すみません
現在、貴音は東京エリア防衛省へとやってきている。入口で名前を告げると居心地の悪そうな堅苦しい雰囲気を持った建物の中へと案内される
エレベーターに乗り、第一会議室と書かれた部屋の前まで来ると案内人は去っていった
蓮太郎が扉を開ける。その小さな扉からは想像もできないほどの大きさの空間が広がっていた。中央には細い楕円形の卓があり、奥には巨大なELパネルが埋め込まれている
そして円卓には、きっちりとスーツを着込んでいる面々がそれぞれ指定された席へと着いておりその後ろにはそれぞれバラニウム合金製の武器を持った連中が立っている
(俺たち以外にもこれだけの人数を集めていたのか・・・)
貴音達が部屋へと足を踏み入れた瞬間。それまで交わされていた雑談はピタリと止まり。かわりに殺気のこもった視線が突き刺さる。貴音はそれを無いものと同然に受け止めそれぞれの顔を見渡す。その中には何かで見たことのあるような顔もあったが正直どうでも良かったため覚えていない
「おいおい、最近の民警の質はどうなってんだよ。ガキまで民警ごっこかよ。部屋ぁ間違ってるんじゃないのか?社会科見学なら黙って回れ右しろや」
プロモーターらしき人間の一人が、こちらへと歩いてくる。こういった威圧的な態度を取るものは珍しいものではない。木更を庇うように前でた蓮太郎の態度が男は気にいらなかったらしく、バンダナで顔を半分隠していてもわかるくらい明らかに不機嫌そうな表情を見せる
「あぁ?」
その状況を見かねた貴音は溜息を一つつくと木更と蓮太郎に席へと行くよう促す
「よくいるタイプだ。こういう奴とのトラブルは話じゃまとまらない、相手にするな」
貴音のその言葉がきっと男を怒らせたのだろう。木更の方へと目をやり、男へと視線を戻した直後に強烈な頭突をくらった・・・・ハズだった
しかし、倒れていたのは頭突きをしたはずの男で貴音は平然とその場に立っている
「なっ?!」
倒れていた男は今更状況を理解したらしく、すぐに飛び起きると貴音から数歩分の距離をとった
「テメェ・・!!」
すぐにでも背中にあるバスターソードを抜かんばかりの勢いで貴音を睨む男の視線を意に介した様子もなく貴音は木更から半歩下がった所で待機する。それほどまでに、この男と貴音の実力の差は明確だった
「やめたまえ将監!」
その制止の声は卓についている、男の雇い主と思わしき人物から発せられた
「チッ・・おい、オマエ。何て名前だ」
「霧谷貴音。今の俺は天童民間警備会社の人間だ、用があるなら後にしろ」
霧谷貴音。その名が部屋の中に充満していた殺伐とした雰囲気を壊し、代わりに卓に着いていた人間達に困惑や驚きの色が広がっていく
「聞いたことあるぞ・・・アイツが霧谷貴音か」
「あの将監をああも軽くあしらうとは、噂は本当だったか」
貴音はまた一つ小さく溜息をついた
木更は用意されていた末端の席に着き、蓮太郎と貴音も傍に着く
伊熊将監。確かIP序列、千番台の民警だったはずだ。正直今の今まで忘れいたが素行の悪さから噂になっていたのを聞いたことがある。そして彼を制止させた男。三ケ島ロイヤルガーター代表取締役 三ケ島影似。大手の中の大手といえる民警の一つだ
(とにかく。面倒なコトになりそうだな・・・)
一人内心でぼやいていると、携帯が震え誰かから連絡が来たことを伝える。振動パターンで送り主がわかるように設定されており、すぐにコウタだとわかった。本題に入るまで少しの間があるようなので貴音は送られてきたメールに目を通す
差出人:荻原コウタ
件名:わかったことがある!
以下、本文
お前を探してる奴らを少し調べてみたんだけど、どうやら何かしらの組織みたいなんだ
これは仕込んだ盗聴器からさっき聞こえてきたものなんだけど羽が3枚だの4枚だの1枚だのー・・・って言ってたが正直意味がサッパリわからん!多分だけど枚数が階級に比例してんのかな。なんとなく、そんな雰囲気だったよ
羽で階級が分けられてるってのも変な感じだよな。そうそう、噂程度の話なんだけどガストレアを人の命令に従わさせるとか、逆に人間にガストレアの力を後天的に与えるとか・・・最近物騒な話が絶えなくてな。その噂を裏付けるような不自然な感染者の出現だったり・・・それほど件数は報告されてないけど、やっぱ可笑しい気がする
俺はもう少し調べてみるわ。進展がアレばまた送る!
