貴音はブレードに力を流し込む。刃から強力な振動が発生し近くにあったガラスが砕け散った。自宅へと戻った貴音はすぐさま用意を始めていた。蛭子影胤、それは貴音が遂げなければならない理想にとって最も忌むべき存在だ。この世界を混乱に落としれたガストレア同様世界にとっての毒でしかない
「障害は排除する・・・」
暗闇の中で一人呟きながら虚空を睨む。それでも手際よく装備を整えていた
デルタには特殊な加工を施したバラニウムの弾丸が込められる。両腕には強力なワイヤーが仕込まれ、ここへ引っ越すときに持ってきた荷物の中から特殊なバイザーを取り出し、専用の戦闘用スーツを着込んでいく。全身を黒く覆い、最後にバイザーをつけると不気味に青く光りはじめる。さながら暗殺者のような風貌になった貴音は蛭子影胤の顔をしっかりと脳裏に焼き付けて他の思考を排除していく。ふと、自身の端末に一通のメールが入っているのに気がついた
差出人:司馬未織
件名:フゥー
以下内容
この前頼まていたもの、完成間近や。楽しみにしといてな
(・・・・・)
彼女には狙撃銃を一丁依頼している。元々、貴音は狙撃の方を得意としているため丁度欲していたところだった。かといって近接戦闘を苦手としているわけでもないためとりわけ苦労しているというわけでもないのだが・・・
そこで金髪の少女の顔が思い出された。一緒にいた時間はとても短かったし顔もハッキリと覚えているわけではない。が、唯一自分の技術を教えた相手でもある。あの頃はただ生きるのに必死でなんでもやっていた。戦闘術を教えるだけで多額の報酬が貰えるということで依頼には即答したものだ。
そこで訓練を受けに来たのが確か呪われた子供だった
彼女は自分の身を守る術として貴音の技を教えて欲しいと言ってきたのだ。もちろん全てを伝えたわけではないが、それでも大まかなモノは伝授した
実に飲み込みがよく訓練中は何度も驚かされたものだ。ワイヤーの扱いや狙撃銃の扱いを聞かれた時はどうか迷ったが報酬欲しさに教えてしまった
人間は追い込まれるとここまで惨めになるのだなと、過去を振り返り苦笑を浮かべる
背中にブレードを装備しホルスターに銃を入れる。バイザーを機動させ戦闘準備を終え、貴音の瞳に赤い光が灯る。深く息を吸い込み自分にも言い聞かせるように今回の為すべきことを呟く
「蛭子影胤を排除する」
今の貴音を表すなら『機械人形』
「世界」を乱す『悪』を滅ぼすために動く人形。平和という理想の実現のためだけに忠実に動く人形。ある意味ではそれが機械化兵士としてのあるべき姿なのかもしれない
今、貴音を動かしているのは誰の意思なのか
菫の言葉が頭に響く
「俺の夢・・・」
自分の夢。考えれば考えるほどわからなくなる
夢なんてものはない。そんなものはとうの昔に捨てたハズだ。否、そうでもしなければ生き残れない世界だと昔に知ったはずだ
天童民間警備会社の面々を思い出す
暖かな日常を見てどこか懐かしい気持ちを感じることもあった。だが、今はソレについて考えている状況ではない
思考を無理矢理、停止させて自身のやらなければならないことの一点に集中する
しかし、それもまた中断されるコトになった
『もしもし霧谷くん?!』
焦ったように、切り出したのは天童民間警備会社社長の天童木更だ
「はい。霧谷です」
『今から急いで里見くんの応援に行って!ガストレアを見つけたらしいの。蛭子影胤と遭遇しないとも限らないわ。場所はこっちから送るから』
電話が切れると同時に位置データが送られてくる。
「遠いな・・・・」
両脚から一段と激しく炸裂する電気の音と共に目的地へと向かった
遅れてすみませんでした。今回は筆者としても流石に焦りを隠しきれない出来になってしまいました。少しずつ調子を取り戻せたらと思います
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今回も読んでいただいた方々ありがとうございました