少女が歩む道   作:霧熊童子

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書いてて長いと感じる文も投稿して読んでみると短いという事実


信仰〜早苗視点〜

「神奈子様、力比べで武甕槌命(タケミカヅチノミコト)から逃げ出したっておじいちゃんから聞いたんですけど本当ですか?」

 

今日は塾がないので真っ直ぐ家に帰りながら昨日聞いた話を少ししてみる。

 

「昌幸のやつ…」

 

神奈子様は片手で顔を押さえながらそう呟く。

 

「自分の痴態が神話として語り継がれちゃってー」

 

諏訪子様は楽しげに神奈子様をいじる。

 

「あの時は仕方なかったのっさっ!」

 

ニヤニヤ顔でいじってくる諏訪子様に対して神奈子様は言い終えるのと同時に思いっきり額にデコピンをかます。

 

「あうっ!!」

 

神奈子様がデコピンをすると普通の人ではまず鳴らないような音量で響く。諏訪子様は涙目になりながら額を押さえる。

 

「諏訪子様、大丈夫なんでしょうか…」

 

身から出た錆とは言え凄まじい音を聞かされた身としては普通に心配になる。

 

「人間にやったら指が頭に刺さるだろうけど諏訪子は神だから問題ないさ」

「そういう問題なのかな…」

 

私は思わず突っ込んでしまう。

 

「あの時は腕相撲で勝負しようってなってアイツの手を握ったら氷柱に変化してねぇ。一瞬で手がボロボロになったのさ。他にも何をしてくるか分からないから逃げたのさ」

 

右手をグーパーしながら神奈子様は当時を思い出しながら話す。

 

「しかも三日三晩ずっとストーカーみたく追いかけ回されてねぇ。まったく、執拗い男神(おがみ)は嫌われるってもんだよ」

 

さりげなく武甕槌命(タケミカヅチノミコト)をディスる神奈子様。一方諏訪子様はうーと言いながら額をさすっていた。

 

 

 

 

 

家に着くと部屋へ行き鞄を置いて制服のままリビングに向かう。祖父の姿を探しリビングを見渡すとニュース番組を観ていた。私は祖父の元へと歩き、

 

「おじいちゃん、昨日の話の続きなんだけど…」

「おお、部屋で話すからついておいで」

 

そう言って祖父は立ち上がり自室へと歩く。

 

「昨日は遅くまですまなかったのう」

 

座布団を出しながら祖父は謝る。大丈夫だよと言って私は座布団に座る。

 

「凪さんが夕食を作り終えるまでに話すとしようかね。早苗には小学生の頃に東風谷家が諏訪地方を統べていた神様の血を引いてるという話をしたのを覚えておるかのう?」

「うん、その血の影響で神様が見えたりするんだっけ」

「そうじゃ、しかし東風谷家に関する文献や系図は諏訪大戦の後からしか存在しておらず、代々現人神として人々から崇められていたと言うことが分かるだけじゃ」

「現人神…?」

 

現人神がなにか分からず私が疑問に思ってると廊下の方で足音が聞こえ、

 

「おじいちゃん」

 

慧人の声がした。学校から帰り、昨日の祖父の話の続きを聞くためにここに来たのだろう。

 

「慧人も聞きに来たのじゃろう?話し始めたばかりだから遠慮せず入っておいで」

「う、うん…」

 

障子が開き慧人が入ってきた。そして私の横にある座布団の所で座った。

 

「慧人にはまだ血筋の話をしてなかったのう。東風谷家は諏訪地方を統べていた神様の血を引いておるのだ。」

「諏訪地方を統べていたって言ったら洩矢諏訪子?それとも八坂神奈子の方?」

「どっちの血が流れているかなんてわからないのじゃよ。代々口伝で神の血が流れていると伝えられてきて、系図を見ても初代の東風谷一禮(かずのり)からしか記載されておらんのだ。もしかしたら他にも文献はあったのやもしれぬが空襲で焼失した物もあるからのう」

「口伝でそう伝えてきたんだったらどっかの代で捏造されたって可能性はないの?」

 

慧人が最もな疑問を口にする。祖父は立ち上がり、横の本棚に向かいながら、

 

「わしはその可能性は無いと思っておる。何故ならこの文献に東風谷家には二柱と意思疎通が出来る人が度々現れたと記述されており、曲がりなりにもわしはその内の一柱の存在を感じ取ることが出来る」

 

一冊の史料を手にして戻ってきた祖父に、

 

「じいちゃん、それ本当!!」

 

慧人は驚き声で言う。本当だと言いながらちゃぶ台の上に史料を置き、開く。

 

