半分眠った状態で書いているので、もしかしたらおかしなところがあるかもです。
一応読み直しはしましたが。
睡眠不足は駄目だなと思い知った瞬間でした。
それでは、どうぞ
ひったくり事案の犯人を何とか確保した次の日、早めに起きた僕は布良さんと共に風紀班の支部へと向かった。
『やっぱり、主任には口でちゃんと報告しておかないとまずいよ』
と言う布良さんの言葉に押されるような形になったが、僕もなんだか投げっぱなしのような気がしてなんとなく後悔が残りそうだったからと言うのもある。
やはり、着替えで早かったのか僕は布良さんよりも早く支部に入っていた。
「おはようございます」
「あ、おはよう。高月君」
支部には隊員の一人が既に待機していた。
とりあえず、僕は挨拶をした。
これがとても重要で、この挨拶から話が始まるのだ。
「あれ、主任は?」
「ああ、主任でしたら開発地区の方ですよ」
「おはようございます」
僕の問いかけに女性隊員が答えるのとほぼ同時に、着替え終えたのか巫女装束姿の布良さんが姿を現す。
「あ、おはよう布良さん」
「何の話をしていたんですか?」
「主任が今いる場所についてですよ」
布良さんの疑問に、女性隊員が答えると、さらに話を続けた。
「それでね、昨日の摘発で吸血鬼がいたからかなり激しい騒ぎになったから、その後片付けに追われてるらし
いんです」
「それじゃ、自分も応援で行ってきます」
犯罪グループに吸血鬼がいたという事実に驚きながらも、僕は主任に後片付けをさせるわけにもいかないため、手伝いに向かうことにした。
「あ、私も!」
「お願いね」
布良さんもそれに続く。
そして僕たちは、犯罪グループの摘発現場となった開発地区にある、倉庫へと向かうのであった。
女性隊員に聞いた場所を訪れると、そこには女性隊員の話通りに後片付けの作業をする主任の姿があった。
「お疲れ様でーす」
「ん? お前らか、どうした?」
布良さんがいつものように元気よく労いの声をかけると、主任は作業を中断して僕たちの方へと振り向く。
「後片付けの応援です。昨日は派手な騒ぎになったそうじゃないですかー」
「大丈夫だったんですか?」
「そりゃまあ、銃弾が飛び交ったり丸焼けにされそうになったりと、なかなかに刺激の強いパーティだったよ」
僕の問いかけに、主任は肩をすくめて冗談めいた様子で答える。
「あ、あの。軽く言っていると思うんですけど、あまり笑えない単語がちらほらと」
銃弾が飛び交う……はある意味、風紀班にとっては起こりえそうだが、”丸焼け”というのは尋常ではなかったため、思わず主任にツッコみを入れてしまった。
「おまけに始末書を十枚も書く羽目になったんだ。いやはや、楽しすぎて泣けてくるね」
「ご、ご愁傷様です」
背中に哀愁のようなものが漂っていたため、思わず主任にそう言ってしまった。
「でも、倉庫はきれいなんですね?」
確かに、倉庫はきれいだった。
”丸焼け”と言う単語が使われているあたり、炎が放たれたのかと思っていたが、そのような感じは一切しなかった。
「ああ。相手の吸血鬼の能力が”幻惑”だったからな。被害も銃弾によるものだけで、うちの隊員にけが人が
出たが死者はなしで済んだ……はずだったんだがな」
「何かあったんですか?」
主任の言い回しとため息に、不安を覚えた僕は、さらに尋ねる。
「一般の人間に被害者が出た」
「えぇ!? それじゃ、吸血鬼さんの存在を知られちゃったんですか!?」
一般の人間に被害者が出て、さらにその場に吸血鬼がいたということは、吸血鬼の存在が一般の人間に知られてしまったこととイコールだ。
「それよりもたちが悪い。あー、悪夢だ悪夢。尤も、当の本人がもっと悪夢だろうけどな」
「それって、まさか!?」
主任のボヤキで、何があったのかを僕と布良さんは把握した。
(二人目の僕が出てしまった……と言うことか)
当然だが、ドッペルゲンガーのことではない。
僕と同じ境遇になったという意味だ。
「そのまさかだ。手は尽くしたんだけどな」
人間が吸血鬼になったということだった。
「ふぅ」
片づけ作業もほとんど終わり、支部に戻るように言われた僕と布良さんは、いったん支部に戻ると巡回の時間まで、時間を持て余すことになった。
そこで僕は巡回に行くまでの間、報告書を読むことにしたのだが、それをたった今読み終え一息ついていた。
「何を読んでたの?」
「犯罪グループ摘発の際の報告書」
一息ついている僕にかけられた声に、僕はデスクに置いた報告書の資料を布良さんに手渡す。
「どうやら、その被害者の人美羽さんが誘拐される現場を目撃していたみたい」
「そうなの?」
