「オラオラオラオラオラ!その程度だと勝ち残れねぇぞ!」
強烈な連擊をどうにかして腕を使ってさばく。だが手数による差で、みるみるうちにダメージが積み重なっていく。
「っ!んなこたぁわかってるつぅの!」
「口の利き方に気をつけろ!オラぁ!」
「があぁぁぁぁ!」
いい加減意味耳にたこができるほど聞かされた台詞に、つい過剰反応を示してしまう。言葉遣いがなっていなかったらしく、少しばかり沸点に達したようだ。身体中の骨がきしむほどの蹴りを顔面に喰らい、大きな水しぶきを上げて湖に落下していった。
「…えげつねぇ攻撃。アタシだったら即死亡案件だぜ」
「いたたたた。軽くあしらわれている僕たちからすれば、あれだけの戦闘を短時間であっても続けているアレッタさんは凄いですよ」
水中深くへ沈んでいくアレッタを心配するように、カリフラは水面を覗き込みながら呟いた。その隣に身体中を傷だらけにしたキャベが弱々しい笑みを浮かべている。2人はアレッタがシャンパと戦っている前に稽古してもらっていたのだが、ものの数分で戦闘不能にされていた。
2人と比べて倍以上の時間を戦っているアレッタは、厳しめに評価を付けたとしても、文句の付けようはないだろう。超サイヤ人状態の全力で挑んだカリフラとキャベだが、片腕で軽くあしらわれている。だがアレッタは通常状態で、それなりに力を出しているシャンパと互角の戦いをしている。
吹き飛ばされたとはいえ、2人以上に実力が高いのは言うまでもないことだった。
「っ!何だぁ!?」
「何て気の圧力!」
突如、湖の底から水が間欠泉のように噴き出して雨のように周囲へ降らしていく。その水はアレッタが気を爆発させたことによって吹き飛んできたらしい。湖の一部が切り抜かれたように、底まで見通せる道を上がってくるアレッタの様子は、これまで見たことのないものだった。
髪は超サイヤ人のように逆立ちながらも金色ではない。瞳や眉も翡翠色に変化はしていない。身体中を覆う黒色の気も見えている。少し違うことといえば、黒色の中に薄く深紅が混ざっていることだろうか。超サイヤ人2特有のスパークをする瞬間に、深紅が垣間見えているようだ。
「見たことねぇぞその姿は」
「奥の手ってのは最後まで見せないもんですよ。《超獄王拳》!」
シャンパの問いかけにアレッタは冷え切った声音で応えて、爆発的に気を放出させる。その風はキャべとカリフラが顔を手で覆うほどだった。
「はっ、おもしれぇ。何処まで通用するか見せてもらおうじゃねぇか」
気の風を浴びても表情を厳しくしないシャンパが、左手の指を自分に向けてクイクイと動かす。俗に言う「かかってこい」という意味だ。そういうことをする人物というものは、自分の実力を理解しているか傲慢故かの両方にわけられる。
シャンパの場合は、どう考えても前者に他ならないが。
〈破壊神〉という生命の生死を左右することを許される存在。それを担うと言うことは、なれるだけの所以があるということ。そんな人物を相手にして、アレッタには未だ奥の手があるということに驚きを隠せない。
「行きますよシャンパ様」
「来いよ」
「ふっ!」
シャンパの言葉を引き金に、アレッタは瞬時に攻撃を開始した。
「なっ!」
空中を滑るように移動したアレッタは、大きく振りかぶった拳を、驚きで眼を見開いているシャンパの後頭部に叩き込んだ。アレッタが落下していった湖に向かって落ちていく。もちろんただ落下しているだけのシャンパではない。
追撃してくるアレッタに向けて気弾を連発する。だがその気弾を身体を軽く動くだけで避ける。さすがのシャンパも、大量の気弾を余裕で躱しているアレッタに危機感を感じ始めていた。
自分が未だ3割も本気を出していなくとも、ここまで攻撃を避けられていては焦ってしまう。稽古を始めてから1ヶ月で、異常なまでの成長を遂げるアレッタは一体何者なのか。〈破壊神〉でありながら人間如きの存在に違和感を覚えている。
