緋弾のアリア~次元の名を継ぐ者~   作:マグナムリボルバーはロマン

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5弾 キンジの帰還

ある日の放課後、康介は久しぶりに強襲科(アサルト)棟に顔を出していた。

 

「次元君、久しぶりだね」

 

「不知火か。元気そうで何よりだ」

 

声をかけてきた同級生で、クラスメイト、そしてAランク武偵の不知火亮が声をかけてきたので、康介も挨拶をする。

 

「ここに顔を出すの、随分久しぶりなんじゃない?」

 

「かもな。最後に顔出したのいつだったか、憶えてすらいねぇや」

 

そう言い、康介は射撃レーンへと向かう。

 

「射撃訓練かい?」

 

「ああ。たまには、弱装弾じゃなくて本物のマグナム弾を撃ってやらねぇとな」

 

リボルバー内に.357マグナム弾を籠め、いつも通り背中側に差し戻す。

 

「勝負するか、不知火?」

 

「次元君相手に射撃勝負なんて、勝つ気がしないけど、折角誘われたんだし、いいよ」

 

不知火は自身の愛銃“H&K MARK 23”、ソーコムを構える。

 

「じゃ、始めるぞ」

 

射撃レーン使用のブザーが鳴り、それを合図に不知火はターゲットに発砲する。

 

康介はブザーを合図に、マグナムを抜き、早撃ちで6発を撃ち切る。

 

撃ち切ると素早くリロードし、再びターゲット目掛け撃つ。

 

互いに12発撃ち切り、ターゲットの確認をする。

 

不知火のは、多少のズレはあるものの、全てが中心の円に当たっていた。

 

「流石だな」

 

「次元君にそう言われると光栄だよ。でも、次元君には敵わないね」

 

そう言い、不知火は康介のターゲットを見る。

 

康介のターゲットには、中心にのみ穴が開いている。

 

最初に当たった穴目掛け、早撃ちで弾丸を通すと言う技を康介はやって見せたのだ。

 

「こんなの宴会芸の範疇だ。実戦じゃ、ここまでのことはできやしねーさ」

 

そう言って、康介は新しい弾を込める。

 

その時、急に棟内が騒がしくなった。

 

「どうしたんだろう?」

 

「さぁな。なぁ、ちょっといいか?」

 

近くにいた生徒を捕まえ、康介が尋ねる。

 

「ん?なんだよ?」

 

「急に騒がしくなったんだが、何かあったのか?」

 

「キンジだよ。キンジが帰ってきたんだよ」

 

「なに?」

 

キンジが強襲科(アサルト)に戻って来たと聞き、康介は驚く。

 

足早に強襲科(アサルト)棟の出入口に向かうと、そこには多くの生徒に囲まれているキンジがいた。

 

「キンジ!」

 

「康介か!ちょっと助けてくれ!」

 

「たっく、仕方ない奴だな」

 

呆れつつも、康介はキンジに群がる生徒を追い返し、キンジを救出する。

 

「それで、どんな風の吹き回しだ?お前さんが、強襲科(アサルト)に戻ってくるなんざ、ちょっとしたニュースだぞ」

 

「アリアだよ。それと戻ったんじゃなくて、自由履修で来ただけだ」

 

「神崎だと?」

 

アリアの名前を聞き、康介は嫌そうな顔になる。

 

キンジの話によると、昨日、アリアにキンジの体質、ヒステリアモードのことについて迫られ、勢い余ってキンジは自由履修で、一度だけ強襲科(アサルト)に戻り、そこで起きた事件を一つだけアリアと共に解決すると言う条件を付けて、アリアと一時的にコンビを組むことになったらしい。

 

「お前ってやつは………だからお前はダメなんだよ」

 

「何がダメだって?」

 

「そこで、変に妥協するから厄介な事になるんだろうが!」

 

「これでも、俺なりに頑張って交渉したんだよ!」

 

「小学生だって、小遣いのUPにもうちょっとマシな交渉するっての!」

 

互いに罵り合う様に口喧嘩するも、二人は何処か楽しそうな表情をしており、その姿をアリアは遠目に眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっく、康介の所為で時間が無くなっちまっただろ」

 

「俺の所為だってか?よく言うぜ。あいつらの相手してたからってのもあるだろうが」

 

「銃の訓練ぐらいはしたかったのに………」

 

二人肩を並べて強襲科(アサルト)棟を出て、寮に帰ろうとしていた。

 

「キンジ、康介」

 

そんな二人の前に、アリアが現れた。

 

「なんてオメーがここにいるんだよ、神崎」

 

「何処で何してようと、私の勝手でしょ?」

 

アリアはそう言うと、キンジの方に視線を向ける。

 

「それにしても、アンタって人気者だったのね。ちょっと意外だったわ」

 

「別に、あんな奴らに好かれたくもない。そういうお前はどうなんだよ?」

 

「私は………実力差があり過ぎて誰も近寄ってこないわ。まぁ、あたしは“アリア”だからいいんだけど」

 

普段と違うイントネーションで自分の名前を読んだことにキンジが首を傾げる。

 

「オペラの一人で歌うパートのことだな」

 

そんなキンジの疑問を察して、次元が呟く様に言う。

 

「なるほどな……で、ここで俺と康介を奴隷にして“トリオ”にでもなるつもりか?」

 

「うまいこと言ったつもりかよ。面白くねぇぞ」

 

アリアの方を見ずに、そう言うキンジに、康介は辛口のコメントをする。

 

しかし、アリアはクスクスと笑った。

 

「あんたも面白いこと言えるんじゃない」

 

「面白くないだろ」

 

「面白いわよ」

 

「お前のツボが分からん」 

 

「やっぱりキンジ、強襲科(アサルト)に戻ったとたんちょっと活き活きし出した。昨日までのアンタはなんか、自分に嘘ついてるみたいで、どっか苦しそうだった」

 

「そんなこと……ない」

 

キンジはまるで本当の事を言われてるかのような気分になり、足を僅かに速める。

 

「てか、俺を頭数に入れるなよ。組むのはお前と神崎なんだから、コンビだろ」

 

先程のキンジのギャグに、自分が入ってることに気づき、康介はそれを指摘した。

 

「何言ってるのよ?あんたも一緒に決まってるでしょ。キンジとはそう言う風に話がついてるわよ」

 

「なんだと?」

 

アリアにそう言われ、康介はキンジを見る。

 

「おい、キンジ。どういう事だ?」

 

「あぁ……いや、そのな………アリアに出す条件としては少し弱いと思って、条件の中に、お前も含めた」

 

「はぁっ!!?」

 

今になって明かされた取引の内容に、康介は声を上げる。

 

「キンジ、お前な!」

 

そして、キンジの胸ぐらをつかみ引き寄せる。

 

「なに勝手に俺のことを取引材料に使ってんだよ!てか、なんで黙ってた!」

 

「言ったら、お前怒るだろ?」

 

「当たり前だ!俺は女とは組まねぇんだよ!」

 

「そう固いこと言うなよ」

 

「お前って奴は…………はぁ………」

 

康介はキンジの胸ぐらから手を放し、溜息を溢す。

 

「………一回だけだぞ」

 

「悪いな、康介」

 

最終的に康介が折れてキンジの出した条件を飲み、こうして康介はアリアのチームに一時的な加入をすることになった。

 




だいたいルパンって次元や五右衛門に対して一部のこと(主に不二子関係)を隠して仕事に付き添わせて、現場でついポロっと漏らし問い詰められるってこと多いですよね

次回から時間が飛んでバスジャックになります

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