布良さんの問いに頷くことで答えると、僕はさらに言葉を続ける。
「それで、助けようと後をつけたところ……」
「逆に捕まって、それで吸血鬼さんの血を口にしちゃったんだね」
僕の言葉に相槌を打つ布良さんだが、表情が罪悪感によるものかさらに曇っていくのがわかった。
もしかしたら、この一件で思い出させてしまったのかもしれない。
僕が吸血鬼となるきっかけの出来事を。
現に、僕でさえもデジャブを覚えるほど、状況が似ていたのだから。
「布良さん」
「な、何かなっ?」
気づけば僕は、布良さんに声をかけていた。
「その、なんだ。例の件を思い出すなとは言わないけど、あまり引きずらないようにね。僕はあの件に関して
は全く気にもしてないんだから」
「うん……ありがと」
僕は布良さんの心の負担を少しでも軽くしようと、声をかけた。
少しでも布良さんの心の負担を軽減できたのだろうか?
僕はそんなことを、お礼を言ってくれた布良さんを見ながら考えていた。
(それにしても、だ)
僕はそこでいったん思考を別の方向に向ける。
それはあの時のひったくり犯を取り押さえた時のことだ。
あの時、僕は”意識を失っていた”。
意識を失う前最後に見たのは、茶髪の吸血鬼の男を拘束しているところ。
そして気づくと僕は、布良さんの銃を持って立っていた。
布良さんの話では、僕一人で吸血鬼の男を二人昏倒させたらしい。
とても信じられない話ではあったが、記憶がないことや意識がなかったことを考えると、そういうことになるのだろう。
何より、布良さんがそのようなうそを言うとは思えなかったのだ。
(報告書には、布良さんとのコンビネーションで拘束したと書いたけど……)
僕自身に記憶もなく、記憶がなくなったことがわかれば病院で検診を受けることになる。
それだけは避けたかった。
主に、あの変態医師に会うのがちょっとだけ躊躇われると言う理由でもあるのだが。
根はとてもいい先生なのに、変な性癖があるために台無しになっているような気がすると最近思えてきた。
それはともかく、そんなこんなで嘘の報告書を書くことを快く同意してくれた布良さんには、頭が下がりっぱなしで、上げることができない。
下手すれば共犯なのに協力してくれる優しさに。
(とはいえ、このまま何もしないと言うわけにはいかない)
おかしなことはすでに二度起こっているのだ。
最初は吸血鬼の血を飲んだ時。
あの時は勝手に体が動き、吸血鬼の男を昏倒させた。
そして二度目が今回の件だ。
吸血鬼二人を昏倒させた。
しかもその際の記憶が全くと言っていいほどない。
簡単にあげただけでも、いつ三度目があるかわからない。
その時に何が起こるかも僕にはわからないのだ。
大変な事態に発展する前に、手を打たなければならない。
だが、僕には何もない。
手を打つにも情報がないのだ。
(やっぱり扇先生に聞いてみるしかないのかな)
最終手段として考えていたことを行うか否かで悩んでいた。
(でも、もう少し自分で調べてみるか)
手がかりは少ないが、きっと何らかの答えに行きつくはず。
僕はその思いで、一連の謎を解くのであった。
「高月君、巡回の時間だよ」
「そうだった」
布良さんのジト目の視線から逃げるように、僕は巡回へと向かうのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
同日、とあるビルにて。
「これはまずいのう」
「小夜様、どうされたんですか?」
公務室である書類に目を通しながらぼやく小夜に、アンナは不思議そうな表情を浮かべながら問いかける。
「それは、先日の人から吸血鬼になったことに対する報告書ですね」
「ん? そうじゃ」
アンナの言葉に、小夜は報告書の書類から視線を外しながら答えた。
「この間の一件に次いでまた起こってしまいましたね」
「そうじゃの。こうも立て続けに人が吸血鬼になると、さすがに説明をするのが大変でのう」
「お疲れ様です」
ため息交じりにつぶやく小夜に、アンナは労いの言葉をかける。
「とはいっても、こっちの方が悩みの種なんじゃがな」
「これは……ひったくり事案の報告書、ですか」
小夜の差し出したもう一つの資料の表紙に目を通したアンナがポツリと漏らした。
「中を読んでみろ」
小夜に促らされたアンナは何を言いたいのかがわからぬまま、資料に目を通す。
そこには、事件の概要から犯人の名前や顔写真などが添付されていた。
(吸血鬼の二人だけ顔などにけががある……拘束する際に抵抗したのか)
吸血鬼である二人の顔にはあざやばんそうこうなどが貼られており、それが痛々しさを感じさせていた。
(診断書?)
