ニミュエと別れてから1日ほどで目的地にたどり着く。
台座に突き刺さっている黄金に輝く剣。
今回の俺の仕事は台座の魔術の掛け直し。
珍しく今までのように純粋な魔獣の退治ではなくまともな仕事なのだ。
魔獣退治も今では得意だし、だんだん楽しくなってきたからいいんだけどね。
台座のそばに座り込むと確かに台座に魔術が掛けられているのが分かった。
しかしその構造は全く分からない。
いやまじで。
微塵たりとも理解ができない。
まぁ分かる必要はないけどね。
俺はこの魔法陣に魔力を注ぐだけでいい。
そうすればこの魔法陣は維持できるらしい。
実は単純な戦闘力で言えば俺はマーリンに勝てる。
しかし技術は圧倒的に、比べるまでもなく完敗している。
こういう細かい作業はマーリンの方が得意なのだ。
しかし本人が面倒くさがりなため俺がやることの方が多いけどな!
さらに俺に虫退治なんて押し付けるのだ……
やっぱり1回くらい殺しておいた方がいい気がするな。
マーリンは別に殺しても他人の夢に逃げるから実質死なないし。
うん。そうしよう。
まぁそれはさておき仕事はしっかりしないと。
魔法陣を人差し指でそっとなぞる。
するとぼんやりと赤く光り始めた。
魔力がしっかりと溜まった証拠だった。
はい仕事終了。
あとは帰るだけだな。
ちょっと予定よりオーバーしてるからなるべく急いで帰ろうかな。
流石にこれ以上遅れたらマーリンにマジで怒られかねん。
♢♢♢♢♢
3日かけてようやくキャメロットにたどり着く。
普通に時間がかかった。
「やぁおかえりラック。随分と遅かったじゃないか」
背後から突然声をかけられる。
当然ながら聞き覚えがある。
振り返ると予想通りマーリンがそこにいた。
「すみません。帰るのが遅れました」
「まぁ仕事をしっかりとやってくれれば文句はないさ。それでどうだった?」
「台座にはしっかりと魔力を補給してきましたよ。あと1年ほど持つはずです」
「それなら大丈夫だね。じゃああと10年後になったらアルトリアに選定の剣を抜かせようかな」
「了解です。俺はそれまで誰にも剣を抜かれないようにすればいいんでしょう?」
「まぁそういう事だね。よろしく頼むよ」
そこでマーリンはなにかを思い出したかのようにニッコリと笑った。
それはとても嫌な予感のする笑顔だった。
「そういえばラック。ニミュエはどうだった?」
……あぁ仕事で会ったことを聞いているのだろう。
そうに違いない。
というかそうであってくれ。
「会ってきましたよ。面白そうだったので魔術も教えてきましたしね」
「あぁ
「……はい?」
知ってるはずがないだろうに。
だってマーリンはずっとここにいたはずなのだから。
その疑問が顔に出ていたのかマーリンは非常にいい笑顔を浮かべて致命的な一言を放った。
「私の千里眼を忘れたのかい?」
それを聞いて思い出した。
思い出してしまった。
マーリンの千里眼は現在全てを見通す目。
恐らくそれで俺とニミュエを見ていたのだろうな。
「……師匠。プライバシーって知ってますか?」
「夢魔の私には全く関係ないなぁ」
「人間社会に生きてるならそれくらい守りましょう?」
「はははは。まぁ私が聞きたいのは違くてね、
「………………おい」
「大丈夫だよ。最後までは見てないから」
「そういう問題じゃないと思うんですけど?」
ニッコリ笑いながら
それには流石に焦ったのかマーリンは引きつった笑いを浮かべる。
「なにか言い残すことは?」
マーリンが全力で逃げ出した。
「逃がすかよ!」
世界一くだらない鬼ごっこが開催されてしまった。
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