生き残った彼は   作:かさささ

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第18話

 

 

 

「悪いがオレらの目的地はその先だ!通さないと言うならば、力ずくで押し通る!」

 

「上等」

 

 ドリルアームを装備したグランが突進する。対する太刀川も弧月で受け止めようとして、土壇場で大きく下がった。空を切ったグランの一撃が大きな音をたてながら床を大きく抉り取る。

 

「いい判断だ!」

 

「やば」

 

 予想以上の破壊力に太刀川が冷や汗を流す。受け止めずに回避を選んだ自分の直感は間違っていなかったと安堵した。

 

 それにしても。

 太刀川は体制を整えながらグランを観察する。ガタイのいい体から繰り出される一撃はどうやら並みの威力ではないらしい。ただ殴るだけでも十分威力がありそうだが、その威力をドリルの尖った先端に集約されることで破壊力を上げていた。回転も加えて相当に厄介だった。

 

 この一瞬で太刀川はグランの攻撃が余裕でシールドを食い破ることを理解する。

 お返しにと繰り出した反撃の一太刀も易々とボディで防がれた。相当に硬い。

 

『風間さん。こいつのこの硬さ、シールドも簡単に突き破るかも』

 

『ならスコーピオンも相性が悪いな。そいつは太刀川が斬れ。歌川と菊地原は俺と女をやるぞ』

 

『『了解』』

 

 風間隊が動き出す。狙われたオームはハンドガンで牽制するが、風間達はそれを必要最小限の動きで回避。スコーピオンを手にオームへと仕掛けた。対するオームも躱されたことを引きずる事もなくすぐに頭を切り替え、()()()()()()()風間たちを迎撃した。

 

「⁉︎」

 

 たった一瞬。オームから弾丸へと注意がそれたたった一瞬のうちに獲物が変化した。その事実に風間は一瞬動揺するが、彼も一瞬で立て直す。スコーピオンでそらすことでタイミングをずらして回避。返す刃で追撃を弾く。

 両側から菊地原達が飛び出す。風間と激突した直後の硬直を狙い、かつ一本のブレードで対応できないように二方向からの攻撃。アタッカー同士の緻密な連携を得意とする風間隊だからこそできた攻撃だった。普通ならば手傷を負わせるであろう連携だが、あいにくオームは、いや彼女のトリガーは普通ではなかった。何の合図も予備動作も無しに再びトリガーがその形を変えていく。

 

「うわ」

 

 たった一瞬でスピアへと変形したそれを巧みに操りオームは二人をあっという間に退けた。

 

『何あれ、変わったの使ってるね』

 

『複数の形状に変形できるトリガー、しかも変形のラグはほぼ無し』

 

『だが、どれだけ姿を変えられても現状具現できる形状は1つだけだ』

 

 通信を介して方針を練る風間隊。僅かな斬り合いだけで現状を正確に把握できるそれは流石A級だと言えるだろう。風間は思考を働かせながら横目で単身敵と交戦中の太刀川に視線をやる。二刀の弧月を翻し手数をもって攻め立てるが、グランの堅い守りに中々攻め切れないようだった。

 

『奴に向こうを援護させるな。コイツはここに釘付けにする。先ずはパターンを全て引き出すぞ』

 

『了解』

 

『……』

 

 屋内の戦闘が加速していく。

 

 

 

***

 

 

 

 一方外の戦闘。状況は良くなかった。

 

 果敢に攻め立てる柊だが、その攻撃は次第に通らなくなっていった。柊の繰り出す攻撃をメルトはまるで()()()()()()かのように躱す、または防いでいく。念のため言っておくが、柊の攻撃は生半可なものではなかった。かがり気味ではあるもののアタッカーランク上位に位置する柊のそれは正しく猛攻と呼ぶにふさわしいものだ。それをメルトはいとも簡単にやり過ごしている。荒船達の攻撃も加わっているのにだ。そしてその事実が、柊を更に焦らせる。

 

「くそっ!」

 

 最早焦りを隠す余裕もない柊は、メルトが下がったタイミングで構えた。瞬間的に攻撃を拡張するオプショントリガー、旋空。その一撃を持って、メルトを斬り裂こうとする。

 

「っおい⁉︎」

 

「近野!」

 

 旋空弧月はブレードによる斬撃である。加えて言うなら狙撃のような点での攻撃ではなく線の攻撃だ。つまりアタッカー同士の連携においては不向きなのだ。下手をしなくても味方ごと斬ってしまいかねない。複数で敵にあたっていたこの場合において、旋空弧月は完全な悪手だった。

 柊の次の行動を察知した荒船と熊谷は思わず声をあげた。その声で柊の意識に二人の存在が帰ってくる。それが絶好の隙を生んだ。

 

 

 

 メルトがブレードを伸ばす。旋空にも劣らないその拡張スピードに、柊は避けきれなかった。柊の右腕が肩から斬り落とされる。その小さくない傷口から大量にあるトリオンが漏れ出していく。

 

 攻撃しようとしたはずが、逆に攻撃をくらい痛手を負った。その事実に柊の思考が停止してしまう。好機と見たメルトが右腕と武器を失い体勢を崩した柊にトドメとしてもう一度ブレードを伸ばす。柊は動けなかった。ブレードが彼を貫こうとしてーー

 

 

 

