プルスリー・ストーリー   作:ガチャM

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「プルスリー・ストーリー そらをかける姉妹」の特別編です。プルツーが主役の、プルプルズがスーパー銭湯に行くエピソードです。


作:長物守 https://www.pixiv.net/member.php?id=995651
絵:かにばさみ https://www.pixiv.net/users/2672123
  ガチャM 

■デザイン協力 
かにばさみ 4、5、11 http://www.pixiv.net/member.php?id=2672123
ねむのと 9 https://www.pixiv.net/users/1877923
おにまる 10 https://www.pixiv.net/users/587268
センチネルブルー 6 https://www.pixiv.net/users/11990508
アマニア 7 X @amania_orz
いなり 8

※Pixivにも投稿しています。


特別編「プル姉妹のスーパー銭湯」第5話

    5

 

 

 ジャングル風呂を堪能した後、プルツーたちは次のエリアへと歩を進めていた。

 ミネバは殊の外施設が気に入ったらしく、普段より何倍もくつろいでいるように見えた。いつも下々の者にかしずかれ、気の休まる時間がないのだろう。

 

 プルツーは、今後も定期的にこうした時間がもてたらと思うのだった。

 

「見よ、プルツー。次のエリアはあそこだな」

「はあ。しばしお待ちを、検索して事前にチェックを―」

「よいよい。よし、プルイレブン! プルフォウも、プルツーも! 早速行ってみよう」

 

 バイザー状のデバイスを使う前に、ミネバは意気揚々と歩き出す。

 あっという間に彼女は、プルイレブンと小走りに駆けていった。

 すぐにフォローに、プルフォウがあとを追う。

 

 プルツーもネットワークへの接続を行いながら、行き交う客たちの中を急いだ。大丈夫だとは思うが、このような場所でミネバの素性が暴かれては、あとあと面倒なことになる。

 それに、ミネバの命を狙うものがいないとも限らない。

 親衛隊として注意を払い、慎重に次のお風呂のデータを閲覧していた、その時だった。

 

「これは……いけない、この風呂だけは姫様には!」

 

 思わず声が出てしまった、次の瞬間だ。

 不意に、ミネバの悲鳴が響く。

 まさに、絹を裂くような乙女の悲鳴という形容がピッタリの、逼迫しつつも通りのよいトーンである。

 急いでプルツーは、検索を打ち切り走り出す。

 やはり、こちらのエリアは子供には……ミネバにはまだ早かった。

 そして、そのことを知るのが少し遅かった。

[newpage]

「姫様! 御無事ですか!」

「あっ、プルツーお姉さま。ちょっと驚かれたみたいだけど、大丈夫。さ、ミネバ様」

 

 プルツーが追いつくと、ちょうどプルフォウがへたりこんだミネバに手を差し出しているところだった。

 ミネバが耳まで真っ赤になっているのが、バイザーの上からでもわかる。

 

 そう、ここは混浴エリア……顔こそ隠している者もいるが、男も女も裸で行き来しているのだった。勿論、健全な混浴であり、兵士たちの戦友気質は時に性別の違いを気にしないことがあるのだった。

 

「姫様、申し訳ありません。事前にお止めできれば」

「プ、プルツーか……いや、うん、少し驚いただけだ。だが、私にはまだ刺激が強いようだ」

「この先に涼むための休憩エリアがあります。そちらで冷たい飲み物などでも」

「わかった、任せる」

 

 だが、立ち上がったミネバはふと、周囲をゆっくり見渡した。

 ここにいるのは、ネオ・ジオンの将兵や軍属、そういった関係者ばかりである。

 皆、思い思いに憩いの時間を過ごしているようだった。

 

 固まって談笑している男女は、どうやらモビルスーツのパイロットのようだ。空間戦闘の戦術談義で盛り上がっている。夫婦らしき者もいるし、整備兵も艦のクルーも穏やかに笑っている。

 そして、ミネバはその光景を見渡しぽつりと呟いた。

 

「皆、戦っておるのだな……傷付いている者もいる。傷の消えぬ者も」

「……武人にとって、戦傷は勲章のようなもの。どうか、お気になさらずに」

「ああ。だが、ここにいる者たちは皆、老若男女を問わずジオンのために戦ってくれている。なにか、私にも報いることができればよいのだが」

 

 ふと、ミネバが目を細めて混浴エリアの隅を見やる。

 そこには、佐官クラスの将校らしき二人組が湯に使っている。剥き出しの岩肌が、まるで天然の露天風呂のような雰囲気を醸し出している一角だ。

 男たちは双方とも、逞しい肉体のそこかしこに古傷を残している。

 そして、多くを語らず互いに盃を酌み交わしていた。

 次のミネバの言葉に、思わずプルツーはハッとなる。

 

「プルツー、父は生きていれば……あれくらいの年頃か」

「もう少し、お若いかと」

「ふふ、そうか。私は記憶にないが、父のドズル・ザビは傷だらけの男だったらしい。顔にも大きな縫い傷があって、そのことを隠そうともしなかったそうだ」

「弟君のサスロ様を、テロで失われた時の傷と聞いています」

「私も、父と……お父様と、来てみたかったものだ」

 

 そう言うと、ミネバは踵を返した。

 

 プルフォウとプルイレブンが、彼女を休憩スペースへと案内してくれる。

 どうやらミネバの身分は、周囲には全くばれていないようだ。それでも、警戒心を尖らせつつプルツーも続こうとした。だが、ふと見知った顔が目に留まる。

 

