ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで! 作:ルビィちゃんキャンディー
皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回は七宮さんの登場回第2弾。よろしくお願いします
まとわりつくような暑さが消えることは無い。南の島、ライオコット島は太陽が支配する地だ。道を歩いているだけでも汗が止まらない。
私、七宮梅雨はとある場所を目指し街道を1人歩いていた。先程まで…何故かラーメン屋で店員をしていたのだが、状況を理解出来ないまま接客し、バイト代を貰って屋台を後にした。
小腹が空いたため立ち寄ったラーメン屋…大将が急用ができたと言ってレシピを残し、走ってどこかへと消えていったのだ。
ラーメンなど絶対に無理だと思っていたが、レシピが思った以上に分かりやすく。まぁ、私自身、バイトの経験は何度もあるが…とりあえず。大将が戻ってくるまでは店番をすることが出来た
『あれ…お店閉めちゃうんですか?』
『悪ぃな。急用で島を出ることになったんだ。サニデイジャパンは決勝まで応援したかったが…』
戻ってきた大将はそう言った。
手早く道具を片付けながら、悔しさと寂しさが顔から伝わってくるのがよく分かる。これはお礼だと多めにバイト代を貰い、私がお金を財布をしまった頃にはすでに、大将は立ち去る瞬間だった
『俺の分も応援頼むわ!いつかまたどこかで会ったら、ラーメンご馳走するからな!』
短い時間の出会いだったが、なんだか心に小さな穴が空いたような寂しさを覚えた。
だが、今は沈んだ気持ちになっている暇はない。
小走りで私は今朝確認したルートを頭に呼び起こす。今現在の目的地はスペインエリアのとある屋台。
ライオコット島グルメガイドに掲載されていた、スペイン王道の料理『クロケッタ』の数量限定販売だ
「うわ…凄い列」
スペインエリアに入り、目的地に到着した時にはすでに長蛇の列。今から並べば何とかなりそうだが、この人数が求める『クロケッタ』…やはり味には期待できそうだ。
────だが、それは自分の番を目の前にして起こった。
「クロケッタ50個頼むわ」
七宮(……!?50!?!?)
私の前の客が…クロケッタを50個も注文していた。ちなみにクロケッタとはスペイン風のコロッケ。数個でお腹に溜まってくる物を…50??いや、もしかしたら団体を代表しての買い出しかもしれない。
そんなことを考えながら、絶品と評判のクロケッタ…私が注文する番がやってきた
店員「申し訳ございません。クロケッタは先程のお客様の分で売り切れです」
七宮「………」
私の番が…やってくるはずだった、のだ。
実際にはしていないが、私は頭の中でその場で倒れ込む自分をイメージしていた。魂が抜けたかのように無になり、呆然と立ち尽くす自分…
そんな私の背後で…誰かが呼んでいたことに気づくのは、それから少しばかり時が流れてからだった
「すいません」
七宮「…は、はい?」
「もしかして、私が買い占めたせいでクロケッタが買えなかったのでは…?」
七宮「あ…あの、」
背後から話しかけできたのは少女。先程、クロケッタを50個買った少女だった。
確かに彼女のせいではあるが…そうハッキリと言うことは出来ない。そんな時だった
「申し訳ない。もし良かったら、一緒に食べないか?クロケッタ」
七宮「…え!?」
「申し遅れたな。私はクラリア・オーヴァン。スペイン代表でサッカーをしている」
七宮「…か、カタルーニャの巨神」
近くのベンチに座り、私はクラリア選手からクロケッタを頂くことにした。今はちょうど正午。今日のお昼はこれになりそうだ
七宮「…!!」
そして念願のクロケッタを口に運ぶ。
やはり…美味い。美味すぎる。スペイン風コロッケの名の通り、外はカリカリであるが、中のこれは…ソーセージ?チーズも入っているだろうか?
