【完結】天才科学者と恋の話   作:オルトルート

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篠ノ之束と妹の話

 某日 夕刻 篠ノ之束宅にて

 

 ☆

 

 今日も教えてくれてありがとねー。

 はい、これお駄賃。

 ……とと、そうだったそうだった。

 箒ちゃんちょっと時間ある?

 あるならちょっとそこに座ってくれると嬉しいな。

 

 

 さて、よいしょっと。

 …………箒ちゃん。

 実は、重大な報告があります。

 いや、真面目な話。

 ふざけてないよ、信用ないなぁ。

 

 

 えーと、コホン。

 実は、ね。

 束さん、男の人とお付き合いすることになりました。

 ……? 箒ちゃん?

 どうしたのそんなに頬っぺたつねって?

 虫歯?

 ダメだよちゃんと歯磨きしないと。

 

 

 ……まさかとは思うけど、信じられてない?

 ……あー、やっぱり、冗談だと思う?

 でもね、本当なんだよ。

 えへへへへへへ。

 ちゃんとね、男の人に告白して、オッケーもらったんだよ。

 えへへへへへへへへ。

 

 

 うわっびっくりした!?

 どうしたの箒ちゃんそんないきなり。

 箒ちゃんも女の子なんだから、顔は大事にしないと。

 ほら、そんな叩いちゃだめだよ。

 

 

 痛ったい!?

 え、なんで今束さんぶたれたの!?

 そんなに気にくわなかったのかな!?

 ……偽物って箒ちゃん……。

 さすがに束さんの偽物でもこんな嘘はつかないと思うよ……?

 

 

 夢じゃないよ、現実です。

 ……そんなに束さんが誰かの恋人になることが信じられない?

 ちーちゃんに言ったらそうかそうか、みたいに軽く流されたけど。

 ちーちゃんも驚いてなかったし、箒ちゃんも驚かないだろうと思ったんだけど……。

 十分びっくり? あ、そうだったの。

 

 

 ……クスリ?

 使ってないよ!

 いや、洗脳とかもしてません!!

 ホントに! ちゃんと、告白して!

 オッケーもらったの!!

 

 

 ちょっと箒ちゃん、なんで信じてくれないの!? 

 束さんどんだけ信用ないの!?

 ……箒ちゃんにそこまで信用されてなかったなんて……。

 グスン、束さんは悲しいよ。

 

 

 お相手?

 むふー、よくぞ聞いてくれたね!

 アイツだよ、ア・イ・ツ。

 あれ? 箒ちゃんは会ったことないっけ?

 ほら、よく家に来てたでしょ?

 黒髪の、ちーちゃんと束さんとよく一緒にいた。

 ……分かんない?

 

 

 あー、そういえばそうか。

 箒ちゃんアイツの事怖がって近づいてこなかったもんね。

 お、思い出した?

 そうそう、あの背の高い。

 うん。

 かっこいいでしょ?

 えへへへへ。

 

 

 ……で、なんで話したかだっけ。

 えっとね、箒ちゃんにも一応知っておいてもらうべきかな、って。

 ……? なんで、ってそりゃそうでしょ。

 箒ちゃんの将来の義兄(あに)になるからね。

 

 

 …………箒ちゃん?

 どうしたのそんなに固まって。

 おーい、箒ちゃーん。

 

 

 ……えっと、なにかおかしなこと言った?

 義理の兄になるっていう事?

 何がおかしいの?

 束さんとアイツが結婚するってことだよ?

 お付き合いしたんだから当然でしょ。

 

 

 気が早い、って箒ちゃん……。

 もうお付き合いしてひと月は経ったんだよ?

 普通はそろそろ結婚に向けていろいろやっていくべきじゃないかなー、って。

 …………えっちなことはまだだけど。

 ……それに、そろそろ政府からの圧力を辞めさせたいし。

 

 

 全くなんなんだよアイツらはー!

 人の気持ちを全く考えずに見合い写真なんか送ってきて!