 ーー熊谷がそれを斬り伏せた。土壇場で柊の援護に回った彼女が柊に代わって捌いていく。二撃三撃と防ぐ彼女を援護するように荒船がメルトを直接狙う。彼の一撃も十分に鋭かったものの、やはりメルトは分かっていると言わんばかりに展開したブレードで易々と受け止めた。

 しかし荒船も防がれるのは織り込み済み。いや、この後が本命だった。

 

『那須!やれ!』

 

『はいっ!』

 

 柊と熊谷を狙った2本のブレードと今防御に使用したブレードの計3本ーー柊と熊谷へのブレードは2本ずつ繋げているため実際は計5本分ーーを引き出した。

 

 荒船が下がると同時に那須の手元から放たれた弾丸がメルトを襲う。既にブレードを出し切っているメルトは防ぐ手段を持たず、下がるしかなかった。だが那須が打ち出したのは自由に弾道を設定できる変化弾であるバイパー。下がられた場合も考慮して設定された弾丸は地面に着弾する直前で平行になって追いかける。予想外の動きをしたバイパーにメルトは捕まった。撃ち抜かれた穴からトリオンが漏れ出していく。

 通常弾であるアステロイドに威力で劣るため決定打にはならなかったが、初めてダメージを与えることができた。ここが攻め時と見た那須。しかし荒船は那須の意思とは真逆の指示を出した。

 

『よし、一旦下がるぞ』

 

『えっ?下がるんですか。ダメージも与えられたのに。今なら』

 

『だからこそだ。確かに今なら押し切れるかもしれないが、まだ可能性は低いはず。何よりこっちも体制を整えたい』

 

 そう言って荒船は振り返る。視線の先には未だ傷口からトリオンが流れ出している柊の姿。自分たちよりも年下で、しかしこの中で誰よりも攻撃力を持つ彼を、戦力的にも彼自身のためにも放って置けなかった。荒船の視線から理解した那須からも、特に反論はなかった。

 

『けど姿を消すトリガーをまた使われたら』

 

『ああ。だから監視をつける。聞いていたな穂刈』

 

『ああ聞いていたさ、ずっとな』

 

 荒船の呼びかけに荒船隊のもう一人のスナイパーは倒置法という特殊な話し方で返す。いや、特殊ではあるがボケでもなんでもなくいつも通りなのだが。

 

『心配するな、既に補足している』

 

『那須先輩!私もいつでも撃てます!』

 

 穂刈に続いて那須隊スナイパーの日浦も報告する。

 

『よし、二人はそのまま奴を補足しておいてくれ。もし奴が姿を消す素ぶりを見せたらすぐに撃つんだ』

 

『日浦了解です!』

 

『了解、俺も』

 

 荒船がスナイパー二人に指示を出す。気休めではあるが対策は立てた。あとは下がるだけだ。

 

『那須頼む』

 

「はい。アステロイド!」

 

 威力重視にチューニングしたアステロイドをもってメルトを牽制。流石に二度は通じず完璧に防がれてしまっているが、視界は遮った。引くのなら今しかない。

 

 

 

***

 

 

 

 次々と迫る様はまるで弾丸の雨。正面から襲いかかるそれらにメルトは壁のようにフルにブレードを展開することで防いでいた。敵の出方を見れなくなるのは痛かったが、それでもこれは無視することのできない攻撃であった。下手に身体を晒すとあっという間に蜂の巣にされるであろう弾丸の密度だ。故に彼は守りに徹する。敵の殲滅ではなく囮が彼の目的であるのだから。

 

 やがて攻撃が止む。弾丸の雨を防ぎきったメルトが視界に捉えたのは、柊たちボーダーではなく放棄された家々のみだった。

 

「逃げたか?ステラ」

 

『はい』

 

 船を操縦しているもう一人の味方に通信を繋げる。彼にとって最悪なのはボーダーの兵たちがここを放棄して中の加勢に行くこと。そうなってしまった場合は彼らを追いかけなければならなくなるため、船のレーダーから敵の位置を探るよう指示を出した。

 

『少し距離を開けたところに反応があります。人数も変わっていないので奇襲はないと思いますが……。増援と狙撃には引き続き注意が必要かもしれません』

 

「そうか、助かる」

 

 狙撃を警戒して放棄されているであろう民家の中へと身を隠す。現場を一人任された彼にとって、やはり狙撃は最優先で警戒する必要があった。先程の半崎の狙撃は状況と経験から感付けたためどうにか反応できたただのラッキーだ。次も躱せる自信は流石になかった。

 何よりマントを失ったのが痛い。あれがあればまた潜伏してちょっかいをかけられたのだが、予備もないし無い物ねだりをしても仕方がない。メルトは窓から顔をのぞかせボーダーの兵が潜伏している方角へ視線を向けた。注視しながら状況を分析する。

 

 既に向こうの攻撃パターンは殆どを()()()()。特にブレードの武器を使い伸びる攻撃を多用する少年ーー柊に関しては全て見切ったと言って良いかもしれない。他の攻撃手も充分に対処が可能なレベルまで視ることができた。後は弾道が不規則に変化する弾丸への対処を間違えなければ落とされることはないだろう。経験に裏打ちされた実力がメルトに自信を与える。

 

 果たして次にぶつかる時、立っているのはどちらか。

 

 

 

 

 




早く完成できました()

といっても手抜きでは無いので安心してください。

取り敢えずリメイクについての決断はこれがキリのいいところまで書き終わるまで保留にします。なので、まだまだ意見も募集しています。
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