クロケッタはお店独自の作り方をするため、味が大きく変わったりする。ベシャメルソースを加え、サクサクと音をたてながら味わう。
スペイン人が美味しいレストランやバルを見分けたい時には、まずクロケッタを頼むとよく聞く。シンプルで普遍的な料理なだけに、料理人の腕が強く反映されるということなのだろう
クラリア「気に入ってもらえたようだな」
七宮「ありがとうございます。クラリアさん。ご馳走になってしまって、」
クラリア「いや、私もあの数は良くなかったな。日頃、食べる時とは違って数量限定だからな…」
…日頃?日頃から50個もクロケッタを食べているのだろうか。クラリア選手はテレビで試合を見た時から思っていたが、そんなに大柄というわけでもない。そんな大量に食べれるとは…いや、人は見かけによらないものだ。
サニデイジャパンの選手たちと身長は変わらないクラリア選手だが、試合では圧倒的なフィジカルで日本の選手たちを苦しめていた
クラリア「七宮は日本代表のサポーターだな」
七宮「そうですね。ロシア戦の応援に」
素晴らしい戦士たちだった。クラリアはサニデイジャパンの選手たちをそう呼んだ。
日本のサポーターたち、そしてメディアもヨーロッパ3強との戦いで日本が勝利を勝ち取るのは厳しいと…考えていた。
予想通り、前半はスペインの一方的な試合となり…勝ち点は絶望的かと思われた
クラリア「だが、彼女たちは諦めなかった。その場で…秒単位の進化を続け、私たちのサッカーを完全に封じてみせた」
"ダイヤモンドレイ"。そして1度も使ったことがない必殺技、"ダイヤモンドエッジ"が止められた時にはさすがに信じられなかったと語るクラリア
クラリア「彼女たちには無限の可能性がある。ひょっとすると、このまま世界の頂点へ…と期待してしまうんだ」
七宮「クラリアさん、」
「ジャパンの可能性。私も同意見です」
クラリア、七宮「「!!」」
クラリアの声とは別の方向から、自分たちに話しかけてくる声がする。
顔を上げるとそこには、この島の空のように明るく澄んだ水色の髪の少女が立っていた。整った顔に品のあるその姿は―――まさに、紳士淑女
クラリア「久しぶりだな。エドガー」
エドガー「あなたが珍しいですね。観光客の方とお話しとは」
イタリア代表"ナイツ・オブ・クイーン"のキャプテン、エドガー・バルチナス。
聖剣"エクスカリバー"で何度も日本のゴールを叩き割り、日本を追い詰めた選手
クラリア「エドガーもクロケッタを?」
エドガー「いえ。私のお目当てはガスパッチョ。ここの味付けは絶品なんです」
そういえば、雑誌の中にガスパッチョを紹介するコーナーがあったのを思い出した。
スペイン料理の簡単に言えば、風味の強いトマトスープ。日本でいえば味噌汁クラスの需要があるスープなのだとか。
私もあとで飲んでみよう
エドガー「私にとってサニデイジャパンの選手たちは友と呼べる存在です」
意外だった。話を聞くと、Aグループの4チームは今でも交流があるぐらいに仲が良いという。歓迎パーティーなどもあったというが、それだけでここまでの繋がりになるのだろうか。
少し疑問に思いながらも選手たちの話を聞き、私は次なる目的地へと向かうことにした
クラリア「イタリアの公開練習か」
エドガー「でしたらすぐそこのバス停から、バスで向かうのが早いですね」
スペインとイギリス。両チームの選手との素晴らしい時間を過ごした私は言われたバスへと乗り込んだ。
車内はクーラーにより快適な温度が保たれており、空いている席に座り、私は財布からとあるチケットを取り出した。
"公開練習入場券"と書かれたそのチケット。本日行われる、イタリア代表の公開練習を観戦するためのものだ。
代表選手たちの練習を間近で観る…それは日本にいた時には夢の話。テレビで見るだけのことだと、その時は思っていた
「Youのそれ、イタリア代表のチケットじゃない?」
七宮「!?」
しかし、私は今この島にいる。
