ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで! 作:ルビィちゃんキャンディー
皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
輝こうサッカーでは重要なチーム、"音ノ木坂の奇跡"の時代へと千歌ちゃんたちは向かいます。作者自身も楽しみながら書きました。
「申し訳ありません、議長」
画面の向こうから深々と頭を下げるアルファ。
そしてその姿を鋭い目で睨みつける老人たち、その中の一人、議長のトウドウが口を開く。
「失敗は許されん。サッカーを消さねば世界は滅ぶかもしれない。分かっておろう、アルファ」
「今、世界では戦争が起こっているのだ。敵は恐るべき少女たち、"セカンドステージ・チルドレン"…」
彼女らの能力はあらゆる面で高いスペックを持っており、我々を下等な存在とみなし支配しようとしていると語る老人。
彼女らの組織"フェーダ"は人類の脅威であり、我々は速やかに彼女らを排除する必要があると力説する。
「そして、彼女らの遺伝子の原点は日宮美奈であり、そこからサッカーが更なる進化を促した」
「だからこそサッカーの発展を阻止し、人類のあやまった進化を止めなければならん。分かるな…」
全て理解していますと答えるアルファ、そしてすでに次の手を打っていると断言した。
だが老人たちの気が休まることは無い、それほどまでに事態は深刻なのだと…訴えているようであった。
―――――――――
「これが…タイムマシーンなの??」
千歌とフェイはバスに揺られていた。
しかし、窓の外は見たことも無い景色であり、まるで虹色に光るトンネルの中を進んでいるようであった。
フェイの説明によると、正確には"時空間転移装置"であり、ワームホールを通過し、別の時間・別の場所に移動できるのだとか。
某国民的ネコ型ロボットアニメで見た事のある世界だが、まさか自分がそれを体験することとなるとは…実感がわかないというのが正直な感想だった。
「外観は君たち内浦の生徒が利用するバスを参考にワタシが作ったのだ!!」
「あ…あの、フェイさん?さっきから気になってたんだけど……」
このタイムマシーンを作ったと胸を張りながら運転席で操縦を続ける青いクマのぬいぐるみ。
聞いたら負けだと思っていたが、あまりにも人間味溢れる存在だったため、たまらずフェイに尋ねてしまっていた。
「私の名前はクラーク・ワンダバット!天下の大監督であり、君の協力者でもある!!」
彼は協力者として、千歌の運命の別れ道である鉄骨事故を千歌が戦っている間に元通りにしたらしい。
確かに今は頭を割るような激痛や記憶の不安定化も起きていない。
ワンダバットによると、歴史の変更は定着するまで時間がかかるものであり、変えられた直後であればあるほど元に戻りやすいのだとか。
そして、タイムジャンプするための条件もおしえてくれた。
「道しるべ?」
その時間、その場所にいた者の強い想いが詰まったもの、"道しるべ"…またの名をアーティファクトが必要であり、それがなければワームホールの出口は検出できず、タイムジャンプは失敗するのだとか。
そして…音ノ木坂の奇跡の時代にタイムジャンプするのにあたってフェイたちが用意した道しるべが─────
「音ノ木坂学院の校内新聞さ」
「どこで手に入れたの…?それ、」
運転席の隣に設置された丸い装置、その上にアーティファクトとなる"校内新聞"はセットされていた。
入手方法は夜の音ノ木坂にこっそりと…と何やら犯罪臭がしたため、それ以上は追求しなかった。
だが、それだけでなく決定的な情報もフェイたちは掴んでいた。
「3X年前の音ノ木坂学院サッカー部は、正しい歴史だと全国大会本戦第1回戦まで出場していた…」
「穂乃果さんからもそう聞いています」
「でも、僕たちが新聞を探した時は、"第1回戦を棄権した"という記事しか見つからなかった」
「…!?それって、」
「うむ。ヤツらが歴史をいじったと考えていいだろう」
そのため、時間の範囲指定もスムーズに行うことが出来た。