「そういえばおじいちゃん、さっき現人神って言ってたけどそれって何?」

 

史料を見て現人神の事を思い出して尋ねてみる。

「おお、忘れておった。現人神と言うのは自身が御神体となって信仰を集める人の事じゃ。例を挙げるならば天皇じゃな」

「天皇も現人神だったんだね」

「そうじゃ、天皇も東風谷家と同じで神の血が流れており、天皇の系図を遡ると神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)、所謂初代天皇である神武天皇になりそこから更に遡ると邇邇芸命(ニニギノミコト)、天照大神となるのだ」

 

慧人はスケールの大きさにピンと来てないのか首を傾げる。

 

「ほっほっほっ慧人には難しかったかの。簡単に言うと――――」

 

 

 

 

「人の身でありながら神として崇められるものだね」

 

 

 

 

祖父の言葉が途切れ(·)(·)(·)の声が部屋に響く。私はその(·)の方に、祖父はその(·)(·)の方に向く。

 

「諏訪子様!」「おお…、諏訪子様がわしの部屋に来られるとは畏れ多い……」

 

私は驚き、祖父はうち震えながらそれぞれ話す。

一拍遅れて

 

「えっ神様いるの!?」と言いながらキョロキョロ見渡す。どうやら慧人には諏訪子様の存在を感じ取れないらしい。

 

「諏訪子様どうしたんですか?」

 

私は思わず尋ねると

 

「早苗は何してるのかなーと思って」

「暇だからといって来られても…おじいちゃんがずっと頭下げてるんですけど」

 

「はははは、それはすまなかった。昌幸の面白い反応が見れて満足したから早苗の部屋に戻ることにするよ」

 

諏訪子様は笑いながら祖父の部屋から出た。この後部屋に戻った後神奈子様にさっきの事を話すんだろうなと思った。祖父に相談したあの日のあとも2人で散々笑っていたし。

 

「もしかしたらおじいちゃんをいじるのが好きなのかな…」

 

思わずそう呟いてしまう。

 

「すげー!ねーちゃん、神様と話出来るんだ!」

 

呆気に取られていた慧人が興奮して話しかけてくる。

 

「いつかねーちゃんみたいに神様見えたりしないかな!?」

「う、うん。祝詞を覚えたり筆頭神官になるように頑張ったら見えたりするんじゃないかな?努力は報われるって言うし…」

 

グイグイ来るので若干引きながら答える。祖父の方を見ると頭を上げていたが震えているように見えた。おじいちゃんと声をかけると祖父は我に返りすまなかったと謝る。

 

「ええと、どこまで話したかね。そうそう現人神じゃったな。現人神を簡単に言うと」

「人の身でありながら神として崇められるもの、でしょ?諏訪子様が言ってた」

「東風谷家は神と共に生きることによって自身に信仰を集め、同時に参拝客を増やすことによって神にも信仰が集まった」

「今は、どうなの……?」

「天皇は玉音放送で現人神で在ることを否定され、高度経済成長で科学によって神の存在は否定され、神への信仰が薄れ、科学が信仰される今の世は神々にとって日本という国は墓場じゃろうな」

「そんな…!」

「もし、信仰が無くなってしまったら神様はどうなるんだ?」

「憶測でしかないが信仰が無くなれば存在を保っていられなくなるのでないかのう」

 

存在を保てなくなる。つまり死ぬということだろうか。もしかして神奈子様が洩矢を侵略したのは好戦的な性格じゃなくて薄れゆく信仰に焦ったから…?思考が深く入りそうになった時

 

「晩御飯できたよー」

 

母の呼ぶ声が聞こえ我に返る。

2人で返事をしてから祖父の方に向き合うと

 

「最後に一つだけいいかのう?たとえ神職に携わらなくても神への信仰は忘れないでおくれ。さて、夕食ができたことじゃから食べようかの」

 

祖父はそれだけ言って立ち上がり2人はリビングに、私は着替えてからリビングへ行って晩御飯を食べた。ちなみに今日の晩ご飯はカレーライスだった。

 




現人神の意味はこの世に人となって現れた神、とあるけど神の血を引いてたり神として崇められる、自身に信仰を集めるというのもひとつの解釈だと思います
例えば博麗霊夢も異変解決する事によって人々に感謝され信仰を集める。それを現人神だと解釈することもでき、魔理沙にも同じことが言えます。
もしかしたら英雄やヒーローとかも似たようなものかもしれないです。
次回はこのお話の慧人視点を書いてみようかなと思っています。
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