ここに来たばかりの頃は、重力の差に身体が着いていけずに倒れ込むだけだったというのに。いや、その適応能力が異常だったのを思い出す。翌日には普通に立って生活することができていたし、3日も経てば自分で勝手に修行を始める始末だ。
キャベやカリフラ・ケールに限って言えば、1ヶ月経ってようやく修行に辿り着いた状態。異常なまでの適応能力と成長速度は、〈破壊神〉の付き人のヴァドスでさえ眼を見張るものがある。下手をすれば〈破壊神選抜格闘〉で見た《第7宇宙》のサイヤ人孫悟空に、勝るとも劣らぬのではないかと思えてくる。
つまりは殺し屋を生業としているその孫悟空と互角に戦ったヒットとも、かなりのハイレベルで渡り合えるということ。《第6宇宙》最強の戦士であるヒットと直接稽古したわけではないので、実際のところはわからない。
それにヒットはシャンパと手合わせをしたこともないので、アレッタが3割の実力も出していないシャンパと互角に戦えているといっても、その実力を正確に測ることはできない。
「…調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
殴り飛ばされた勢いで落下するのではなく、自由落下していくシャンパが追撃してくるアレッタに怒号を飛ばす。つまりそれはシャンパが少なからずキレたことを意味していた。爆発的に圧力が膨れ上がり、アレッタや観戦していたキャベとカリフラにもそれが押し寄せてくる。
ちなみにケールは気を失っているため、ヴァドスが安全地帯まで移動させている。
「気じゃねぇぞこれは!」
「これは…
サイヤ人同士で戦って感じる気の強さではなく、異次元の存在が放つ言葉にし難い圧力。それが離れているというのに、命の危険を感じさせてくる。目の前でそれを身体中に浴びているアレッタは一体どうなのだろうか。動くこともままならず見事なまでに壊されるのではないか。そう予測してしまう。
「あんな圧力の攻撃喰らったら、いくらアレッタの野郎でも唯じゃ済まねぇぞ!」
「アレッタさんっ!」
圧力の乱流によって2人を視認できない2人は、心配することしかできなかった。
そんな2人の心配をよそに、アレッタは自身に吹き付ける形容し難い圧力を感じて、薄い獰猛な笑みを浮かべていた。まるで簡単に倒れない全力を以て互角に戦える相手に、ようやく出逢えたことを喜ぶ武人のように。だがその顔は決して敵を舐めてなどいない。敬意を表するように戦いを楽しもうとしている表情だ。
それを見たシャンパは怪訝そうに顔を顰めた。5割近くの実力を解放したというのに恐怖でおののく顔をせず、むしろ喜びを感じている様子を見て。現に離れた場所で休憩している2人のサイヤ人は、その圧力で腰を抜かしている。
どうにもアレッタの表情が理解できなかった。
「…何がおもしれぇんだ?」
「さあ、自分でもよくわらない。けどこうして自分の手が届かない存在の力を感じることができて、高揚してるのかもしれない。聞いた話によると、《第7宇宙》のサイヤ人は《第6宇宙》のサイヤ人と違って、戦闘を好む血気盛んな野郎らしい」
「その戦闘好きな性格が災いして数人を残して全滅したようだがな」
「宇宙が違う時点で共感はしないさ。けど、その話を聞いて自分の性格が《第7宇宙》に近い感じがしてると思い始めた」
獰猛な笑みを消して真剣な顔をするアレッタに、シャンパも少なからず戦闘をするのをやめた。その言葉の意味を理解しようとしているのだろう。
「《第6宇宙》のサイヤ人のくせに《第7宇宙》のサイヤ人に近いだぁ?」
「まあ、その理由として非人道的なことが関係しているんだろうさ」
「俺からすれば、お前達が非人道的なことしてようとどうでもいいけどよぉ。それと何が関係してるんだ?」
「《第6宇宙》と《第7宇宙》のサイヤ人の違いは2つある」
その言葉は別段特別な話ではない。シャンパやヴァドスはともかくキャベはそれを知っている。〈破壊神選抜格闘〉でベジータから聞いているからだ。