あと数分で到着するとワンダバットから報告が入り、徐々に緊張感も高まり始めていた。
「そういえば、あの状態でアルファ相手に戦うなんて…さすがは"太陽の跡目"だね」
あの状態…とは、歴史の修正により受けた心身のダメージのことだろう。
全力で戦う前に体力切れで追い詰められるとは…今思い出しても自分に腹が立つ。
だが全力を出したとしても、あの"アームド"という技相手に勝てるかどうか、正直今でも分からないでいた。
「アームドに勝つとしたら"Braveheart"…それか、完成した"新たな必殺技"なら……」
「新たな必殺技…?」
千歌が話しを続けようとしたところで、バスは音ノ木坂の奇跡の時代に到着したため、ワームホールを抜けた。
このまま説明してもいいが、聞くよりも実際に見た方が早いと千歌はフェイに伝えた。
「行こう。お母さんたちの邪魔はさせないよ」
サッカーを取り戻す戦いが…始まろうとしていた。
――――――――――――
「ハァ…ハァ……くっ…なんなの、この威力、」
ゴール前に倒れ込む1人の少女。
GKであるその少女はとある選手のシュートを止めることができず、ゴールに叩きつけられるかたちで失点を許してしまっていた。
仲間の選手たちも相手の圧倒的なサッカーに戦意を失いつつあった。
突然、目の前に謎の少女が現れたと思いきや、「お前たちはまもなくサッカーが嫌いになる」と言い放ち、気づいた時には無人のアキバスタジアムへと移動していた。
状況が理解出来ていない中で謎の少女はサッカーの試合を申し込んできた。
もちろん、受け入れる義務は無いと思っていたのだが…
「試合をしなければ二度とサッカーが出来ない体にするって脅しておきながら…今まさにする気マンマンじゃない」
肩で息をしながら月城真恋はこの試合の異常さを訴えた。
しかし、謎の少女が聞く耳を持つことは無く、加減する気が無いことは分かりきっていた。
「大事な本戦前だっていうのに…いい加減にしてよ」
だがそれでも日宮美奈は少女を睨みつけた。
誰だかわからない少女に自分たちの夢を壊されてたまるかと、怒りでブーストされた精神力でなんとか持ちこたえていた。
だが、そんな精神力をも少女はうち砕こうとしていた。
「本戦前だからこそ、お前たちを再起不能にする。完膚無きまで打ちのめし、心と体に傷をつけることにより、サッカーを自ら拒むことになる」
「…諦めないよ。そんなことで私たちは絶対に諦めない」
「耐えることは不可能だ───「不可能じゃない!!」
「!!」
「「「!?!?」」」
誰かの大きな声がスタジアムに響き渡る。
声のする方を見ると、フィールドの外からこちらへと向かって歩いてくる少女が2人、1人はエメラルド色の髪を揺らし、もう1人はオレンジ色の髪に赤い瞳…それはまるで、
「え…私??」
「みっちゃんにそっくりな子…?」
日宮美奈の幼馴染である梨本乃々子も同じ反応で千歌と対面することとなった。
分かってはいたが、自分のことをどう説明したらよいか千歌は迷っていた。
あなたの娘ですと言うわけにもいかず、下手に誤魔化すと余計怪しまれる…そこで千歌が出した答えは、
「美奈さん。その人たちはサッカーを消そうとしています!!」
勢いで貫き通す、だった。
「えーっと、あなたは…?」
「私は千歌といいます。大好きなサッカーを守るためにここに来ました…!このままじゃ大変なことになるんです。信じてください!!」
強引だが、伝えることは伝え、自分が味方であることを主張する。
なんとか信じてもらえるように祈るが、
「……分かったわ!」
一瞬で信じてもらえた。
「!!信じてくれるんですか…!?」
「ええ。サッカーが好きって言える人の言うことは信じるわ。大好きなものにはウソをつけないしね!」
自分で祈っておきながら、母の疑うことを知らない返答に戸惑いを隠せなかった。
そして浮かび上がってくるのはガルシルドの不気味は顔、この性格につけ込み、母たちの人生を狂わせたのだと…千歌は周りに見えないように唇を噛んでいた。
一方、千歌が美奈たちに状況を説明している間、フェイはアルファたちの行動を観察していた。
(やっぱり…彼女たちは僕たちを知らないみたいだ)
