「•*¨*•.¸¸♬︎」
いつものアラームが部屋に鳴り響き、それを止めていつも通りに朝食を食べて学校の準備をする。1つだけ違うことと言えば、変装アイテムである伊達メガネとカエルのお面を鞄の中に入れたことである。
「いってきまーす」
玄関のドアを開けていつもより少し早く学校へと向かう。
「ふぅ……。久しぶりに座れた気がする……」
いつもは座れずつり革を持つことになるが時間をズラしたお陰で座ることが出来た。
上諏訪駅から出て国道沿いに歩いていると方をポンポンと叩かれる。
「どーせ
ここで反応して振り返ると高確率でほっぺを指でプスッとされるので右で肘打ちをする。
「――っと、そうくると思ってたぜ」
行動が読まれていたのか
「おはようさん」
「おはよー。やっぱり
「あー、やっぱバレてた?」
「中学の時から食らってたら大体誰か分かるでしょ」
「そーだよなー……」
そう言うと「うーん……」と唸りながら考え込み始める。大方新しいイタズラでも考えているのだろう。
学校が終わって放課後になり、私は待ち合わせ場所である秋葉神社前へと向かう。集合場所をそこにしたのは先輩と帰っているところを巡達に勘違いされないようにするためである。
「遅れてすみません、先輩」
「少しくらい大丈夫さ」
そう言って私達は先輩の家へと歩いて向かう。
「先輩の家ってどの辺にあるんですか?」
「長野銀行の近くだけど場所分かる?」
長野銀行が何処にあるか知らないので首をブンブンと横に振る。
「あー、どう言ったらいいかな……。このまま国道沿いに行って諏訪植木の看板の所を右に曲がって、そのままずっとまっすぐ行って上川を渡った先って言ったらいいのかな」
先輩が詳しく説明してくれるがいまいちピンと来ない。
「うーん……まぁ、実際に見た方が早いか」
首を傾げる私を見て先輩は歯切れ悪く答える。
先輩と他愛もない話をしながら歩くこと約30分、先輩の家に到着する。諏訪市は広いので当然知らない場所だった。
先輩がガレージの奥に自転車を置きに行ってる間に鞄から伊達メガネとカエルのお面を装着する。
「ん?そのお面と眼鏡はどした?」
「変装アイテムですよ。ヒーローは秘密に包まれていないといけないですから!」
自転車を置いて戻ってきている先輩にそう答えると笑い出す。
「ただいまー」
「おじゃましまーす……」
おそるおそる言いながら先輩の家に上がる。
「翔おかえりー。あら、その子は翔の彼女?」
「ちげーよ母さん。彼女は俺の後輩だよ」
「初めまして、東風谷早苗です」
先輩の後ろでぺこりとお辞儀をして自己紹介をする。
先輩のお母さんはゆっくりしていってねと言うと奥へいき、私は先輩に案内されるがまま後ろをついていく。
「あいつなんかのためにゴメンな」
「いえ、私にも非がありますから」
少し言葉を交わした後部屋に入る先輩に続いて私も入る。先輩の弟が私を見るや否やテテテテと走って飛びついてくる
「あっ、カエルのおねーちゃんだ!」
「っわっとと……ふぅ」
飛びついてきたことによりバランスを崩しかけるがなんとかなる。
「
「ごめんなさい……」
「それにわざわざ予定を空けて来てくれたんだからありがとうを言わねーと駄目だろ」
「カエルのおねーちゃん、来てくれてありがとう!」
「どういたしまして」
顔を上げて満面の笑みを浮かべる
「
「これであそびたい!」
そう言って手に持っているものを前に差し出す。それを受け取り箱を見ると『森にくまが出た!森から抜け出せ!』というタイトル的には子供向けと言えない文字が並んでいた。
箱を開けて中身を確認するとやはり子供向けとは言えないような絵柄だったり駒だったりして思わずそっ閉じする。
「これ、先輩の趣味ですか?」
呆れながら先輩に尋ねると先輩の方も言いたいことは分かるというような表情でこちらを見つめる。
「うちの親父、変な物を買う趣味があるんだよ。これはまだマシな方で酷い時にはスイッチを入れるとマンドラゴラみたいな絶叫をあげる懐中電灯だったり夜に動き出して食うんじゃないかってくらいヤバい顔をしたプラモデルとかだったりするんだよ……」
それを聞いて思わず身を引いてしまう。