「1つにさっき話した性格だ。《第7宇宙》のサイヤ人は凶暴で残忍性が高い。他種族の星を奪って他種族に高く売りつけることが生業だという。だが《第6宇宙》のサイヤ人は穏やかで大人しい。他種族と手を取り合って敵と戦う。これはまあ知ってることだろうが。そして2つ目は尻尾が生えていないということ」
「ああん?当然だろうが。キャベやそれ以外にも生えていないんだからな」
「…かつて俺の両親はより強いサイヤ人を求めて研究を行ったらしい。その結果、尻尾を生やすことで驚異的な戦闘力上昇が見られることを発見した」
遠い過去を見るように語るアレッタに、シャンパはどうでもいいという顔で話を聞いている。どうでもいいならさっさと攻撃すれば良いだけの話なのだが。それなりにシャンパにも聞いてやろうかなと言う感情が、僅かながらに膨れ上がっているのかもしれない。
「で、どうなったんだ?」
「サイヤ人は生まれてからしばらくの間は、保育カプセルという機械の中で育てられる。保育カプセルの中には、成長を促進させる成分を含んだ液体で満たされている。その液体に、細胞分裂促進剤なるものを秘密裏に混ぜ込んだ。そうして誕生したのが俺だ」
「つまりお前は普通のサイヤ人とは違うってことか?」
「それを聞かされたのはそれなりに時が経ってからだ。その頃には他のサイヤ人と自分は何かが違うと思い、1人で生きていた。他の誰とも関わらず孤独で。けどたった1人だけしつこくつきまとう奴がいて、根負けしてそいつとは少なくない時間を過ごした。この力は俺本来の力じゃない。科学力にものを言わせて生み出された悪魔の力だ。他人から貶され蔑まれて当然の存在」
己の存在を許せないとばかりに嘆くアレッタ。それを見てもシャンパはそれほど心を動かされなかった。死にたいなら命を絶てばいいだけの話だろうと思ったからだ。
「でも俺の正体を知らなくとも必要としてくれる子供達がいる。そいつらのために俺は生き続けなきゃならない。たとえ自身が望んで手に入れた力でなくとも、必要とする人がいるなら喜んで命を散らそう」
「英雄気取りかよ。いいぜその慢心を後悔するんだな!」
瞬間移動にも迫る速度でアレッタの背後に移動したシャンパは、手刀を首筋に叩き込もうとした。
「何!?」
振り返ることなく余裕でそれを防いだアレッタが、ゆっくりと視線をシャンパに向ける。防がれたことの驚きがその静かに燃える瞳を見て霧散する。それと同時に少しばかりこの戦いが面白くなりそうで期待感が高まっていく。
もしかしたら少しぐらい本気で戦っても壊れはしないのではないだろうか。そう思わせてくれる。
「おもしれぇ!」
「はぁ!」
「はっはぁ!」
腰の捻転力でアレッタが繰り出した拳を躱し、シャンパが右蹴りを繰り出しても、今度はアレッタが躱して拳を叩き込む。拳を掴むことなく避けるので拳圧がそのまま吹き抜けていく。草木を揺らさず空間を揺らす。もはや神の域の攻撃である。
「ちょっとばかし本気でいかせてもらうぜ!《スターダスト・フォール》!」
「ちょまっ!」
超スピードでシャンパから距離をとったアレッタは、上空から蒼色の気弾を雨のように降らせていく。その数は視認できるだけでおよそ100発。これからも続くとなると、その数は500を下らないだろう。なんとか直撃するのを避けているシャンパでも、範囲内からは逃げようがないらしい。
それでも擦るのが精一杯で大したダメージは与えられない。
「あったまきたぞぉぉぉ!」
「ぬぁ!」
我慢の限界が来たらしく、シャンパが神の気を周囲に爆散させ気の雨をはじき飛ばしていく。
「手加減なんかしないからな!」
「っ!」
気弾の雨を全て弾かれたアレッタは上空で厳しい表情をしていた。今の自分の全力攻撃を防がれてはこれ以上の策は考えられない。精々可能な限り攻撃を防ぐことだけが対応策だ。
