とある日の夜。風呂から上がり終えた私は自室で学校の宿題をやっていた。今までは曲を流しながら宿題をしていたがここ数日流していない。なぜかと言うと…
「早苗ー、ここ計算ミスしてるよ」
「えっ、あっほんとだ。ありがとうございます諏訪子様」
諏訪子様にお礼を言って間違った所を消して書き直す。いつもは1人で静かだったので曲を流していたが2人が見えるようになってから曲を流すのをやめたのだ。
ここ数日2人と一緒に生活して分かったが私が寝たあとに2人は神楽殿へ行って一夜を明かす。そのまま午前は神社で過ごし、昼は家、夕方は二人揃って私のお迎えにくるのだ。塾のない日はそのまま家に帰り、塾がある日は中に入っていたり外で待っていたりする。その時に、
「先にお帰りになってもいいので待たなくてもいいですよ?」
と言ったことがあるのだが、
「私達は早苗が心配で付いてきてるのだから先に帰るような事はしないさ」
どうやら2人とも心配性な性格らしい。
「慧人は心配じゃないのでしょうか…?」
思わず口からそんな言葉が零れた。
「慧人は昌幸の子だからね。心配は要らないさ」
「私だっておじいちゃんの子ですー!」
「あっはっはっ、早苗も昌幸の子だったね」
2人に笑われたあと神奈子様に頭を撫でられた――――
この前の出来事を思い出しながら宿題をやっていたらいつの間にか終わっており、私は慧人の部屋に向かった。
「慧人ー、ちょっといいかな?」
私はノックをして尋ねる。いいよと言う声が聞こえたので私はドアを開けて少し中に入る。
「ちょっと来てくれる?」
「別にいいけど」
慧人を連れ出して私達は祖父の部屋へ向かう。
「おじいちゃんに何か用でもあるの?」
慧人は疑問を口にする。私は小声でうんと言ってからおじいちゃんを呼んだ。すると障子が開き
「来たのか。慧人も一緒ということは…」
「うん、歴史について教えてもらいに来たの」
そうかそうかと言って祖父は私達を部屋の中に引き入れた。
「少し待っててくれんか。座布団を出すからのう」
そう言って祖父は座布団を2枚出してきた。
「慧人、お主を巻き込んでしまってすまんかった。早苗と話をした時にわしが慧人を連れてくるように言ったのだ。でも神職に携わろうが携わるまいが東風谷の人間として歴史は知っておいて欲しくてのう」
「大丈夫だよおじいちゃん」
慧人が言うと祖父は安心した顔つきになった後、
「では話すとしよう。諏訪地方の、洩矢の歴史を」
そうして祖父は語り始めた。
「遠い昔、神代の時代にここ諏訪地方を統べていた神様がいた。名を洩矢諏訪子と言う」
諏訪子様の名前が出てきて私は驚く。
「洩矢諏訪子って…」
「そうじゃ。ここ、守矢神社に祀られてる神様じゃ。そしてここにはミシャグジ神という神も居た。ミシャグジ神は凶暴で残虐な祟り神で人々は恐れておった。そして、それを鎮めることが出来た諏訪子様には当時異常な信仰心が集まった。諏訪子様を中心とした国家が形成される程にのう。そうして出来た国がここ、洩矢じゃよ。洩矢の生い立ちを話したところで次は国譲りの話をしようか」
洩矢と国譲り、関連性が分からず私は首を傾げた。
「国譲りというのは大国主神が平定した葦原中国を天照大神に譲るように交渉する一連の流れじゃな。」
そう言って祖父は国譲りについて話し出す。
「
祖父が一旦言葉を区切りチラリと慧人の方を見る。私もつられて慧人の方を見ると首が項垂れている状態で寝ていた。痛そうと思いつつ慧人を起こそうとすると
「よいよい、寝てしまうのは仕方ないこと。いつか早苗が慧人に話してやってくれんか」
「うん分かった」
そう言って私は慧人を起こすのをやめた。
「この国譲りの話は早苗が見えたもう一柱に関係する話じゃ」
「もしかして…」
「そう、八坂神奈子様じゃ」
神奈子様について話をしているのは分かったけれどそれでも関連性が分からなかった。
「
「逃げ出した神奈子様はどうなったの?」
「
「大和の神が、洩矢に…?」
「そう、噂は段々大きくなって人々は不安を募らせる。そんな中神奈子様が洩矢に来た。噂通りになり人々は恐怖した。神奈子様は武神故に好戦的な性格で、洩矢を見て支配しようと考えたのじゃろう。人々の被害を出さないように諏訪子様は場所を変えるように提案し、そして神奈子様はそれを呑んだ」
その後の展開がどうなるのか知るために私は集中する。相変わらず弟は項垂れたまま寝ている。
「諏訪子様は当時最先端とも言える鉄器を使って神奈子様を退けようとした。しかし神奈子様は鉄器を朽ちらせる方法を知っておった。諏訪子様の武器に藤の枝を巡らせ朽ちらせた。武器の無くなった諏訪子様は勝ち目はないと判断して降参したのじゃ」
「いててて…」
どうやら慧人は首の痛さで目を覚ましたらしい。そりゃ痛めるよねと思いながら、
「慧人よ、よく眠れたかのう」
「ごめんなさいおじいちゃん。話してるのに寝てしまって…」
「よいよい、わしも眠くなるような話をしてすまんのう」
祖父が笑いながら謝る。
「もう少し時間がかかるが耐えれるかね?」
「うん」
「そうかそうか、では話を続けるとしよう。後にこの闘いは諏訪大戦と言われるようになった。闘いに勝利した神奈子様は洩矢を支配したが人々は神奈子様の治世に反対した。ミシャグジ神の祟りを恐れたためじゃ。充分な信仰が集まらず悩んだ神奈子様は諏訪子様と共に洩矢を治めることにしたのじゃ。表向きは神奈子様が支配しているという事にし、実際は今まで通り諏訪子様が治めるという形にしてのう。そうして今に至る、という訳じゃ。ここまでは大丈夫かのう?」
一通り語り終えたのか祖父が確認を取ってきた。
「多分大丈夫…」
「ほっほっほっ、大丈夫じゃなかったら横の本棚からそこの文献を探して読むと良い。慧人、お前にはまだ難しいから寝ていた部分はいつか早苗から聞けば良い」
「うん、そうする」
「もう少し話すことがあったのじゃがもう遅いからまた明日ここに来るとよい」
時計を見るといつの間にか0時を回っていた。時間を確認した途端に眠気が襲ってきた。
「ぁ〜おやふみなはい…」
「二人とも、おやすみなさい」
欠伸をしながらどうにか言うとそれぞれの部屋に戻ってすぐに寝た。
諏訪大戦や国譲りは人並みの知識しかないです笑
本当は血筋の話も入れたかった…
多分次は短くなると思います