自身の人生を生きる・・・それは、自分の存在意義を見つけ出すということなのだろうか
貴音は天童民間警備会社へと向かう道中。菫と会話をしてからその事が頭から離れずにいた
存在意義。果たして一体、どれだけの人間が己の存在意義なんてものを明確にしているのだろうか?中には自分はある使命を全うするために生きていると胸を張って言う者もいるかもしれない。実際はどうだろう?いない。とは言えないが、多くはないと思う
俺の生きる理由・・・
一彦が願った世界平和・・・理不尽な運命に巻き込まれ傷つけられる〝子供達〟が安心して暮らせる世界を。人々が怯えずに安心して生きていける世界を作る。それが彼の夢だった。そうして生まれた霧谷 貴音という存在はそれに沿い世界平和に従事すべきなのではないか
それが彼への恩返しになり、世界への貢献になり。何も悪いことなんてないだろう
「夢や希望を探せ・・・・か」
家族を失い、唯一の支えとしていた一彦が死んだ
頼れる者は誰ひとりいなくなった
ガストレア戦争で家族を失ったのは9歳の時。一彦を失ったのは13歳の時
何とか必死にもがいた。悲しみに押しつぶされそうになりながら、一方的な暴力が飛び交う荒れ果てたこの世界で希望という光を探し求めたんだ。でも、ダメだった
自分が見つけられるモノなんてなかったのだ。そんな時、偶然一彦の本に挟まっていた手紙を見つけることができ、今に至る。俺は自分のすべきこと、向かう先が見つけられたことが嬉しかった
しかし、現実は甘くない
「言われなくてもわかってる・・・でも、わからないんだ。希望なんて見えない・・・・もう、思い出せないんだ。家族の暖かさも・・大切な人を失う悲しみも」
貴音は暗い瞳で呟く
他人から見ればおかしな話だと笑うだろう。何故、そんな大切なことを忘れるのか。と
だが、時間とは残酷なくらいに感情を鈍らせるものだ
6年間。貴音は悲しみを背負いながら癒される事のない日常を送っていた
きっかけが無かったのだ。生きていくことに精一杯だった日々。結果的には経済的にも困ることは無くなった。だが、それでも心の穴が埋まることだけはなかった
これ以上のダメージを避けるための自己防衛機能とでも言うのだろうか
悲しみを忘れ。生への執着だけを糧に生きてきた6年間は精神的に未熟だった少年を歪ませるには十分だった
鬱屈になりつつある思考を現実に引き戻す
気づくとそこには手元にある室戸菫から受け取った説明書きにある通り怪しげなビルに辿り着いた
「ハッピー・・・ビルディング」
名前に似つかわしくもないモノも混じってるが、その中の三階部分に確かに話に聞いていた事務所の名前がある
コンッコンッコンッ
三度のノック。少し遅れて中から声が聞こえた
女性の声、それも若い。続いて男性の声が聞こえる。なにを言ってるのかはわからないが恐らく入れ。ということだろう
出迎えたのは黒髪ストレートの女性と辛気臭そうな顔をした青年だった
彼女らに菫との話の一部始終を説明する
どうやらこの会社の社員は二人だけらしい。中の様子を伺えばわかる程度にはそんな気配がする
「博士の紹介でウチを?」
辛気臭い顔をした・・・・里見蓮太郎の問いに首を縦に振り肯定する
「ああ・・・俺にもよくわからないが。ライセンスの有無を確かめたことを考えると恐らくここで働け・・・と、いうことだろう」
「ところで貴方ペアはいるの?」
黒髪ストレート。天童木更の問に対して首を横に振り否定する
「ライセンスは持ってる。ペアはいない・・・色々あってな。ペア無しで民警として活動していたんだ」
天童民間警備会社の二人はお互いに顔を見合わせてウーンと唸る。それも当然。貴音のようなケースは特殊だからだ、必然的にガストレアを仕留めるにはイニシエーターの力を借りたりプロモーターの力を借りたり。と、ペアを組んで活動することが当然の世の中であるからして・・・と、いうより。そもそも〝タダ〟の人間ひとりでやっていくには荷が重すぎる仕事になるため必然的にペアを組むことになる
「深くは聞かないけれどIP序列があったのなら聞いておきたいわね」
「・・・名前だけだが・・イニシエーター古河 陽菜との序列は774位だったはずだ」
それを聞いて両者は唖然としている。序列の数字のせいだろうか
それとも架空のイニシエーターというのが本当だったからだろうか
「774位?!それを安月給で雇えるの?!」
「安月給??まぁ、気にしないでくれ。俺はここで働ければイイ」
「落ち着け!ウチは言っとくが本当にびn」
ガーンッと部屋中に響き渡るほどの勢いで頭に拳を受けた蓮太郎はそのまま後ろへとひっくり返る。木更は笑顔で貴音のほうへと様々な書類を丁寧に素早く用意してきた
書類へのサインを済ませると「これで生活が楽になる~」とハシャぎながら奥の社長机らしき場所へと向かっていた
蓮太郎はというと後悔してもしらないぞ。とでも言いたげな視線を貴音へと投げかけてくる。正直どうでもいい
「じゃあ。俺の連絡先はここへ置いておく・・・用があったらいつでも呼んでくれ」
メモに自分の連絡先を記し、そう告げると高音は足早にその場を去った
「単独で774位の民警か・・・聞いたことがないな」
1000番を切るということはそこそこ名が知れていても良いはずだが・・・
蓮太郎は思考を巡らせる
イニシエーター無しの状態で774位ということは霧谷 貴音そのものの力を表している。その時点で既に人外とも呼べるレベルだが何より不思議なのは単独で任務をこなすという特徴的な部分があるにも関わらず噂にすらなっていないこと
霧谷貴音・・・もしかしてアイツも・・・?
そこまで考えたからそれはないだろうと自身の考えを否定する。仮にそうであるならばより一層騒がれててもおかしくはないはずだ
いや、待てよ・・・東京エリア外から来たのなら噂がこちらまで届いていない可能性だってある。正体不明の民警、霧谷貴音
あの室戸菫の推薦なのだからこちらに害を加えたりするつもりもないのだろう。なら、何故ウチの会社なのだろうか・・・
「わかんねぇ・・・」
溜息をつきながら、頭をかくと蓮太郎は考えても無駄だと判断し。その思考を隅に追いやることに決め今晩の献立を頭の中で考えはじめるのだった
こんなキャラ出してほしい。なんてアイデアがあったらどうぞ
出てくるかもしれません