押し潰されそうな圧力にどうにか耐えていたアレッタだったが、迫ってくるシャンパの存在感に圧倒されていく。目の前で止まったシャンパを見ても回避行動はおろか、呼吸の仕方さえ忘れたかのように動けなくなっている。
「お前、生意気だ」
「うおわぁぁぁぁ!」
左頬を殴られたと認識したときには、俺は体勢を大きく崩してとてつもない速度で吹き飛ばされていた。眼下の景色さえ見る余裕もなく、身体を停止させることに全意識を向ける。そのせいか背後に移動していた〈破壊神〉に気付かなかった。
「警戒を怠ったな?はぁ!」
「があぁぁぁぁ!」
今度は回転力を加えた尻尾の一撃で、今度は地面に向けて叩き付けられた。
「ぐぅ!」
どうにか体勢を立て直して受け身を執らずに叩き付けられるのは防いだ。だが尻尾による攻撃は俺の体力を限界近くまで奪っている。空中戦闘する余裕もない。
「…耐えたのか。じゃあとっておきをお見舞いしてやる」
「星ごと破壊する気なのか!?」
「喰らえ」
頭上に構築させた破壊の気を俺に向かって振り下ろした。巨大な破壊玉が直撃すれば俺だけでなく、キャベやカリフラ・ケールまでもが道連れになる。仲間として過ごした時間はごく僅か。カリフラとは準決勝で戦った仲でもある。
たったそれだけの時間ではあるが、ある程度には仲間意識を持ち始めている。サイヤ人という共通点だけでなく、人間性に少しずつ興味が湧いてきているからだ。それにキャベといると心が軽くなる。子供達といるときとは違った安らぎがある。
そんなこいつらを失うわけにはいかねぇ。
「おおおぉぉぉぉぉ!」
消えかけていた《超獄王拳》を再度発動させる。全身から限界を告げる悲鳴が聞こえるが、こいつらを失うことと比べればかすり傷と同じだ。
「《蒼龍波》ぁぁぁ!」
全身全霊を込めた技だが、〈破壊神〉の巨大破壊玉に通用するはずもない。僅かに勢いを弱めただけで、何か意味があったわけでもない。
「ぐおぉぉぉ!」
「その程度で止められるわけないだろ。バカが」
罵られようとできる限りのことをする。それが今の俺にできる唯一の行動だ。
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
そう意識した瞬間、身体の内側から熱い何かが膨れ上がってきた。俺の意識を飲み込むかのように身体全体に広がっていく。
『壊せ壊せ壊せ壊せ』
破壊衝動が生まれてくる。こんなものに飲み込まれたらそれこそ無差別殺人だ。〈破壊神〉はその役目を果たすだけに破壊をする。害ある生命を払拭し、未来ある生命を庇護する。生死の天秤を委ねられた審判なのだ。
だが一介の存在が破壊をすることなど許されない。
俺はあらゆる命を護る守護者になる!
そう心の中で叫ぶと破壊衝動が収まり消えていった。それと同時に熱さから暖かさを持った何かが流れ込んできた。懐かしいような心が安らぐようなそれでいて力が溢れてくる。
破壊の力ではなく純粋な戦いの力が溢れてくる。
「ああああぁぁぁぁ!」
「何!?」
膨れ上がる確かな力が巨大破壊玉の落下を防いでいる。だがそれでも均衡を保つのがやっとで押し返すほどにはならない。たとえこれが続いても何の解決にもならない。それにずっと押し返している俺には負担がかかるが、破壊玉を投げ終わった〈破壊神〉には何の影響も出ない。
放っておけばいつかは体力が尽きて着弾するのは誰にでもわかる。
「何かむかつく。もう一個おまけだ!」
「なっ!うおわぁぁぁぁぁぁ!」
新たに生成された巨大破壊玉が均衡を保っていた破壊玉に衝突すると、俺は為す術もなくはじき飛ばされた。はじき飛んだ俺をキャベがどうにかキャッチしてくれたが、大部分の気と体力を使い果たした俺は、立つこともままならない。
「…すまんな。何もできなくて」
「いいえ、十分守ってくれましたよ。貴方のせいで死ぬわけじゃありませんから」
「そうだぜ。あたしらが弱いのが原因だ。ま、あれだけの戦闘見れただけよしとしようぜ」
どうやら納得した状態で現状を受け入れているらしい。