 無視したらしたで延々と訪ねてきやがって!

 挙句「我々としても貴方の幸せを願っている」とかぬかしやがって!

 アイツより好きな人間なんてこの世にいないんだよバーカ!!

 

 

 ん? どうしたのそんなに顔を真っ赤にして。

 束さんが大好きっていうのがそんなに意外?

 フフフ、愛は直球勝負だよぉ、箒ちゃん。

 ……まぁ、束さんは伝えるのがだいぶ遅れたんだけど。

 そのせいでちーちゃんにも揶揄われたし。

 

 

 恥ずかしい、っていうのももちろんあるよ。

 あんまり聞かせたくない、っていう気持ちだってあるよ。

 でも、それでアイツが他の誰かのものになるのは嫌だったし。

 自分の気持ちを伝えられないのはもっと嫌だった。

 とにかくね、男の子を自分のものにしたかったらちゃんとアピールしなきゃだめだよ。

 ……えっちなことは除いてね。

 

 

 だから、箒ちゃんもちゃんといっくんにアピールしておいたほうが……。

 ……箒ちゃん?

 いっくんにアピールしてないの?

 もしかして、いっくんのこと嫌いになっちゃった?

 それなら新しい恋を応援するけど……。

 違う。 あーよかった。

 それじゃあ何でやらないのかな?

 

 

 え、いっくんそんなに人気なの。

 はぁ、イギリスの貴族様。

 フランスの社長令嬢、ドイツの留学生。

 友人の妹に中国の幼馴染、と。

 ふむふむ。

 ……すごいモテモテだね、いっくんって。

 

 

 ……でも、箒ちゃんはいっくんに毎日お弁当作ってあげてたよね?

 一緒にご飯も食べてるんだよね?

 それでも恋愛関係に発展しないっぽいの?

 …………。

 いっくん、もしかして女の子に興味ないのかな……?

 

 

 あー泣かないで箒ちゃん!

 大丈夫、箒ちゃんはちゃんと魅力的な女の子だよ!

 束さんが保証するよ!

 

 

 

 とにかく、いっくんにどうやってアピールするかだよね。

 まずは一日一回「大好き」っていう事から……。

 ダメ。 だよね、束さんもそう思う。

 じゃあそうだね、うーんと……。

 あ、思い切ってデートしてみるとか?

 

 

 できない。 はぁ。

 ……え、いっくんとデートしたことないの?

 いっくんも女の子と二人で出かけたことがない。

 ……あれ、でもいっくんって結構モテモテなんだよね。

 誰か誘ったりしなかったの?

 一緒に買い物行きましょー、とか。

 

 

 箒ちゃんも誘っちゃえばいいのに。

 はぁ。 はぁ。 

 えぇ、乱入って……。

 なに、その子たちもそんなに飢えてるの?

 

 

 でも、そんなにいっくんにアピールしてるならさ。

 いっくんもそろそろ好意に気づいたりするんじゃないの?

 アイツですら束さんの告白はちょっと感づいてたみたいだし。

 いっくんもそういう好意は感じるんじゃない?

 

 

 ……はぁ、照れ隠しにイロイロと。

 …………………えっと。

 …………ちょ、っと……。

 えぇ……それはないでしょ、箒ちゃん……。

 

 

 そりゃあ引くよ! ドン引きだよ!

 いくら好きだからって照れ隠しに暴力はダメだよ!!

 姉としてちょっと嫌だよ、それは。

 はい、束さんと約束しましょう。

 箒ちゃんは絶対にいっくんに暴力を振るわないこと。

 いい?

 守らなかったら多分いっくんはその辺の女の子と結ばれるよ。

 

 

 ホントホント、まじで。

 いっくんの事だから「俺嫌われてるのかも……」とか思ってるかもよ?

 で、嫌われてるからって言って他の女の子と遊ぶようになって。

 次第に疎遠になる箒ちゃんたちとは違い、どんどん親密になっていって。

 それで二人は惹かれあって……。

 そんなの嫌でしょ!?