なぜか茶髪の吸血鬼のみ診断書が添付されており、アンナはそれにも目を通す。
「ッ!?」
その瞬間、アンナは息をのんだ。
診断書の作成者は扇元樹であった。
それよりも目に留まったのは診断結果だった。
「気づいたか、アンナよ」
「ええ。到底信じられませんが」
いまだに信じられないとばかりにつぶやくアンナだったが、小夜は深いため息とともに顔を横に振ると、重い口を開いた。
「残念じゃが、そこに書かれていることは真実じゃよ。彼のヴァンパイアウイルスは完全に
診断書に書かれた『ヴァンパイアウイルスの破壊を確認』の一文が、小夜の一言で肯定された。
「この事案を担当したのは……」
アンナの予測を肯定するように、小夜は頷いた。
「高月浩介じゃよ。報告書では『高月浩介と人間の二人で拘束した』と書かれておるが、おそらくは嘘じゃ」
「だとしたら……」
「その心配はない。もしそうであれば、今頃何らかのアクションは起こしておるわい」
アンナの言葉を遮るようにして、小夜は口にすると、再び大きなため息を漏らした。
「とはいえ、このまま放置することはできんがの」
「ええ。さすがにこのままですと、また」
二人の予測は見事に一致していた。
「本人に、その自覚があるのかないのかも確認しないといけませんね」
「前者であれば、こちらも少々手荒い手段を用いて事を解決する必要がある。後者であれば……直接説得するまでじゃよ」
アンナの言葉に小夜は頷きながら、開いていた資料を閉じる。
「しかし、説得と言っても一体どうやって……確か、人格と記憶は消去されているのですよね?」
「じゃが、あ奴の中にある”断片”がその二つを持っておるのだとしたら、どうじゃ?」
小夜の言う”断片”に、アンナは思い当たったのか目を見開かせる。
「まさか……」
「そうじゃ。ならばあとはそれを刺激すればよいだけじゃ。幸い、そのためのものは用意できるしのう」
アンナの予測を肯定するように、小夜は頷くと引き出しから赤い液体が入っているパックを取り出す。
「この血液パックには、やや濃い濃度でヴァンパイアウイルスが含まれておるのじゃ。これをあ奴に飲ませ
る」
「まさか、これを飲ませることによって、吸血鬼から吸血した時と同じ状態にさせるつもりですか?!」
「まあ、それでも時間は限られるのじゃがな」
小夜の軽い言葉の裏には、決して覆ることのない意志のようなものをアンナは感じ取った。
「分かりました。小夜様がそこまでおっしゃられるのでしたら、私もお付き合いします」
「いつも悪いのう」
だからこそ、小夜のしようとしていることに対してアンナは頷き、小夜は申し訳なさそうに謝るのであった。
「よし、さっそく準備に取り掛かるとしようかのう。アンナ、予定の空いている日はいつじゃ?」
「それでしたら……三日後がよろしいかと」
素早く動き出した小夜の問いに、アンナはどこから取り出したのか手帳を開いて確認して答えた。
「よし、ではその日にここに来るように元樹に連絡を入れるのじゃ。わらわはあ奴の方に連絡を入れる」
「分かりました」
公務室で、せわしなく動く二人。
かくして、浩介との対面する準備は行われていくのであった。
浩介の知らないところで。