2つの破壊玉の衝突によって莫大なエネルギーが発生していく。2倍ではなく2乗のエネルギーへと変換され、触れた地面から無へと還されていく。
アレッタたちの目前に迫った刹那。
「お戯れはそこまでですシャンパ様」
透き通るような声と共に、つい今し方まで星の破壊をしていた破壊玉が一瞬にして消え去る。死を覚悟していたアレッタたちはその様子に呆気にとられてしまう。
「邪魔すんなよヴァドス!最高の花火が打ち上がるところだったのによぉ!」
「これ以上の破壊は私が許容しません。勘違いはしないで下さい。別に肩入れしているわけではなりませんよ。今ここで彼らを破壊してしまえば、《第6宇宙》の存続どころか〈力の大会〉に出場することさえできません」
「別にこの星を破壊したところで問題ねぇし」
「そういう問題ではありません。論点がずれているということにお気づきください。まったく」
シャンパの無茶を見慣れているとはいえ、今回のことだけは見過ごせなかったらしい。彼女の立場として、戦いに参戦することはできない。〈天使〉の立場は中立。如何なる場合でも誰かの味方になるということはない。
今回は自身の〈宇宙〉がなくなるということを危惧しても行動だった。誰かの味方になったわけではなく、〈全王〉が破壊する役目を務めるのだから、〈破壊神〉が個人的な理由で破壊していいわけではない。だから今回の仲裁は、意図して誰かの味方をしたのではなく、工程を守るためという意味合いが強い。
結果的にアレッタたちをかばうことになってしまったが、これは偶然や奇跡といってもいいだろう。
「けっ。こいつらがいなくなっても他の奴らを補充すればいいだけのこった」
「おそらくですが、彼らほどの腕を持つ戦士はいくら探しても見つからないと思いますよ?たとえ将来それだけの腕を持つ戦士がいたとしても、開催まで残り僅かとなった今では、修行を付けても現段階の彼らぐらいにしかなれないでしょう。奇跡を以てしてと付け加えますが」
「ふん。俺は寝る」
ヴァドスの言い分が正しいと理解したのか、それとも自分の立場が危うくなったと気が付いたのか。おそらくはその両方だろうが「口は災いの元」と言うので言わなくともいいだろう。
「っ…」
「「アレッタ(さん)!」」
「疲労と緊張の糸が切れたことで気を失いましたか」
杖をアレッタに向けて浮遊させる。アレッタを移動させようとすると、キャベが不思議そうにヴァドスに聞いた。
「緊張の糸…ですか?」
「彼が今まで意識を保っていたのは貴方たちを救うためです」
「あいつがあたしたちを守るために戦ったって!?」
「気付いておられなかったのですか?」
少なからず戦いを共にしていた仲なので、多少なりとも戦いを見ていればわかっているとヴァドスは思っていたようだ。
「彼がシャンパ様が放った破壊玉を避けずに受け止めようとしたのは、何故だかわかりますか?」
「強くなるためじゃないのか?」
「本来〈破壊神〉の破壊玉を受け止めることは容易ではありません。下手をすれば
「僕たちからすれば凄いとわかっていても、どれほどの事なのかわかりません」
理解できない自分の実力にうなだれるキャベを見て、ヴァドスは同情するような笑みを浮かべた。
「〈破壊神〉が本気を出すにつれて、神の気に含まれる破壊の気は増えていきます。増大すればするほど普段使う気の倍失われていきます。当然と言えば当然ですが」
「何故でしょうか」
「簡単なことです。破壊玉本来の気を受け続けつつ破壊の気を中和しなければならないのですから。話を戻します。一時的にとはいえ、破壊玉を押し留めて弾き返そうとした力は神の域に近いことを意味しています。ただしその域にいられるのはごく僅かな時間だけ。今の彼の実力では達することができても維持はできず、身体を傷つけるだけになるでしょう。戦闘しながらその域に留まるに、まずは神の域にいる状態に慣れることでしょうね」
「慣れることができればアレッタさんはヒットさんを越えると?」