 束さんも嫌だよ!!

 嫌だからね!!!

 

 

 いっくんと箒ちゃんにはちゃんと結ばれてほしいの!!

 そのスタートラインにまずは立たないと!

 そのためにもまずはいっくんに好かれないと。

 その手助けは束さんも協力するよ。

 もちろん、かわいい箒ちゃんの頼みなんだから。

 

 

 具体案か、そうだねぇ。

 ……ISの試験運転がてら、ちょっと箒ちゃんと二人きりにしてみようかな?

 おぉっと、照れない照れない。

 二人っきりになったからといって告白をするわけじゃないしー。

 箒ちゃんが(やさ)ーしく操縦を教えてあげればいいんだよー。

 それで一気に二人の仲は急接近!

 他の邪魔が入る心配もなし!

 よしよしよしこれでいこうじゃないか。

 

 

 ……え、ちょっと箒ちゃん、何想像したのさ。

 密室で二人っきりだからってその……。

 え、えっちなこと、はダメだよ?

 えっと、その……。

 キス、とかは、遠慮してね?

 あはは……。

 

 

 …………お、おっと、どうしたの、箒ちゃん。

 なにか言いたいことでもあるのかな?

 ん? 質問かい箒ちゃん。

 いいですとも、この束さんがばっちり答えてあげましょう。

 さぁ、来て来て~。

 

 

 …………えっちなことの線引き?

 …………………。

 ………よし、いったん落ち着こうか。

 箒ちゃんもまず息を吸って落ち着いてねー。

 はぁー、ふぅ。

 

 

 さて、えっちなことの線引きだけどね。

 ……手を握るくらいなら、まぁ。

 キス…………は、ちょっと、ねぇ。

 それ以外だと、抱き合うくらいなら――――

 それ以上!!?!?!?

 え、それ以上の事想像してたの!!??!?

 それ以上……それ以上……。

 

 

 ダダダダメだよ箒ちゃん!

 箒ちゃんといっくんにはまだ早いです!

 早すぎです!!

 お姉ちゃん、そんなことは認めませんことよ!

 箒ちゃんといっくんが、あわわ、わわ……。

 

 

 うわぁああーーっ!!!!!

 

 

 

 ☆

 

 

「……束? いきなり来てどうしたんだ」

「………………」

「束さん? おーい?」

「……最近の高校生って、進んでる……!! 」




登場人物
・束さん
 オリ主くんと付き合ってる天才科学者。
 付き合い始めてひと月経ったけど進展がなくてモヤモヤしてる。
 えっちなことをよく言及したのはそのため。

・オリ主くん
 束さんと付き合ってる一般宇宙開発事業員。
 束さんとはゆっくり仲を深めている状態。
 黒髪で身長は高い。

・箒ちゃん
 束さんの妹。
 まさか姉に先を越されるとは思わなくてショックを受けてる。
 肉食系。

・いっくん
 ちーちゃんの弟。
 女の子をみんな友達だと思ってる。
 ド直球に告白すれば付き合える。

・中国の幼馴染
 両親は別れてないと思う。

・イギリスの貴族様
 多少性格がキツい。

・フランスの社長令嬢
 ボーイッシュ。愛人の子と噂される。

・ドイツの留学生
 ファッションの一環で眼帯をつけてる。


いろいろな質問
Q.箒ちゃん姉が付き合ってるの知らなかったの……?
A.箒ちゃん「ここのところ姉が嬉しそうだな、とは感じていた。
      たぶん変な悪だくみしていると思っていた。」

Q.なんで政府は束さんにお見合い写真なんか送ってるの?
A.とりあえず取り入ろうとする精神。

Q.束さん性知識なさすぎるんじゃない?
A.妹が二人っきりになったら弟分と「それ以上」をしようとしていたら誰だって驚く。

Q.束さんの高校生の恋愛の認識って?
A.キスして、抱き合って、それ以降は大人になってから。



Q.束さんってオリ主くんとえっちなことしたの?
A.(して)ないです。

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