ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで! 作:ルビィちゃんキャンディー
お久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。
長期休載となりましたが、輝こうの最終章の開幕です。
最終章は熱血スポーツ小説というよりかは、時空を超えた戦い、いわゆる戦争に近いテーマで書いていこうと思っています。
戦闘シーンも増えるかもしれませんが、サッカーという主軸からは外れないように書いていきます。
最終章 1話 「消えたサッカー」
気がつくと私は走っていた。
グラウンドの上をただひたすらと、無意識のうちにボールを蹴っていたようだ。
別に驚くことではなく、常日頃から自分の生活の一部のようにドリブルを行っていることは自覚していて、チームメイトからは、ボールと友達?と若干引かれるほど、暇さえあればボールを触っていたほどだ。
ただ不思議なことに、今走っているグラウンドはいつまでたっても、目指す場所であるゴールが見えてこない。
一体どれだけ走ったかは記憶が曖昧で覚えていないし、まず、何故ドリブルをしているのかも分からない状態だ。
だから今はとりあえず走り続けよう、息は切れてきているが、足がまだ動いており、集中力もそれなりに保てていると思っていたが、突然頭の中に"ノイズ"が入り込んでくる。
"なんでサッカー…?"
誰の言葉かは分からないが、深く心に突き刺さる言葉だったのだろう、若干ドリブルのリズムが乱れた。
それと同時に、何となくではあるが、ゴールが少しだけ遠くなった気がした。
その間もノイズは絶え間なく続いており、どれもこれも誰の言葉かは覚えがないが、実に不快で、耳を塞いでいたかった。
だがそれを体が許さず、ひたすらにドリブルを続けており、私は若干この状況に恐怖を覚え始めていた──────
"私たちの世界では、現に今でも戦争中です"
ここで、私はついにドリブルを止めることができた。
いや、止まってしまったが正しいのかもしれない。
今までの言葉の中でも一番の大ボリュームであり、まるで鼓膜の内側から爆音を叩きつけられたかのように、体がビクつき停止した。
何だろう、冷や汗が溢れてきた。
恐怖が自分の中で膨れ上がるのを感じていると、グラウンドだったはずの場所は荒廃した世界へと変わっていた。
誰もいない、ただ壊れた、ただ崩れ落ちた世界が一面に広がっており、言葉が出なかった。
何故か、理由は分からないが、それが全て自分の責任のように感じ、心身共に震えが止まらない。
そしてもう一度、鼓膜の内側から爆音が脳みそを殴った。
"これも全て…お前のせいだ高海千歌!!!!"
「うわあぁぁぁぁぁっっ!?」
自分の声が室内に響き渡った。
また場所が変わったと思ったが、今度は自室のベッドの上、先程までは無かった温もりと、窓から流れ込む新鮮な空気、過呼吸気味の身体を落ち着かせながら情報を整理するが、最初から答えは出てた。
また夢か、千歌は顔を手で押さえながらそう呟いた。
夢の中では自分が何故こんなことをしているのかも分からずに、半無意識的に行動し、"映像"みたいなものを淡々と見せられることがほとんどで、今回もそれが該当する。
なので夢から覚めると忘れていた現実の情報がどっと脳内に溢れ出し、気づいた時には夢の記憶はすっかり忘れているものだ。
だが、ここ最近は忘れるどころか、鮮明に記憶されたままだった。
よりにもよって悪夢を。
夢の内容だからバカバカしいと気にしなければ勝ちなのだが、最近の夢はどうもそれだけで終わらせるには違和感が残るものばかり。
だが大量の汗でパジャマはびしょ濡れ、目覚めもスッキリしないし最悪なのだが、いつまでたっても気になって仕方ない。
そんな高海千歌を毎朝リセットするのは、スーツを着た出勤前の姉の仕事だ。
「千歌ぁ!!いつまで寝てんの毎朝毎朝!!って、また部屋散らかってんじゃん!?なんなのこれ!?」
良くも悪くも、姉の騒がしい声が彼女を現実へと戻してくれるのは確かだ。
千歌は一呼吸おき、ベッドから降りると、汗を流すため風呂場へと向かう準備を始めた。
こうして、高海千歌の一日はスタートする。
「また部屋が勝手に散らかってたの?」
エンジン音が車内に響く中、少女2人は奥の座席でいつも通りの会話を続けていた。
窓から見える海を横目に、ため息混じりに高海千歌は今朝の出来事を少女に報告する。
「ここ毎日…起きたら足の踏み場もないぐらい物が散らかっている現象…おかしいよね。やっぱり」
「おかしい…わね」
「千歌はしいたけの仕業だと思うんだけど…」
しいたけ、とは高海家の家族の一員である犬の名前であり、寝ている間に悪さ…すなわち部屋荒らしの犯人ではないかと疑いがかけられている。
しかし、しいたけがそんなことをする犬ではないといことは、千歌自身もよく理解している。
だがそれ以外に理由が見つからず、?マークを浮かべながらの毎日毎日部屋の片付けの繰り返し。
もちろん、スーツを着た姉のうるさいモーニングコール付きで。
「はぁ…おかげで朝から疲れ気味だよ」
「しっかりしてよね?朝練もあるんだから」
千歌の気の抜け具合に呆れる少女、桜内梨子の口からため息が出るのは時間の問題だった。
桜内梨子、"旋律の指揮者"と呼ばれた天才ゲームメーカーであり、その指揮は数々の強豪国を打ち倒す"魔法の杖"となった。
なっていた……はずだった。
バスは目的地に到着する。
降りた場所は去年まで通っていた学校ではないが、確かに私たちの学び舎である。
名は清真高校。
青のブレザーと赤いチェックの白スカート、リボンを胸元に付けた少女たちが校門に吸い込まれていく。
浦の星女学院にいた時には考えられない光景であり、未だにこの登校には慣れていない。
そして…今の自分の生活にも慣れていない、いや、慣れることが出来ない。
横から聞こえる梨子の言葉に、千歌は恐怖で立ち止まる。
スクールアイドルの練習、遅れるよ?