テレビで応援していた選手たちと…海を越え、同じ空気を感じ、暑さに汗を流している。
そして…また1人、いや3人。新たな出会いが生まれた
「Sorry。あなたが同じチケットを持ってたから、ディランが話しかけたようだ」
ディラン「そうさ!矢澤アニキのサポーターはミーのフレンドでもあるからね!」
七宮「や、矢澤アニキ…?」
金の髪を揺らし、イケメンスマイルを炸裂させるこの少女…アメリカ代表キャプテン"マーク・クルーガー"。
彼女の話によると、矢澤アニキとはあのサニデイジャパンの矢澤にこ…だが、何故にアニキなのか?私は女性はアネキだとマークさんたちに教えようとしたが、
「アニキはにこ公認なんだ」
七宮「そ、そうなんですか?」
イチノセ「だからそのままにしてあげて♪(嘘だけど。アニキの方が面白いし)」
日本人であるがアメリカ代表。そして"日本のファンタジスタ"矢澤にこと接戦を繰り広げた選手…一之瀬神奈選手がそれを止めた。
どうやら彼女たちもイタリア代表の公開練習を見に行くようで、日本代表の話をしながら、私たちは目的地へと向かった
―――
ディラン「さすがイタリア…!!凄い動きだ!」
練習を見ている間、ディランは子供のように目を輝かせ、その場でハイなテンションではしゃいでた。
私もそうなる気持ちはよく分かる。イタリア代表オルフェウス…まさに、限りなく完成されたチームワーク。優勝候補筆頭。
戦場とまで言われたグループAで圧倒的な力を見せ、サニデイジャパンも…オルフェウスとの試合で敗北している
マーク「あのGKがフラム・ソレイユか…あの"ラストリゾート"を防いだ」
イチノセ「私たちは完膚なきまでに叩きのめされちゃったからね」
サニデイジャパンのエースストライカー、黒澤ルビィの最強の切り札"ラストリゾート"。
その触れないシュートは、止めることは不可能だと言われていた時期があった。しかし、
七宮「ボールを止めるという常識を捨てて…受け流すことで最強に抗ったフラム選手、」
数十メートル先でボールに食らいついている少女は、容姿が高坂穂乃果に似ているだけでなく。
燃えるような目と覇気…熱血という言葉が相応しいその姿に、自然と日本の太陽を照らし合わせてしまう
イチノセ「そういえば、和葉と鞠莉の姿が見えないね」
七宮「……あれ?確かに、」
フィールドを見渡しても2人の姿はどこにもない。主要メンバーであるはずの選手が何故…?理由は予想もしなかった人物が教えてくれた
フィレア「2人は監督に呼ばれてどこかに出かけちゃった」
七宮「!?!?」
イチノセ「フィレア…!久しぶり!」
フィレア「元気そうだねカンナ。まさかあなたたちが来てるなんて」
マーク「イタリア代表のサッカーは素晴らしいレベルだからな。見学だ」
七宮(アメリカ代表の選手たちは"白き流星"と知り合いだったんだ…)
観客席で練習を見ていた私たちに近づいてきたのはフィレア・アルデナ選手。
国を越えた関係に私は心を躍らせながら、少女たちの会話に耳を傾ける。小原鞠莉と三浦和葉が見れなかったのは残念だが、それ以上に濃い時間を彼女たちのおかげで過ごすことが出来た
フィレア「それで…そちらの方は?」
ディラン「ジャパンサポーターの七宮!ミーたちの友でもあるよ!」
フィレア「なるほどね。日本の」
私が日本のサポーターだと気づいた瞬間、フィレアの優しかった笑みは一変。試合中に見せるような、熱く燃える選手の表情をしていた
フィレア「日本は強い…グループ戦の時よりも成長してる…今や私たちよりも強いかもしれない。でも、」
フィレア「私たちも負けるつもりは微塵もないよ」
イタリアが日本と再戦するのは決勝。泣いても笑っても、日本のリベンジはその1試合しか存在しない。
フィレアの勝ちへの意思が伝わってきた。だが私もそれ以上に日本の勝利を願っている
七宮「絶対にいい試合になると思います。だがら、準決勝…頑張ってください!」
フィレア「ありがとう。日本もね」
ディラン「勝敗もいいけど、やっぱりジャパンとのサッカーは楽しいよね!」
