緋弾のアリア~次元の名を継ぐ者~   作:マグナムリボルバーはロマン

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3弾 銭形と呼ばれた少女

「……ちっ!やっぱ嫌な夢見たな……」

 

寝汗でベットリとした体を起こし、康介は頭を掻く。

 

ワイシャツを脱ぎ、熱いシャワーを浴びて体を清める。

 

新しいワイシャツに着替え、仕度を終えると寮を出る。

 

教室に着くなり、アリアが教室にいないことを確認するとカバンを置き、教室を出ていく。

 

いつもの定位置に向かい昼寝を決め込もうとした時だった。

 

「次元君、ちょうど良かったです」

 

次元を呼び止めたのは、担任で、探偵科(インケスタ)の担当教師の高天原ゆとりだった。

 

「先生……何か用ですか?」

 

「はい。次元君にご指名ですよ」

 

そう言って、先生は次元に書類を渡す。

 

「俺宛に?」

 

武偵校では、優秀な生徒に教務科(マスターズ)から仕事が斡旋されたり、こうして外部から仕事を指名で依頼されることがある。

 

「朝から早々で悪いんだけど、受けるなら今すぐに現場に向かって欲しいんだけど」

 

「いいですよ。授業サボって寝るよりは、建設的ですし」

 

「できれば、授業には出てほしいんですけど…………」

 

そう言う先生の声を後に、康介は現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛車のバイクで康介が向かったのは、とある美術館だった。

 

バイクを駐車場に止め、美術館に入る。

 

途中、入り口前にいた警官に止められそうになったが、武偵手帳を見せて、中に通してもらう。

 

「俺を呼んだのは、やっぱりお前か」

 

「やっぱり気づいてたんですね」

 

康介を出迎えたのは、東京武偵校の女子制服の上からベージュのトレンチコートを羽織り、頭には同色のソフト帽を被った一人の少女だった。

 

少女の名前は銭形浩美。

 

東京武偵校の二年生で、ICPOに出向している架橋生(アクロス)だ。

 

「俺を態々指名する物好きなんざ、お前さんしかいねぇだろうが」

 

「あら?私は康介さんの腕を評価した上で、今回の事件のお手伝いを頼んだんですけど」

 

浩美は口元をコートの袖で隠し、クスっと笑う。

 

「はぁ~……それで、今回は何の事件だ?」

 

「では、こちらに」

 

浩美に案内され、美術館の奥へと向かう。

 

「しかし、随分と物々しい警備だな」

 

「ええ、それだけ今回の事件は特別なんです。着きましたよ」

 

そう言って、浩美は康介にとあるショーケースを見せる。

 

そこには一本の刀が収められていた。

 

白鞘に納められ、鞘の形状が真っ直ぐなことから刀身の反りはほぼ直線か真っ直ぐに近い曲線だろうと、康介は推測する。

 

「この刀がどうかしたのか?」

 

「見てもらえれば、分かります」

 

そう言って、浩美はショーケースの鍵を開け、刀を取り出す。

 

「いいのか?」

 

「ええ。見る分には構いませんよ」

 

言葉に甘えて、康介は鞘から刀身を抜く。

 

「刃こぼれ一つしてねぇな。余程、修繕が旨いか、一度も使われなかったか、どちらかだな。だとしても、この時代にまで、これだけの保存状態なのはスゲェな」

 

「それはどちらも違いますよ」

 

「何?」

 

「その刀は、これまで一度も修繕したことも、一度も使われなかったこともない。その刀が生まれてから、今日この日まで使われ続けた物です」

 

「………冗談はよしてくれ。お前さんも武偵なら、分かるだろ。刀は消耗品だ」

 

康介の指摘通りである。

 

刀は人が思ってるより頑丈ではない。

 

刃が骨に当たれば刃は欠けるし、三、四人斬れば使い物にはならない。

 

「そうですね。ですが、一流の剣士が業物である刀を使えば、それも可能では?」

 

「………まぁ、有り得なくはないか」

 

康介はそう言い、刀身を戻し、浩美に渡す。

 

浩美は、刀をショーケースに戻し、鍵を閉め直す。

 

「で、この刀がどうしたんだ?」

 

「今日の早朝に予告状が届いたんですよ。この美術館に」

 

「予告状だと?」

 

「これです」

 

浩美が渡して来た予告状にはこう書いてあった。

 

『本日 未の刻 鉄を斬る剣を 頂戴に参る』

 

「随分と、古臭い言い方だな」

 

予告状を浩美に投げ返し、康介は頭を掻く。

 

「しかし、鉄を斬る剣………こいつがあの斬鉄剣って訳か」

 

斬鉄剣。

 

その剣の名を知らぬものは、武偵はもとより警察でも知らぬ者はいない。

 

文字通り、鉄を斬る剣ではあるが、鉄以外にもなんでも斬れる剣であり、その製法は未だに明かされてはいない。

 

康介自身、話では聞いてことがあるが実物を見たことがなかった。

 

「ええ。もっとも、その可能性のある一本の刀ですけどね」

 

「可能性のある?」

 

「知りませんでしたか?斬鉄剣の可能性のある刀は、現在、四本あります。一つは、とある一族が作り出した特殊合金で打たれた物。これは現在、その一族の現当主が保管しています。もう一つは、東洋の秘伝の金属で打たれた物。こちらは、アメリカのとある大富豪が所有しており、最新の電子金庫に保管してあるとのことです。そして……」

 

言葉を区切り、浩美はショーケースの方を指す。

 

「虎徹・良兼・正宗、三本の名刀を溶かし打ち直されたこの刀です」

 

「なるほど。それで、最後の一本は?」

 

「……流れ星の金属で打たれた刀。もっとも、これは現在、どこにあるかはわかりません」

 

「どういうことだ?」

 

「確かに刀は実在するのですが、今は誰の手元にあるのかは不明なんです。ま、それはともかく、問題は、何者かがこの斬鉄剣を狙っているということです。銭形の名に懸けて、この刀を盗ませません」

 

拳を握り、厳しい目つきになって浩美は言う。

 

康介は、溜息を吐きながらも帽子を被り直し浩美を見る。

 

「わーったよ。犯行予告時間まで、俺もここで警備に着けばいいんだろ?やってやるよ」

 

「流石は康介さん。期待してますよ」

 

浩美は、先程とは打って変わって笑顔になり、康介の背中を叩く。

 

「だが、未の刻って言えば、確か13時から15時の間だよな。まだ結構時間あるぞ」

 

康介の言う通り、時刻はまだ11時になったばかり。

 

予告時間まで、まだ2時間ほどある。

 

「ええ。少々早いですが、昼食にしましょう。それに、康介さんのことを口説かないといけませんのでね」

 

「お前さんの相棒になって、ICPOに出向しろって話ならお断りだぞ」

 

「あら?バレてましたか。では、普通にデートと行きましょう」

 

「ただ昼めし食いに行くだけだろう」

 

「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか。この近くに、美味しい和食のお店があるんです。海外の料理もいいですけど、やっぱ日本食が一番ですしね」

 

小走りに美術館を出ていく浩美の背中を見て、康介は今日何度目かわからなくなる溜息を吐き、その後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、犯行予告の13時が回ってきた。

 

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