───今の私たちは、サッカー部ではない。
―――
FFI世界大会を終え、帰国してからすぐにその知らせは来た。
『世界でサッカーを続けないか?』
つまり、海外留学だった。
渡辺月が育ち、黒澤ルビィが蹴ったその挑戦。
世界から認められた高海千歌の実力、国内だけに留まる実力ではないことは…本人も薄々自覚していた。
考えに考えた末、千歌は留学の道を選び、最初の短期留学として数ヶ月日本を発った。
善子はルビィと同じく海外留学の件は蹴ったらしく、千歌の背中を力強く押してくれた。
それからの日々は目眩しく、ハイレベルを超えるハイレベルなサッカー生活を過ごした。
最初は不安だったイタリア語も気づけば簡単な会話ができるほどまでに上達し、日本の高校の授業が英語ではなくイタリア語だったらと、何度悔しがったことか。
日本に戻ったらプレーだけでなく、イタリア語の会話でも驚かせてやるんだと、戻る日が近づくにつれ、まるで遠足を待つ小学生のようになかなか寝付けなかったのを覚えている。
しかし、それらで仲間たちを驚かせることは無かった。
逆に自分が驚かされてしまった。
帰ってきたら自分の周りからサッカーが消えていたのだ。
跡形もなく、私以外のみんなからきれいさっぱりと。
最初は何の冗談だと笑っているだけだったが、自分が置かれている状況、現実を理解した瞬間、一気に血の気が引いた感覚は…未だに体に染み付いている。
冗談では無く、サプライズでもない、全てをリセットしたかのように"サッカー"に関わるものが全て消えたのだ。
代わりに、サッカーが消えたことによりできた穴に埋め込まれた、"自分には無い記憶"…スクールアイドル。
学校でアイドル活動をするという、泥臭く走り回っていた自分からして見れば、まるで真逆な世界へと放り込まれた気分だった。
最初は原因を突き止めようと奮闘したのだが、異様な目で見られたり、不審がられることから、次第にこの世界に染まりつつあった。
いや、諦めかけている…と言った方が正しいか。
練習はグラウンドではなく屋上で、必殺技の特訓ではなく作詞を梨子から急かされたりもした。
変わらないことといえば、体力作りのマラソンぐらいだった。
みんなとサッカーをしている時と同じ光景に、私はその時だけ元の世界に戻ったような安心感を得ていた。
張り切りながら走り出し、誰かと競走でもしようかと後ろを振り向いた時だった。
「ち、千歌ちゃん速すぎるよ〜!?」
「…………」
多分、その言葉が決め手になったんだと思う。
仲間たちの走りを見て、私が思ったことは一言、"遅い"だった。
サッカーをしていた時の彼女たちとは別人なんだと、それでハッキリしたのと同時に、私はひとりぼっちなのだと気づいた。
サッカー選手高海千歌はこの世界に存在しない。
みんなの目にはスクールアイドル高海千歌が映っている。
耐えられなくて、何度逃げ出そうとしたか。
怖かった。
私の目の前にいる"仲間とそっくりな人"たちは、"私の知らない私"を知り尽くしている。
そんな中でこの世界の高海千歌を演じるなど、私には出来なかった。
気づいた時には仮病で練習をサボることが多くなり、休日もぼーっと1日を過ごすようになっていた。
なるべく、みんなの前ではいつも通り明るく振る舞おうと努力していたが、それもそろそろ限界のようだ。
今日の私は部活には参加せず、帰宅するために校門へと向かっていた。
罪悪感で押しつぶされそうだったが、足早に校舎から離れていくと、私は嫌なことを思い出してしまった。
「今日のバス…確か次は30分後」
こういう時の街のバスは頼りない。
お世辞にも人が多いとは言えない地域に住んでいる自分が悪いのだが…走って帰ろうか、そう考えていると、どこからか懐かしい声が聞こえてきた。
サッカー部か
気づいた時にはバス停から離れ、グラウンドへと向かっていた自分には驚いた。
だが、理由は分かっている。
この孤独感から逃れるため、少しでもサッカーに触れていたかった。
飢えている。
肺がはち切れるぐらい走って、全力でぶつかり合って、叫びたい、暴れたい。
グラウンドへと着くと、見慣れた光景だった。
今は試合形式の練習をしているようで、本番さながらの熱いゲームが繰り広げられている。
レベルもかなり高い。
その度に清真高校が部活に力を入れている学校であったことを思い出す。
浦の星女学院の時に戦ってみたかったと、本来なら私もあの場で走っているはずだと、嫌な考えしか浮かんでこない。
来るべきではなかったと、引き返そうと背を向けた時だった。
「すいませんー!ボール危ないです!」
背中から声がした。