キャベの言葉にカリフラも驚愕する。キャベから聞いた話では、《第6宇宙》最強の戦士はヒットだと聞いている。殺し屋として名を馳せる彼は、「生ける伝説」と称されるほど。〈破壊神選抜格闘〉では《第7宇宙》のエース孫悟空と互角の戦いをしたらしい。
互角に戦ったヒットを越えるとなれば、《第7宇宙》に単独戦闘を挑めば負けることはないということ。だが〈力の大会〉が開催される頃には、孫悟空もその時以上の実力を身につけてくるだろう。ヒットを越えたところで勝てる可能性が100%というわけでもない。
《第7宇宙》に勝ったところで、それ以外にも敵は多くいる。他の《宇宙》だって生き残るつもりで挑んでくるのだ。《第7宇宙》だけを注意していればいいわけではない。《第7宇宙》より手強い敵だっているかもしれない。アレッタだけに力を付けさせておくだけでは勝てない。
エース候補またはエース各が敗北すれば、チームの士気に多大な影響が出てしまう。エースだけに頼っていては、いなくなった際に生き残ることなどできない。チームが相対的な実力を付けて挑む《宇宙》が勝つのだ。
「残りの期間で彼がどこまで強くなるか。それは彼自身が決めることです。私たちが介入する事柄ではありません。チームプレーであっても最終的に必要とされるのは、個人の実力と運。運ばかりは〈破壊神〉にも〈天使〉にも操作はできませんけど」
意味深な言葉と笑みを浮かべて、アレッタを浮遊させてヴァドスはその場を後にした。
2人から十分に距離をとったところで、ヴァドスは普段浮かべている真面目なのとは違い、悩むような表情を浮かべている。まるで自分に理解できないないかが起こっていることを、暴いてやるとでもいうのように。
{シャンパ様との話を聞いた限りですが、彼は普通のサイヤ人とは違って遺伝子操作をされたサイヤ人ということ。キャベさんやカリフラさん・ケールさんとは違うサイヤ人。遺伝子操作による危険な異常性は今のところ見当たりませんね。むしろ不思議なほど落ち着いているように見えます。実験で遺伝子操作された生物は、いつのときも何かしらの欠陥を抱えているもの。成長できない・凶暴性が増す・繁殖できないといったところですが、この例も私が知っていることの一部分。1つ気がかりがあるとすれば、一時的に破壊玉を押し返していた瞬間、彼の内側から〈破壊神〉とは違った別の破壊の概念を持った
「…わからないことをいくら考えたところで、結果は見えませんね。今はその疑問を棚上げにして星の修復をしましょうか。アレッタさんとシャンパ様の戦闘でかなり傷ついてしまいましたから。貴方の腕前は私が保障しますよアレッタさん。〈天使〉からすれば気にすることもありませんが、一介の生物の実力としてはピカイチです」
気を失ったままのアレッタを休憩室に運ぶために、ヴァドスは穏やかな笑みを浮かべて歩を進めた。
《超獄王拳》・・・《獄王拳》を完全習得したアレッタがさらに上の次元へ覚醒させたもの。
《スターダスト・フォール》・・・上空から気弾の雨を降らせる現時点でアレッタ最強の技。
《超獄王拳》は悟空があの世一武道大会で、パイクハーンと戦った際に使用したものと同じです。正確には、超サイヤ人に《界王拳》を重ねたものですが、今回は《獄王拳》の強化版という設定にしています。
《スターダスト・フォール》はドラゴンボール超 BROLYで登場したゴジータの技ですね。ゴジータは原作に出てきませんが、作者が一番好きなキャラクターでもあるので出した方という次第です。
今頃になりますが、主人公アレッタの顔や髪型はゴジータそのものです。べジットなら悟空やベジータなどは気が付きますが、ゴジータの出番は劇場版だけでありパラレルワールドの世界なので2人が知ることはありません。
映画ドラゴンボール超 BROLYを見た方ならば、アレッタの破壊衝動がどういったものなのか予測はついていると思いますが、ご内密にお願いします。