ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで!   作:ルビィちゃんキャンディー

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筆がのりました。短めです。




最終章 10話 「導かれていく者たち」

 

 

 

身体中が痛みを訴えていたこともあり、ルビィは転がったまま起き上がろうとしなかった。

視界に広がるのは青い空と流れる雲、聞こえるのは激しく脈打つ鼓動と、終了を知らせる笛だった。

 

「ルビィちゃん大丈夫ずらかー!?」

 

終了した瞬間、すぐにルビィの元へと走ったのは花丸だった。

フィールドの外から見ていても、震えるほどの激しい試合、最後のあの吹き飛ばされ方は、誰もが怪我を想像するほどだった。

 

 

「ハァ…ハァ…花丸ちゃん、ルビィは大丈夫」

 

「ほ、本当ずらか!?」

 

「身体中痛いけど…受け身取ったし、ただの打撲だよ。それより、」

 

ルビィはまだ空を見ていた。

高く遠くを流れる雲を、静かに見ていた。

 

「…弱いね。ルビィは」

 

「そんなことないずら!だって、志満さんからボール奪って、シュートだって…もう少しで…」

 

「やっぱり優しいね。花丸ちゃんは…でも、絶望してるとか、怒ってるとかはないよ」

 

ゆっくりと起き上がる。

そして、今度は志満の姿を、静かに見る。

 

「まだまだルビィは強くなれる。そう思ったら、血が騒いで…震えが止まらない」

 

「ルビィちゃん…」

 

「課題あり、成長もあり、良かったわよ。ルビィちゃん」

 

ルビィを降した張本人である志満が口を開いた。

それを合図に、他のメンバーも一斉に彼女の元へと集まる。

 

「あの"ラストリゾート"前の視界を遮断する判断…とても良かったわ。"ラストリゾート"も発動までの溜め時間がかなり減っていた…練習している証拠ね」

 

「…まさか"触られる"とは、思ってなかった。初めてです」

 

ルビィの"ラストリゾート"は空気とATPのオーラを、高圧力で何重にも重ねて放つシュート。

そのシュートに触れれば、強力な圧力に弾かれてしまうことから、"触れないシュート"として、世界の強豪たちを苦しめた。

 

だが、"ラストリゾート"の圧力に負けないパワーでぶつかれば、触ることは可能。

千歌の記憶では、そのようなシーンが何度かあった。

つまり、志満もそれほどまでのパワーを持つ1人となる。

 

 

「あれはね、私もギリギリだったから、間に合うかどうか際どいところだった」

 

そのまま、志満の公表は続く。

 

「そして課題ね。燃費に関してはもう喋ったから、もう1つ。これは全員に聞いてほしいわ」

 

「ゾーンについて、あなたたちはどう考えてる?」

 

全員に緊張が走った中、思いもよらない質問が出された。

何故急にゾーンの話を…意図は分からないが、メンバーが次々と答え始める。

 

選ばれた人のみが持つ特別な力。

 

身体能力が爆発的に高まる。

 

中には自分の意思で発動可能な人もいる。

 

だが、志満の答えは違った。

 

 

「ゾーンは才能ある…選ばれた人のみが持っている力…違うわ。ゾーンは誰もが持っている。ただ、」

 

「"発動できるかどうか"が才能なのよ。ほとんどの人は、自分の持つ潜在能力を引き出せずに終わる」

 

「「「!!!」」」

 

志満は続ける。

 

「私は試合の中で、ゾーンを発動した人と何度も戦った。そして、私は何度も負けたわ」

 

「志満先輩が…勝てない!?」

 

「それほどまでにゾーンは強力なのよ。そして…その人たちには共通点があった」

 

志満は話しながら思い出す。

海外のあのスタジアム、あの試合、あの瞬間。

自分が完膚無きまでに、敗北を叩きつけられた事実を、鮮明に。

 

「全員、目が赤黒く光っていた。宝石とか、綺麗な輝きじゃない。闇の力よりも…もっと荒々しい目をしていた」

 

息をすることも忘れそうだった。

志満の言葉ひとつひとつに相当な重みがある。

それ故に、説明されたイメージが鮮明に浮かび上がる。

 

「私は選手の目を見れば、どれぐらいサッカーに対して自分の力を引き出せているか…集中しているかが分かる。だから、あの目を見た時思ったの。ああ、この人には勝てないってね」

 

誰も口を開けなかった。

志満から聞かされたのはプロの世界の、才能の現実。

ルビィをも圧倒する高海志満の心を折るような選手が、この世界には存在するんだ。

自分たちはなんて小さい存在なんだ。

 

絶望にも近い感情が渦巻く中、1人の少女が口を開く。

 

 

「つまり、ルビィちゃんもゾーンを発動できるかもしれないってこと?」

 

千歌だった。

蜜柑色の髪を揺らした少女は、まっすぐ志満を見ていた。

 

「ええ。私が言いたいのはそういうこと」

 

「全員にチャンスがあるの。ゾーン…自分の限界のその先を引き出すチャンスが」

 

「「「!!」」」

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、練習を開始した清真高校サッカー部。

もう間もなく全国高校女子サッカー大会の静岡予選が始まることもあり、いつにも増して選手たちの気合いがぶつかり合っていた。

 

そんな中、千歌は今ひとつ集中できないままでいた。

体調面で心配されたが、精神的な問題であったため、そのままモヤモヤが晴れることなく、練習は終了となった。

 

 

「はぁ…」

 