貴音は深入りはしないようにと忠告のメールをうち。溜息をまたこぼす
貴音は正直、今ある状況よりもコウタからのメールに完全に意識が向いていた。噂だ。一体何が目的なのか・・・
木更に額を小突かれた時、始めてモニターに映し出されている聖天子の姿に気がついた。聖天子は特に気にした様子もなく内容について話し始める
今回の集められた内容を簡潔にまとめるとこうだ。政府からの依頼である。内容は、感染源ガストレアの体内にあると思われるケースの回収。しかも、何やらワケありとのことで詳しい話は聞かせてもらえないらしい。この人数で捜索するからにはそれなりのリスクを伴う物がケースに入っていると見ていいだろう
そこで背筋に走る悪寒を感じ貴音はその方向を見ずに声を上げた
「誰だ」
突如部屋にけたたましいほどの笑い声が響き渡る
「私だ」
奇妙な仮面にシルクハット。ふざけたような格好の男に対し貴音はホルスターから抜いた大口径の拳銃「デルタ」を向けて構える
仮面の男は卓の上に土足であがり聖天子に相対する
「私は蛭子、蛭子影胤という。お初にお目にかかるね、無能な国家元首殿。端的に言うと私は君たちの敵だ」
貴音は銃を構えたまま、男に問う
「ここのセキュリティもザルじゃない。どうやって侵入した?」
「正面から、堂々と・・・・と、答えるのが正しいだろうね。もっとも、小うるさいハエが何匹か突っかかってきたから何匹か殺させたけどね。丁度いい機会だ、私のイニシエーターを紹介しよう。小比奈、おいで」
「はい、パパ」
蓮太郎と木更のあいだを少女が歩き去っていく
ウェーブ状の短髪、フリル付きの黒いワンピース。腰の後ろには交差するように二本の小太刀が差されている
「目的は何だ」
少女の小太刀から垂れている赤い液体に視線を向けて視線を戻すと静かに影胤に問う
「今日は私もこのレースにエントリーするということを伝えておきたくてね」
「エントリー・・・?」
「七星の遺産は我々が頂く」
七星の遺産。ここにきて聞き覚えの無い単語が出てくる
「七星の遺産?何だそれは」
「おやおや、君たちは本当に何も知らされずに依頼を受けさせられようとしていたんだね。可哀想に。君らが言うジェラルミンケースの中身だよ」
七星の遺産。その言葉に聖天子が一瞬の反応を見せたのを貴音は見逃さなかった。おそらく七星の遺産というのはそれ自体、公にはなってはならないほどの危険物。今の荒れ果てたこの時代における危険。いくつかあるだろうが、自然に導き出される答えが一つある
ガストレアだ
しかし、そのケースがガストレアとの関係性を示すのには少し難しい。そこで貴音は先ほどのメールを思い出した
ガストレアのコントロール
しかし、それができるならそもそもモノリスなんていらないだろう。ソレがガストレアを遠ざける力があるのだから。なら、その逆は?モノリスという結界があるにも関わらず政府が死に物狂いで取り戻そうとするもの。モノリスを突破できるガストレアなんてもう限られている
(ステージVか・・!!!)
そこまで思考が至ったところで一時中断されることになる
伊熊将監が蛭子影胤に斬りかかったのだ。しかし、見えない何かに阻まれてバスターソードは凄まじい勢いで弾かれる
「下がれ将監!」
三ケ島の一喝で、その意図を察した伊熊は舌打ちと共に後退する
そして間髪いれずに轟音が鳴り響く。部屋にいる人間が一斉に影胤へ向けて銃を発泡した。そして、それ自体が間違いだったのだと貴音は気づく。
危険を察知した貴音は、迫り来る何かを避けるため体をひねりながら飛ぶと先ほどまでいた場所を弾丸が通過した
打ち出した弾丸が一斉に返ってくる。蛭子影胤を覆っていたのはドーム状のバリアだった。こういう類の特殊な能力には覚えがある。間違いない、機械化兵士だ
霧谷貴音にはわかる。形は違えど自分もそうなのだから
「斥力フィールド。私は『イマジナリー・ギミック』と呼んでいる」
「・・・バリア、だと?お前、本当に人間なのか?」
蓮太郎の絞り出した言葉に影胤はクスクスと笑いながら答える
「人間だとも。ただこれを発生させるために内蔵の殆どを摘出してバラニウムの機械に詰め替えているがね」
「機械・・?」
「名乗ろう里見くん。私は元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類想像計画』蛭子影胤だ」
ガストレア戦争が生んだ、対ガストレア用特殊部隊。この目で自分以外の人間を見るのは始めてだったが今の状況で納得せずにはいられまい。貴音は黙って影胤を見据える
影胤はコチラを見た時に興味深そうに目を細めると、今度は蓮太郎の方へと向かって歩き出す
マジックショーさながらに白い布から箱を取り出すと影胤は悠然と窓まで歩いていき姿を消した。民警たちは皆黙ってその場から動くことはできなかった。そんな中先に口を開いたのは、天童木更である
「中に入っているものがどういうものなのか、説明していただけますよね?」
聖天子は目をつぶり唇を小さく噛んだ
「いいでしょう、ケースの中に入っているのは七星の遺産。邪悪な人間が悪用すればモノリスの結界を破壊し東京エリアに〝大絶滅〟を引き起こす封印指定物です」
大絶滅。貴音は気づかぬうちに呟いていた
同時に一彦のことが頭をよぎる
「ダメだ。それだけは、ダメだ」
思考が一点に絞られていく
障害の排除。貴音は蛭子影胤を抹殺することでコレを回避できると判断したのだ
自分でも驚くほどすんなりと頭の中に目的が入ってくる
「奴を排除する」
そう口にした貴音の右目には赤い光が灯っていた
表現力、文章力などなど勉強不足が目立ち読みづらいかもしれませんが暖かい目で見てください
筆者も少しずつ精進したいと思います