奴らは何者だ、情報を確認する、など自分たちを初めて見るような会話をしている。
おそらく、彼女たちは別のパラレルワールドの存在であり、時間軸的には"高海千歌に接触する前の彼女たち"だ。
つまり、あの戦闘はデータのみであり、実戦での感覚的な情報は彼女たちには存在しない。
勝機は十分…フェイはそう分析した。
あちらも、高海千歌と日宮美奈を同時に処分できることも考え、手加減はしてこないだろう。
「千歌。油断せずに全力で試合をしよう」
「うん。あの人たちの身体能力から、只者じゃないってよく分かるよ」
千歌とフェイを加えて11人制の試合に切り替えることとなり、数分間のミーティングをとることとなった。
チームの頭脳である真恋と弥生から話しを聞き、こちらも情報を提供する。
「現在の得点は0-2…まもなく前半の折り返しとなります」
悔しさで顔を下げながら答える弥生。
千歌とフェイにはMFに入ってもらい、あとのことは戦況を見ながら判断するとの事となった。
A『さあ!中断されていた試合もまもなく再開するようです!!実況はここまできたらお約束の実況者Aがお送りします!!!』
千歌「え…この人って、」
アルファ「…両チームの選手のデータはインプットしてある。試合の実況をやってもらう」
アルファ「実況はサッカーに不可欠なものだと聞いている…」
どこかズレているような気がしなくもないが、全国大会…世界大会とこの人にはお世話になった。
どこか運命的な何かを感じる…
アルファ「我々は"プロトコル・オメガ"というチーム名で登録した。お前たちはそのまま音ノ木坂学院で続けるか?」
やっぱりズレている気がする。
だが、チーム名は大切だし、答えもすでに決まっている。
千歌「続けるよ。私たちは音ノ木坂学院として…あなたたちと戦う」
音ノ木坂学院
FW………小原サエ、日宮美奈、三船夜
MF…フェイ・ムーン、高海千歌、響木鈴香
MF……………梨本乃々子、月城真恋
DF………………乙坂雛、園田弥生
GK……………………高坂光穂☆
プロトコルオメガ1.0
FW…………アルファ☆、レイザ、エイナム
MF……ネイラ、ジーニー、ネタン、クオース
DF………………ガウラ、メダム、クオル
GK…………………………ザノウ
───ピーッ!!!
主審の笛がスタジアムに響き渡り、音ノ木坂学院ボールで試合は再開した。
千歌は試合に加わりながら、まずは今の美奈たちがどれほどまでの実力なのか見極めることにした。
場合によっては攻守で自分の参戦する割合が変わってくる…が、
千歌(これが…今のお母さんたちの実力!?)
実力を疑うなど意味の無いことだとすぐに分かった。
一人ひとりの動き、技術、チームワークが日本のサッカーレベルを超えていた。
確実に、自分の時代の全国大会なら優勝しているほどだと確信し、母たちのサッカーの存在感に鳥肌が止まらなかった。
それでも、
夜「────うわっ!?」
A『クオース選手、鋭いスライディングでボールを奪った!!』
夜「ごめん!フォローお願い!!」
夜の声に反応した鈴香と真恋が止めに入るが、相手の正確無比なパスと強引なプレーで簡単に突破されてしまう。
音ノ木坂の選手たちのレベルは高く、逆に高すぎるはずなのだが…プロトコル・オメガは更にその上をいっていた。
弥生「光穂…!!シュートが来ます!!!」
光穂「今度こそ…止めてみせる!!」
穂乃果の母、高坂光穂は構えた。
その雰囲気は千歌の知る日本の太陽、高坂穂乃果に引けを取らないものであり、確かな実力があると肌で感じられるほどであった。
そんなGKを前に、アルファは足に風を纏って空へ跳び、その風とオーラを込めたシュートを放った。
アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!
光穂「…っっ!!」
目を閉じ、胸に手を当てて全オーラを心臓に集結させる。
炎のように高まっていくオーラを解き放ち、全力の一撃でシュートにぶつかった。
光穂「はあぁぁぁぁっっ!!!!」
光穂「【真マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!!
