ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで! 作:ルビィちゃんキャンディー
気づけば就職。
天才。周りからよくそう言われた。
だけど、私は自分のことを天才だと思ったことは無い。
真の天才は、センスでどんなことも簡単にやってのける。
私は昔からそれが出来なかった。
だから、ただ人一倍に努力しただけ。
器用だったから、上手く環境にも適応できた。
当たり前だけど、勝つと楽しい。
プロになってよく分かったけど、この"勝つ"ということがどれだけ難しいことか。
私は環境や仲間に恵まれ、少しだけ、人よりも多く"勝つ"ことができた。
たくさんの人から賞賛され、私自身、毎日世界が輝いて見えた。
だけど─────
『ハァ…ハァ…』
─────勝てなかった。
『どうしたシマ!?今までそいつに負けたこと無かったろ!?』
『ハァハァ…』
『いったい…どうしたってんだよ……』
真の天才には勝てなかった。
最終章第14話"あなたが走っていく道は…"
「ミキシマックスコンプリート…!」
フェイと同じく、高海志満のミキシマックスが行われた。
結果は成功。姿や雰囲気も善子にそっくりとなっており、最初、善子が現れたのかと間違うほどだった。
明らかに、今までの志満とは違う。
「どう…?志満ねえ」
「これなら、行けるわ」
千歌の問いに、志満は表情ひとつ変えることなく答えた。
静かだ…とても落ち着いている。
不気味な程に。
間もなく後半戦が始まる。
攻撃時は志満にボールを集め、力で押し切ることで作戦はまとまった。
(まだ……震えてる)
一方、前半終了間際にチームを救うスーパーセーブを決めた立向居夢希。
彼女の手は、未だに震えていた。
素手で車を受け止めたら、あのような衝撃なのだろう。
シュートを受けてから数分は、そのダメージにより交代を勧められたが、彼女は強引に断った。
(止められると分かった…なら、最後まで、倒れるまで足掻いてみせる…!!)
決意を新たにしたのと同時だった。
後半開始の笛が鳴る。
「まずはマイボールにするわ!ディフェンス集中!」
梨子の指示が飛ぶ。
プロトコル・オメガボールでスタートした後半戦、早くも相手は細かいパスから、攻撃を展開してきていた。
(パスのスピード、精度、貰い方…どれもハイレベル。そう簡単には先輩たちも捕まえられない)
(だけど…明確な弱手がある!!)
立向居は最後方からフィールド全体を見ていた。
そして、今現在、ボールは早くも最終ラインを突破しようとしていた。
「しまった!?」
「技は脅威だが、それでも限界はある!」
ミキシマックスしたフェイは、自身がアルファを止める存在であることを自覚しすぎていた。
他の選手への視野が狭まっていたのだ。
死角からボールを貰ったレイザは、長くボールを持たず、そのまま流すように─────
─────アルファへ。
「でりゃあぁぁぁぁ!!!」
「!?」
「「「!!!」」」
ペナルティエリアよりも外、しかし、スライディングでパスカットしたのは立向居だった。
「GKがペナルティエリア外へ飛び出して!?」
「1つの失点も許されないこの状況で??」
これにはプロトコル・オメガの選手たちも動揺を隠せないでいた。
一瞬でもタイミングが早くても、遅くてもアウトだった場面。
並大抵の度胸では無い。
「こぼれ球、お願いします!!」
「任され…たっ!」
上手く拾ったのは曜。
そして繋げるのは─────
「全員で高海志満を止めろ」
アルファ以外の全員が、志満へと飛びかかる。
一方の志満は、まだ動かない。
一番近い相手選手は、もう1mの距離にいる。
なるほどね。
そう呟いた。
まだ動かない。
下を向き、目を閉じ、何かを"感じている"。
そして、
「これが」
「あなたの
動き出す。"共鳴"が。
「【Deep Resonance】」
────相手選手の足が空を切った。
つい先程まで、その場に立っていたはずの標的の姿はどこにも…
「は……消えた??」
「違う!!下だ!!」
…いないと錯覚するほど、超低位置まで体を下げていた志満。
