側面が強く出ているのだろう。
感情を他者から搾取し、消費する。夢魔が人間らしい感情の発露を可能とするのはそういう方法を使うしかなく、それは消耗品で使い捨て。感情の
しかしアンブローズはそれをしない。正確には自らの内に溜め込んでいる。それにどれ程の意味があり、何が目的なのかは全く分からないが、不気味なことこの上ない。
とはいえガレスの一件に関しては協力者であり少しでも人手が欲しい。無下にはできない。
まるで生きた機械を案内しているような気分になりながらガレスの部屋にアンブローズを入れると、ニミュエが忙しい時の乳母代わりの妖精達が散っていく。
それらを眺めながらアンブローズはふらふらと、それでいてしっかりとした足取りで近づいていく。
「……確かに厄介な呪いだ。タイムリミット内に解けるかどうかは五分といったところかな」
「まぁそういう訳でな、解析を手伝ってもらいたい」
「構わないとも、更に助っ人も来たみたいだし作業もぐっと楽になるね」
「助っ人?」
そんな便利な存在に心当たりもなく、マーリンを見ると、驚いたような表情で窓の外を眺めていた。視線を追って外を見ると、そこには──────
「あははは!」
やっと俺達が気づいた事に大笑いする俺の歪んだ鏡像、
進まねぇ
言うまでもなくプーリンです。アーケードやってないから口調とかちょっと不安ですけどね。好きだから出しちゃった。