ここは惑星サダラ。
数多ある裏路地のとある一角で、大勢の男達に囲まれた好青年が1人立っていた。
「おい兄ちゃん、何してんだ?こんなところでよぉ」
「パトロールだ」
「正義のヒーロー気取りか、あーん?」
「近いな...」
戦闘ジャケットを着たガラの悪そうな男達が脅しをかけている。肌は浅黒く、ピアスやらリングなどを耳につける様子は、ヤクザや不良にしか見えない。
「ビビって言葉もでねぇのか、あーん?」
「離れてくれないか?そろそろ我慢の限界なんでな」
「おうおう、舐めた真似してくれるじゃねえか兄ちゃん。これはお仕置きが必要なようだな」
リーダー格らしき男が拳を握ると、ひゃひゃひゃひゃひゃ!と取り巻きが笑い出す。リーダー格と思しき男は、その肩書きに恥じないほど鍛え抜かれた肉体美を晒していた。隆起した胸板に押し上げられた戦闘服の胸部。死線をくぐり抜けてきたのであろう治りきっていない傷跡が残った上腕。
街を歩けば誰もが歴戦の戦士だと思い疑わない見た目の男は、ワルの笑みを浮かべながら指の関節を鳴らし脅しをかけた。だがその青年はため息を吐き出すだけで、萎縮する様子もない。
「なんか言えやこらぁ!」
雑魚キャラ感満載にいっちょ前のセリフを言いながら、上目遣いに脅してくる男の頭を掴む。
「離せやこら!待ってあ!?...いやいやいやちょちょちょちょ待って!」
両側に建つ建物の壁を交互に蹴り、屋根へと到達した青年はプロ顔負けの投球フォームを取る。まさかの様子に青年を囲んでいた男らは、ポカーンとして上を見上げている。頭を掴まれたままの雑魚キャラは、何をされるのか予測したらしく激しく暴れる。
「動くなよ。じゃないと綺麗に投げつけれないだろう?」
「待って!いや、待ってくださいそれだけは勘弁「ふん!」ぁだぁぁぁぁぁ!!!!!」
ヒューン、キラーン!という効果音が似合う速度で、真昼の大空に星を瞬かせた男は手を額に掲げ告げた。
「よい旅を」
屋根から飛び降りたのだが、ワル共は通行人たちと同様に星が煌めいた方角を見上げたままだった。
「全員ああなりたい?」
コンマ1秒で逃走した男達であった。土煙を上げながら逃走する男達から「覚えてやがれぇ!」「次会った時はただじゃ置かねえぞ!」「せいぜい足掻くことだな!」という捨て台詞が聞こえてくる。
無愛想に手を振ることでワル共の学習を褒める。
「悪かったな待たせて」
声をかけると路地裏から3人の子供が恐る恐る出てきた。青年が質素な麻の道着の内側から取り出した葉に包まれた肉を見て、子供たちの眼が輝き涎を飲む音が聞こえた。
「時間が経ったから冷えてしまった。だが味だけは保証するぞ」
差し出すと我先にと飛びかかる子供たちに苦笑する青年。少ないがご馳走にありつけたことで空腹感が満たされたのか、子供たちはお礼を言ってから遊び始めた。
角を曲がって笑い声が聞こえなくなったところで、下げていた腰を上げる。路地裏から出た青年は、この星の陸地における中心にそびえる城に眼を向けた。
そこにいるであろう貴族と王族を見据えるように。だがその視線は崇めているでも支持するでもない。嫌悪感を抱くような負の感情が含まれていた。
自身の迷いを振り払うかのように視線を外した青年は、王宮とは反対方向に足を踏み出した。