まるで地面に吸い付いているようだった。
それと同時に────飛び出す。
『躱したぁ!!蹴りの軌道よりもさらに低く身を屈めるという荒業!!』
「このっ…調子に!!」
次々とディフェンスに入る相手選手たち。
しかし、まるで相手がどう来るか全て分かっているかのように、志満は軽々と躱した続ける。
「な、なにあれ!?」
「相手の守備が全部…当たってない…」
この時空の清真高校の選手たちも、見るのは初めてだった。
「身体の全細胞が相手に共鳴する、ドリブル、ディフェンス…サッカーにおける対人において最強の必殺技」
「"Deep Resonance"だよ」
「千歌ちゃんはあの技を知ってるの?」
「……あれは、本来は善子ちゃんの技」
善子ちゃんと共鳴がいたから、私たちは世界一になることが出来た。
千歌はそう続けた。
「無駄だ。高海志満」
「………」
一方、7人全員を抜き去った志満はアルファと対峙していた。
「その技は発動者の能力を上げるものでは無い。分析では、私のアームドの方がステータスは上だ」
「ええ。そうね」
ブラジル戦でもそうだった。
善子の足がボールに触るよりも先に触ればよい。
邪魔なら吹き飛ばせばよい。
究極の脳筋勝負では、共鳴は不利だ。
だが、
「それでも私は、あなたに勝てると思う」
言い放ったのは────宣戦布告。
同時にアルファがボールを奪いにかかる。
『なんて激しい奪い合いだ!!アルファ選手がやや優勢…いや、高海志満も負けてないぞ!!』
「なに!?────「一瞬の隙」
「!!!?」
志満が急加速。
一気にアルファを抜き去る。
上手い!!!
フィールド内の複数人の選手から、同時にこの言葉が放たれた。
志満はミキシマックスしても、確かにアームドしたアルファに、力では及ばないかもしれない。
しかし、上手い。
とにかく上手いのだ。
「身体の入れ方…ボールの位置とタッチ…フェイントや勝負のタイミング。どれも、全部上手すぎるよ」
「これは…ミキシマックスで得られるものじゃない。常人では理解できないレベルの努力から得た技術だ」
高海志満は自分を天才だと思ったことは無い。
だからこそ、彼女は人一倍に努力した。
「まだだ」
「!」
『高海志満がシュートの構え!!しかし、アルファ選手が懸命に足を伸ばす!!届くか!?』
朝練習はグラウンドに一番乗り。
日が暮れても砂浜を走る。
タイヤを背負いながら筋トレ。
部屋では海外のプロの試合を分析。
「想定内っっ!!」
(なんだと!?)
そして、無限リフティング。
これはその応用。
(シュートフェイント…!!)
志満の足はボールを掠めた。
アルファにとって想定外のフェイントであったため、アルファの足は空振りに終わる。
おそらく、自分の足が間に合わなければ確実にシュートを放っていた。
瞬間的にプレーを変化させる柔軟性…
これが…
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
「"Deep Resonance"か!!」
『ゴール!!清真高校が逆転!!高海志満のスーパーシュートがゴールに突き刺さったぁぁ!』
志満が放ったシュートは今までとは違ったシュートだった。
スピードとパワーが"皇帝ペンギン・シン1号"よりも上回っており、極めつけは。
「タメがない??」
「シュートフェイントをした後、回し蹴りですぐにシュートを撃っていた…シン1号とは別の技…」
シュートを決めた志満はゆっくりとその技の名前を口にした。
この技が、高海志満の運命の分岐のトリガーと言っても過言ではない。
それほどまでに強力で────
────禁断の技だった。
本来の歴史では、帝国女学院で禁断の技である"皇帝ペンギン1号"を放ち、二度とサッカーをすることが出来ない身体となった。
「それは間違い」
「「「!?!?」」」
全員に衝撃が走った。
善子から、北也、そしてフェイから聞いていた情報と違う。
「高校時代の私は既に完成させていたわ。"シン1号"を」
つまり、負担を軽減させるシュートが開発済みであった…のならば。
なぜ、サッカーが出来ない身体になったのか。
「それがこの技…」