「先輩も苦労してるんですね……」
「全くだよ」
先輩はため息をつきながら手に持ったままの箱を私からひょいと取って準備をしていく。
「まずは
色々とあれだけど遊び方を読んだ限りでは普通のすごろくっぽかった。ただ、普通と違うのは熊という駒だった。
熊は2巡目終了後にスタート地点に現れ3巡目からサイコロを振ってプレイヤーを追いかけ、追いついたり追い抜かれたプレイヤーは脱落するというものだった。
そういったルールがあるからなのか盤面にはnマス戻る、振り出しに戻るといったものはなく代わりに悪い効果は主に1回休みで構成されている。
1巡目と2巡目が終わり盤面に熊が出現する。
「ここからが本番だね」
「ああそうだな。熊に食われないように気をつけるこった」
「先輩が先に熊の餌食になってください」
先輩が笑いながらニヤニヤしながらからかってくるのでムスッとなって言い返す。生き残ることは出来なくてもせめて先輩の後に食われたい。
ゲームも中盤に入り、先頭の
「先輩、これってどういうことですか?」
「ん?ああ、そこは最初に来た人がサイコロを振って数字を決めて二人目以降はその目以上の数字を出さないと先に進めず、更に数字はプレイヤーが通るほど大きい数字になっていくから不利になっていくんだ」
先輩が私に説明してくれているあいだに
「うっわ、
「つまり私が通ろうと思ったら5以上の目を出す必要があるってことでしょうか?」
「そういう事、そして早苗が6の目を出せば俺は6の目を出さないと通れなくなるわけ」
なるほど、ここで6を出して先輩を足止め出来ればいいのか。
先輩の説明を聞いてここで先輩を贄に出すことを密かに決意する。
強制停止マスまで8マスくらいまであったけど止まったマスがもう1回サイコロを振るマスでもう1回振って進んだらピタリと強制停止マスに止まる。
「6でろ6でろ……」
そう呟きながら振って出た目は、2。
「そう簡単に6は出てきてくれないか」
熊とは20マス程離れているから油断は出来ないけどまだ焦りはない。
次のターンで先輩が強制停止マスに到着しサイコロを振るが出た目は4だった。
「確率1/3とはいえきっついな……」
「次から先輩は1/6になるんですよ」
「いーや、俺が6を出して早苗を1/6にしてやるよ」
などと言い合ってるうちに
「ここで6出さないと結構ヤバいかも」
6が出るように必死に祈りながら振り、その祈りが通じたのかなんとか6の目を出し小さくガッツポーズを取る。
「やったー!先輩お先でーす」
「あーー、クソッ!」
私が6を出したことにより先輩の条件が厳しくなり悔しがる。先輩は深呼吸して気持ちを切り替えてサイコロを振るも、悲しいかな、出た目は真逆の1だった。そして次の熊のターンで先輩が脱落し、熊による最初の犠牲者となった。
ここから私と
「このままかつぞー」
えいっという掛け声と共に
「あーあ、いっかいやすみだ……」
「ふっふっふ、このまま
サイコロをコロコロと転がし、止まったマスでもう1ターン得られたのでもう一度サイコロを転がし駒を進めると今度は1回休みに当たる。
「あれま……しかしこうして遊んでみると本当に1回休みマス多いですね」
「熊から逃げ延びるっていう設定だからな。木の根に足を引っ掛けて転んだとか、逃げてるうちに方向を見失ったとか、恐怖で足が竦んだとかそんな設定じゃないか?」
ずっと熊すごろく(通称)で遊んでいたせいかなる程と思わせるものがあった。
最終的にゴールが近付くにつれ休みマスが増え、私達はそれに足を絡め取られて2人仲良く熊の餌食となってしまった。
「あー食われたー!」
「またたべられた……」
「このすごろく難しいから仕方ないよ」
その後1時間程一緒に遊び、日が落ちて辺りが暗くなってきたので帰ろうとするが駅まで辿り着く自信がなかったから先輩と荷ケツして駅まで送ってもらった。
間が空きすぎてあれだけど諏訪子様達最近出てきてないような……
Googleマップを活用してると諏訪市に行きたくなる笑
マンドラゴラ懐中電灯や熊すごろくは個人的に気になるところ
CBに影響されてすごろく書いたわけじゃないです\_(・ω・`)ココ重要!