「ん? あれは……スリーか? なにをやっているんだ」

 すぐ下の妹、プルスリーの姿を見つけてしまった。

 

 彼女は身体を大きめのタオルで包みつつ、若い将校と話をしている。人目を避けるようなそれは、密会という言葉がふさわしい。森を隠すなら木の中、ここでなら武器を持っている人間もいないし、距離の近い男女などそれこそ珍しくもない。

 

 プルツーが訝しげに見詰めていると、プルスリーは男からなにかを受け取った。

 そして、二言三言最後に言葉を交わし、分かれる。

 去ってゆく男を見送ったプルスリーは、プルツーの視線に気付いて振り返った。

 

「あら、プルツー姉さん」

「今のは……確か、ベディヴィエール・ワーナー中尉だな? ハマーン閣下の直属の騎士が何故? スリー、説明しろ」

「情報を交換していたんです。詳細はこの中に」

 

 そう言って、プルスリーは先程受け取ったメモリーチップを胸の谷間に隠した。

 プル・シリーズは同じ遺伝子配列を元に生み出されるが、僅かな個体差が無数に存在する。そして、プルツーは思わずぐぬぬと唸ってしまう……一つ下の妹との胸囲に関するアレコレは、僅かな個体差という言葉で片付けられないくらいに明白だからだ。

 

「プルツー姉さん。気をつけて……あの男は、グレミーはなにかを企んでるみたい」

「野心を秘めているなら、それくらいでなければあたしだって困る」

「そのことで、ハマーン派とグレミー派に軍内が割れつつあるわ。そして、互いに相手に最初の一発を撃たせようとしている。今のところは、一触触発だけど小康状態ね」

「……それで、ミネバ様の暗殺計画を持ち出す輩も出てきているのか」

「あら、もうそこまで知ってるのですか? なら、話は早いです」

 

 プルスリーは、そっとプルツーに近付き耳打ちした。

 潜められた声が、はっきりと危険を告げてくる。

 

「気をつけてください、プルツー姉さん。ミネバ様の暗殺計画は」

「どちらの陣営だ?」

「……残念ながら、両方です。どちらにも、ミネバ様を亡き者にしようとする人間がいます」

「それはハマーンとグレミーの意向か?」

「いえ、武功を焦って独断専行気味の者たちがいるのです。ネオ・ジオンで新体制が発足した時、少しでも座り心地のいい椅子がほしいのでしょう」

 

 呆れた出世欲だ。

 だが、無理もない……ジオンはあのアステロイドベルトに、十年近くいたのだ。その間に、ザビ家の支配体制はゆるやかに形骸化し、ジオンの理想であるスペースノイドの解放は叫ばれなくなっていたのだ。

 ただ、辺境の宇宙で軍としての規律を守るため、徹底した管理体制が高級官僚を生み出してしまう。

 彼等の中には勤勉で忠実な者もいたが、腐敗していった者も少なくない。

 そして、情報をもたらしたプルスリーは、さらに危険を警告してきた。

 

「問題は、どちら側からであれ姫様を狙われれば」

「それを守る親衛隊の立場は悪くなる。警護に穴があったなどとでっち上げることは簡単だからな」

「よしんば、姫様を守れたとしても……責任の追求は免れません。ハマーン派には、厄介なニュータイプ部隊の影響力を削る好機を与え、グレミー派には独立した戦力の親衛隊を解体、それを吸収する口実を与えるでしょう」

「よくもまあ、連邦やエゥーゴに手を焼いてる中、これだけ暗躍できるものだ」

 

 プルツーは呆れてしまったが、知ってしまったからには見過ごせない。

 それにどの道、情報収集を終えたプルスリーからは、正式に報告書となって出てくる話である。

 

「スリー、セブンと連携して速やかに対処しろ。……そうだな、こういう時は……蠱毒だ」

「コドク? それは確か」

「大昔の中国で使われる呪術だ。ま、あたしは呪い師でも魔法使いでもないがな。ようするに、互いに互いを狙わせ、喰い合わせろ。勝手に消耗し、どちらかが潰れる。あとは、残ったほうを処理すればいい。できるな?」

「勿論です、プルツー姉さん。姫様を介さず、直接やりあってもらいましょう」

「そういうことだ。それと、スリー……プルスリー」

 

 一度周囲をキョロキョロしてから、今度はプルツーが小さな声でささやいた。

 そして、妹に一応釘をさしておく。

 

「あまり、女の武器とやらを使い過ぎるなよ。心配でハラハラするからな」

「まあ……ふふ、気をつけましょう」

「あまり危ない橋を渡る必要はないし、な。妹にそういう仕事をやらせてると、あたしはなんだか、こう……胸が痛くなるからな」

「大丈夫です、プルツー姉さん。ベディは信用のおける人ですし、わたしはわたしでそれなりに上手くやれてますから。では、後ほど報告書にしてお送りしますわ」

 

 それだけ言って微笑むと、プルスリーは行ってしまった。

 その華奢な背を見詰めて、小さくプルツーは溜息を零す。プル・シリーズの全員が、一緒にモビルスーツで戦うだけに専念できたら、どれほどいいだろうか。

 

 だが、軍にはプルツーたちを人形の乙女と勘違いしている人間は多い。

 プルスリーが時々、そういう大人たちと危険な綱渡りをしているかと思うと、プルツーは少し気が滅入る。それが必要なことだからまた、時々嫌になってくるのだった。

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