全ては"皇帝ペンギン"を作り出した理由が関係していた。
高海志満は高校入学時、すでに壁にぶつかっていた。
『ハァハァ…さ、さすがに…強いわね…』
一年生で一軍でサッカーをしている時点で十分、能力が高いことを示していた。
しかし、中学校の時と比べて、一気にサッカーのレベルが跳ね上がった。
自分のサッカーが通用しない時もあった。
まだ自分には技術、スピード、パワー、スタミナ、どれもこれも足りていなかった。
どうにかして強くなりたい。
そう考えた志満はある技を開発した。
『なにそれ…ペンギン??』
『ただのペンギンじゃないわよ』
自分のオーラを詰め込んだペンギンを作り出し、シュート時にペンギンと同時に蹴り込むことにより、数倍の威力のシュートを得ることに成功した。
しかし、
『ぐっっ!?』
反動は大きかった。
脚にペンギンのエネルギーを直接注入する"皇帝ペンギン1号"は、ダメージの量が尋常ではなかった。
ペンギンのオーラを直接脚に注入してはいけない。
そこから技は派生し、"シン1号"と"2号"が生まれた。
それでも、
『さあ、試合終了まで残り数分!帝国女学院、あと1点で県大会優勝も見えてくるが厳しいか!?』
適わなかった。
志満のシュートは全て止められた。
相手のキーパーが土壇場でゾーンを発動したのだ。
そこから1点も決められなくなっていた。
『ハァハァ…』
『高海!!もう時間がない!!』
『ハァハァ……』
『ここまで…来たのに…』
『…………』
私は天才じゃない。
だから、結局天才に全てひっくり返される。
どんなに努力しても、私はその領域に踏み入ることは…
『…違う』
そこで私は────────
『そんなの…絶対に嫌だ』
────天才を超えてみることにした。
皇帝ペンギンは、オーラで作り出したペンギン。
体内のオーラを一時的に体外でペンギンとして貯めておく。
これを応用した。応用だけは、得意だった。
『でえぇぇぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
オーラを体外ではなく、体内の1ヶ所に全て凝縮させてみた。
右脚に、ペンギン経由無しで、本来の数十倍のオーラを詰め込んだ。
"皇帝ペンギン1号"のダメージの量が尋常でないのならば、この技は"破壊的"だ。
ペンギンを出さずに撃つが、皮肉も込めて、この名前を付けた。
「【皇帝ペンギン0号】」
見ると、志満の右足はボロボロになっていた。
まるでショートした機械のように、煙が立っている。
「な、なんでそんな危ない技を使ったのさ!?」
たまらず千歌が口を開いた。
二度とサッカーが出来ない身体になるような技を躊躇わず発動するなんて、まるで…
「あっ、」
分かってしまった。
そして思い出してしまった。
「もう、これで最後だから。サッカーをするの」
高海志満の覚悟だった。
だが、その言葉を聞いて、千歌は今にも泣き出しそうになっていた。
まだ試合は終わっていないのに。
「最後ぐらい、悔いなくやりたいじゃない。天才に勝つなんて、なかなか出来ない体験なんだから」
その言葉に迷いはなかった。
これが、もうすぐ消える人の目なのか。
「本来の私は、この技を撃つ運命なの。これが、」
「私の走っていく道なのよ」
なんでこんなに、キラキラしているんだろう。
皇帝ペンギン0号/シュート/高海志満
高海志満がサッカーが出来ない身体になった本当のシュートです。皇帝ペンギン1号との明確な違いは「火力」と「スピード」。皇帝ペンギンを発動する時間をも短縮し、かつ、破壊的なシュートとなっている。
シュートを放つ際、脚は高濃度のオーラを詰め込むため、まるでオーバーヒートしたかのように、発動後は脚が焼き焦げる。
感想お願いします。
どっちの方が読みやすいですか?
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千歌「サッカーやろうぜ!」
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「サッカーやろうぜ!」(名前を入れない)