緋弾のアリア~次元の名を継ぐ者~ 作:マグナムリボルバーはロマン
奴隷。
その二文字にキンジと康介は頭を悩ませた。
アリアの顔は、決して冗談を言ってるような顔ではない。
(康介、どう思う?)
(本気とは思えないな。多分違う意味があるんじゃないか?)
(いや、でも、相手はリアル貴族だぞ。冗談じゃない可能性も……)
(そう言われると否定できねぇな)
「ちょっと、さっきから何固まってんのよ」
康介とキンジは、アリアに気づかれないように、指の動きだけで会話をしていた。
ついでに言うと、これは一般の武偵が使うものと異なり、康介とキンジが考えたものであり、アリアはそれに気づかなかった。
「いや、悪い。てか、奴隷ってなんだよ。俺たちに小間使いでもさせるってか?」
「それも悪くないわね。でも、今はそれより頼みたいことがあるの」
「頼みたいこと?」
「それよりさっさと飲み物ぐらいだしなさいよ!無礼な奴ね!」
「行き成り押しかけてくる奴は、無礼じゃないのか?」
「コーヒー!エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!1分以内!」
康介の言葉も無視し、アリアはソファーにぽすっと座る。
そんなアリアに、キンジは溜息を吐き、台所に向かう。
「素直に従うからお前はダメなんだよ……」
キンジがコーヒーを入れる姿を見つつ、康介は溜息を吐く。
そして、キンジはインスタントコーヒーを三つ持ってきた。
「ほらよ」
「悪いな」
康介はお礼を言ってコーヒーを受け取る。
「これ本当にコーヒー?」
「それしかないんだからありがたく飲めよ」
「変な味、ギリシャコーヒーに似てるけどちょっと違う」
お礼すら言わないアリアに、康介は頭が痛くなりつつも、コーヒーを飲む。
「今朝助けてくれたことには感謝してる。それにその…お前を怒らせるようなことを言ってしまったのは謝る。でもなんでここに押し掛けてくる?」
「分からないの?」
「分かるかよ!」
「アンタは?」
今度は康介の方を見て聞いてくる。
「知るかよ。そもそも、俺は途中から来たんだ。あそこまでの経緯なんて知るか」
「アンタたちならすぐわかると思ったのに。んー、そのうち思い当たるでしょ、まあいいわ」
何一つよくないと二人は思いつつも、何も言わないでいた。
「おなかすいた。なんか食べ物はないの?」
「ベーコンとグリンピースならあるぞ」
「おっ!ベーコン豆か、いいね」
ベーコン豆は康介の好きな料理の一つで、キンジもまた簡単に作れることから好んでよく食べている。
「なにそれ?変な料理ね」
だがアリアには理解できない料理らしく、たった一言、変だけで片付けられてしまった
「流石に毎日ソレってわけじゃないでしょ。普段はどうしてるのよ?」
「俺の基本はベーコン豆か、下のコンビニだ」
「こんびに?ああ、あの小さなスーパーのことね。じゃあ、行きましょう」
「じゃあってなんだよ。じゃあって」
「決まってるでしょ。買いに行くのよ。もう夕食の時間でしょ。あ、そこって松本屋のももまんって売ってる?」
コンビニで夕食を揃えた三人は再びキンジの部屋に集まり、夕飯を摂り始める。
康介はコンビニに行った隙に自身の寮に帰ろうとしたが、キンジにバレてしまい、いい笑顔で「俺たちは相棒だろ?逃げるなよ、次元ちゃ~ん」と肩を掴まれた。
康介のことを「次元ちゃ~ん」と呼ぶ時のキンジは、康介を巻き込む気満々で、もし逃げる様であれば、容赦なく愛銃のベレッタで撃ってくる。
武偵とは言え、コンビニの前で発砲事件なんかを起こしたくないので、康介は大人しくキンジに従った。
「それで、奴隷ってなんだよ?」
ハンバーグ弁当を食べつつ、キンジが訪ねる。
「
アリアは買ってきた5個目のももまんを頬張り言う。
「はぁ?なんで俺もなんだよ?」
康介は適当に買った焼肉弁当を食べつつ、アリアに尋ねる。
「太陽はなぜ昇る?月はなぜ輝く?アンタたち、質問ばっかの子供みたい。仮にも武偵なら情報を集めて推理しなさいよね」
「……なぁ、神崎」
「アリアでいいって言ったでしょ」
「悪いが、俺はテメーを信じてねぇんでな」
「………どういうこと?」
「武偵が気を付けなければいけないモノ。金と毒。そして、女だ。金は言わずもがな、毒はどんな実力者でも一舐めすりゃあの世行きだ。ま、毒にもよるがな。俺はこの三つの中でも、特に女には気を付けている。女を庇って死んだ奴はごまんと見てきた。それに、ハニートラップを仕掛けられて、情報を漏らし、裏切られた奴もな」
「あたしは、そんな女とは違うわよ」
「そりゃな。お前さんの体型みりゃ、それ目当てじゃないのはわかってる」
康介のその発言にアリアはイラっと来て、ガバメントを抜こうとする。
だが、それよりも早く康介はマグナムを抜いていた。
その速さにアリアは目を見開きつつも、すぐに冷静になり、ゆっくりとガバメントから手を放す。
「話を戻そう。いくらお前さんが、Sランクの実力者だろうと、女とは組まねぇ。単純に信じられないからな」
そう言い康介はマグナムを仕舞い、立ち上がる。
「帰る。キンジ、明日までにソイツを追い出しとけよ、でなきゃ、絶交だ」
「絶交のハードル低すぎだろ!?」
「ちょ、待ちなさいよ!」
二人の声をさっさと無視し、康介は部屋を出ていく。
「女………か」
康介の脳裏に金髪の一人の女性の顔が過る。
「ちっ!嫌なこと、思い出しちまったな………」
帽子を深く被り直し、康介は寮へと向かった。
「嫌な夢見そうだな………」