遅れて足に何かがぶつかったような小さな衝撃。
先程までサッカー部たちが蹴りあっていたボールが、自分の足元へと転がってきていた。
向こうから部員の1人が走ってくる。
クリアボールか何かが自分の方へ飛んできたのだろう、浦の星でサッカーをしていたころは、それでよく陸上部の人たちに迷惑をかけた。
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます!」
元気な声、汗だくの体にキラキラした目。
私から見れば世界のどんな宝石よりも価値のある輝きを放っていた。
「シュートがブロックされちゃって、こぼれ球だったんです。いや〜チェックが厳しくて」
「どこからシュート撃ったの?」
思わず尋ねてしまった。
「えっと…あそこらへんです。DF2人が壁になってましたが…あはは、」
右サイドのペナルティーエリア角すみ、シュートを撃つには十分な距離だ…だが。
「私だったらあの壁2人を抜いてシュート撃つ」
「え…2人を抜いて?」
「あ…いえ、なんでもないです。練習頑張ってください」
まさか口に出していたとは気づかず、変に怪しまれてしまっただろうか。
ああ…すごく嫌だ。イライラする。
私は足早に彼女から離れた…いや、逃げた。
これ以上あの場所にいたら、あの子と話していたら、どうにかなってしまいそうだった。
私はただ今までのようにサッカーをしていたいだけなのに、この世界はそれを許さない。
だが、それ以上に不快に思ったことがあった。
それは、自分が一瞬だけ、サッカーを楽しむ彼女に怒りを覚えたことだった。
頭を冷やそう。
嫉妬など最悪すぎる。
千歌は丁度来たバスに乗り込み、自宅への帰路についた。
その間、千歌の近くに座れないほど、彼女がピリピリとした空気を放っていたことを、本人は知る由もなかった。
―――――――――
バスを降りたあと、家には帰らず砂浜で海に沈んでいく夕陽を眺めていた。
先程までの自分の行動を思い起こし、急に恥ずかしくなり、頭を抱える…これをもう何回も繰り返していた。
「急に部外者が私だったらこうする…なんて言ってたら強がり自慢にしか聞こえないよね…はあ、カッコ悪すぎる」
今更になって、あの時グラウンドに行ったことを後悔し始めた。
あのようになると分かっていて何故行ったのか…その理由は分かっている癖に、自問自答を続ける。
「私の…サッカーが……消えた」
もう何度この言葉を口にしたか。
しかし、これで現状を変えられるわけもなく、残酷にもこの世界は永遠に続いていく。
そう、思っていた。
「ノー、サッカーは消えていない」
誰かの声がした。
自分だけの空間に入り込まれたような感覚に、思わず反応が遅れてしまった。
「サッカーの消去は不完全だ」
声のする方へ振り向くと、見たことも無いような服装を身にまとった少女が立っていた。
どこか不気味な雰囲気をまとっており、発言も意味がわからない。
「高海千歌。残る痕跡はお前だけだ」
「この苦痛な世界から解放しよう。歴史の修正によってな」
少女が近づいてくるのが分かる。
だが、千歌はその場から動こうとしなかった。
今は負の感情でいっぱいいっぱいなため、判断力が低下し、無防備で何も出来ない。
それ構わず、少女は千歌の目の前まで来た。
「受け入れろ。高海千歌」
彼女は"苦痛な世界から解放する"と言った。
この世界で生き続けると思っていたが、この少女が解放してくれると言った。
こんなに嬉しいことは無い。
早く…受け入れ……
「……ると、思った?」
「!?」
千歌は少女の手首を掴んだ。
少女は振り払おうとするが、全くビクともしない。
それどころか、先程までと千歌の雰囲気が全く違うことに気づく。
だが、もう手遅れだ。
「ずうーっと待ってた。いつか絶対に現れると思ってた。あなただよね?みんなをおかしくしたのは?」
どんどん握る力が強くなる。
やっと目が合ったとき、その怒りに染まった目から、少女は気づく。
「返してよ……私たちのサッカー」
こうなると、高海千歌は全て分かっていたのだ…と。
ここから、千歌と仲間たちの運命は、さらに大きく揺れ動いていくことになる。
輝こうサッカーで!
最終章 クロノストーン編
感想よろしくお願いします
どっちの方が読みやすいですか?
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千歌「サッカーやろうぜ!」
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「サッカーやろうぜ!」(名前を入れない)