千歌、フェイ「「!!!!!!」」
光穂の背中から現れた巨大な魔人がボールを受けとめている。
高坂光穂1人でこの圧倒的な存在感。
しかし、数秒踏ん張ったところで魔人と共に光穂はゴールへと叩き込まれた。
A『ゴール!!プロトコル・オメガ、3点目!!音ノ木坂学院は完全に勢いに飲まれてしまっている!!!』
光穂「ハァハァ…くっ…」
雛「光穂ちゃん…!大丈夫!?」
今のアルファのシュートを見て分かった。
プロトコル・オメガはただ戦闘能力が高い集団というわけではなく、サッカーの技術も極めて高い。
それも、世界の代表にも引けを取らないレベル…千歌はともかく、今の音ノ木坂学院では厳しい相手だ。
このまま一方的に進んではまずい。
そう考えた時には、すでに口が開いていた。
千歌「フェイさん。攻撃の方は任せてもいい?」
フェイ「分かった」
あのシュートを止める選手がこのチームには必要であると判断し、千歌は自らのプレーで流れを変えることを選んだ。
その後も、音ノ木坂の選手はなんとかプロトコル・オメガの守備を突破しようと試みるも、あと少しのところで届かず、気づけば再び失点の危機となっていた。
サエ「くっ…このままではもう1点失いマスよ」
真恋「光穂ー!!死ぬ気で止めなさいっ!!」
当然、光穂は諦めることなくゴールの前で両手を広げ、構えていた。
しかし、身体的には限界が近づいており、最高のパフォーマンスを出すにはもう手遅れに近かった。
それでも、アルファは容赦なく強烈なシュートを光穂に向けて蹴りはなった。
アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!
光穂「ハァハァ…!!くっ…マ、マジン─────
────ゾクッッッッ!!!!!
「「「!!!!!!!」」」
会場を包み込むような寒気、敵味方含め、全員から強制的に冷や汗が垂れるほどのものだった。
そして、このオーラに覚えがある者が多数。
リスクを伴う代わりに、爆発的なチカラを手に入れるその能力―――発動者は、高坂光穂の目の前にいた。
チカ「【フルカウンター】」
───シャキィィィィン!!
金属を削るような高音が鳴ったのと同時に、竜巻をそのまま放ったような威力のアルファのシュートは、跡形もなく吹き飛んだ。
アルファ「な、なにっ…」
美奈「あれって…闇の力…!?」
サエ「あの子も美奈と同じチカラを…!」
千歌も美奈と同様、闇の力を宿す選手だったことに驚く音ノ木坂メンバー、しかし、それ以上に高海千歌の技の圧倒的な練度・威力に戸惑いを隠せないでいた。
光穂の強力な必殺技でも太刀打ち出来なかったシュートを、片腕を払っただけで消し飛ばし、尚且つ、その雰囲気から闇の力を代償無しにコントロールしている。
彼女は何者なのか、どうしてそこまで存在感があるのか、追求したいことが山ほどあるが…それ以上に。
美奈「すごく…かっこいい」
いちサッカー選手として、惚れていた。
チカ「カウンター!!」パス
「「「!!!!!!」」」
しかし、千歌の声ですぐに試合へと意識は戻された。
それと同時に自分たちは何を求められているのか、千歌は私たちの武器を理解しており、その一言で十分すぎるほどの指示だ。
千歌から放たれたパスを最も近くにいた弥生が繋ぐ。
ダイレクトで前にいる真恋へ、次は乃々子、鈴香、夜、サエとシュートチェインに近いパスで前へ前へ、縦にボールを繋いでいく。
相手が反応するよりも先に飛び出し、一瞬のズレも許さない、連携を極めた超高速必殺タクティクス─────
「「「【チェインカウンター】!!!!」」」
サエ「決めなさい―――美奈っっ!!」
残る音ノ木坂の選手は美奈のみ。
サエが放ったボールには音ノ木坂選手たちのパワーが込められており、威力は並のシュート技を超えている。
そんなボールを蹴り放つため、美奈も千歌と同じく、チカラを解放する。
美奈「【リベンジカウンター】っっ!!!」
自身の疲労やダメージをパワーに変換する日宮美奈のカウンターシリーズの1つ。
だが、この時の美奈は闇の力を完全にはコントロールできておらず、頭を割るような頭痛が襲っていた。
ミナ「がっ…!?」ズギズギ!!!