「千歌、大丈夫?」

 

千歌は帰宅してから、家の前の砂浜でため息を繰り返していた。

心配になったフェイが隣に座る。

赤く染まった空に海、2人が静かにそれらを眺めていると、千歌はゆっくりと口を開いた。

 

 

「…思った以上に改変されていたね」

 

「あぁ、浦の星のメンバー…」

 

ルビィと志満の勝負の後のルビィの発言で、千歌には気になることがあった。

ルビィは"ラストリゾート"が触られるのは初めてだと言っていた…本来なら、彼女がそんなこと言うわけが無い。

 

穂乃果が完成した"ゴットハンドX"で触れたこと。

 

亜里沙がコピーした"エクスカリバー"で蹴り返したこと。

 

オーガ戦でキャッチされたこと。

 

全て忘れて…違う。

無かったことにされていた。

 

 

「善子がいないことにより、本戦Aブロックで1勝もできずに敗退…聞いた時は驚いたけど、調べてみたら確かにそうなっていたね」

 

「ルビィちゃんが"Awaken the Last resort"を発動しないあたりで違和感を持った。今のルビィちゃんは…その技の存在も知らないんだ」

 

サッカーは戻ってきた。

だが、自分の知るみんなは戻ってきていない。

そう考えると、まだ戦いは終わっていないと嫌でも理解してしまう。

 

戦わなければ、取り戻さなければ。

みんなとの時間を失うわけにはいかない。

 

いかない、のだが。

 

 

「志満ねえからさ…奪いたくないよ……」

 

 

あんなに生き生きとした志満を初めて見た。

誰からも尊敬され、挑む相手にはそれ相応の実力とアドバイスで応える…プレイヤーとしても、指導者としても完璧だ。

 

「でもそれはさ…たくさんの努力をしてきたからってさ、私には分かる。だって志満ねえは、そんなサッカーをしてる…」

 

「だが、どちらかを選ばなきゃならない!正しい歴史か、プレイヤー高海志満か!」

 

ワンダバの言うことは正しい。

この場合、正しい歴史を選ぶ以外に選択肢しかないことは分かっている。

 

分かっていても、考えてしまう。

 

「正しい歴史、志満ねえ、両方選ぶって道はさ…無いのかな…って考えちゃうよ」

 

俯く千歌。

フェイとワンダバは何も言えなかった。

これ以上の説得は酷だ。

もう少し時間を、そう考えた時だった。

 

 

「随分と落ち込んでるわね」

 

「……志満ねえ」

 

千歌の頭にふわっとした感覚が生まれた。

昔からそうだった。志満は妹たちの心に寄り添う時は、このように手を優しく頭に置く。

 

だが、だからこそ、千歌は頭を上げられなかった。

 

「フェイちゃんも言ってたでしょ?『この世界に完璧なんて存在しない。何かを失うから何かを得る』って」

 

「私がサッカーを続けなかったから、善子ちゃんのサッカー、そして、世界大会優勝があるの」

 

分かっている。全て分かっている。

だが、千歌は黙っていられなかった。

 

「だからって…志満ねえの、これまでの、積み重ねてきたものが…全部無くなっちゃうんだよ?悔しくないの?」

 

「うーん、悔しいか」

 

志満は立ち上がり、波が行き来する場所まで歩く。

靴が波に飲み込まれるが、彼女は気にせずに続けた。

 

「もちろん、やりたいことはまだあった。部活の時間に話した、ゾーンの子とのリベンジもしたかったし。得点王争いとか、ロマンあるわよね」

 

「でも、大丈夫」

 

その時の高海志満の顔を、フェイとワンダバは一生忘れることは無いだろう。

自分の存在が消えると分かっていて、彼女の顔は、背中で赤く燃える空よりも───────

 

 

「後悔だけは絶対に無い。断言するわ」

 

 

───────明るく輝いていた。

 

 

「なんで…なんでそんなに…」

 

千歌はまだ顔を上げられない。

波が来ない場所であるにも関わらず、砂が濡れていることがバレてしまうから。

 

 

結局、千歌が顔を上げたのは日が沈み、薄暗くなってからであった。

その間、志満は千歌の隣に座り、自分の昔話を静かに語っていた。

 

「ふぅ、ありがとう千歌ちゃん。いっぱいお話聞いてくれて」

 

「うん」

 

「私の昔話を聞いてくれたお礼に、千歌ちゃんに特別に教えてあげるわ。ゾーンの話よ」

 

「……ゾーンの?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、静かになった砂浜に、志満は1人残っていた。

右手にはスマホが握られており、通知の反応で画面が眩しく光っていた。

 

「…これは、最後のワガママね」

 

送られてきたメッセージを見た志満は、砂浜を後にする。

その歩幅は、いつもよりも広くなっていた。

 

 

「今行くわ。善子ちゃん」

 

 

足跡が波に消されるのに、そこまで時間はかからなかった。

 

 

 

 

 





・ゾーンは選ばれた者のみが持つ力→✖
・ゾーンは誰でも持つ力→〇

しかし、発動するにはそれ相応のセンス(才能)が求められる。
これがこの世界のゾーンの結論です。いろいろな選手に更なる可能性が広がりましたね。こう考えると、自分の意思で発動可能なツバサさんは本当に化け物だったのだなと実感します。

次回ぐらいから試合に入りたいです。

どっちの方が読みやすいですか?

  • 千歌「サッカーやろうぜ!」
  • 「サッカーやろうぜ!」(名前を入れない)
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