マーク「あぁ。心の底から楽しめる」
フィレア「日本に救われたチームもいるみたいだしね」
七宮「日本に…救われた?」
私が尋ねると一之瀬神奈が1枚の紙を渡してきた。そこに書かれていたものは、目を疑うもの
イチノセ「良かったら直接聞きに行ってみて。にこ繋がりで、私もあの子とは知り合いなんだ」
――――――
ロニージョ「ジャパンは…私たちの恩人さ!」
紹介された人物とは"クイーン・オブ・ファンタジスタ"。ブラジル代表、ロニージョ選手のことだった。
前監督、ガルシルド・ベイハンによる人体実験や人質にされた家族。それらの闇から解放してくれたのが…サニデイジャパンだったという
ロニージョ「私たちにサッカーを楽しむことを思い出させてくれた…あんなに本気になれた試合は久しぶりだったよ」
七宮「でも、ガルシルドが逮捕された今…家族の仕事は…」
ロニージョ「それがね?イタリア代表監督のサエ・オハラが、家族に仕事を提供するって約束してくれたんだ…!」
小原鞠莉の母親である小原サエ…確かにオハラグループほどの規模の企業ならば、南アメリカにも会社を持っていてもおかしくない
七宮「じゃあ、これからもサッカーを」
ロニージョ「続けていくさ…!それに、にこと約束したんだ。フリースタイルフットボールの世界大会で…決着をつけるってね」
一之瀬神奈や矢澤にこもそうだが、サッカーとフリースタイル、どちらの代表選手にも選ばれている彼女たちには驚かされる。
FFIが終わればアメリカで大会があると教えてもらった。彼女たちの戦いは、まだまだ終わっていないのだろう
ロニージョ「……もう夕方か、そろそろ戻る時間かな」
七宮「…あ、肝心なところに行くの忘れてた」
気づくと太陽は赤く燃えていた。つまり、まもなく日が沈む。
私は日本代表サポーターとして、一番行かなければならない場所…サニデイジャパンの練習場所へと、行き忘れていたのだ
ロニージョ「今日はジャパンの公開練習でもあったね。まだ間に合うんじゃない?」
ロニージョ選手にジャパンエリアへの最短距離で行ける道を教えてもらい、私は昼間のように急ぎ足で。日本代表の元へと向かった。
言われた通りの道を行くと、ブラジルエリアとジャパンエリアを繋ぐ橋があり。そこを渡るとなんと、あのラーメン屋のあった場所に戻ってきたのである。
つまり、私は今日1日でライオコット島を一周したことになる
――――――
私がサニデイジャパンの練習グラウンドに着いた時には、すでに練習が終了していた
七宮「間に合わなかったか…」
だがその分、今日1日だけでたくさんの国の選手たちと出会った。日本代表が戦ってきた国の代表選手、全員がサッカーを心から楽しんでいるようだった。
一生の思い出になるのと同時に、日本代表への想いがよりいっそう強「どうかされましたか?」
七宮「…??」
聞き覚えのある声がした。
私のすぐ後ろで、大人のように落ち着いた雰囲気が混じるこの声は―――
聖良「応援の方、ですか?」
私の一番好きな選手の1人、鹿角聖良さんだった
七宮「あ、はい。そうです」
聖良「申し訳ないです…練習はもう終わりで、私しかもう残っていなくて」
間に合わなかったのは残念だったが、聖良さんが目の前にいた時には、一瞬何が起きたのか分からなかった。
函館聖泉時代から、理亞ちゃんと聖良さんのファンだということを伝え、私はこの場から引き上げることにした
七宮「ロシア戦…応援してます!頑張ってください!」
聖良「ありがとうございます。理亞にも伝えておきますね」
優しく微笑む少女をさらに輝かせるように、夕日が明るく、そして空には幻想的な夜空が広がっている。
今日という思い出を忘れないように、私は夜でも賑やかなジャパンエリアの街へと向かうことにした。
そして数日後、日本はロシアと…FFIの歴史に残る激戦を繰り広げることになるのだが…それはまた、別の話
スペインエリアの屋台にはトマトスープ目当てで真姫ちゃんも並んでそう。