ミナ「ぐっ…でりゃああぁぁぁぁぁ!!!!!」
気合いで痛みをかき消し、全力の一撃を放った。
その威力はアルファのシュートにも引けを取らない…いや、越えている、千歌はそう確信した。
ザノウ「【キーパーコマンド03"ドーンシャウト"】」
プロトコル・オメガのキーパーは自身の強大な気迫でシュートを止めようとしていた。
千歌とフェイが参戦するまでに、音ノ木坂のシュートはことごとくこの必殺技により防がれてきた…しかし、
ザノウ「バカな…押され…ぐあぁっっ!?」
「「「!!!!」」」
美奈のシュートはザノウの必殺技を突き破り、ゴールへと吸い込まれた。
それと同時に得点を知らせるホイッスルが吹かれ、自分たちが1点返したことを示していた。
A『ゴール!!!前半終了間際、音ノ木坂学院、超高速カウンターから1点を返しました!!日宮美奈も素晴らしいシュート!!』
鈴香「よっしゃー!!決めたな美奈!!」
サエ「なんとか1点…デスね」
まだ負けてるとはいえ、自分たちも戦えると分かったことに少しだけ安堵する音ノ木坂の選手たちがそこにはいた。
彼女たちならばその気持ちを慢心にではなく、闘争心に変えてくれるだろう。
美奈も立ち上がっており、体調に深刻な問題は無さそうである。
そう考えながら息を整えていると、フェイが自分の元へと歩いてくるのが見えた。
フェイ「まさかアルファのシュートを跳ね返すなんて…あなたはめちゃくちゃなことをするね」
ごもっともなことを言われ、千歌はハハハ…と笑うことしか出来なかった。
だが先程のシュートを跳ね返して分かった。
イタリアでの特訓により、世界大会時よりも闇の力の精度が更に上がっている。
このままディフェンスに集中し、母とフェイたちに攻撃を任せ、逆転を狙うのが一番現実的だ。
真恋「前半は残り数分よ。ここを守りきって後半に繋げるわよ…!」
真恋の声で千歌はもう一度気合いを入れ直し、前で立つ母の姿を見た。
あれほどまでの強力な闇の力を扱うとは…余程の……余程、の、
しまった。
千歌の脳裏に浮かぶその一言。
何が一番現実的だ、逆だ、私たちは絶望的なまでに追い詰められている。
確かに美奈のシュートは強力で、様子を見るにまだ発動も可能だろう。
しかし、そもそもその強力なシュートの源は日宮美奈のダメージ…前半丸々蓄積したダメージがあったからこその威力だ。
つまり、同じ威力のシュートは後半にあともう一度しか撃てない。
ほかのメンバーのシュートは、キーパーに止められてしまったと聞いている。
千歌が決めに行くために前へと出ると失点のリスクが高まる…しかしそうしなければ逆転出来ない。
フェイ「千歌!!アルファが来るよ!!」
はっと前を向くと、すぐ近くまでアルファが迫っていた。
千歌が守備のために構えると、アルファは蹴りの体勢に入っていた。
そこまで強く踏み込んでいない。
シュートではなくパスのような…いや、これは宙へ打ち上げる構え…!!
千歌(させないよ…!)
アルファはシュートを放とうとしていると読んだ千歌は"フルカウンター"を発動するために構え直す。
このシュートを防げば前半は終了、作戦を立て直すことができる…そう考えた瞬間、千歌の腹部に何かがぶつかった。
それはシュートじゃない!!!
美奈の声がしたが、すでに手遅れだった。
アルファ「【オフェンスコマンド04"スピニングアッパー"】」
千歌「な…ドリブル……技…!?」
腹部にあったのはボール。
超強力な回転がかけられたボールに抗うことは出来ず、千歌はアルファの背後へと思いっきり吹き飛ばされた。
アルファはシュート技のモーションと動きを被せることにより、千歌の油断を誘ったのである。
夜「まずい…千歌さんが突破された!!」
真恋「今の光穂じゃ、あのシュートは…」
光穂はアルファのシュートを一度も止めることが出来ていない。
しかし、光穂はそれでも屈することなくゴール前で両手を構えている。
光穂「大丈夫…今度こそ…今度こそ!」
アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!
