目を開けると一面の白が目に映った
「ああ、病院か・・」
過去にも何度か経験したことがある。まだ、鮮明にならない頭を何とか働かせて恐らくあの後に自分は救助隊が何かに助けられたのだろうと整理する
体のほうは良好なようで、戦闘も行える程度には回復していた
同じ病室向かい側のベッドには里見蓮太郎が寝ている。誰かが見舞いに来たであろう痕跡もある。恐らく天童木更だ
次第に思考がハッキリとしだして自分が影胤を取り逃がしたことについて考える。あそこで蓮太郎を助けたことはこの東京エリアよりも同僚の命を優先したことに他ならない。あの時影胤を捉えていればこの東京エリアの危機は去っていたハズだ
暗い気持ちが湧いてくる。これで東京エリアが危険にさらされ万が一のことになれば自分一人では背負いきれないほどの責任を負うことになるだろう
貴音が顔を伏せると、少し控えめに病室の扉が開かれ人影が入ってくる。ベッドのうえで上体を起こしていた貴音はゆっくり扉の方に目を向けると同時に強い衝撃と同時に何かが自分のところに飛び込んでくる
「蓮太郎を助けてくれて、ありがとう」
腕の中にある少女の笑顔を見て先ほどまでの気持ちは消え去り暖かいものが満ちていく。世界的に見れば今回の行動は間違えていたかもしれない、でもこれで良かったのだという確証を得ることができた。一つの笑顔を守ることができたのだ
「無事・・・とは言い難いが助かったみたいで良かった」
延珠は蓮太郎の横まで行くと心配そうな表情で椅子に座る。彼女の居場所はきっとあそこなのだ。今回もし蓮太郎を助けられなければ途方に暮れていただろう、人一人を救うことの大きさをこうして感じることができた。その難しさも
影胤を放って置くわけにはいかない。ヤツは確実に仕留めなければ先ほどの笑顔も失われるだろう。それはあってはならないことだ
自分の手で必ず仕留める。相打ってでも
退院の手続きをしなければと、思い立ち上がろうとしたところで次の来客が現れる。天童木更だ
「目を覚ましたのね。体は大丈夫?里見くんのことは私からもお礼を言わせてもらうわ、本当にありがとう」
真っ向から礼をされることに軽く照れくさい気持ちになる。これは嬉しいのだろうか
「天童木更。俺に蛭子影胤の情報をくれ、アイツは俺が確実に消してみせる」
先ほどとは変わり冷酷な色を瞳に浮かべる。文字通り蛭子影胤を殺すつもりなのだろう。木更は少し躊躇した素振りを見せると先ほど手に入ったばかりの情報を貴音に送信する
「今送ったデータに影胤が潜伏していると思われる場所も記されているわ」
「助かる」
一言そう残すと貴音は病室を出て行く
少女。千寿夏世は考える。今回、政府から直接受けたこの依頼は手練の民警集団によって行われる。普通に考えれば心配する余地もないほどの戦力だ
だが、あの時姿を現した仮面の男。その力はその戦力をもってしても敵わないのではないかと思わせるほど常軌を逸したものだった。気になっていることは他にもある
伊熊将監を容易くあしらった男。恐らく今回急遽呼ばれたであろう人物。霧谷貴音
イニシエーターである夏世にはあの青年が人間では不可能なレベルの速さで動いていたことを目で捉えていた。そして一瞬の放電現象も
蛭子影胤に酷似したモノを感じさせる力だ。きっと今回の鍵は彼になるだろうと予想していた
現在、蛭子影胤の位置が判明し各々が準備を進めている中少しの自由時間を将監からもらって街を適当に歩いているところである。戦いが始まるまでの暇つぶし程度に店を見て回るがその行動にほとんど意味はない。普通の子供と同様の生活は呪われた子供たちにはできないのだから
溜息をつくと、雑貨屋らしき場所から服屋の方へと移動する。やはり、呪われた子供たちも立派な少女だ。オシャレをしたいという気持ちもあるだろう。服を見るときは少し胸が高鳴るものだ
そこで夏世は一度店に入ろうとしたとこで足を止める。ガラスに反射して映った霧谷貴音が見えたのだ
振り返ると歩いていく貴音の姿が見える。夏世は貴音の方へと走りだした
何故追いかけているのかもわからないまま、貴音に追いつくと服の袖を引っ張る。もしかしたら好奇心なのかもしれない、また別の何かがあるのか
青年は不思議そうな面持ちで振り返ると困ったような表情を浮かべた後に迷子か。と尋ねる。もちろん少女はいいえと答えた。青年は不思議そうな表情を浮かべた後に頭の上に疑問符を浮かべ始める
「私は伊熊将監のイニシエーター千寿夏世といいます。あの時は失礼しました」
「あー・・・頭突きの。気にしてない・・・その、何か用か?」
「次の作戦には参加するのですか?」
「作戦?蛭子影胤の件か・・・当然だ」
「少し安心しました。あなたがいるなら勝率も一気に上がるでしょうから」
「蛭子影胤は必ず仕留めるさ・・・・こんな子供が戦わなくても良い世界であればいいのにな」
苦笑いを浮かべて少女の頭を軽く撫でると青年は去っていった。夏世は始めて撫でられたことに驚きつつ少しの間その手の感触に浸っていた
貴音の残した言葉が思い浮かぶ
「そんなものは夢物語に過ぎません。でも、そうであればいいのにと思うのは仕方のないことなのかもしれませんね、私も・・・」
お久しぶりです
遅くなってすみません。それにしてもなかなか話が纏まりませんね・・・・
原作を読んでいるとついつい親しい間柄の人と二人きりになったら堅い口調が崩れる夏世を想像しては一人で盛り上がっています
感想などありましたら随時募集しております
よろしくお願いします