光穂「【真マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!!
分かっていたことだが、徐々に押される光穂。
強い心があったとしても、圧倒的な力の前では適わないのか…そう、諦めかけた時だった。
光穂「今度こそ…今度こそ……」
アルファ「…!」
最初に気づいたのはアルファだった。
高坂光穂のオーラが…どんどん膨れ上がっている。
光穂「負けるもんか…サッカーが滅んでたまるかぁぁぁ!!!!!!」
「「「!!!!!!」」」
光穂「一体でダメなら…もう一体っっ!!!!」
光穂「【風神・雷神】!!!!」
溢れ出たオーラはもう一体の魔人を作り出し、先程までとは比べ物にならないほどのパワーでシュートにぶつかった。
千歌「まさか…ここで!?」
フェイ「パラレルワールドの共鳴現象だ…!」
二体の魔人がシュートを押し返す。
その姿はまさに音ノ木坂学院の守護神。
その気迫に千歌は覚えがあった。
何度もチームの危機を救った高坂穂乃果そのものであり、その原点は…母親の高坂光穂のサッカーだったのだ。
穂乃果『VとVで"ゴットハンドW"!!』
光穂「両手だぁぁ止まれぇぇぇ!!!!!!」
その気迫に応えたかのように、ボールの勢いは徐々に弱まり、光穂の手の中で完全に停止した。
光穂「ハァハァ…ハァハァ…や、やった…!!」
A『止めたぁぁぁ!!!!高坂光穂、魔人を二体発動し、アルファのシュートを完全に抑え切ったぁぁ!!』
A『そしてここで前半終了…!!1-3とプロトコル・オメガのリードですが、音ノ木坂の流れへと変わりつつあった前半となりました!!』
アルファ「……」
自分のシュートが止められたこと、その理由が本来ありえない状況によるものだということもあり、アルファは戸惑いを隠せないでいた。
そのタイミングに合わせるように、アルファの連絡機器から反応があった。
アルファ「…私です」
『"時空の共鳴現象"だ。異なったパラレルワールド上に複数の高坂光穂が生まれ、互いに干渉しあって力が高まっている』
『注意せよ。この高坂光穂はこれまでのデータに存在しない…"超覚醒状態"だ』
前半が終了し、音ノ木坂学院チームのベンチは光穂の新必殺技の話しで持ち切りだった。
本来ならば全国本戦の初戦、皇帝学園との戦いの中で完成するはずだった必殺技。
千歌(やっぱり…お母さんたちは凄い。成長のスピードが早すぎる)
このまま行けば、光穂だけではなく、ほかのメンバーも…そう考えている時だった。
スタジアムのどこからか声がする。
ち―――ゃーん―――
千歌「…?」
千歌ちゃーん!
千歌「…え?」
初めて聞く声では無い。
その声の主は観客席の一番上で自分の名前を呼んでいた。
「この試合、私も入れてもらってもいいかしらー?」
そう言うと、声の主は階段を駆け下りながらこちらへと近づいてくる。
そして徐々に姿がはっきりとしてくるのだが…ありえない。
千歌「…なんで……」
ありえないのだ。
慣れたように観客席の柵を飛び越え、数メートルの高さから勢いよく着地する。
私の知っている彼女は─────そんなことできる足を持っていないはずだ。
「頑張っているわね。千歌ちゃん」
千歌「なんで……そんなに走れるの??」
千歌「志満姉…」
サッカーを失ったはずの姉が───そこにはいた
Q:志満さんはどんな人ですか?
善子:とりあえず絶対に怒らせてはいけない人よ。
世界編の中で1番印象に残っている試合は?
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サウジアラビア戦
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オーストラリア戦
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韓国戦
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中国戦
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スペイン戦
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イギリス戦
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イタリア戦
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天空の使徒戦
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魔界軍団Z戦
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ダークエンジェル戦
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アメリカ戦
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ブラジル戦
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チーム・ガルシルド戦
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ロシア戦
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オーガ戦